関西大学法学部教授 栗田 隆
明治23年民事訴訟法
(原文は、カタカナ書であるが、ひらがなに改めた。旧字も適宜新字とした。「虞」を用いるのが通常である箇所で「恐」が用いられているが、参照した法令集のままである。)
第365条 証拠を紛失する恐あり又は之を使用し難き恐あるときは証拠保全の為め証人若くは鑑定人の尋問又は検証を申立つることを得
第366条 訴訟か既に係属したるときは此申請は受訴裁判所にこれを為す可し
切迫なる危険の場合に於ては訊問を受く可き者の現在地又は検証す可き物の所在地を管轄する区裁判所に申請を為すことを得
訴訟の未た係属せさるときは前項に記載したる区裁判所に申請を為すことを要す
右申請は書面又は口頭を以て之を為すことを得
第367条 申請には左の諸件を具備することを要す
第一 相手方の表示
第二 証拠調を為す可き事実の表示
第三 証拠方法殊に証人若くは鑑定人の訊問を為す可きときは其表示
第四 証拠を紛失する恐あり又はこれを使用し難き恐ある理由此理由は之を疎明する可し
第368条 申請に付ての決定は口頭弁論を経すして之を為すことを得
申請を許容する決定には証拠調を為す可き事実及ひ証拠方法殊に訊問す可き証人若くは鑑定人の氏名を記載す可し此決定に対しては不服を申立つることを得す
第369条 証拠調の期日には申立人を呼出し又決定及ひ申請の謄本を送達して其権利防衛の為に相手方をも呼出す可し
切迫なる危険の場合に於ては適当なる時間に相手方を呼出すことを得さりしときと雖も証拠調を妨くること無し
第370条 証拠調は本章第六節、第七節及ひ第九節の規定に従ひて之を為す
証拠調の調書は証拠調を命したる裁判所に之を保存す可し各当事者は証拠調の調書を訴訟に於て使用する権利あり
受訴裁判所は申立に因り又は職権をもって再度の証拠調を命し又は既に調へたる証拠の補充を命することを得
第371条 証拠調は第365条の条件なきときと雖も相手方の承諾に因り之を許すことを得
第372条 申立人か相手方を指定せさるときは申立人自己の過失に非すして相手方を指定し能はさることを疎明する場合に限りその申請を許す
申請を許容したるときは其知れさる相手方の権利防衛の為に臨時代理人を任することを得