最高裁判所 令和 4年 1月 20日 第1小法廷 判決 ( 令和2年(あ)第457号 )
事件名:  不正指令電磁的記録保管被告事件・上告事件
要 旨
 Webサイトの運営者が,収入を得るために,仮想通貨(暗号資産)の取引履歴の承認作業等の演算をWebページの閲覧者のコンピュータにさせる指令を与える電磁的記録をサーバー内に蔵置し,閲覧者にその旨を告知していなかった場合に,サイト運営者の行為が「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」(刑法168条の2第1項1号)を「保管した」(同168条の3)に該当するかが争われた事件において,この電磁的記録は,反意図性は認められるが,不正性は認められないとして,不正指令電磁的記録とは認められなかった事例。
 1.反意図性は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
 2.不正性は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
 2a. (1)不正指令が閲覧中に閲覧者の電子計算機の中央処理装置を一定程度使用することにとどまり,その使用の程度も,閲覧者の電子計算機の消費電力が若干増加したり中央処理装置の処理速度が遅くなったりするが,閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかったこと, (2)ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは,ウェブサイトによる情報の流通にとって重要であるところ本件プログラムコードは,そのような仕組みとして社会的に受容されている広告表示プログラムと比較しても,閲覧者の電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響において有意な差異は認められず,事前の同意を得ることなく閲覧中に閲覧者の電子計算機を一定程度使用するという利用方法等の点についても社会的に許容し得る範囲内といえるものであること, (3)本件プログラムコードの動作の内容であるマイニング自体は,仮想通貨の信頼性を確保するための仕組みであり,社会的に許容し得ないものとはいい難いことを理由にして,不正性が否定された事例。
 /マイニング/Coinhive/コインハイブ/
参照条文: /刑法:168条の2;168条の3/
全 文 r040120supreme91.html

最高裁判所 平成 28年 3月 15日 第3小法廷 判決 ( 平成26年(受)第2454号 )
事件名:  損害賠償請求・上告事件
要 旨
 消費者金融会社(武富士)が無担保普通社債(発行日平成14年6月.発行総額300億円,利率年4%,償還期限平成34年6月)について,会計上早期に償還したものと取り扱うとともに将来支払うべき利息の負担の軽減を図るという取引の枠組みの作成をY2(メリルリンチ日本証券)に依頼し,Y2が仕組債(インデックスCDSを組込み、未償還元本につき年利4%の利息支払合意を含む各種条件付債券)を用いた取引を提案し,武富士が公認会計士及び弁護士の意見を徴した上,その取引の実行として,社債の償還原資として信託銀行に300億円余を信託し,保証の買手でもあるY1が組成しSPV(アイルランド法人)が発行する前記仕組債をY1・Y2を経由して信託銀行が購入したところ,その後,急激な市況の悪化及びこれに伴う信用不安(アメリカのサブプライム ローン バブルの崩壊とリーマン ショック)により,本件仕組債に組み込まれた担保債券(シグマファイナンスが設立したSIV発行の債券)及びインデックスCDSの各評価額の下落が生じ,Y1が本件仕組債の要素となっている契約を解除した結果本件取引が解消され,SPVから期日前償還金として3億円余のみが支払われ,武富士が300億円を超す損害を被った事案において,更生手続が開始された武富士の管財人がY2らに対して,説明義務違反等があったと主張して不法行為による損害賠償請求の訴えを提起したが,最高裁が,Y2が本件取引を行った際に説明義務違反があったということはできないとして,請求を棄却すべきとした事例。 /クレジット・デフォルト・スワップ/ディフィーザンス/債務の実質返済/債務のオフバランス/CPDO/定率債務証券/
参照条文: /民法:709条/
全 文 h280315supreme.html

最高裁判所 平成 25年 4月 19日 第3小法廷 決定 ( 平成25年(行フ)第2号 )
事件名:  文書提出命令申立一部認容決定に対する許可抗告事件
要 旨
 生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原告が,保護変更決定の取消し等を求めた訴訟(基本事件)において,厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たって根拠とした統計に係る集計の手法等が不合理であることを立証するために必要があるとして,統計法上の基幹統計に指定されている統計ために行われた全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書(磁気テープ又はCD-ROM)の提出命令を申し立てたが,同準文書は,民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たるとされた事例。
 1.統計法上の基幹統計に指定されている統計ために行われた全国消費実態調査に関しては,被調査者の当該統計制度に係る情報保護に対する信頼の確保に係るの要請に加え,全国消費実態調査に係る調査票情報である本件準文書に記録された情報の性質や内容等に係る事情も併せ考慮すれば,仮に本件準文書が本案訴訟において提出されると,調査票情報に含まれる個人の情報が保護されることを前提として任意に調査に協力した被調査者の信頼を著しく損ない,ひいては,被調査者の任意の協力を通じて統計の真実性及び正確性を担保することが著しく困難となることは避け難いものというべきであって,これにより,基幹統計調査としての全国消費実態調査に係る統計業務の遂行に著しい支障をもたらす具体的なおそれがあるものといわなければならない。 /書証/文書提出義務/
参照条文: /民事訴訟法:220条4号;231条/統計法:1条/
全 文 h250419supreme.html

最高裁判所 平成 22年 4月 13日 第3小法廷 判決 ( 平成21年(受)第609号 )
事件名:  発信者情報開示等請求・上告事件
要 旨
 インターネット上のウェブサイト「2ちゃんねる」の電子掲示板の「A学園Part2」と題するスレッドに、学園長(原告)を指して「気違い」と述べる書込みがなされていた場合に、電気通信事業(被告)に対する発信者情報の開示請求は認容されたが、裁判外で開示請求に応じなかったことに重大な過失があったことを理由とする損害賠償請求は棄却された事例。(本判決で取り上げられたのは、後者のみ)
 1.開示関係役務提供者は,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」4条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である。
 1a. 匿名掲示板のあるスレッドへのある者による書込み中に原告を侮辱する文言として「気違い」という表現の一語があるが、特段の根拠を示すこともなく,その者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,その書込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,スレッドの他の書込みの内容,本件書込みがされた経緯等を考慮しなければ,権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきであり、そのような判断は,裁判外において発信者情報の開示請求を受けた被告(特定電気通信役務提供者)にとって,必ずしも容易なものではないと判断された事例。 /書き込み/インターネット・プロバイダー/DION/表現の自由/通信の秘密/名誉感情/
参照条文: /民法:709条/特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律:4条/憲法:21条/
全 文 h220413supreme3.html

東京地方裁判所 平成 16年 3月 24日 民事第29部 判決 ( 平成14年(ワ)第28035号 )
事件名:  著作権侵害差止等請求事件
要 旨
 原告(読売新聞社)がそのホームページ「Yomiuri On-Line」においてニュース記事本文及びその記事見出し(YOL見出し)を無料で掲出(自動公衆送信)するとともに,Yahoo等に販売している場合に,被告(デジタルアライアンス)がその見出しを集めて各見出しからYahooのサイトへ新規ウインドをターゲットウインドとしてリンクを張ったファイルの内容を被告の多数の会員のベージに掲出されるようにしたことことにより,被告が原告の著作権あるいは不法行為法により保護されるべき利益を侵害したと主張して,原告が被告に損害賠償を求めたが,原告の記事見出しには著作物性がないと判断され,請求が棄却された事例。
 1.原告作成のYOL見出しは,その性質上,{1}簡潔な表現により,報道の対象となるニュース記事の内容を読者に伝えるために表記されるものであり,表現の選択の幅は広いとはいえないこと,{2}YOL見出しは25字という字数の制限の中で作成され,多くは20字未満の字数で構成されており,この点からも選択の幅は広いとはいえないこと,{3}YOL見出しは,YOL記事中の言葉をそのまま用いたり,これを短縮した表現やごく短い修飾語を付加したものにすぎないことが認められ,これらの事実に照らすならば,YOL見出しは,YOL記事で記載された事実を抜きだして記述したものと解すべきであり,著作権法10条2項所定の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に該当するとされた事例。
 2.情報は,著作権法等によって排他的な権利が認められない以上,第三者がこれらを利用することは,本来自由であり,不正に自らの利益を図る目的により利用した場合あるいは原告に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のない限り,インターネット上に公開された情報を利用することが違法となることはない。 /知的財産権/無体財産権/著作権/フリーライド/ただ乗り/
参照条文: /著作.2条1項1号/著作.10条2項/著作.21条/著作.23条/民法:709条/
全 文 h160324tokyoD.html

最高裁判所 平成 14年 11月 8日 第2小法廷 判決 ( 平成12年(受)第1556号 )
事件名:  損害賠償請求上告事件
要 旨
 精神障害のために入院した患者(原告)がフェノバール(フェノバルビタール製剤。催眠・鎮静・抗けいれん剤)の投与を受け,これにより失明したと認定しつつも,右薬剤を投与した医師に過失がないとして原判決が請求を棄却した場合に,審理不尽の違法があるとして,破棄差戻の判決がなされた事例。
 1.精神科医は,向精神薬を治療に用いる場合において,その使用する向精神薬の副作用については,常にこれを念頭において治療に当たるべきであり,向精神薬の副作用についての医療上の知見については,その最新の添付文書を確認し,必要に応じて文献を参照するなど,当該医師の置かれた状況の下で可能な限りの最新情報を収集する義務がある。
 1a.薬剤の添付文書に「使用上の注意」の「副作用」の項に「(1)過敏症
 ときに猩紅熱様・麻疹様・中毒疹様発疹などの過敏症状があらわれることがあるので,このような場合には,投与を中止すること。
 (2)皮膚
 まれにStevens-Johnson症候群(皮膚粘膜眼症候群),Lyell症候群(中毒性表皮壊死症)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,このような症状があらわれた場合には,投与を中止すること。」と記載されている場合に,当該薬剤と他の薬剤と併用中に薬剤の副作用と疑われる発しん等の過敏症状が生じていることを認めた医師は,過敏症状の発生から直ちに本件症候群の発症や失明の結果まで予見することが可能であったということはできないとしても,当時の医学的知見において,過敏症状が添付文書の(2)に記載された症候群へ移行することが予想し得たものとすれば,十分な経過観察を行い,過敏症状又は皮膚症状の軽快が認められないときは,当該薬剤の投与を中止して経過を観察するなど,前記症候群の発生を予見,回避すべき義務を負っていたと判断された事例。
参照条文: /民法:415条/民法:709条/
全 文 h141108supreme.html

東京地方裁判所 平成 14年 9月 5日 民事第46部 判決 ( 平成13年(ワ)第16440号 )
事件名:  著作権侵害差止等請求事件
要 旨
 原告(サイボウズ株式会社)が被告(株式会社ネオジャパン)に対して,被告が制作販売するコンピュータ用ソフトウェア(グループウェア)「i office 2000」は原告が制作販売する同種のソフトウェア「サイボウズoffice」に依拠して作られたものであり,表示画面(画面に表示される影像)が類似しているので,表示画面ならびに表示画面の選択・配列について原告が有する著作権を侵害していると主張して,損害賠償ならびに製造・頒布等の差止め等を請求したが,認められなかった事例。
 1.電子計算機に対する指令により画面(ディスプレイ)上に表現される影像についても,それが「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)である場合には,著作物として著作権法による保護の対象となり,このことは,ビジネスソフトウェアについても当てはまる。
 1a.原告ソフトの表示画面と被告ソフトの対応する表示画面との間で共通する点は,いずれもソフトウェアの機能に伴う当然の構成か,あるいは従前の掲示板,システム手帳等や同種のソフトウェアにおいて見られるありふれた構成であり,両者の間にはソフトウェアの機能ないし利用者による操作の便宜等の観点からの発想の共通性を認め得る点はあるにしても,そこに見られる共通点から表現上の創作的特徴が共通することを認めることはできないので,原告ソフトにおける個々の表示画面をそれぞれ著作物と認めることができるかどうかはともかくとして,被告ソフトの表示画面をもって,原告ソフトの表示画面の複製ないし翻案に当たるということはできないとされた事例。
 2.ビジネスソフトウェアにおいては,利用者がクリックやキー操作を通じてコンピュータに対する指令を入力することにより,異なる表示画面に転換するが,このような画面転換が,特定の思想に基づいて秩序付けられている場合において,表示画面の選択と表示画面相互間における牽連関係に創作性が存在する場合には,そのような表示画面の選択と組合せ(配列)自体も,著作物として著作権法による保護の対象となり得る。
 2a.被告ソフトは,原告ソフトにないいくつかのアプリケーションを備えているほか,原告ソフトのアプリケーションに対応するアプリケーションを見ても,少なからぬ数の表示画面が付加され,これに対応する牽連関係(リンク)も存在するので,この点で既に被告ソフトは,ソフトウェア全体においても,対応する個別のアプリケーションにおいても,原告ソフトと表示画面の選択と配列を異にするというべきであり,これに加えて,原告ソフトと被告ソフトとの間で表示画面とその牽連関係(配列)を共通とする部分における表示画面の選択・配列に創作性を認めることができないので,原告ソフトの全体又はこれに含まれる個別のアプリケーションに属する表示画面の選択及び牽連関係(配列)に,創作性を認めることができるかどうかはともかくとしても,被告ソフトにおける表示画面の選択・配列をもって,原告ソフトの複製ないし翻案ということはできないとされた事例。
 3.ソフトウェアの表示画面は,通常は,需要者が当該商品を購入して使用する段階になって初めてこれを目にするものであり,また,ソフトウェアの機能に伴う必然的な画面の構成は「商品等表示」となり得ないものと解されるから,表示画面が不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するというような事態は,ソフトウェア表示画面における機能に直接関連しない独自性のある構成につき,これを特定の商品(ソフトウェア)に特有のものである旨の大規模な広告宣伝がされたような例外的な場合にのみ,生じ得る。(例外に該当しないとされた事例)
 4.市場における競争は本来自由であるべきことに照らせば,著作権侵害行為や不正競争行為に該当しないような行為については,当該行為が市場において利益を追求するという観点を離れて,殊更に相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような特段の事情が存在しない限り,民法上の一般不法行為を構成することもない。(不法行為を成立させる特段の事情が認められなかった事例) /知的財産権/無体財産権/著作権/不正競争防止法/編集著作物/
参照条文: /著作.2条1項15号/著作12条1項/著作.21条/著作.27条/不正競争.2条1項1号/民法:709条/
全 文 h140905tokyoD.html

名古屋高等裁判所 平成 14年 5月 22日 民事第2部 判決 ( 平成14年(ネ)第69号 )
事件名:  執行判決請求控訴事件
要 旨
 アメリカ合衆国カリフォルニア州ベンチュラ郡上級裁判所の養育費支払条項を含む‘stipulation and order on order to show cause’(理由開示命令手続における合意及び命令)は,執行判決の対象となる外国裁判所の判決には当たらないとされた事例。
 1.民事執行法24条にいう「外国裁判所の判決」及び民事訴訟法118条にいう「外国裁判所の確定判決」とは,外国における裁判権を行使する権限を有する機関が,私法上の法律関係について当事者双方の審尋を保証する手続により終局的に行った裁判で,通常の不服申立の方法では不服申立ができないものをいう。
 1a.同法24条により執行判決を求めることができるのは,外国裁判所の判決および仲裁判断に限られ,それ以外の同判決と同一の効力を有するにすぎないものは,これに含まれない。
参照条文: /民訴.118条/民執.24条/
全 文 h140522nagoyaH.html

東京地方裁判所 平成 14年 1月 29日 民事第47部 判決 ( 平成12年(ワ)第23425号 )
事件名:  商標権侵害差止等請求事件
要 旨
 被告標章「United sports」は、「United」を要部とするものであり、原告商標のアルファベット標記「UNITED」と類似しているとして、被告標章を付した衣類の輸入・販売の差止めならびに商標権侵害による損害の一部請求(2億円)が認容された事例。
 商標権侵害を理由とする損害賠償請求につき、被告標章が付された衣料の仕入単価,仕入量,販売単価,販売数量の記載のある売上元帳,仕入元帳等の帳簿の文書提出命令が発せられた場合に、被告が「コンピュータを用いて仕入,売上管理をしているから,売上元帳や仕入元帳を所持しておらず,また,コンピュータのデータについても,平成12年以降のものしか保有していない」と主張したが、正当な主張と認められず、民訴224条3項により,原告が立証しようとした事実(被告が,被告標章の付された衣料を,1枚450円以上で,平成2年11月11日から平成12年11月10日までの10年間に,1年に200万枚販売し,販売価格から仕入価格を引いた粗利益率が3割以上であったという事実)が真実と認められた事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/書証/
参照条文: /民訴.224条3項/商標.37条/商標.38条2項/商標.39条/特許.105条1項/
全 文 h140129tokyoD.html

名古屋高等裁判所金沢支部 平成 13年 9月 10日 第1部 判決 ( 平成12年(ネ)第244号,平成13年(ネ)第130号 )
事件名:  不正競争行為差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件<ドメイン名事件>
要 旨
 1.被告がホームページの開設により不正競争行為をしている場合に、被告が原告から金銭を取得する目的でドメイン名「jaccs.co.jp」を登録したことを考慮して、当該ドメイン名によるメールアドレスを用いて電子メール広告等を行い,「JACCS」という営業表示を有する原告の営業上の利益を侵害することも十分に予想されるとして,ホームページのアドレスの使用に限定せずに、ドメイン名自体の使用の差止請求が認容された事例。
 2.ドメイン名は、当該ドメイン内に開設されるホームページの開設主体を識別する機能を有しているから、「http://www.jaccs.co.jp」をキーボード入力すれば当該ホームページに到達できる状態になっていれば、当該ドメイン名の使用は、商品等表示の使用に当たる。 /知的財産権/無体財産権/不正競争防止法/
参照条文: /不正競争.2条1項1号/不正競争.2条1項2号/不正競争.3条/
全 文 h130910nagoyaH.html

最高裁判所 平成 13年 7月 6日 第2小法廷 判決 ( 平成12年(行ヒ)第172号 )
事件名:  審決取消請求上告事件
要 旨
 洋服等を指定商品とする「PALM SPRINGS POLO CLUB」等の文字から成る商標は、著名デザイナーであるラルフ・ローレンが被服等の商品について使用している「POLO」又は「ポロ」の文字から成る各商標と類似しており、ラルフ・ローレンの業務に係る商品と「混同を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項15号)に当たるとされた事例。
 1.商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。
 1a.「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである。
 2.著名商標の顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くと虞があると認められた事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/意匠権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1号15号/
全 文 h130706supreme51.html

最高裁判所 平成 13年 6月 11日 第1小法廷 判決 ( 平成12年(受)第67号 )
事件名:  売掛代金請求本訴・損害賠償請求反訴上告事件
要 旨
 衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人(米国ポロ社)の商品等表示と同一又は類似のものを使用したインドネシア製の商品の売買契約が民法90条により無効とされ、卸売業者は小売業者に対して代金支払を請求できないとされた事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/不正競争防止法/ポロ・ローレンス/POLO BY RALPHLAUREN/馬に乗ったポロ競技者の図形/ポロシャツ/公序良俗違反/
参照条文: /民法:90条/不正競争.2条1項1号/
全 文 h130611supreme.html

富山地方裁判所 平成 12年 12月 6日 民事部 判決 ( 平成10年(ワ)第323号 )
事件名:  不正競争行為差止等請求事件<ドメイン名事件>
要 旨
 インターネット上でドメイン名「http://www.jaccs.co.jp」を使用し、かつ、開設するホームページにおいて「JACCS」の表示を用いて営業活動をする被告に対し、「JACCS」という営業表示を有する原告が、被告によるこれらの行為が不正競争行為に当たるとして、その差止めを請求し、認容された事例。(メモ参照)
 1.ドメイン名はその登録者を識別する機能を有する場合があるから、ドメイン名の登録者がその開設するホームページにおいて商品の販売や役務の提供をするときには、ドメイン名が、当該ホームページにおいて表れる商品や役務の出所を識別する機能をも具備する場合があると解するのが相当である。
 1a.ドメイン名の使用が不正競争防止法2条1項1号、2号所定の「商品等表示」の「使用」に当たるか否かは、当該ドメイン名の文字列が有する意味(一般のインターネット利用者が通常そこから読みとるであろう意味)と当該ドメイン名により到達するホームページの表示内容を総合して判断するのが相当である。
 1b.ドメイン名の使用が、商品等表示に当たると判断された事例。
 2.商品等表示としての被告のドメイン名「http://www.jaccs.co.jp」の要部は第三レベルドメイン名である「jaccs」であるから、被告のドメイン名と原告の営業表示「JACCS」とは類似するとされた事例。
 3.被告が原告に本件ドメイン名を登録した旨及び「御社が将来的に損失を被る恐れ有りとお考えの節は、譲渡又はレンタルそのものに応じる形もあろうかと思います」などと記載した書面等を送付したことが、本件ドメイン名の対価として金銭を要求していたものと評価された事例。
 3a.被告が本件ドメイン名の登録後間もなく原告に対しドメイン名に関して金銭を要求していることをも根拠にして、被告が当初から原告から金銭を取得する目的で本件ドメイン名を登録したものと推認された事例。
 4.ドメイン名の登録が先願主義であることをもって、ドメイン名の使用の差止め請求を阻止することはできない。
 4a.被告が本件ドメイン名の登録後間もなく原告に対しドメイン名に関して金銭を要求していた等の事情を考慮して、先願申請の努力をしなかった原告が先願申請者である被告に対してドメイン名使用の差止めを請求することが権利濫用に該当しないと判断された事例。
 4b.原告がドメイン名「jaccscard.co」を登録・使用していることは、被告のドメイン名「http://www.jaccs.co.jp」の使用差止めを求める必要性を失わせるものではないとされた事例。 /知的財産権/無体財産権/不正競争防止法/
参照条文: /不正競争.2条1項1号/不正競争.2条1項2号/不正競争.3条/民法:1条3項/
全 文 h121206toyamaD.html

東京高等裁判所 平成 12年 2月 29日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第192号 )
事件名:  商標登録取消決定取消請求事件<POLOCITY商標>
要 旨
 1.「POLOCITY」の欧文字と「ポロシティー」の片仮名文字を上下に横書きした登録商標がその指定商品である被服・寝具等に使用された場合には、これに接した取引者・需要者は「POLO」の文字部分に強く印象付けられ、その商品をラルフ・ローレンと経済的または組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本商標の登録は商標法4条1項15号により許されないとされた事例。(商標登録取消決定を支持)
 2.ラルフ・ローレンあるいはポロ社がファッション関連業者として著名といい得る状態に至っており、それらの業務に係る商品に付される商標は「POLO」等と略称されることも少なくないこと、一方、競技としての「ポロ」がわが国においては極めてなじみが薄いことに鑑みれば、ラルフ・ローレンと無関係の「POLO」の文字を含む商標は、いずれもラルフ・ローレンあるいはポロ社の業務に係る商品の標章の略称として広く知られている「POLO」等の信用力を不正に利用しようとするものであることが十分考えられるから、そのような商標が多数存在することをもって、本件商標をその指定商品に使用しても出所の混同を生ずるおそれがないことの論拠とすることはできない、と説示された事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h120229tokyoH51.html

東京高等裁判所 平成 12年 1月 27日 第18民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第253号 )
事件名:  審決取消請求事件<PALM SPRINGS POLO CLUB商標>
要 旨
 1.「PALM SPRINGS POLO CLUB」の欧文字と「パームスプリングスポロクラブ」の片仮名文字とを上下二段に横書きした構成よりなる本願商標は、その指定商品の取引者、需要者がこれに接した場合、極く自然に、「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」を意味するものと認識するものと認められ、ラルフ・ローレンに係る引用商標の周知・著名性を考慮しても、本願商標から、「PALM SPRINGS」にある「ラルフ・ローレンに係るポロ製品の愛好者のクラブ」との観念が生ずるとか、「POLO/ポロ」の部分のみが注目され、直ちに引用商標が連想されるとまで認めることはできないとされた事例。(登録拒絶査定を支持した審決の取消)
 2.本願商標のように結合商標中に「POLO/ポロ」が含まれている場合、当該商標からラルフ・ローレンに係る引用商標を連想するか否かは、上記の引用商標の強い識別力等を前提にして、個別具体的に判断するほかはない。
 3.本願商標がその指定商品の取引者、需要者によって「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」と認識されるために、「PALM SPRINGS POLO CLUB」が実在することは、不可欠の前提ではない。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/意匠権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1号15号/
全 文 h120127tokyoH54.html

東京地方裁判所 平成 11年 12月 21日 民事第47部 判決 ( 平成11年(ワ)第3134号 )
事件名:  商標権侵害差止請求事件
要 旨
 1.欧文筆記体「Salvador」と「Dali」とからなる商標等について商標権を有する原告が、これと同一又は類似する標章を付した時計及びその容器を輸入する被告に対して、その差止め等を請求し、認容された事例。
 2.被告の商品輸入元が倒産したため、被告が商標権侵害となる輸入行為をするおそれがあるとは認められないが、在庫品を廃棄せず、被告の従業員や関係者に無償で譲渡することを考えているため、商標権侵害となる譲渡・引渡・譲渡又は引渡しのための展示するおそれがあると認められた事例。
 3.商標法32条の先使用権の要件の一つである周知性が満たされていないと判断された事例。 (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権)
参照条文: /商標.32条/商標.36条/商標.37条/
全 文 h111221tokyoD4.html

東京高等裁判所 平成 11年 12月 16日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第290号 )
事件名:  審決取消請求事件<ROYAL PRINCE POLO CLUB商標>
要 旨
 1.「ROYAL PRINCE POLO CLUB」の欧文字を横書きした本願商標をその指定商品(時計
 その他本類に属する商品)に使用するときは、これに接する取引者・需要者はその構成中の「POLO」の文字に注目し、周知になっているラルフ・ローレンに係る「POLO」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがある、と判断された事例。(登録拒絶査定を支持した審決を支持) (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標)
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h111216tokyoH8.html

東京高等裁判所 平成 11年 12月 16日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第250号 )
事件名:  審決取消請求事件<The Polo Cup Challenge商標>
要 旨
 「The Polo Cup Challenge」の欧文字を横書きした本願商標をその指定商品(旧21類「かばん
 袋物
 その他本類に属する商品」)に使用するときは、これに接する取引者・需要者はその構成中の「Polo」の文字に注目し、周知になっているラルフ・ローレンに係る「Polo」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあると、判断された事例。(登録拒絶査定を支持した審決を支持) /知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h111216tokyoH53.html

東京高等裁判所 平成 11年 12月 16日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第251号 )
事件名:  審決取消請求事件<Polo Team商標>
要 旨
 「Polo Team」の欧文字を横書きした本願商標をその指定商品(旧17類「被服
 その他本類に属する商品」)に使用するときは、これに接する取引者・需要者はその構成中の「Polo」の文字に注目し、周知になっているラルフ・ローレンに係る「Polo」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがある、判断された事例。(登録拒絶査定を支持した審決を支持) (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標)
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h111216tokyoH54.html

東京高等裁判所 平成 11年 12月 16日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第252号 )
事件名:  審決取消請求事件<The Polo Cup Challenge商標>
要 旨
 「The Polo Cup Challenge」の欧文字を横書きした本願商標をその指定商品(旧17類「被服
 その他本類に属する商品」)に使用するときは、これに接する取引者・需要者はその構成中の「Polo」の文字に注目し、周知になっているラルフ・ローレンに係る「Polo」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがある、判断された事例。(登録拒絶査定を支持した審決を支持) (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標)
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h111216tokyoH55.html