民事訴訟法講義
証 拠 3関西大学法学部教授
栗田 隆 |
書証に関する 文献 判例
書証の申出には、次の3つがある。 |
証言拒絶事由に相当するもの | イ | 196条の証言拒絶事由 |
ロ | 197条1項1号の証言拒絶事由+191条2項の承認拒絶事由 | |
ハ | 197条1項2号・3号の証言拒絶事由 | |
その他 | ニ | 自己利用文書 |
ホ | 刑事関係文書 |
Aは、B会社(金融機関)の関連会社であるC会社の販売する年10%ほどの利回りの見込まれる金融商品を購入する目的でB社から年利5%で10億円の融資を受けた。その際に、YはAから保証人になるように頼まれた。Yは、C社に問い合わせをし、C社の社員からは、「Aが購入する金融商品は、比較的安全な商品であり、今の経済情勢からすれば最悪の場合でも元本の5%が失われる程度でしょう」との説明を受け、その点をB社の融資担当者に確認したところ、「当社でも確認しましたが、その程度でしょう」と説明されたので、保証人になることを引き受けた。Yは、保証債務履行請求権を被担保債権として、その所有不動産に抵当権を設定した。 しかし、たいした経済情勢の変化があったとも思われないのに、Aが購入した金融商品の価値は2億円程度に激減した。Yの精確な記憶は消えかかっているが、Yが保証人になるに際して、B社の融資担当者から「Aには、3000万円を超える年収とかなりの財産がある」と聞かされていたが、どういうわけか、Aの財産状況も悪化していて、利息の支払いが困難になっていた。そこでYは、Aが購入した金融商品と抵当不動産を処分してその代金で保証債務を弁済しようとして、売却代金7億円と引き換えに抵当権の抹消に応ずるようにB会社と交渉したが、B会社の融資担当者は、「市況が回復すれば当該金融商品の価値は少なくとも5億円程度には回復するでしょう」と述べ、「債務全額の弁済がない限り、抵当権の抹消には応じられない」として、これを拒絶した。このため、Aの未払利息が増加し、保証人であるYの負担を重くなった。最後にB会社は、抵当権を実行して債権を回収したが、不動産価格の下落時期にあたり、4億円でしか売却できなかった。B会社は、Aに対する残債権(元本+利息+損害金)9億円及びYに対する保証債務履行請求権を、他の同様な融資案件で回収が滞っている100件の債権と共に、X会社に譲渡し、内容証明郵便による通知がAとYに対してなされた。その際に、B社は、貸出稟議書、Yからの抵当不動産の任意売却による一部弁済の提案書およびこれに対するB会社内部の稟議書等の本件融資に関する一切の書類をX社に引き渡した(この書類の引渡しについては、融資時にY及びAが事前に同意していた)。 Aについて破産手続が開始され、XがYに対して保証債務履行請求の訴えを提起した。Yは、(α)BがYと保証契約を締結する際に、主債務者の財産状況ならびに融資金により購入される金融商品について十分な説明をしなかったこと、及び(β)保証債務の履行に関してB会社の不当な行動により抵当不動産の処分を阻止され、その結果残債務額が不当に増加したことは、債務不履行ないし不法行為に当ると主張し、この損害賠償請求権と保証債務との相殺の抗弁を提出した。Yは、損害賠償請求権の発生に関して主張した事実を立証するために、B会社がかつて所持し、現在Xが所持している前記融資関係書類の提出命令を申し立てた(222条により文書の特定は可能であるとする)。この申立ては、認められるだろうか。 |
4号 | 形式的要件 | 実質的要件(開示による不利益) | 証拠としての必要性との比較考量 |
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ロ
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公務秘密文書(公務組織利用文書を含む) | 4号ロの提出義務免除について要求される不利益は、単に文書の性格から公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず,その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要である(最高裁平成17年10月14日決定)。 | 「公務遂行への著しい支障の有無については,証拠としての必要性と相関的に検討すべしとする有力説の立場を是とする」(最判平成25年4月19日の田原補足意見) |
ハ
(197条1項3号) |
技術上・職業上の秘密文書 | 「技術又は職業の秘密」と言えるためには、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落し、これによる活動が困難になるもの、又は当該職業に深刻な影響を与え、以後その遂行が困難になるものであることが必要である(最高裁平成12年3月10日決定)。 | 提出命令の対象文書が本案訴訟において取調べの必要性の高い証拠であると解される一方,本件文書を提出させた場合に所持者の業務に与える影響はさほど大きなものとはいえないことも考慮して提出を命じた事例(最高裁平成19年8月23日決定)。 |
ニ
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内部文書(公務組織利用文書を除く) | 開示されると看過しがたい不利益が生ずる文書である(最高裁平成11年11月12日決定)。 |
220条4号ニ | 220条4号ロ | ||
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私的団体が所持する文書 | ×
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国または地方公共団体が所持する文書 | 公務員が組織的に用いるもの |
×(かっこ書)
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その他 |
○
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○
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文書の成立の真正
↓ 形式的証拠力 ↓ 実質的証拠力 |
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証拠保全に関係する 判例 文献