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民事訴訟法講義

複数当事者訴訟


関西大学法学部教授
栗田 隆

1 共同訴訟(38条


文献 [1] 判例

1.1 共同訴訟の意義と許容性

1つの訴訟手続の当事者の一方または双方の側に複数の者が登場している訴訟形態を共同訴訟という。複数の者が共同して訴えを提起する場合(原告側複数)、および複数の者が同時に訴えられる場合(被告側複数)が典型例であり、これらの場合を狭義の共同訴訟(38条)あるいは訴えの主観的併合という[33]。

現行法では、訴えの主観的併合はかなり広く認められている(38条以下)。当事者を異にしていても、関連している請求については、それらを同一手続内で併合して審判すれば、共通の争点について審理の重複を避けつつ、ある程度の統一的な解決を得ることが期待できるからである[36]。他方で、併合審判が必要的でないときに、共同訴訟が審理の渋滞をきたすような場合にそなえて、弁論の分離・制限が認められている(152条1項)。

1.2 共同訴訟の要件(38条

共同訴訟は、次の2つの要件を満たすことが必要である。
訴えの主観的併合要件  共同訴訟が認められるためには、当事者を異にする請求を併合して審理することの必要性あるいは合理性が要求され、それを根拠づけるだけの共通性・関連性が請求間に存在することが必要である。この関連性を38条が次のように規定している(沿革につき[雉本*1913a]12頁以下参照)。
  1. 権利義務の共通(訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき)。「共通」は、「同一」の場合を含むが、それに限られず、次の例に示される程度に関連性が高い場合を含む。例:
    • 数人に対する同一物の所有権確認請求[15]  
    • Y1、Y2の共有名義となっている不動産につき、Xがこれらの者への所有権移転登記の抹消を求める場合
    • 数人の連帯債務者に対する給付請求[35]  債権者は連帯債務者の全体に対して一つの債権を有するのではなく、各連帯債務者に対してそれぞれ債権を有すると説明されているので([内田*民法3v3]368頁以下参照)、「共通」を「同一」の意味に理解すると、ここに位置づけるのは適当でないことになる。しかし、「共通」は、連帯債務のように、一方が弁済により消滅すれば他方も消滅するという程度に関連性が高い場合も含む。共同不法行為者の賠償債務(民法719条、不真正連帯債務)もここに位置づけられる([伊藤*民訴1.1]556頁注4)。
    • 主債務者と連帯保証人に対する給付請求([中野*2005a]116頁)。ただし、「主債務者と保証人」を共同被告とする場合を次の同一原因に含める文献も多い([裁判所職員総研*2005a]294頁注3、[中野=松浦=鈴木*新民訴v3]579頁(井上治典))
  2. 同一原因(訴訟の目的である権利又は義務が同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき)。「権利義務共通」と次の「同種権利義務・同種原因」との中間と理解し、具体例から帰納的にその意味内容を理解する方がよい。 例:
    • 同一事故に基づく数人の被害者の損害賠償請求
    • 土地の所有者Xが地上建物の所有者Y1に対して建物収去・土地明渡し、建物の賃借人Y2に対して建物退去・土地明渡しを求める場合
    • 売買の無効を原因として、売主が買主・転得者に対して所有権移転登記の抹消を請求する場合
  3. 同種権利義務・同種原因(訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくとき)  この場合に、訴えを併合することにより、原告は裁判所への出頭の手数を節約できる。裁判所と被告にとっては併合請求のメリットはあまりないが、それでも例えば下記の最初の例で当該売買契約が公序良俗違反で無効となるかが問題となった場合、あるいは契約のある条項の解釈が問題となる場合には、審理を共通にすることが、裁判所と被告にも便宜をもたらす。例:
    • 同種の売買契約に基づき数人の買主に代金請求する場合。
    • 家主がその貸家1の賃借人Y1と貸家2の賃借人Y2とに賃料を請求する場合。
    • 手形債権者Xが手形1につきY1に、手形2につきY2に支払請求する場合。
    • 入学試験に合格して入学金と授業料を納付しながら入学を辞退した数人の者が、その辞退した各大学を設置する複数の学校法人に対して授業料と入学金の返還を求める場合(学納金返還請求訴訟)  消費者契約法の解釈適用が共通の争点となる。こうした原告一人あたりの請求金額は大きくないが、社会慣行の是正を求める点に意義のある訴訟の場合には、一人の原告からは安価な報酬を得て訴訟を追行することになるので、弁護士が主導権をとってできるだけ多くの原告を集めて事件を受任し、一つの訴訟手続で紛争を解決する必要がある。そのため、共同訴訟の形で訴えを提起できることは、訴訟代理人となる弁護士にとっても重要である。

 aとbとの区別は、実際上重要ではない。これらとcとの区別は、管轄の拡張を定める7条との関係で重要である。同一の約束手形の振出人と裏書人は、手形金について各自が全部義務を負うのであるから、連帯債務の場合が権利義務共通の類型に入られているのと同様に、これも本来は権利義務共通の類型(前記a)に含められるべきであるが、cに含める見解が有力である[16]。しかし、これは、手形の流通性を考慮して、関連裁判籍(7条)を否定するために考え出された便宜的な取扱いと言うべきであろう。
 主観的併合要件は、職権調査事項ではなく、被告に異議がなければ、これを欠いてもかまわない。

)その他の要件
管轄の問題
現行法は、主観的併合の場合の管轄について、請求間の関連性を基準にして、38条前段の場合には関連裁判籍を認め、後段の場合には認めないことにした(7条)[2]。しかし、請求間の関連性という考慮のみで関連裁判籍の問題を解決することには無理がある。訴訟資料の共通性や裁判統一の必要性、あるいは併合されることになる当事者の利益保護などを考慮して、弾力的に当事者双方の利害のバランスをはかることが必要である[37]。例:

1.3 その他

訴額の算定9条
共同訴訟の場合にも、9条(併合請求の場合の訴額の算定についての特則)の適用がある。訴え提起の手数料は、金額が増加するに従って増加するが、増加率は逓減するので、手数料の節減となる(cf. 手数料計算のページ

多数の者が同一の公共の利益の実現という主観的意図のもとに訴えを提起する場合には、9条1項ただし書の適用による費用の節減が期待されるが、そうなるとは限らない。例えば、林地開発行為により自己の水利権、人格権、不動産所有権等が害されるおそれがあることを主張して、開発区域周辺の複数の住民が開発許可処分の取消しを求める訴えを提起した場合には、訴えにより主張する利益は全員に共通であるとはいえないから、訴訟の目的の価額は各原告の主張する利益によって算定される額の合算額とすべきであるとされる(最高裁判所平成12年10月13日第2小法廷決定(平成12年(行フ)第1号) )。


2 通常共同訴訟(39条


2.1 特質

共同訴訟のうちで、共同訴訟人が各自独立して訴訟追行をなす権能が認められている場合を通常共同訴訟という。通常共同訴訟は共同訴訟の原則的形態であり、各自が独立して係争権利ないし利益を処分する権能を実体法上認められている場合が中心である[39]。後述の必要的共同訴訟に該当しない場合には、通常共同訴訟となる。例:

2.2. 通常共同訴訟の審判(39条

通常共同訴訟の場合でも、期日は共同訴訟人について同一に定められ、審理・裁判は同時になされる。ただし、弁論の分離(152条)や一部判決(243条2項)がなされる場合は、別である。

通常共同訴訟人独立の原則
通常共同訴訟においては、共同訴訟人間での判決の統一の必要性がないので、共同訴訟人は、次のように、それぞれ他に制約されることなく独立して訴訟を追行する。
  1. 共同訴訟人の一人がなした訴訟行為およびこの者に対する訴訟行為の効果は、他の共同訴訟人には及ばない。次のものがこれに該当する。
    • 訴訟の処分行為  請求の放棄・認諾、和解、訴えの取下げ
    • 弁論  直接事実の主張[17]、相手方の主張に対する応答(自白、否認)。ただし、事実認定については共通原則がとられていて、裁判所は他の共同訴訟人が申し出た証拠調べの結果や弁論の全趣旨も考慮して事実を認定することができる(もちろん、期日が共通であることが前提である)。
  2. 共同訴訟人の一人に生じた中断・中止の効果(124条131条・132条)は、他の共同訴訟人には及ばない。
  3. 裁判所は、弁論の分離・制限・一部判決により、共同訴訟人の一人についての訴訟手続を他の共同訴訟人についての訴訟手続から切り離すことができる。
  4. 上訴不可分の原則は共同訴訟人間では適用されず、共同訴訟人の一人について上訴が提起され、他の者について上訴が提起されなかった場合には、その一人に関係する判決部分のみが確定を遮断され、他の者に関する判決部分は確定する。


当然の補助参加関係の可否
例えば、主債務者Aと保証人Bとが共同訴訟人となっている場合のように、共同訴訟人の一人(A)が他の者(B)に補助参加(42条)する利益を有する場合には、正規の補助参加の申出がなくても補助参加があったものとして扱い、Aの訴訟行為の効力がBにも及ぶとする見解がある([兼子*体系]399頁)。しかし、多数説は、これでは訴訟関係が不明瞭になるとの理由でこれを否定している。最判昭和43.9.12民集22-9-1896[百選(2)160事件]も、これを否定した。
共同訴訟人間の「主張の独立」と「事実認定の共通(証拠の共通)」
通常共同訴訟においては、私的自治の原則を背景にした弁論主義の適用と、できるだけ多くの資料に基づいて真実を認定し裁判の信頼を高めようとする自由心証主義(247条)の適用とが交錯する。この交錯は、次のように整理される。

 ()主張独立の原則  弁論主義の第1命題(口頭弁論での主張の必要)と第2命題(自白の拘束力)は、そのまま適用される。これらの命題の対象となるのは直接事実である。

 ()事実認定共通の原則(証拠共通の原則)  事実の認定については、自由心証主義が優先する。職権証拠調べの禁止を内容とする弁論主義の第3命題は、ここでも遵守される。ただ、1対1の訴訟においては、この命題から、当事者から申出のない証拠調べの結果は判決の基礎資料にならないとの副命題が導かれるが、この副命題は次のように変容される:「ある共同訴訟人が申し出た証拠調べの結果を他の共同訴訟人に関係する請求の判断のために用いることができる」。その根拠としてよく挙げられる:「自由心証主義のもとでは、歴史的に一つしかない事実については、その認定判断(心証)も一つしかありえない」。裁判官の事実認定の負担軽減も目指されていると考えてよい。この変容は、一般に「(共同訴訟人間の)証拠共通の原則」と呼ばれるが、しかし、事実認定に用いられる資料は証拠調べの結果に限られないから(247条参照)、むしろ「事実認定共通の原則」と言う方がよい。この原則に服するのは、次のものである。
このような形での事実認定の共通は、ある共同訴訟人の訴訟行為の結果を他の共同訴訟人に有利に利用する場合には問題が少ない。しかし、例えば、共同不法行為者として訴えられている者が相互に自分の行為と損害と間の因果関係を否定している場合のように、共同訴訟人間に利害の対立がある場合には、各共同訴訟人は、他の共同訴訟人がどのような主張をなしどのような証拠を申し出たかを知り、それに適切に対応する機会が保障されるべきである([西村*1956a] 253頁)。口頭主義が完全に行われる場合には、それは同じ期日に審理が行われることにより実現される。しかし、現在では口頭弁論は書面により準備され、また、多数の文書が証拠として提出されることが多い。各共同訴訟人が審理の状況を正確に把握するためには、共同訴訟人間でも準備書面の送付、証拠説明書あるいは証拠となる文書の写しの送付が必要であるというべきであろう。利害を共通にする共同訴訟人が共通の訴訟代理人を選任している場合には特に問題はないが、そうでない場合には、審理の具体的状況に応じ、裁判所は、訴訟指揮権に基づいて、準備書面の送付等を命ずることができると解すべきである[4]。
債権者が主債務者と保証人とを同時に訴えたところ。次の2つの場合に、裁判所はどのような判決をくだすべきか。

 1.主債務者は、答弁書を出すことなく全ての期日を欠席し、保証人は債権者の主張を争い、裁判所は主債務の不存在の心証を得た場合。

 2.保証人の住所・居所が不明なため、保証人に対しては公示送達による呼出がなされ、保証人は、答弁書を出すことなく全ての期日を欠席したが、主債務者は債権者の主張を争い、裁判所は主債務の不存在の心証を得た場合。

3 必要的共同訴訟(40条


文献
共同訴訟の中には、各共同訴訟人に対する判決をその内容が矛盾しないように確定させること(合一確定)が必要なものがある。そのような共同訴訟を必要的共同訴訟と言う。判決の合一確定の保障のために、40条の特則が用意されている。(α) 判決の合一確定が必要となる代表例は、共同訴訟人の一人が受けた判決の効力(既判力)が他の共同訴訟人にも及ぶ場合である。この場合を「合一確定が法律上要求される場合」という。(β)これに該当しないが、判決の矛盾のない確定が論理的にみて必要な場合を「合一確定が論理的に(のみ)要求される場合」という。例えば、主債務者と保証人が共同被告となっている場合がこれにあたる(主債務者に対する請求を棄却し、保証人に対する請求を認容する判決は、保証債務の附従性に鑑みれば、論理的にあってはならないことである)。判例・多数説は、後者の場合に40条の適用を否定する。

必要的共同訴訟は、さらに2つの類型に分かれる。

3.1 類似必要的共同訴訟

意義
訴訟の開始にあたっては各自単独でも当事者適格を有するが、共同訴訟となった場合には合一確定が要請される共同訴訟類型を類似必要的共同訴訟という。当事者となりうる者が当事者にならなかった場合に、その者にも判決効が拡張されるのが通常である。合一確定の実現のために、常にというわけではないが、比較的多くの場合に、次のことが明示的に規定され、あるいは解釈により認められる。
次のものが、類似必要的共同訴訟にあたる。
)団体の内部的法律関係に関する訴訟  団体の内部的法律関係は、多数の者に関係するので、画一的に確定する必要性が高く、当該団体を被告とする訴訟で下される判決の既判力は、訴訟当事者以外の第三者にも拡張される。複数の者が原告適格を有し、その内の一部の者が提起した場合でも、判決の効力は訴訟当事者以外の者(特に、他の原告適格者)にも及ぶので、複数の者が提訴すると類似必要的共同訴訟となる。
)集団的債務処理手続の特質により判決効が拡張される場合(その1)  倒産処理手続においては、届け出られた債権を全ての倒産債権者との関係で確定する必要があるので、届出債権の存否・内容が複数の者(他の債権者・管財人)により争われると、破産債権の確定に関する訴訟(破産法126条の破産債権査定異議の訴え及び129条の有名義債権に対する異議の訴え)は必要的共同訴訟となる。その訴訟を異議者等が提起すべき場合には、訴えを提起するか否かは各人の自由であり、各人が原告適格を有するので、類似必要的共同訴訟となる[51]。
)ある者の権利を複数の他人が行使する訴訟
)他人間の身分関係に関する訴え(取消しの訴えや無効の訴え)を数人が提起している場合
)合一確定の必要性が高い共同権利関係

3.2 固有必要的共同訴訟

意 義
合一確定の必要があり、かつ、共同訴訟とすることが法律上強制される訴訟を固有必要的共同訴訟という。共同訴訟の強制は、共同訴訟人がそろわなければ当事者適格を欠き、訴えが却下されるという形でなされる[13]。

固有必要的共同訴訟の例
どのような紛争がこれに該当するかについては、法律に明文の規定がある場合もあるが、多くは解釈に委ねられている。
)他人間の権利関係の変動を生じさせる形成訴訟またはそれと同視される確認訴訟  このような訴訟においては、原則としてその権利関係の主体双方を共同被告としなければならない。なぜなら、(α)判決の効力が当該権利関係の主体全員に及ばないとするのでは、紛争解決の実効性を欠き、他方、(β)全員に及ぶとした場合に、判決によってその地位に重大な影響を受ける権利主体が訴訟当事者にならないのでは、その者の手続的権利が害されるからである。例[8]:
)数人が共同して管理処分すべき財産に関する訴訟
)ある者の権利につき複数の他人が共同してのみ訴訟追行する権限が認められている場合
)集団的債務処理手続の特質により判決効が拡張される場合(その2)  倒産法上の債権確定に関する訴訟(例えば破産債権査定決定に対する異議訴訟(破産法126条))を破産債権者が異議者等を被告にして提起する場合には、異議者等の全員を被告にしなければならない。係属中の訴訟手続の受継申立て(同127条)についても同様である。
)その他
当事者適格の追完
固有必要的共同訴訟において必要的共同訴訟人を欠く訴えは、不適法として却下される。ただし、訴え提起当時は不適法でも、事実審の口頭弁論終結時までに共同訴訟人によって追完されれば、訴えは適法となる。追完の方法は、原告側については、共同訴訟参加である。被告側については、訴えの主観的追加的併合、またはこれを否定する立場に立てば、脱落していた被告に対する訴えの追加提起と裁判所による弁論の併合である。訴えは、追完の時から適法となる。訴えについて出訴期間が定められている場合には、出訴期間内に追完しなければならないのが原則となる。出訴期間は既存の法律関係の安定のために定められているのが通常であり、それを打破するための訴えは、その期間内に適法に提起されるべきであると考えられるからである([滝井*1982a]293頁以下参照)。

共同提訴を拒む者がいる場合の処理
共同訴訟人となるべき者のうちの一部の者が提訴を拒むと、他の共同訴訟人は権利を行使できない状態に置かれる。この不都合を回避するために、共同提訴を拒む者を被告として訴えを提起し、これにより共同訴訟人となるべき者全員に判決の効力を及ぼして法律関係の合一的確定を図ることが一定の場合に認められている[19][34]。最初に判例により認められたのは、筆界確定訴訟(境界確定訴訟)に係る土地が共有の場合に、共有者の一部の者が確定訴訟の提起を拒む場合である(最高裁判所 平成11年11月9日 第3小法廷 判決(平成9年(オ)第873号)[52]が、その後入会権確認訴訟についても肯定された(最高裁判所 平成20年7月17日 第1小法廷 判決(平成18年(受)第1818号)))。この場合の共有者たる被告は、「二次的被告」と呼ばれる。この者については、次のような取扱いをすべきである。

3.3 必要的共同訴訟の審理の特則(40条

合一確定の要請があるために、訴訟資料の統一と訴訟進行の統一をはかることが必要となる。そのための規定として40条がある(1項・2項が訴訟資料の統一に、3項が訴訟進行の統一に資する)[27]。なお、共同訴訟人と請求との関係の理解につき、[鶴田*2008a]参照(共同訴訟人が一体となって一つの請求の原告又は被告になるとする)。

() 40条1項  共同訴訟人の一人がした有利な行為は全員のために効力を生ずるが、不利な行為は全員がしなければ効力を生じない。
次の点については、見解が分かれる。
() 40条2項  共同訴訟人の相手方の便宜のために、相手方の訴訟行為は、一人に対してなされても、全員に対して効力を生ずる。たとえば、期日に一人でも出頭していれば、相手方は準備書面に記載のない事実(161条3項)でも主張できる[24]。

() 40条3項  共同訴訟人の一人について手続の中断または中止の原因があるときは、全員について訴訟の進行が停止される。合一確定のために、訴訟進行の統一を図る必要があるからである。同じ理由により、弁論の分離や一部判決(共同訴訟人の一部の者のみに対する判決)も認められない。

() 40条4項  共同訴訟人の中に被保佐人がいる場合に、彼が上訴を提起しなくても他の者が上訴を提起すれば彼も上訴人の地位に就くことを前提にして、彼も保佐人の同意なしに上訴審で訴訟行為をすることができる。訴訟追行を円滑にするための規定である。後述のように、類似必要的共同訴訟の場合には上訴を提起しなかった共同訴訟人は上訴人にならないので、本項は、その他の場合(固有必要的共同訴訟の場合)にのみ適用されることになる(ただし、破産法126条6項が民訴法40条1項から3項のみを準用し、4項を準用外としているので、固有必要的共同訴訟の場合でも40条4項の適用が排除される場合があり得ると考えてよい)。

)その他  判決効の拡張がある場合なので、類似必要的共同訴訟人となるべき者の一人が訴えを提起した後で、他の者が同一被告に対して同趣旨の訴えを提起すると、重複起訴の禁止の規定(142条)が適用される。この場合には、弁論の併合により重複訴訟の状態を解消すべきである。なお、この問題が生じないように、後訴を提起する者は、係属中の前訴の存在を了知している場合には、この訴訟に共同訴訟参加することが望ましい(52条)。この参加は、訴え提起の実質を有し、被参加人の訴えが取り下げられた場合あるいは却下された場合でも、参加人のために訴訟は続行される(彼の参加前に提出された訴訟資料も原則として裁判の基礎資料となる)。

共同訴訟人の一部の者のみが上訴した場合
)類似必要的共同訴訟においては、共同訴訟人の一部の者のみが上訴した場合に、他の者を強いて上訴人の地位につける必要はないので、上訴しなかった者は上訴人の地位に就かない(住民訴訟につき最高裁判所 平成9年4月2日 大法廷 判決(平成4年(行ツ)第156号)[5])。彼は、上訴審において生じた費用を負担せず、また、上訴審における期日への呼出しを受けず、40条3項の適用を受けない。つまり、上訴審における当事者ではなくなる。しかし、上訴審で上訴が棄却され、判決が確定すると、その判決の効力は上訴しなかった者にも及び、これにより合一確定の要請は充足される。[23]。なお、上訴を提起しなかった者が上訴審での訴訟行為を望む場合には、それを許してよいとする見解も有力である([井上*1992a4]103頁以下)。

)固有必要的共同訴訟においては、上訴しなかった共同訴訟人も上訴人として訴訟行為をなすことができるのが原則である([梅本*民訴v3]635頁)[32]。40条4項の規定は、このことを前提にしている。もっとも、固有必要的共同訴訟の中にも、共同訴訟人間の結びつきがそれほど強くなく、類似必要的共同訴訟の場合と同様に、上訴なかった共同訴訟人は上訴人の地位に就かないとしてよいものもある。例えば、
)上訴しなかった者を上訴人に位置づけるか否かは、実のところ、それほど重要ではない。後述のように、被告側の共同訴訟人間で利害が対立することは、さまざまな場合に生じうることであり、一審の段階ですでに一方は請求棄却を求め、他方は請求認容を求めることがあり得るからである。重要なことは、次の点である。

合一確定の要請と上訴審
固有必要的共同訴訟において、原審が合一確定の必要があることを見逃して、共同訴訟人のうちのある者と他の者とについて内容が異なる判決をした場合には、誰が上訴を提起したかにかかわらず、上訴審は、判決の合一確定を実現するために、職権で、原判決を是正することができる。共同訴訟人の1人が上訴を提起し、他の者は提起しなかった場合に、後者に不利に変更することも許される(後者が上訴人の地位に就くとすれば、不利益変更禁止原則に抵触する措置となるが、その原則よりも、合一確定の要請が優先する)。

最高裁判所 平成22年3月16日 第3小法廷 判決(平成20年(オ)第999号)が、上記のことを「相続人の地位を有しないことの確認請求」について認め、次のように説示した:「原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができる」。


同判決は、さらに進んで、その事件では、乙と丙とが共通の訴訟代理人によって代理されていたことも考慮して、原判決破棄の裁判をするにもかかわらず、「民訴法319条並びに同法313条及び297条により上告審の訴訟手続に準用される同法140条の規定の趣旨に照らし,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない」とした。敷衍して言えば、実体法上の判断の不備を補正するのではなく、原審でなされた実体法上の判断を前提にして、職権でなすべき手続上の不備の是正(合一確定の実現)すぎないからである、ということになろう。

3.4 必要的共同訴訟人間の利害の対立と手続からの離脱

固有必要的共同訴訟人間の利害の対立
固有必要的共同訴訟においては、共同訴訟人が利害を共通にすることが多いが、利害あるいは主張が対立する場合もある。その場合には、事実上、三面訴訟ないし多面訴訟となる([兼子*1951a]185頁、[谷口*1970a]55頁以下)。例:
このような場合には、訴えの取下げや請求の放棄・認諾の場面を除けば、各当事者が原告であるか被告であるかは重要ではなく、当事者として攻撃防御方法を提出し、判決の名宛人となり、判決の既判力を受けることが重要である[28]。

共同訴訟人間で利害の対立がある場合でも、40条の規定はそのまま適用される。
 (α)相手方の行為  例えば、第三者が提起する婚姻取消訴訟において夫婦の一方が原告の主張に同調している場合に、相手方はその者が出頭していれば他方が不出頭であっても、準備書面に記載されていないことを主張できる。この結論が共同訴訟人間の利害の対立を無視しているのは確かである。しかし、同様に多面訴訟である独立当事者参加訴訟の場合に、47条4項が40条2項を準用しており、法律は、利害が対立する場合でも、審理を迅速に進めることを重視して、利害の相対立する者の一方に対する訴訟行為は他方にも効力が及ぶことにしたと考えることができる。もっとも、159条3項により準用される同条1項本文の適用には慎重であってよく、ただし書の要件が満たされていないかを積極的に調査すべきであろう。
 (β)共同訴訟人の一人による上訴  共同訴訟人間の利害の対立といっても、明瞭でない場合があることを考慮すると、できるだけ統一的な処理をするのがよく、また形式上の問題であるので、原則として上訴人の地位に就くとするのが簡明である。

固有必要的共同訴訟人の手続からの離脱
各当事者は、他から牽制されることなく訴訟を追行することを望む場合がある一方で、当該訴訟の結果に関心を持たず、他の当事者の訴訟追行に委ねる場合もある。その場合には、審理の単純化のために、独立当事者参加の脱退に準じて、彼が訴訟手続から離脱[38]することを許すべきである。離脱の効果は、次のようになる。
類似必要的共同訴訟の場合
類似必要的共同訴訟では、主として原告側が共同訴訟人になり、自らの意思で原告になったのである限り、共同訴訟人間に利害の対立が生ずることはない。もちろん、特殊な状況下において、共同訴訟人間に利害の対立が生じ、上訴を提起しない共同訴訟人が上訴棄却を求めることに利益を有するという場合もありえないわけではない。その場合には、その限りで、固有必要的共同訴訟について述べたことがおおむね妥当する。しかし、そのような場合を具体的に想定することは困難である。

3.5 固有必要的兵藤訴訟の判決と既判力

甲乙丙が共同相続人である場合に、甲が乙に相続欠格事由があると主張して、乙と丙を共同被告にして、「乙が相続人の地位を有しないこと」の確認請求の訴えを提起した場合(最判 平成22の事案)に、外形的に存在するのは、甲乙間の請求と甲丙間の請求のみであり、乙丙間には、請求は存在しない。したがって、判決の既判力は、甲乙間と甲丙間にのみ及び、乙丙間には及ばないことになる。しかし、だからといって、請求認容判決の確定後に、乙が 丙に対して、乙が相続人の地位を有することを主張すること許されるべきでない。 そして、丙が甲と共同原告になってこの訴えを提起すれば、判決の既判力が乙丙間でも生ずることを考慮すると、固有必要的共同訴訟の判決の既判力は、明文の規定がない場合でも、法律関係の合一確定に必要な範囲で、原告間にも被告間にも及ぶとしてよいであろう(既判力が及ぶとせずに、「合一確定の要請に基づく拘束力」が及ぶとすることも考えられるが、大差はないであろう。ここでは、法律構成の問題には立ち入らないことにする)。

仮に最判 平成22の事案において、上訴が提起されることなく原判決が確定した場合には、合一確定が害されることになり、それは、338条1項10号の再審事由と同等の問題を生じさせるので、同号の類推適用により、再審の訴えにより判決の是正を求めることができると解すべきであろう(管轄裁判所は、340条1項により、原判決をした裁判所である)。

3.6 共同訴訟の形態の多様化・流動化

民訴法は、2当事者対立訴訟の一方または他方に複数の者が登場する訴訟形態として、通常共同訴訟と必要的共同訴訟を用意している。しかし、この二つの類型だけで、社会に発生する多様な紛争に対応できるかという問題がある。この点についてさまざまな見解があるが[13]、ここでは、次の見解の存在を指摘してするにとどめておこう。()紛争の個別相対的解決を基本とする民事訴訟において、固有必要的共同訴訟の範囲を拡張するのは適当ではなく、通常共同訴訟を出発点にして、訴訟指揮等により適切に対応すればよいとする立場。現在の判例の立場であり、また、多数説と言えよう。()これと対照的に、アメリカ法の影響の下に、紛争の整合的解決の範囲を拡張するために、共同で訴訟をすべき範囲を拡張しつつ、当事者が欠けた場合に柔軟に対応しようとする立場[31]。()上記の2つと立場と排斥関係にあるわけではないが、中間的な共同訴訟形態として、準必要的共同訴訟を案出する見解もある[30]。また、()通常共同訴訟人独立の原則を見直して、共同訴訟人間の主張共通も認める見解もある([新堂*1991a2]69頁 )。結果的に、通常共同訴訟と必要的共同訴訟とがこれまでよりも接近する。

4 共同所有関係と必要的共同訴訟


共同所有関係は、総有、合有、共有の3つに分かれる。

4.1 総有関係

入会地(民法263条) のように、法人でない団体(地縁共同体・血縁共同体など)に属する財産に関し、団体(すなわち構成員全体)が管理・処分権を有しつつ、各構成員が団体の規約に従い目的物の使用・収益権を有する共同所有関係を総有という。

総有財産に関する訴訟については、総有団体が代表者の定めのある社団に該当すれば、社団自体が当事者となりうる(29条最判平成6年5月31日民集48巻4号1065頁)。そうでなければ、構成員全員を当事者とする固有必要的共同訴訟になるのが原則である。入会権につき、最判昭和41.11.25民集20-9-1921がある。ただし、民訴30条により代表者等が選定当事者となる余地はある。

4.2 合有関係

合有は、一定の共同目的を有する者の間で目的達成に供される財産について認められる共同所有関係である[55]。共同所有者間にある法律関係(組合契約等)から切り離して持分を処分できない点で、共有と異なる。組合の財産が代表例である(民法上は、合有は共有の特殊形態であるとされている。組合財産について言えば、民法667条以下の特則の適用を受ける点で通常の共有と異なるが、特則のおかれていない限り民法249条以下の適用をうける。最高裁判所 昭和33年7月22日 第3小法廷 判決(昭和31年(オ)第103号)参照)。

合有財産は共同目的に供されている財産であるために、それに関する訴訟は、持分を有する者全員が共同訴訟人にならなければならないのが原則である(多数説。[福永*1975b]44頁以下参照)。ただし、29条の適用や訴訟担当の余地もあり、また、業務執行者を法令による訴訟代理人と見る見解([福永*1975b]46頁以下)もある。

もっとも、組合に関しては、民法252条ただし書の適用を肯定すれば、各組合員は保存行為に該当する請求につき、単独で当事者適格を有する(相手方が勝訴した場合に、民法676条を考慮すると、相手方は、組合員全員に対して勝訴しない限り、勝訴の効果を相手方の持分の範囲でも主張することができないと解すべきである)。組合債務の履行を求める訴訟については、それが不可分債務と解される場合に、各当事者は当事者適格を有するが、相手方は組合員全員に対する債務名義を取得しないと組合財産に対して執行できない。

4.3 共有

共有者の側が原告である場合と被告である場合とに分けて見てみよう[18]。

共有者が第三者に対して提起する訴え
ここでは、共有持分と共有権の区別が重要となる。まず、実体法の議論として、(α) 共有権は、共有者全体に属する1個の所有権を意味し、各共有者は、その一部を共有持分として有するとの見解と、(β)共有権の概念を前提にせずに、各共有者が一定の割合で相互に制限された一個の所有権を有し、その総和が単独所有の場合の一個の所有権と同じであると見る見解とが対立している。そして、判例は、(α)を前提にして、訴訟法の議論として、(γ)共有持分に基づく訴えは、各共有者が単独で提起できるが、共有権に基づく訴えは、共有者全員が原告になる必要があるとの原則を認める。これに対しては、共有権という概念を認める必要があるのか、あるいはこのような権利を訴訟物にする必要があるのかという批判を投げかけ、(δ)できるだけ持分権に関する訴訟に分解すべきであるとの見解も有力である([福永*1975b]18頁以下)。後者の見解が正当と思われるが、ここでは判例の立場を前提にして、請求類型ごとにみてみよう。

() 第三者に対する共有物全体の引渡・明渡請求権は、裁判外では、共有権に基づく場合でも共有持分に基づく場合でも、各共有者が単独で行使することができる(共有権については保存行為であることを理由に単独行使ができ(民法252条ただし書)、共有持分については請求権の不可分性により目的物全体の引渡しを求めることができる(民法428条参照))。これに応じて、各共有者は、単独で訴えを提起することができる。ただし、各共有者は、目的物を処分する権利を有さないので、ある共有者が受けた敗訴判決の既判力は、他の共有者に及ばないとするのが適当である。第三者は、共有者の数だけ訴訟をさせられる可能性がある。最後の一人以外に勝訴しても、最後の一人に敗訴した場合に、第三者は目的物の引渡し・明渡しの強制執行を受けることになる。この不利益を軽減するために、他の共有者との関係でも紛争を解決することを望む第三者(訴訟の相手方)のために、他の共有者を訴訟に引き込む方法を用意しておくべきである[12][22]。

() 所有権移転登記の抹消登記請求  共有者の一人がその持分に基づいてその不動産について登記簿上の所有名義人に対してその登記の抹消を求めることは、保存行為に属するから、単独で所有権移転登記の全部の抹消を求めることができる(最判昭和31・5・10民集10-5-487)。共有者の一人の持分について、実体法上の原因なしに第三者への持分移転登記がなされた場合には、当該共有者のみならず、他の共有者も自己の持分権に基づいてその登記の抹消を求めることができる(最高裁判所 平成15年7月11日 第2小法廷 判決(平成13年(受)第320号))。いずれの場合にも、一人の共有者が受けた敗訴判決の効力は、他の共有者には及ばない。共有者の一人が勝訴することにより移転登記が抹消されると、他の共有者もその利益を受けることになるが、これは執行(広義の執行)により得られる事実上の利益であり、勝訴判決の効力が他の共有者に及ぶと表現されるべきものではない。

() 土地が共有持分権に属することの確認請求  共有持分権の及ぶ範囲は、共有地の全部にわたるのであるから、各共有者は、その持分権にもとづき、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、単独で、係争地が自己の共有持分権に属することの確認を訴求することができる(最判昭和40年5月20日民集19-4-859頁)。

() 共有権そのものを対外的に主張する請求は、画一的処理の必要性から、共有者全員が原告にならなければならない。次の請求がこれにあたる。
第三者が共有者に対して提起する訴え
この場合には、第三者は共有者全員を被告にする必要はなく、争う者のみを個別的に訴えてもよく、共同して訴えた場合でも、原則として通常共同訴訟であるとするのが現在の最高裁判例の立場である[26]。

() 通常共同訴訟とされた事例として、次のものがある。
() もっとも、必要的共同訴訟とされた事例として、次のものがある。
被告とならなかった共有者の執行段階での保護
被告が共有状態にあると主張している物の引渡請求訴訟あるいは収去請求訴訟は固有必要的共同訴訟ではないとの立場に立つと、例えば、Xの所有地上にあるY1・Y2の共有建物について、XがY1のみを被告にして建物収去・土地明渡しの訴えを提起して勝訴判決を得た場合に、この判決のみでは強制執行をすることができないとすることにより、Y2の手続上の利益を擁護する必要がある[25]。この点について、次のような3つの段階でのチェックが考えられる。
  1. 執行文付与段階でチェック  強制執行は、原則として、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施されるが(民執法25条本文)、建物が登記簿上Y1・Y2の共有名義である場合には、Y1に対する債務名義のみならず、Y2に対する債務名義またはY2の同意書がない限り、執行文を付与することができないとすること。
  2. 執行開始段階でチェック  執行官は、建物が登記簿上Y1・Y2の共有名義である場合には、Y2に対する債務名義またはY2の同意書がなければ執行することができないとすること。
  3. 他の共有者からの第三者異議の訴え(民執38条)によりチェック  不可分債務論により各共有者が建物全体について収去義務を負っていることを前提にすると、共有者の一人に対する債務名義がある以上、その者に対する債務名義のみで強制執行は開始されうると考える余地がある。その考えを前提にした場合でも、通常は、実際に収去作業を始める前に占有者が建物から自主的に退去するだけの時間をおいて明渡の催告がなされるので(民執法168条の2第1項)、その間に他の共有者は第三者異議の訴えを提起して執行を阻止できる。

最判昭和43・3・15民集22-3-607は、基本的に、Bの立場と思われるが、Bのチェックがうまく作用しなければ、第三者異議の訴えにより補完的にチェックすることになる。なお、このような執行段階でのチェックでは他の共有者の利益を十分に保護することはできないので、共有に属することを訴訟の段階で当事者適格の問題に反映させ、共有者全員が被告とならない限り執行力を伴う債務名義を作出できないとすべきであるとの見解もある([五十部*1966a]189頁以下)。Cを最初で最後のチェック段階とすることは、債務名義上の債務者となっていない共有者の利益が害されやすいので、採用できない。

判決が各共有者ごとに異なった場合の処理
各共有者が単独で当事者適格を有するとした場合には、共有者の一部の者が勝訴し他の者が敗訴した場合の処理が問題となる(固有必要的共同訴訟とする立場は、こうした問題が生ずることを未然に防ごうとするものである)。明快な解決が得られるわけではなく、思いつくままに記すにすぎないので、この項目は、頭の体操程度に考え、適宜読み飛ばしてほしい。

() 登記簿上の共有者AとBに対して、第三者Cが不動産全体の所有権を主張して共有持分移転登記の訴えを提起し、Aに対しては勝訴したが、Bに対しては敗訴した場合。  この場合には、Aの持分についてのみCへの移転登記がなされることを認めてよい。登記簿上は、BとCとが共有者になる。この関係は、登記簿外の権利関係(不動産の使用収益等)でも尊重されるべきであろう。

 () 土地の所有者Cが地上建物の共有者AとBに対して、建物収去土地明渡請求ならびに明渡しまでの地代相当額の損害賠償請求の訴えを提起し、Aに対しては勝訴したが、Bに対しては敗訴した場合。  Cは、建物収去の強制執行ができず、Aもその建物の使用収益を継続することができる。問題は、Aに対する損害賠償請求の取扱いである。判決通りに、建物が収去されるまでAが賠償金を払い続けなければならないというのも、一つの解決である。しかし、落ち着きが悪い。A単独では建物を収去できないのであるから、Aには賠償義務が当初からないとするか、あるいは、CのBに対する請求棄却判決が確定した時点でAの賠償義務は消滅するとすることが考えられる。

 () AとBとが共有者として登記されている土地について、Cが単独の所有者であるとして、Aに対して所有権確認の訴えを提起し、Cの請求を認容する判決が確定した後に、CがBに対して同様な訴えを提起したが、今度は、その土地はA・Bの共有に属するとの理由で、Cの請求が棄却された場合に、この土地について共有物分割訴訟の当事者となることができるのは、誰か[9]。裁判所が、その土地を売却して代金を共有者間で分配すべきであるとしたとき、その売却代金は、最終的に、誰にどのように帰属させるのがよいか。次の()と同様に未解決の問題である。いくつかの選択肢が考えられる。例:
() 共同相続人甲、乙、丙のうち甲と乙との間において、ある土地につき甲の所有権確認請求を棄却する旨の判決が確定しても、この判決は、甲乙間において右土地につき甲の所有権の不存在を既判力をもって確定するにとどまり、甲が相続人の地位を有することや右土地が被相続人の遺産に属することを否定するものではないから、甲は、遺産確認の訴えの原告適格を失わず、共同相続人全員の間で右土地の遺産帰属性につき合一確定を求める利益を有する(最判平成9年3月14日・判タ937号104頁)。では、その土地について遺産確認請求を認容する判決が確定した場合には、どうなるであろうか。前訴の判決により、甲はその土地について共有持分を有しないことも確定している(最判 平成9年3月14日・判タ937号104頁)。そして、甲に訴えの利益を認める以上、その土地が遺産に属することが確定することにより、甲に何らかの利益が生ずるのでなければならない。その利益が具体的に何であるとするのかは、難しい問題である。次のような解決が考えられる([高橋*重点講義・上]651頁以下参照)。
  1. 前訴判決は、遺産分割手続外での甲の所有権の主張を禁止するに過ぎず、遺産分割手続において甲がその土地の分割を受けることを妨げる効力までは有せず、分割の協議あるいは審判は口頭弁論終結後の事由となる。
  2. 甲は、その土地について権利を主張することはもはやできないが、それ以外の遺産からより多くの分割を得ることができる。  しかし、その土地が唯一の遺産である場合には、意味のある解決とならない。
  3. 甲の法定相続分(持分1/3)は、前訴判決の論理的な帰結として、乙に移転する。  しかし、甲は丙との関係ではなおその土地について法定相続分相当の持分を主張することができるのであるから、行き過ぎである。また、これでは、その土地について遺産確認訴訟を提起する利益を甲は有しない。
  4. 乙は、その土地につき丙と平等な持分(1/2)を有するが、甲は丙に対して丙の持分が1/3にすぎないことを主張することができるから、残りの1/6が遺産分割手続における甲の取り分となる。

40条1項・2項の部分的類推適用の可能性
以上のような錯雑とした問題が生ずるのを回避するために判決の合一確定が望ましい。したがって、共有者が共同訴訟人になっている限りで、40条1項・2項の類推適用を認めてよいであろう[21]。ただ、共同訴訟人の一人が、請求の認諾・放棄、あるいは訴えの取下げや上訴の取下げにより訴訟から離脱しようとするとき、それを禁止するほどに合一確定の要請が強いわけではないから、それは認めざるを得ない。したがって、40条1項の類推適用といっても、その範囲は必ずしも広くない(各共同訴訟に有利な方向で主張共通が認められことが中心となる)。

他の共有者による重複起訴
共有者の一人が提起した訴訟の係属中に、他の共有者が同じ被告に同趣旨の訴えを別訴として提起することは、被告にとって負担である。別訴提起を正当化する特段の事情がない限り、第2訴訟は第1訴訟と共に併合審理されることが望ましい。そのための方法としては、弁論の併合(152条)が考えられる[41]。受訴裁判所が異なる場合には、17条により移送する。 40条の類推適用を否定する立場では、問題のない解釈論と言えよう。しかし、論理的合一確定のために40条1項の部分的類適用を肯定する立場に立った場合には、弁論併合時点で相手方の主張を共有者の一人が自白していても、他の者が自白していなければ、その者は否認することができ、この否認により先になされた自白は効力を失うとすべきである。そうなると弁論の併合は相手方にとって必ずしも有利ではないので、相手方の同意が必要であるとすべきことになる。

共有物分割訴訟
共有者が3人以上の場合に、この訴訟が固有必要的共同訴訟に当たることについては争いがない。共同訴訟人間にも利害の対立がある場合には、事実上の多面訴訟となる。

筆界確定訴訟
土地の所有権の対象となる区画を筆と言い、筆の境界を筆界と呼ぶが、筆界の確定を求める訴訟は、隣接する土地の一方または双方が数名の共有に属する場合には、固有必要的共同訴訟となる(最高裁判所 昭和46年12月9日 第1小法廷 判決(昭和44年(オ)第279号)・民集25巻9号1457頁)。共有者ごとに筆界線が異なるのでは、法律関係が混乱するからである。土地の共有者のうちに筆界確定の訴えを提起することに同調しない者がいる場合、その余の共有者は、隣接地の所有者と共にその者を被告にして訴えを提起することができる(最高裁判所 平成11年11月9日 第3小法廷 判決(平成9年(オ)第873号))。既判力は、原告・被告間のみならず、本来の被告と訴え提起に同調しなかったために被告とされた共有者間にも及ぶと解すべきである(固有必要的共同訴訟であるから、当事者全員が判決に拘束されると説明してよいであろう)。
AとBは、Cから一つの不動産を共同して買い受け、共有者となる予定であった。しかし、Cが所有権移転登記に応じないので、Aが単独でCに対して、所有権移転登記の訴えを提起した。これに対して、CはAの持分は2分の1であり、訴えの利益はその範囲でのみ存在し、Bの持分についての所有権移転登記請求には訴えの利益がないと主張した。裁判所は、どうすべきか。

4.4 特許権等の共有

特許権は登録によって発生する(特許66条1項)。特許を受ける権利が共有に係る場合には、共有者全員が共同で出願しなければならない(特許38条。共同出願)。発明の実施は各共有者が単独ですることができるが、持分の譲渡や専用実施権・通常実施権の許諾には他の共有者の同意が必要である(特許73条。共同行使)。第三者が共有者を相手に審判を請求するときは、全員を相手にしなければならない(特許132条2項)。のみならず、特許出願に対して拒絶査定がなされた場合等に、権利者が審判を請求する場合にも、共有者全員が共同で審判を請求しなければならないとされている(特許132条3項。共同審判)。そして、共有者の一人について手続の中断・中止事由が生じた場合には、その効力は全員に及ぶ(特許132条4項)。商標権や実用新案権などについても、おおむね同様な規律が規定されている(実用新案11条1項・14条1項・19条3項・41条、意匠15条1項・20条1項・36条・52条、商標18条1項・35条・43条の6第3項・56条1項[49])。 問題は、特許庁において出願人または特許権者等に不利な審決等がなされた場合に、その審決等の取消訴訟を共有者の一人が単独で提起することができるかである。見解は分かれるが、最高裁は、共同提訴が必要な場合が一定範囲に限られることを明らかにしつつある。大まかに言えば、特許権等の工業所有権が設定登録により発生することを重視して、()その前の段階と、()その後の段階とで区別し、前者の段階では共同提訴を要求し、後者の段階では共同提訴が必要になる場合を制限しているように見える。

 ()実用新案登録拒絶査定を肯認する審決の取消訴訟は、共有者全員で提起しなければならない。[A1最高裁判所 昭和36年8月31日 第1小法廷 判決(昭和35年(オ)第684号)、[A2最判昭和55年1月18日判時956号50頁 、[A3最判平成7年3月7日民集49巻3号944頁)。

 ()登録がなされた後で商標登録無効審決がなされた場合、あるいは特許取消決定がなされた場合には、各共有者は単独で審決取消訴訟等を提起できる。商標権つき、[B1最高裁判所 平成14年2月22日 第2小法廷 判決(平成13年(行ヒ)第142号)及び[B2最高裁判所 平成14年2月28日 第1小法廷 判決(平成13年(行ヒ)第12号)がある。特許権につき、[B3最高裁判所 平成14年3月25日 第2小法廷 判決(平成13年(行ヒ)第154号)がある。

最判B1は、(b)の結論を次のように理由付けた[47]
  1. 保存行為  取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ保存行為に当たる。
  2. 共有者不明の場合の問題  無効審判は、商標権の消滅後においても請求することができるとされており(商標法46条2項)、無効審決取消訴訟について共同提訴を要求すると、商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態に陥った場合等に不当な結果が生じやすい。
  3. 合一確定の要請の充足  単独提訴を認めても、合一確定の要請に反する事態は生じない。なぜら、審決取消請求認容判決が確定した場合には、その取消しの効力は他の共有者にも及び(行訴法32条1項)、再度、特許庁で共有者全員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許181条2項)。他方、その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には、他の共有者の出訴期間の満了により、無効審決が確定し、権利は初めから存在しなかったものとみなされることになる(商標法46条の2)。さらに,各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべきであるから,併合のうえ審理・裁判されることになり,合一確定の要請は充たされる。

最判[B3]は、上記の1と3の理由付けに次の説明を付加した。
  1. 特許法132条3項の「特許権の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するとき」とは,特許権の存続期間の延長登録の拒絶査定に対する不服の審判(同法67条の3第1項,121条)や訂正の審判(同法126条)等の場合を想定しているのであって,一般的に,特許権の共有の場合に常に共有者の全員が共同して行動しなければならないことまで予定しているものとは解されない。

最判B1や[B3]の結論自体は、知的財産権の保護の道を広げるものとして、支持できる。しかし、(a)は(b)と事案を異にするとしている点は、疑問である。(a)の場合にも、単独提訴を認めるべきである。特許に即して言えば、
  1. 共有の理論からすれば、特許権についてと同様に、特許を受ける権利についても、その保存行為は各共有者の単独行為が許されてよい(前掲最最判平成7年3月7日により破棄された東京高判平成6年1月27日民集49巻3号961頁が、実用新案登録の拒絶査定の審決の取消訴訟について、既にこの論拠を用いて単独提訴を肯定している)。
  2. 特許を受ける権利が共有に係る場合に、特許法は、共同出願、共同審判を要求しているが(38条、132条3項)、共同訴訟まで要求する明文の規定はない。共同出願を要求された趣旨は、公開すべき発明であるか否か、特許を受けるほどに完成しているかの判断を共有者の一致した意思に委ねるということに尽きるのではなかろうか[48]。この意思は、共同出願によりすでに表明されており、さらに拒絶査定に対する共同の審判請求により強固に表明されている。審決取消訴訟についてまで共同行為を要求する規定はないのであるから、保存行為の論理に従って、単独提訴を認めるべきであろう。
  3. 特許出願拒絶査定を肯認する審決に対する取消訴訟について単独提訴を認めても法律関係が混乱するわけではない。取消請求が認容されれば、審判手続が再開され(特許181条2項)、棄却されれば、特許が認められないことになるだけである。共有者が各別に取消訴訟を提起した場合には、弁論を併合して類似必要的共同訴訟として扱えば足りる。問題状況は、特許取消決定の取消請求訴訟の場合と基本的に変わらない。
  4. 特許を受ける権利の共有は、技術提携の結果として生じたり、あるいは信用獲得の目的で生ずる(特許33条2項が特許を受ける権利の質入れを否定していることに注意)。したがって、特許出願や審判請求までは共同歩調をとっても、取消訴訟にまでは踏み込めない共有者が生ずるのはやむ得ない。その場合に、共同提訴でないことを理由に取消訴訟を却下するのでは、特許を受ける権利の経済的利用が阻害される。

なお、最判[B3]は、共同審判の必要な範囲と共同提訴の必要な範囲とを一致させつつ、両者の適用範囲を限定しようとするものであるが、これに対して、私見は、共有者が能動的当事者になる場合に、共同審判の必要な範囲よりも共同提訴の必要な範囲を減縮させようとするものである。

5 主観的予備的併合等・同時審判申出共同訴訟


5.1 意義と許容性

主観的予備的併合に関する文献

意義
訴えの主観的予備的併合とは、数人の請求または数人に対する請求が論理上両立し得ない関係にある場合に、それらの請求に順位をつけて、それらを併合することをいう。例:

  1. 代理人と契約したが無権代理の疑いがある場合に、第一次的に本人に訴求し、無権代理を理由にこれが棄却されるときに備えて、第二次的に代理人に対する請求(民法117条)も併合提起する。
  2. XがY2から金を借り、担保のために自己の土地についてY2への所有権移転登記をなした。Xが弁済の提供をしたが、Y2が土地を返さないので、XはY2に対し所有権移転登記を求めた。Y2は訴訟中に本件土地をY1に譲渡し、その登記手続もした。そこで、Xは、Y1に対して訴訟引受の申立てをして移転登記手続を求めると共に、予備的にY2に対し、もしY1に対する請求が認容されなかったときはY2がY1に本件土地を譲渡したことによる損害の賠償を訴求した。(最判昭和43・3・8民集22-3-551頁の事案)

許容性
このような併合が許されるか否かについては、旧法下において、激しい議論の対立があった。

)否定説  学説の一部および一つの最高裁判決を含む判例の一部は、否定説をとる(最判昭和43・3・8民集22-3-551頁。ただし、主観的予備的併合を不適法と却下した原審判決を独自の理由を示すことなしに支持したに過ぎない)。その主たる論拠は、次の点にある([中田*1972a3]参照)。
)肯定説  これに対して、旧法下の末期の時点では、多くの学説がこの併合形態の実際上の必要性・効用を承認して、この併合形態の問題点の克服に努めた。学説上は肯定説が有力であった。

)順位付単純併合説  否定説が指摘する問題点を考慮して、この併合形態における申立人の意思の合理的解釈として、主位的被告に対する請求が認容されれば予備的被告に対する請求は不要であるとの趣旨の申立てと解するのは適当ではなく、むしろ、単に認容判決を受ける順序を指定したにとどまり、したがって主位的被告に対する請求を認容する場合には、これと両立し得ない予備的被告に対する請求を棄却しなければならないとの見解が主張された。この立場にあっては、この併合形態は、客観的予備的併合との差異を明確にするために、順位付単純併合(ないし順位的併合)と呼ばれることになる。裁判所は、原告の付した順位に拘束され、その順に請求認容の可能性を判断すべきである。

現行法上、本来の意味(主位請求が認容されれば予備請求については審判を求めないという意味)での主観的予備的併合は、許されない([高見*2001a]700頁以下)。他方、順位付単純併合は許されてもよいが、それにどのような意義を与えるかは、問題である。同時審判申出訴訟を見てから考えることにしよう。

選択的単純併合
なお、不両立の関係にある複数の請求のうちのいずれかの請求の認容を求めるという形で請求を単純併合することも肯定してよい。これは、請求原因事実の主張のレベルで主張に矛盾が生じないように選択的に主張したことに応じて請求レベルで表明される意思にすぎない。選択的に併合された請求のうちの一つのみが認容され、他は棄却されるのは、原告の意思に基づくというより、併合された請求が不両立の関係にあること自体に基づく。

5.2 同時審判申出共同訴訟(41条

文献

意 義
現行法は、不両立の関係にある複数被告に対する請求の併合審判を肯定し、原告の申出がある場合には弁論の分離は許されないとした(41条。同時審判申出共同訴訟、あるいは同時審判申出訴訟)。これらの請求に原告が順位を付した場合に、それを予備的併合とみるのか、順位的併合(順位付単純併合)とみるべきかは、理論に委ねられていると考えるべきであるが、原則として、同時審判の申出が付された順位付併合と扱うべきである([河野*1997a]165頁)。なお、この申出があっても、原告が請求間に順位を付けなければ、純然たる単純併合([徳田*2000a]114頁)ないし選択的単純併合となる。

要 件
41条は、共同被告に対する請求が法律上両立しえない場合に適用がある(一方の請求の主要事実の一部が他方の請求の抗弁事実となる場合がこれに該当する)[56]。例:
事実上併存しえないだけの場合には適用がないとされている([中野*1997a]69頁。例:原告を傷害したのが共同被告のいずれかであるという場合、原告の契約の相手方が共同被告のいずれかであるという場合)。しかし、同時審判の申出は、矛盾した理由による二重敗訴を阻止するための制度であるから、その危険がある限り、事実上併存しえないだけの場合にも類推適用を認めるべきであろう。例えば、原告の契約の相手方が共同被告のいずれかである可能性が高く、いずれであるかが重要な争点となっている場合がそうである([高見*2001a]696頁参照)。
Xは、ある建築工事について必要な部材について発せられた注文に応じて、その部材をその工事現場に納入した。Xは、建築工事の請負人Yが買主であると思い、代金支払を求めたところ、Yは「その商品は請負工事代金には入っていないから、買主は施主(請負工事の注文主)のZです。私は、施主がどうしても取り付けてくれと言うので、工事費を無料にして取り付けただけです」と回答してきた。Xは、やむなく、納入した商品が建築工事に使用されていることを確認して、Zに支払を求めると、「その商品は請負代金のなかに含まれるとの約束になっているから、Yに払ってもらってくれ」と言われた。業を煮やしたXは、訴訟で問題を解決することにした。訴訟告知の効力に関する最高裁判所 平成14年1月22日 第3小法廷 判決(平成10年(オ)第512号)判決を考慮すると、YとZとを同時に訴えた方が確実であるとXは思った。同時審判申出が可能になるように請求を構成しなさい。

ヒント:41条は事実上併存しえないだけの場合には適用がないとの見解を前提にしても同時審判申出が可能になるように努力すること[53]。


申出をすることができる者
同時審判の申出をなしうるのは、法文上、原告に限られている。被告からの同時審判の申出は、規定の文言上は認められてない。しかし、次のような見解も有力である:矛盾した理由による二重敗訴の危険は、複数の被告が敗訴するという形ではあるが、被告側にも存在するのであり、同時審判申出制度はこの被告側の不利益にも配慮したものと考えて、被告からの申出を肯定すべきである;たとえそれが解釈論として困難であるとしても、原告が一旦同時審判の申出をした場合には、被告の同時審判の期待を保護するために、その撤回は相当の理由がなければ許されないとすべきである([高見*2001a]699頁)。これに賛成したい。

原告複数の場合への類推適用
41条は、もっぱら共同被告に対して訴えが提起された場合について規定しているが、これは、典型的な場合をあげたにとどまり、複数の原告が一人の被告に対して両立しない訴えを共同して提起する場合にも類推適用してよい([中野=松浦=鈴木*2000a]455頁[井上]、[高見*2001a]695頁)。この場合に、同時審判の申出をなしうる者を被告に限定する見解もあるが([中野=松浦=鈴木*2000a]455頁[井上])、矛盾した理由による二重敗訴の危険は、原告側にも被告側にもあるのであるから、被告のみならず原告もなしうるとすべきである。

なお、原告が訴求債権を譲渡したことを理由に、被告が債権譲受人に対して訴訟引受の申立てをする場合には(51条・50条1項)、41条1項・3項が準用され(50条3項)、同時審判が得られる。その意味において、これは被告からの同時審判申出の特別な類型とみることができる(訴訟引受申立て(=債務者の債権譲受人に対する債務不存在確認請求を含む申立て)に応じて、債権譲受人が給付の訴えを提起し、既存の原告である譲渡人が債権譲渡の有効性を争って訴訟に残存する場合(脱退しない場合)を想定する)。

申出の時期と撤回の時期
同時審判の申出は、訴え提起後でも、控訴審の口頭弁論終結前であれば、いつでも許される(41条2項)。撤回は書面でする(規則19条)。ただし、被告からの同時審判申出は許されないとの見解を前提にする場合には、同時審判がなされることについて利益を有する被告が撤回に異議を述べたときは、相当の理由がなければ撤回は許されないとすべきである。

同時審判の申出の効果
この申出があれば、第一審および控訴審における同時審判が保障される(41条1項・3項)。上告審では、同時審判は保障されないと解されている[46]。

この共同訴訟は、必要的共同訴訟ではないので、共同訴訟人独立の原則が適用される。ただ、矛盾した理由による二重敗訴の回避という制度目的を実現するために必要な範囲で、独立原則に若干の変容を認めるべきである(詳しくは、[高見*2001a]682頁以下参照)。

共同訴訟人の一人に中断事由・中止事由が生じた場合に、中断・中止の効果は他の共同訴訟人には及ばない(40条3項が準用されていない)。しかし、審判分離禁止の効果は持続するので、共同訴訟人の一方とのみ審理を続けることの意味は少なく、原告が同時審判の申出を撤回しないかぎりは、審理は事実上停止することになる([高見*2001a]683頁。なお、[河野*1997a]164頁は、中断事由・中止事由の発生を知った原告が望む場合には、他方当事者についても手続の進行を停止することが望ましいとする)。もっとも、中断が短期間で解消する見込みがある場合には、中断事由のない当事者との関係で訴訟を進行させることはありえよう(中断解消後に、同時審判の実を挙げるために、審理経過を中断事由のあった当事者に報告すべきである)。

一部判決は、許されない。同時審判の申出がなされた全部の請求について、一個の判決をすべきである。一方の共同訴訟人のみに対する請求の全部又は複数請求の一部について請求の放棄又は訴えの取下げをすることは、許される(請求の全部について放棄又は取下げがなされた場合、あるいはに、同時審判の申出は意味を失う)。

一方の共同訴訟人のみが請求を認諾することは、許される。主位的被告が認諾すれば、予備的被告に対する請求は棄却されるべきであるが、予備的被告が認諾したに止まる場合には、主位的被告に対する訴訟は続行される。これにより、原告が二重に債務名義を得ることが生じうるが、実体法上は二重の利益獲得は許されないのが通常であり、その場合には、一方の債務名義により利益を得たことは、他方に対する債務名義の請求異議事由(民執35条)となる(詳しくは、[高見*2001a]687頁以下参照)。

上訴の効果の及ぶ範囲
同時審判の申出があっても、それだけでは当該訴訟が通常共同訴訟であるという性質を変更することにはならない(通説)。したがって、一方の請求が認容され、他方の請求が棄却された場合に、敗訴の被告のみが控訴すれば、その請求のみが控訴審に移審し、他方の請求についての判決は確定する。それを避けるためには、原告からの控訴が必要となる(原告は控訴の利益を有する)[10]。

第一審で主位的被告に対する請求(主位請求)が認容差、予備的被告に対する請求(予備請求)が棄却された場合について言えば、予備請求を棄却する判決に対する原告の控訴は、主張の一貫性を保つために、(α)主位請求認容判決に対して主位的被告が控訴を提起しないこと、または(β)その控訴が認容されないことを解除条件とする控訴となる。実際には、敗訴の主位的被告からの控訴がなされてから原告が予備請求棄却判決について控訴を提起したのでは間に合わない場合もあるので、とりあえず原告は控訴を提起し、敗訴の主位的被告が控訴を提起すれば、その段階で敗訴被告の控訴棄却を第一次的に求め、予備的に自己の敗訴部分(予備請求棄却判決)の取消しを求めることになろう(敗訴被告が控訴を提起しなければ、控訴は解除条件成就により効力を失う。控訴提起の申立て手数料は、差し当たり納付せずにおいて、主位的被告が控訴を提起した段階で追納するという便宜的取扱いを認めるべきである)。

ただ、主位的被告が控訴を提起するか否か不明な段階で原告が予備的に控訴提起の書面を提出しなければならないというのは不便である。更に解釈論を前進させると、≪主位的被告が控訴を提起すれば、予備的請求棄却部分についても判決の確定が一時的に遮断され、その控訴状が原告に送達された時から2週間以内であれば、原告は予備請求棄却判決に対してなお控訴を提起することができる≫とするのが便宜にかなう。原告が順位を付けて不両立の請求を併合することを許したことの一環として、これを認めてよいように思われる[6]。
まとめ──順位付併合の効果
現行法の下で、複数の被告に対する不両立の関係にある請求に順位を付して同時審判の申出をした場合に、この請求併合に認められるのが好ましい効果として、次のことがある。
この内で、1は同時審判の申出の効果でもあり、2は同時審判がなされることにより実際上達成できるが、順位付けの効果としても認めるべきであろう。3も、順位付けの効果ではあるが、裁判所が不両立の関係にある複数の請求の全部について判断しなければならない以上、それほど大きな意味があることではない。4aは、順位付けの効果となる(注[10]も参照)。4bが認められるかは、見解が分かれるが、仮に肯定説に立てば、それを同時審判申出の効果として認めるのか、それとも、単に同時審判の申出をしただけでは不十分で、順位を付して同時審判の申出をしたことの効果として認めるかの選択肢が出てくる。後者の選択肢でよいであろう。

被告が第三者に対して請求する場合への類推適用
被告が敗訴判決を受ける場合にそなえて、被告が第三者に対して有することになる権利(求償権等)を主張して第三者に対して訴えを提起し、両訴訟が併合審理されるに至った場合には、被告が矛盾した理由により二重に敗訴することがないように、41条を類推適用して、被告は弁論の不分離を申し出ることができるとすべきである(後述参照)。

6 主観的追加的併合


意義
係属中の訴訟手続に第三者が追加されることによって生ずる共同訴訟を追加的共同訴訟ないし主観的追加的併合という(古典的論文として、[山木戸*1961a5]参照)。これには、次の態様がある。
  1. 在来当事者による追加  係属中の訴訟の当事者(原告または被告)が第三者に対して提起した訴えが係属中の訴訟に併合される場合。明文の規定で許容されている例として、訴訟引受の申立て(50条・51条)、再生債務者の監督委員が提起する否認訴訟において受益者が併合提起する再生債務者を被告とする訴え(民事再生法138条3項)が典型例である。
  2. 第三者による追加  第三者が係属中の訴訟の当事者の一方に対して提起した訴えが係属中の訴訟に併合される場合。明文の規定で許容されている例として、承継参加(49条・51条)、共同訴訟参加(52条)がある。

明文の許容規定がない場合に上記の追加が許容されるかについては、議論が分かれている。以下では、「在来当事者による追加」をついて説明しよう。次のような類型・事例が考えられる。
)原告が提起する場合
)被告が提起する場合(この場合の訴えは、第三者に対する反訴と位置づけることもできる)
併合の方法−当然併合の可否
主観的追加的併合は、一定の条件の下で当事者が新訴を提起すればそれが従前の訴訟と当然に併合されて審理されるという場合に、最も威力を発揮し、またそれを一定の要件の下で認めるのが主観的追加的併合訴訟論の本来の狙いである[44]。しかし、最判昭和62・7・17日民集41-5-1402頁が、この当然の併合を否定し、新たな訴えを別訴として提起し、その訴訟係属後に裁判所が種々の事情を考慮の上弁論を併合すべきか否かを決定すべきであるとした[40](もちろん明文の規定により当然併合が認められる場合は別である)。当然の併合は否定されても、裁判所は弁論を併合するのが適切であると判断すれば併合することができ、当事者は職権の発動を求めてその旨の申立てをすることができるのであるから、その点ではそれほど大きな不都合はない。

関連する問題点
裁判所の弁論併合決定により弁論が併合される場合(152条)について、次の関連問題がある。
  1. 新被告と従前の訴訟状態との関係  新被告は、従前の訴訟状態に拘束されないのが原則である([山木戸*1961a5]84頁)。なお、訴訟引受の決定により併合審理がなされる場合に、新当事者は従前の訴訟状態に拘束される(生成中の既判力が及ぶ)との立場に立てば、この点は、2つの併合形式の間の重要な相違点となることに注意すべきである。[54]
  2. 7条の適用の有無  決定により併合されることを予定して7条の類推適用を認めてよい。ただし、直ちに併合されない場合には、応訴管轄が発生しないかぎり、管轄違いとして移送することになる。
  3. 訴え提起の手数料  原告が第三者に対する請求を追加する場合に、それが在来請求と利益を共通にしているときに申立手数料の追加支払は不要となるかが問題となる(例えば、連帯債務者の一人に対する訴訟に別の連帯債務者を追加する場合)。裁判所が決定により弁論を併合するためには、新訴が適法に訴訟係属することが前提となり、そのためには、訴え提起の手数料が納付されなければならないのが本来である[43]。
  4. 41条の類推適用  債権者Xから訴えられた受託保証人Yが、主債務者Zに対して求償請求の訴えを将来給付の訴えとして提起することが許されるかは見解の分かれるところであるが、肯定してよい。両者が併合審理される場合には、XのYに対する保証債務履行請求は認容されるのに、YのZに対する求償請求は主債務が存在しないという理由で棄却されることがないように、41条の類推適用を認めるべきである。この場合には、同時審判の申立てをなすことに利益を有するのは、Yである。

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Author: 栗田隆
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2000年4月25日−2008年11月8日