関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法講義「複数当事者訴訟」の注


注1  歴史につき、次の文献を参照。

外国法につき、次の文献を参照。

注2 旧法下では、併合請求の管轄拡張規定が主観的併合の場合にどの範囲で適用されるのかが明示されていなかった。そのため、全面的肯定説、否定説、制限的肯定説が対立していて、最後の見解が多数説であった。現行法は、この多数説に従って7条ただし書に明文の規定をおいた。制限的肯定説の根拠は、次の点にあり、それが現行法の7条ただし書の説明ともなる。

注3 振出人あるいは先順位の裏書人の保護のために、17条の活用のほかに、次のような解決策が提示されている。

  1. 7条本文の適用範囲を限定し、当該裁判所が同条の適用により管轄裁判所となり得ることを振出人または裏書人が予見し得る場合のみとする(名古屋地決昭和55年10月18日判時1016号87頁)。
  2. 特別に共通の裁判籍がある場合には、本条の適用を否定する。手形・小切手については、その支払地を管轄する裁判所が管轄権を有する(4条2号)。
  3. 一部の被告に対する訴えの取下げがあった場合には、併合請求の裁判籍を消滅させる。
  4. 管轄権濫用の法理を用いる(札幌高決昭和41年9月19日高民集19巻5号428頁)。

注4 また、共同訴訟人の一人との関係で証拠文書の取調べがなされる場合に、証拠文書の成立の真正を認める陳述は、主要事実の自白ではなく、その者と相手方との間で争いがなくても、他の共同訴訟人は、その証拠文書が自己に不利益に作用する限り、その不真正を主張・立証することができるとすべきである([西村*1956a] 253頁以下)。

注5 その他に、株主代表訴訟につき最高裁判所 平成12年7月7日 第2小法廷 判決(平成8年(オ)第270号)がある。なお、最判昭和58年4月1日・民集37巻3号201頁は、住民訴訟にあっても、必要的共同訴訟人の一部が控訴を提起した場合に、控訴審は第一審の共同訴訟人全員を名宛人として一個の終局判決をすべきであり、控訴を提起した者のみを控訴人としてした判決は違法であるとの見解を採用していた。これは、本文引用の先例により変更された。

注6 同一当事者間における請求の予備的併合の場合にならって、敗訴被告からの控訴により、原告敗訴部分も確定が遮断され、上級審に移審するとの解決も考えられる。しかし、控訴審では、原告が予備的被告に対する請求を諦めて主位的請求の貫徹に専念しようとする場合もありうる。立法論としては、不両立の関係にある請求の一つが認容され、これに対して被告から控訴が提起されたときには、原告は控訴状の送達を受けてから2週間以内に他の請求について控訴を提起することができるとする取扱いの方が合理的であろう。

注7 第三者の行為による併合の場合についてであるが、[伊藤*民訴1.1]574頁参照。

注8 平成15年の改正前の民法395条ただし書に規定されていた抵当権者による短期賃貸借解除の訴えも、その一例であった。この訴えは、賃借権の対抗力(民395条本文で認められた対抗力)を消滅させる訴えと構成すれば、賃借人のみが被告適格を有すると解する余地もあるが、一般には、濫用的な短期賃貸借の抑制のために賃貸借関係を消滅させる形成訴訟と解され、固有必要的共同訴訟とされていた。[栗田*1982a]参照。

注9  本文の設例で、

  1. AとBとは共有者として平等で(A=B)、
  2. CがAに対して勝訴判決を有することにより、CはAより優位にあり(C>A)、
  3. BがCに対して勝訴判決を有することにより、BはCより優位にある(B>C)。

2と3より、B>C>Aとなるが、これは、1と矛盾する。この矛盾を法学的説明により解消しようとしても、どこかで無理を犯さなければならず、どこで無理を犯すかにより、様々な見解が生ずる。問題状況は、差押えの効力について個別相対効説をとった場合と似ている。

注10  主観的順位的に併合された不両立の関係にある請求のうち主位請求が認容され、予備請求が棄却された場合に、原告は後者について控訴の利益を有するが、この利益は、主位請求認容部分が控訴期間の徒過や控訴権放棄により確定すれば、消滅するとしてよい(もし消滅しないとすれば、第一審と控訴審との事実認定あるいは法的判断の相違により、控訴が認容され、原告が二重勝訴となる場合が理論的には生じうることになる)。この場合の控訴の利益の消滅の理由は、原告が法律上不両立の関係にある請求の同時審判を求め、主位請求の認容で満足すべきことにある。順位をつけて併合したことのみが理由となるのではない。

なお、不両立の関係にない請求(例えば連帯債務者に対する請求)について原告が誤って順位を付けて併合した場合に、主位請求が認容された場合でも、原告は予備請求を棄却する判決に対して控訴の利益を有すると解すべきである(新実質的不服説によれば、上訴提起以外に不利益回避の道がないことが理由となる。形式的不服説にあっては、請求が棄却されたこと自体により不服の利益があり、順位付けはそれを否定するほどに意味のあるものとはいえないことが理由となる)。

注11  共有者の建物収去土地明渡義務が不可分的な義務であるということは、次の二つのことを意味する。

  1. 建物の各共有者は、土地所有者に対して建物全体の収去義務を負い、土地所有者は共有者の各自に対して収去請求権を有する。
  2. 不可分債務については、民法432条が準用され、各義務者に対して順次に請求することができる。

このうち、aは本案の問題であり、各共有者が単独で被告適格を有することの理由付けにはならないであろう。被告適格は、原告が被告に対して建物全体の収去義務があると主張していること自体により基礎付けられるのが原則であり、例外的にそれのみで被告適格を認めたのでは適切な紛争解決が得られない場合に、そのことを理由に単独での被告適格が否定されるというのが本来だからである。他方、bは、裁判外で順次に請求することが認められているのであるから、裁判上もそのことを尊重すべきであるという意味で、単独の被告適格を基礎付ける理由の一つとなりうる。ただ、裁判上の請求と裁判外の請求とがもつ実際上の差異(権利関係の確定あるいは強制執行につながるか否か)を考慮すると、あまり重要な理由付けとは思われない。

注12  次のようなことが考えられる。

  1. 民執157条1項・2項の類推適用による参加命令。これにより既判力が拡張され、統一的審判のために40条が適用されることになる。ドイツ法の議論につき、[高橋*1975a]6号654頁参照。
  2. 被告が他の共有者に対して訴えを提起し、併合する。これは、解釈論として問題なく認められよう。

注13  [高橋*1975a]10号1322頁以下、[福永*1984a]、[徳田*1984a]参照。ドイツ普通法の時代には、被告の側からなすこの旨の主張(共同訴訟人が完全に揃っていない旨の主張)は、「共同訴訟の抗弁」と呼ばれていた。[雉本*1913a]1253頁以下、[岡*1974a]69巻6号972頁以下参照。もっとも、その後、共同訴訟の抗弁は妨訴抗弁ではなく事件適格の欠如を主張する本案の抗弁であると理解されるようになった。具体的には、次のことを意味する。(α) ドイツ固有法上の合同団体員の中のある者のみが当事者となっている場合には、本案判決はできるが、事件適格が欠けるため請求は認容されない。(β)不可分債権・不可分債務の場合に、債権者または債務者の全員が当事者となっていることは必要なく、共同訴訟の抗弁を妨訴抗弁として主張することはできないのみならず、事件適格の欠如の主張(本案の抗弁)としても認められない。以上、[雉本*1913a]1279頁、[岡*1974a]69巻6号978頁による。なお、(β)はわかりやすいが、共同訴訟人の欠如を当事者適格の欠如と考える現行法に慣れているためか、(α)の説明には距離を感じる。

注14  解任の訴えの被告適格の問題については、現行法では明文の規定が置かれているが、旧法には明文の規定がなかった。商法旧257条3項所定の取締役解任の訴えは、昭和25年の改正で新設されたものである。その被告適格については、立法当初から争いがあり、(α) 会社被告説(β)取締役被告説(γ)会社・取締役共同被告説が対立していた([鴻*1968a]参照。なお、鴻教授は、解釈論として会社被告説(394頁以下)、立法論として共同被告説をとる(401頁以下))。

注15  [条解*1986a]がその事例として、最判昭和34.7.3民集13-7-898を引用している。なお、この判決の直接の判旨は。≪真の所有者であると主張する者が公簿(家屋台帳)上の共有名義人を被告として提起した所有権確認の訴えは、必要的共同訴訟ではない≫という点にある。

注16  [伊藤*民訴1.1]556頁など。明治23年法の下での先例であるが、大判明治35.6.24民録8-6-133がある。

注17  例えば、連帯債務者たる共同被告の一人のみが弁済の事実を主張した場合には、それを主張しなかった者については弁済なしとして裁判する。時効を援用するか否かはそもそも実体法上の権利行使の問題であるが、表面上の取扱いは同じである。共同不法行為者たる共同被告の一人のみが消滅時効を援用した事例として、次のものがある:東京地方裁判所 昭和55年9月17日 判決(昭和44年(ワ)第6455号)。

注18  大審院時代から1966年頃までの最高裁判例を綜合的に研究した[五十部*1966a]=五十部豊久「≪判例綜合研究≫必要的共同訴訟と二つの紛争類型」民訴雑誌12号165頁は、判例を次のように整理する。(α) 共有者が原告となる場合には、固有必要的共同訴訟とする先例がある一方で、共同提起を強制する手段がないため、各共有者の持分権(に基づく請求権)が訴訟物であることを根拠に、あるいは不可分債権論や保存行為論に基づいて、各共有者の単独提起を認める先例があるが、前者の立場が本来であり、共同して訴えてきた限りでは、本来の姿に戻り、固有必要的共同訴訟の原則に戻る(178頁)。(β)共有者を被告とする訴訟では、固有必要的共同訴訟による紛争解決方式(争わない者は除くという例外を含む)を取る多数先例と、不可分債務を根拠にあるいは各持分が訴訟物であることを根拠に個別訴訟を認める先例とが対立拮抗している(188頁以下、特に191頁)。

注19  アメリカ合衆国法ではこのような処理が以前から広く認められていることにつき、[高橋*1975a]5号518頁・528頁以下参照。

注20  訴訟でどのような結果が出るかわからないので、離脱の明示の意思表示が必要であるとすべきである。筆界(境界)確定訴訟では、裁判所が当事者の主張に拘束されることなく客観的な筆界(境界)線を確定すべきものとされているので、離脱がしやすいであろう。筆界(境界)確定訴訟を離れた一般論としては、判決と同等の効果をもたらす請求の放棄・認諾が残存当事者間でなされれば、その効果は離脱者に及ぶとしてよい。訴訟上の和解は、当事者の合意を直接の基礎とし、訴訟物以外の要素が和解の中に取り込まれることが多々あるので、残存当事者間の訴訟上の和解を離脱者に直接及ぼすのは適当ではなく、当事者の合意を基礎にして裁判所が請求について判決し、それが離脱者にも及ぶとすべきであろう。なお、離脱者に及ぶのは、離脱当時に係属していた請求についての判決のみであり、その後の新請求について離脱者に判決の効力を及ぼすためには、離脱者に当該請求について訴状を送達し、離脱者が新請求についても残存当事者間の訴訟追行の結果を受容する旨の意思表示(離脱の意思表示)をなすことが必要である。

注21  共有者が共同原告の場合につき[福永*1975b]57頁以下、共有者が共同被告の場合につき、最判昭和38.3.12民集17-2-310。注29も参照。共有者の共同の訴訟追行の意思が必要的共同訴訟の要件として追加されているのは、合一確定の要請がそれほど強くなく、共有というのみでは必要的共同訴訟を根拠付けることができないからである。またそれだけに、共同訴訟人の意思により、個別訴訟に分解する道も認めておく必要がある。次の訴訟行為には、各共有者が単独でなすことができ、その効力はその者にのみ及ぶ。

他方、次の行為については40条1項が適用され、その効力は他の共同訴訟人の有利な範囲でその者にも及ぶ。

注22  ドイツ法の議論につき、[高橋*1975a]6号644頁参照。

注23  上訴を提起しなかった者も、原審(少なくとも第一審)の当事者であり、訴えに対する応答としてなされる判決(第一審判決または上級審がこれを取り消して自らなす判決)の名宛人である。彼の地位は、本文に述べた以外の事項については、次のようなものとするのがよい。

これらのことを考慮すると、彼は、離脱当時に予想される原判決の帰趨(原判決の確定を一端とし、これに対する不服申立てによる変更を他端とする範囲内での決着)を前提にして離脱したのであり、その前提が維持されない状況においては、再び訴訟に復帰する機会が与えられるべき地位にある者ということができる。

注24  その他に、上訴や請求の放棄・認諾も含まれる。ただ、審理の場面では、40条2項が意味を持つのは、実際上は、相手方が準備書面に記載のない事実を主張する場合に限られよう。

40条2項は、独立当事者参加訴訟にも準用される(47条4項)。この場面では、一人が他の一人を相手に上訴した場合には、被上訴人とされなかった残りの一人は、40条2項により被上訴人の地位に就くという形で、同項は作用する(47条4項の類推適用の事例であるが、最高裁判所 平成11年11月9日 第3小法廷 判決(平成9年(オ)第873号)参照)。

注25  不可分債務論に基づいて各共有者に対する個別訴訟を認める場合には、他の共有者の利益保護を図る契機が不可分債務論の中に当然に含まれているわけではないことに注意しなければならない([五十部*1966a]188頁)。しかし、個々の事件における不可分債務の特質により、他の共有者に対する債務名義がなければ執行を開始することができないと解することは可能であろう。例:

注26  この立場に批判的な見解として、[五十部*1966a]189頁以下がある(被告とされなかった共有者に対する債務名義なしに執行がなされる虞があること、および紛争の分断による訴訟の不経済を理由とする)。

注27  明治23年民訴法の母法たるドイツ民事訴訟法では、その62条で必要的共同訴訟人の一人が期日または期間を懈怠した場合には、その者は懈怠しなかった者により代理されたものとみなされる旨が規定されていた。日本の明治23年法では、この規定を50条4項に置きつつ、同時に共同訴訟人の一人が提出する攻撃・防御方法(証拠方法を含む)は、他の共同訴訟人の利益において効力を生ずると規定された(同条2項)。当時は欠席判決の制度が存在し、欠席判決を回避するためにも、代理擬制が必要であった。大正15年法で欠席判決制度が廃止されたのに伴い、4項の規定の一部(共同訴訟人の側の行為の効果に関する部分)は2項と合体して、大正15年法62条1項(現40条1項)に置き換えられ、他の部分(相手方の行為の部分)は、大正15年法62条2項(現40条2項)に置き換えられた([高橋*1975]10号1273頁以下参照)。なお、ドイツ民訴法62条の代理擬制の規定は、フランス法に由来するとのことである([岡*1974a]70巻1号90頁以下参照)。

注28  筆界(境界)確定訴訟や共有物分割訴訟等では、請求の特質により、判決の効力は共同訴訟人間でも及ぶので、一つの請求について判決の当事者となる者が3人以上いると言う意味では、独立当事者参加訴訟以上に多面的訴訟である([森*1966a]132頁の意味での多面訴訟である。多数説に従えば、独立当事者参加訴訟は、三面訴訟と言いつつも個々の請求については二当事者対立訴訟であり、その請求の当事者となっていない者は、その効力を直接には受けないことに注意)。

注29  最判昭和38.3.12民集17-2-310頁は、控訴審が被告たる共有者の一人からの控訴に基づき原告の請求を棄却した事案であり、控訴の効力を拡張しないと、判決内容の矛盾が生ずるので、それを回避しようとした点に意味がある。所有権を主張する第三者が共有者と主張する者に対して提起する訴えは固有必要的共同訴訟であるとした先例と読むのは危険である(判決では、「固有必要的共同訴訟」の語は使用されていない)。類似必要的共同訴訟とされたと理解するのが妥当であろう。これと、共有者に対する訴訟を通常共同訴訟とする最判昭和43・3・15との関係は微妙であり、後者は前者を実質的に変更したものであると見ることも可能であり、またそのように見る見解も有力である。しかし、43年判決の力点は固有必要的共同訴訟でないという点にある限りでは、両判決の判旨はまだ不両立の関係にあるとは言えない。また、最判昭和34・7・3民集13-7-898頁は、共同訴訟人の一人が控訴を取り下げた場合について、共有者を被告とする訴訟は必要的共同訴訟ではないとするものであるから、最判昭和38.3.12民集17-2-310頁を≪共有者が共同被告として訴えられ、共有者が共同で戦う意思を明確にしている場合には、類似必要的共同訴訟の一種として40条1項が適用されることを認めた先例≫と理解すれば、これとも事案を異にし、まだ両立可能である。

注30  通常共同訴訟と必要的共同訴訟との中間に位置する訴訟形態として、準必要的共同訴訟を認める見解がある。いくつかの構成の仕方が可能である。[中村*1977a5]213頁以下は、論理的にのみ合一確定が必要な場合を対象にして、次のように構成する([高橋*1975a]10号1322頁以下も参照)。

[山田*1935a]は、複数の連帯債務者に対する訴えや主債務者と保証人に対する訴訟は、判決が共同訴訟人間で矛盾することが論理上は許されない訴訟であるとして、これに必要的共同訴訟に関する特則(旧62条、現40条)の適用を認める(2頁以下)。ただし、その意味は、共同訴訟人間に準共同訴訟的補助参加関係の成立を認めることであり、かつ、訴訟の判決は共同訴訟人を通じて1個の判決としてなされるべきであるとする。もっとも、共同訴訟人の一人に中断事由が生じた場合などに、訴訟の進行を異ならせる必要が生ずれば、原告は訴訟分離の申立てにより、被告は補助参加関係消滅の申立てにより、共同訴訟関係を消滅させることができるとするようである(13頁以下)。

注31  固有必要的共同訴訟の範囲を法律関係の合一的確定の必要性が高い場合にできるだけ拡張すべきであるとの訴訟政策を前面に押し出しつつ、必要な当事者を欠いていた場合等の取扱いを柔軟化する議論も有力である。[小島*1984a7]123頁以下は、共同所有をめぐる紛争に関し、固有必要的共同訴訟を次のように再構成すべきであるとする(こうした考えに批判的な見解として、[福永*1984a]197頁以下、[鶴田*2004a]51巻2号403頁以下参照)。

注32  第三者Xが夫婦Y1・Y2を相手に提起した婚姻取消訴訟における請求認容判決に対してY2のみが上訴した場合について、場合分けをして考えてみよう。

 (α) Y1とY2のいずれもがXの請求を争っていた場合には、問題の局面は、類似必要的共同訴訟の場合と類似する(その点からすれば、上訴しないY1は上訴人にならないとすることが有力な選択肢となる)。他方、

 (β)被告の一方(Y1)がXの主張を認め、認容判決を求めているような場合には、この者に上訴審における当事者の地位を与え、原判決が取り消されて請求棄却判決が出ないように攻撃防御方法を提出する機会を与えることが必要である。その方法としては、Y2の上訴によりY1も上訴審の当事者になるとせざるを得ない(Y1自身が上訴を提起するという選択肢は無理である。彼は、原判決に満足しているからである)。その場合に、Y1を上訴人と呼ぶか被上訴人と呼ぶかは、重要ではない。彼は、原判決の維持を望み、上訴棄却を申し立てるのであるから、確かに彼を上訴人というのは奇妙であるが、しかし、その奇妙さは、第一審において被告でありながら請求認容判決を求めていることの延長でしかない。もしY1が上訴棄却を求めるのか否かに応じて、呼び名を変えるとすれば、Y1の態度が控訴審で変転した場合に混乱が生じよう。Y2の上訴によりY1も上訴人の地位に就くとしつつ、Y1が上訴人でありながら上訴棄却の申立てをするのは、この場合の固有必要的共同訴訟が事実上の三面訴訟であることの反映であると考えるのがよい。

上記の2つの場合を区別して規範を定立するのも一つの選択肢であるが、しかし、一審における行動が常に明快と言うわけでもないであろうし、一審判決後に態度を豹変させる場合もあることを考えれば、上訴しなかった共同訴訟人も一律に上訴人になるとしつつ、彼は上訴審においても、第一審におけると同様に、自己の共同訴訟人とは異なる主張ができ、訴訟追行そのものについて意欲を有しなければ、明示の申出により、訴訟手続から離脱することができるとするのがよいであろう。

注33  ドイツ普通法では、18世紀末頃は、訴えの主観的併合と共同訴訟とは異質なものと理解されていた。後者は、ドイツ固有法上の合有団体のように原告又は被告が一体的なもの(「ひとりの人」)と考えられるほどに緊密な関係がある場合の訴訟であり、これは許容されていた。他方、それ以外の場合に原告が当事者を異にする訴えを併合することを訴えの主観的併合といい、これは禁止されていた。当時の訴訟手続が、書面主義、法定序列主義、法定証拠主義を採用していて、訴えの主観的併合を広く許すと手続の進行が困難になったからである([雉本*1913a]1258頁以下)。その後、共同訴訟の範囲が徐々に拡張され、主観的併合との区別の意味が薄らいだ。19世紀前半には、訴えの主観的併合の許否は個々の事件において訴訟追行が困難となるか否か等を裁判官が判断して決めればよいとの見解も有力となった。こうして、訴えの主観的併合の禁止の原則が放棄されるとともに、訴えの主観的併合と共同訴訟とは同じことの別の表現に過ぎないと考えられるようになった。以上、[岡*1974a]69巻6号951頁以下・956頁以下、および[雉本*1913a]1257頁以下による。

注34  ドイツ普通法時代の中葉までは、被告に共同訴訟の抗弁が認められ、原告が共同して訴えを提起すべきであるのに訴え提起に同調しない者がいる場合には、裁判所がその者に付加的呼出し(Adzitation)をなし、呼出しを受けた者が訴訟に参加しなくても、その者は訴訟の結果を承認しなければならないとされていた。[中田*1939a]897頁以下、[岡*1974a]69巻6号965頁以下・972頁以下参照。

注35  明治23年法以来の伝統である([井上*1891a]166頁参照)。なお、この講義では、以前、「共通」の意味を狭く解して、連帯債務の場合および主債務と保証債務の場合を次のb(同一原因)の中に位置づけたこともあるが、改める。

注36  共同訴訟の効用は、共同訴訟人が共通の訴訟代理人を選任する場合に顕著に発揮される。そこで、ドイツでは古い時代に共通の訴訟代理人を選任すべきことが規定され、合意できない場合には、多数決によりまたは副次的に裁判官により指名される旨が規定されていたこともある(例えば、1847年のハノーファー王国の一般民事訴訟法23条7項)。ドイツ民事訴訟法が成立する過程でも、プロイセン草案およびハノーファー草案において類似の規定が置かれていたが、代理人選任について共同訴訟人間で合意ができなかった場合に困難な問題が生ずるので、北ドイツ草案では採用されなかった。[岡*1974a]70巻1号94頁以下参照。

注37  具体的な方法としては、次の3つが考えられる。

注38  訴訟手続からのこの離脱は、独立当事者参加の場合の訴訟脱退に類似するが、脱退の効果について見解が分かれているので、ここでは混乱の生じないように「離脱」の語を用いることにする。

注39  不可分債権・不可分債務の場合に個別訴訟が許されるようになった歴史につき、[雉本*1913a]1274頁以下参照。また、[雉本*1913a]1278頁以下によれば、ドイツ普通法時代には、不可分債権・不可分債務を訴訟物として共同訴訟が行われる場合には、類似必要的共同訴訟であるとする見解が多数であった。

注40  最判昭和62・7・17日民集41-5-1402頁

注41  その他に、次のことも一応考えられる。

注42  旧法下では、原告と各被告との間に当然の補助参加関係を認め、敗訴被告が上訴すると、彼は原告の補助参加人として原告敗訴部分についても上訴したことになるとの解釈も提案されていた。[中田*1972a3]68頁は、これをあまりにも技巧的であると批判した。

注43  訴訟引受の申立ての場合のように、当然に併合される場合には、追加納付は不要である(民訴費用法別表第1第17項イにより、申立て手数料は500円である。これに対して、承継参加は47条の独立当事者参加としてなされ、民訴費用法別表第1第7項により訴え提起に相当する手数料を納付しなければならない)。なお、[伊藤*民訴1.1]574頁は、直接には第三者の申立てによる追加的併合についてであるが、手数料の納付を免除する扱いを示唆する。

注44  [山木戸*1961a5]82頁以下は、次のような要件の下で、当然併合を肯定する。

注45  類似の例として、次のものがある。

注46  他方、上告審では次の理由により同時審判を保障する必要はないとされたようである([中野*1997a]69頁)。

しかし、複数の請求が法律上両立しえない場合であるので、法解釈の相違により原告が両請求とも敗訴する可能性はあろう。また、上告審が原判決を破棄して控訴審に差し戻した場合に、審判が異別になされる可能性もある。そうしたことを考慮すると、上告審においても同時審判を保障した方が良かったと思われる。いずれにせよ、両請求が差戻審に同時に係属する場合には、41条3項の適用がある(これを否定する文言となっていない)。

注47  従前の最高裁判決の制約の中で単独提訴を肯定するために、[滝井*1982a]296頁以下は、次のような解釈論を展開していた:権利の保全について共有者間で見解が分かれたことにより共有関係は破綻し、分割されるべき状態に入ったと見て、積極的権利者は消極的権利者に対して持分買取請求権を有し、その請求権の保全のために、消極的権利者に代位して審決取消の訴えを提起することができる。

注48  特許を受ける権利の共有者の内の一部の者のみが審決取消訴訟を提起し、他の者は提起しないという理由は、様々であろう。当該発明を公衆の自由利用に委ねたいという理由の場合もあろうし、単に勝訴の見込みが薄いと考えて提訴しないという理由の場合もあろう。ただ、共同出願している以上は、前者のような理由によることは少なく、多くの場合は後者のような理由によるであろう。この点からすれば、共有者が請求人になる場合にも共同審判を要求する特許法132条3項に疑問を感ずる。そして、132条3項から、共同審判を定める手続上の負担を乗り越えて特許を取得することについて共有者の意思が合致しなければ保護に値しないという趣旨を読みとることができるとしても、そこから更に進んで、審判手続から先の手続つまり取消訴訟の提起まで全員の意思が合致しなければ保護に値しないという趣旨まで読みとるのは、行き過ぎであろう。

注49  商標については、それが出所表示機能を有するという特質上、共同出願は通常はないが、しかし、あり得ないわけではない。例えば、複数の者が同日に出願した場合に、協議により共同出願にすることが考えられる([網野*商標v5]664頁参照)。

注50  なお、独立当事者参加の場合には、47条4項により40条1項から3項が準用されているが、利害の対立関係を考慮して、上訴を提起しなかった者は被上訴人の地位に就くとされていることに注意。

注51  旧破産法下においては、異議者が提起する債権確定訴訟について固有必要的共同訴訟説もあった。例えば、[伊藤*民訴1.1]566頁がそうであった(共同提訴を拒む者の異議は撤回されたものとして扱えば足りるとする)。しかし、現行法下では、[伊藤*破産v3]453頁は、破産債権査定決定に対して異議者等が提起する異議訴訟を類似必要的共同訴訟であるとしている。

注52  本判決の妥当範囲については、補足意見が筆界(境界)確定訴訟を「非訟事件」と呼んでいるところから、本件の判旨は、「本質的に非訟事件である境界確定訴訟に限定して承認されている」とする見解がある。ただ、判決が、共同提訴拒絶者を被告とする訴えを筆界(境界)確定訴訟について認めた判例であることは確かであるが、法廷意見は、筆界(境界)確定訴訟に限定しているわけではない。このことを考慮すると、筆界(境界)確定訴訟の非訟事件性を強調することにどの程度の意味があるのか、疑問である。もし、その趣旨が、共同提訴拒絶者を被告とする訴えは、訴訟事件についてはまったく認められないという趣旨であるならば、行き過ぎであろう。むしろ、共同提訴拒絶者を被告とする訴えという従来にない取扱いを最高裁が初めて承認するに当たって、そのような取扱いをしても筆界(境界)確定訴訟については問題がないことを慎重に検討するために、筆界(境界)確定訴訟の特質が逐一取り上げられたに過ぎず、他の類型の訴訟事件についても共同提訴拒絶者を被告とする訴えは、共同提訴の拒絶から生ずる問題の解決のために必要かつ適切であるならば、肯定される余地はあるものと解したい。

ただ、実際上は、そのような訴訟類型がそれほど多くない。例えば、(α)筆界(境界)確定訴訟と共に形式形成訴訟に分類される共有物分割の訴えを考えると、共有者間の訴訟であるので、ある者が提訴すれば他の者を被告にするのは当然である。(β)共有権に基づく訴えは、共有者全員が当事者となるべき固有必要的共同訴訟とされているが、共同提訴を拒む者がいれば、提訴しようと思う者は自己の持分権に基づく請求に切り替えることで、多くの場合に権利実現の需要は満たされる。

しかし、(γ)共有の性質を有する入会権の確認訴訟については、共同提訴を拒む構成員を被告として訴えを提起することを許す必要があり、最高裁判所 平成20年7月17日 第1小法廷 判決(平成18年(受)第1818号)がこれを許容した。

その点はともあれ、共同提訴拒絶者を被告とする訴えの許容性の根拠付けのために本件判旨が取り上げた筆界(境界)確定訴訟の特質を検討しておこう。それは、次のことのみである(下記に引用する部分より前の部分は、固有必要的共同訴訟に当たることの説明である)。

その趣旨は、次の点にあろう:共同提訴拒絶者が被告として訴えが提起された場合に、彼は実際上十分な訴訟活動をしないであろうが、しかし、裁判所が正当と認めるところにしたがって筆界(境界)が定められるのであるから、彼の利益が害されることはない。しかし、当事者の地位を与えられながら十分な訴訟活動をしなかったために不利な判決を受けることは、訴訟が強制的紛争解決制度であることに由来することであり、そのことは、共同提訴拒絶者が被告となる場合一般に妥当させてよい。最高裁が挙げた筆界(境界)確定訴訟の上記の特質は、共同提訴拒絶者を被告とする訴えを許容するために不可欠の理由というより、許容性の根拠づけを十全なものにするために加えられた付加的な根拠と見るべきである。

なお、筆界(境界)確定の訴えを提起した共有者の主張する筆界(境界)線と、提訴拒絶した共有者の主張する筆界(境界)線とが違うこともありうる。これらの筆界(境界)線と、本来の被告である隣地所有者の主張する筆界(境界)線とが異なる場合には、この筆界(境界)確定訴訟は、三つ巴の訴訟となり、提訴拒絶者も積極的に防御方法を提出することになる。この場合には、最高裁が挙げた筆界(境界)確定訴訟の特質は、提訴拒絶者を被告とする訴えの許容根拠としては機能しないであろう。

注53  例えば、次のような構成が考えられる:(α)請負人が施主の代理人として注文したとの事実を主張して、第1次的に施主を買主にして代金支払請求を求め、第2次的に、代理権の授与がないのであれば、請負人に対して無権代理人の責任を追及する。この事実が認められない場合に備えて、(β)請負人が買主として注文したとの事実を主張し、請負人に代金の支払を求める。この主張も認められない場合に備えて、(γ)施主が直接注文したとの事実を主張し、施主に代金の支払いを請求する。その事実も認められない場合に備えて、(δ)納入した商品が建築工事に使用されていることを理由に、施主に対し不当利得返還請求をする。

注54  生成中の既判力の拡張を肯定する立場に立って、もう少し考えてみよう。XがYに対して給付の訴えを提起し、その訴訟係属中に債権を譲り受けたと主張するAが別訴でYに対して給付の訴えを提起したとしよう。XY間の訴訟がYに有利に展開している場合に、Aがこのような別訴を提起し、XY間の訴訟と関わりなしに改めて審理がなされると、Yにとって不利になる。XY間の訴訟でXの請求を棄却する第一審判決が下され、Xの控訴により訴訟が控訴審に係属中である場合は、特にそうである。このような場合には、Aの権利行使は、訴訟参加の方法でなされるべきであり、別訴は不適法とすべきであろう。142条には該当しないが、これに並ぶ別訴禁止類型とすべきである。

注55  合有の語が用いられている規定として、次のものがある:信託法79条(信託財産の合有)。

注56  法解釈が分かれていて、ある見解をとれば請求が両立し得ない場合には、41条の適用を認めるべきである。