最高裁判所 令和 4年 1月 20日 第1小法廷 判決 ( 令和2年(あ)第457号 )
事件名:  不正指令電磁的記録保管被告事件・上告事件
要 旨
 Webサイトの運営者が,収入を得るために,仮想通貨(暗号資産)の取引履歴の承認作業等の演算をWebページの閲覧者のコンピュータにさせる指令を与える電磁的記録をサーバー内に蔵置し,閲覧者にその旨を告知していなかった場合に,サイト運営者の行為が「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」(刑法168条の2第1項1号)を「保管した」(同168条の3)に該当するかが争われた事件において,この電磁的記録は,反意図性は認められるが,不正性は認められないとして,不正指令電磁的記録とは認められなかった事例。
 1.反意図性は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
 2.不正性は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
 2a. (1)不正指令が閲覧中に閲覧者の電子計算機の中央処理装置を一定程度使用することにとどまり,その使用の程度も,閲覧者の電子計算機の消費電力が若干増加したり中央処理装置の処理速度が遅くなったりするが,閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかったこと, (2)ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは,ウェブサイトによる情報の流通にとって重要であるところ本件プログラムコードは,そのような仕組みとして社会的に受容されている広告表示プログラムと比較しても,閲覧者の電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響において有意な差異は認められず,事前の同意を得ることなく閲覧中に閲覧者の電子計算機を一定程度使用するという利用方法等の点についても社会的に許容し得る範囲内といえるものであること, (3)本件プログラムコードの動作の内容であるマイニング自体は,仮想通貨の信頼性を確保するための仕組みであり,社会的に許容し得ないものとはいい難いことを理由にして,不正性が否定された事例。
 /マイニング/Coinhive/コインハイブ/
参照条文: /刑法:168条の2;168条の3/
全 文 r040120supreme91.html

最高裁判所 平成 23年 1月 20日 第1小法廷 判決 ( 平成21年(受)第788号 )
事件名:  著作権侵害差止等請求・上告事件
要 旨
 「ロクラクII」という名称のインターネット通信機能を有するハードディスクレコーダーを用いたサービス(被告が親機を自己の管理場所内に設置して,放送の受信・入力を管理し,利用者が子機を用いて録画の指示を出すことができ,この指示に従い親機に自動的に録画された番組や録画を経ない番組をインターネットを介して利用者が受信することができる有料サービス)を提供する被告に対し,放送事業者である原告が,同サービスは原告の放送番組等の複製権を侵害するなどと主張して,その複製の差止め,損害賠償の支払等を求めた事案において,各親機ロクラクが被告の管理,支配する場所に設置されていたとしても,被告はサービスの利用者が複製を容易にするための環境等を提供しているにすぎず,被告において番組等の複製をしているとはいえないとして,原審は請求を棄却したが,破棄された事例。
 1.複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である。
 1a. 放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。
参照条文: /著作権法:15条;21条;98条/
全 文 h230120supreme.html

最高裁判所 平成 22年 4月 13日 第3小法廷 判決 ( 平成21年(受)第609号 )
事件名:  発信者情報開示等請求・上告事件
要 旨
 インターネット上のウェブサイト「2ちゃんねる」の電子掲示板の「A学園Part2」と題するスレッドに、学園長(原告)を指して「気違い」と述べる書込みがなされていた場合に、電気通信事業(被告)に対する発信者情報の開示請求は認容されたが、裁判外で開示請求に応じなかったことに重大な過失があったことを理由とする損害賠償請求は棄却された事例。(本判決で取り上げられたのは、後者のみ)
 1.開示関係役務提供者は,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」4条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である。
 1a. 匿名掲示板のあるスレッドへのある者による書込み中に原告を侮辱する文言として「気違い」という表現の一語があるが、特段の根拠を示すこともなく,その者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,その書込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,スレッドの他の書込みの内容,本件書込みがされた経緯等を考慮しなければ,権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきであり、そのような判断は,裁判外において発信者情報の開示請求を受けた被告(特定電気通信役務提供者)にとって,必ずしも容易なものではないと判断された事例。 /書き込み/インターネット・プロバイダー/DION/表現の自由/通信の秘密/名誉感情/
参照条文: /民法:709条/特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律:4条/憲法:21条/
全 文 h220413supreme3.html

最高裁判所 平成 20年 3月 3日 第2小法廷 決定 ( 平成17年(あ)第947号 )
事件名:  業務上過失致死被告事件(上告事件)
要 旨
 ミドリ十字株式会社が,米国から輸入した血しょうと国内血しょうとの混合血しょうを原料とした非加熱第IX因子製剤であるクリスマシンを製造販売し,これを購入した大学病院の医師が肝機能障害に伴う食道静脈りゅうの硬化術を受けた患者(被害者)に対し合計1200単位を投与したため,被害者がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し,その結果,被害者が平成5年9月ころまでに後天性免疫不全症候群(エイズ)の症状である抗酸菌感染症等を発症して,平成7年12月,同病院において死亡した事件について,昭和59年7月16日から昭和61年6月29日までの間,公衆衛生の向上及び増進を図ることなどを任務とする厚生省の薬務局生物製剤課長として,同課所管に係る生物学的製剤の製造業・輸入販売業の許可,製造・輸入の承認,検定及び検査等に関する事務全般を統括していた被告人は,薬品による危害発生の防止の業務に従事する者として,必要に応じて他の部局等と協議して所要の措置を採ることを促すことを含め,薬務行政上必要かつ十分な対応を図るべき義務があったのにこれを怠ったと認められ,業務上過失致死罪が成立するとされた事例。
参照条文: /刑.211条1項/
全 文 h200303supreme91.html

東京地方裁判所 平成 16年 3月 24日 民事第29部 判決 ( 平成14年(ワ)第28035号 )
事件名:  著作権侵害差止等請求事件
要 旨
 原告(読売新聞社)がそのホームページ「Yomiuri On-Line」においてニュース記事本文及びその記事見出し(YOL見出し)を無料で掲出(自動公衆送信)するとともに,Yahoo等に販売している場合に,被告(デジタルアライアンス)がその見出しを集めて各見出しからYahooのサイトへ新規ウインドをターゲットウインドとしてリンクを張ったファイルの内容を被告の多数の会員のベージに掲出されるようにしたことことにより,被告が原告の著作権あるいは不法行為法により保護されるべき利益を侵害したと主張して,原告が被告に損害賠償を求めたが,原告の記事見出しには著作物性がないと判断され,請求が棄却された事例。
 1.原告作成のYOL見出しは,その性質上,{1}簡潔な表現により,報道の対象となるニュース記事の内容を読者に伝えるために表記されるものであり,表現の選択の幅は広いとはいえないこと,{2}YOL見出しは25字という字数の制限の中で作成され,多くは20字未満の字数で構成されており,この点からも選択の幅は広いとはいえないこと,{3}YOL見出しは,YOL記事中の言葉をそのまま用いたり,これを短縮した表現やごく短い修飾語を付加したものにすぎないことが認められ,これらの事実に照らすならば,YOL見出しは,YOL記事で記載された事実を抜きだして記述したものと解すべきであり,著作権法10条2項所定の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に該当するとされた事例。
 2.情報は,著作権法等によって排他的な権利が認められない以上,第三者がこれらを利用することは,本来自由であり,不正に自らの利益を図る目的により利用した場合あるいは原告に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のない限り,インターネット上に公開された情報を利用することが違法となることはない。 /知的財産権/無体財産権/著作権/フリーライド/ただ乗り/
参照条文: /著作.2条1項1号/著作.10条2項/著作.21条/著作.23条/民法:709条/
全 文 h160324tokyoD.html

東京地方裁判所 平成 14年 12月 27日 民事第47部 判決 ( 平成12年(ワ)第14226号,平成14年(ワ)第4485号 )
事件名:  不正競争行為差止等請求本訴事件,不正競争行為差止請求権不存在確認等請求反訴事件
要 旨
 本訴:
 ポターの創作に係るピーターラビットの商品化事業を行う原告会社と,子供用品の製造販売を業とする被告会社(株式会社ファミリア)との間でライセンス契約が締結され,被告が「ピーターラビット」等の商標権を取得すると共に,ピーターラビットの図柄および「ピーターラビット」等の表示を使用して商品の製造販売を行っていたが,その後ライセンス契約が終了したため,被告が自社の表示である「familiar」と組み合わせて「ピーターラビット」等の表示の付された商品を製造販売していた場合に,原告がこれを不正競争行為であるとして訴えを提起したところ,差止請求ならびに損害賠償請求は認容されたが,商標権移転登録手続請求は棄却された事例。
 反訴:
 不正競争防止法に基づく差止請求を含む本訴の係属中に,被告が,被告商品の販売・販売のための展示について原告が不正競争防止法に基づく差止請求権および損害賠償請求権を有しないことの確認請求の反訴を提起した場合に,訴えの利益は肯定されたが,請求は棄却された事例。
 1.不正競争防止法1条1項1号の要件がすべて充足されていると認定された事例。
 2.ライセンス契約において商標登録がライセンシーの負担とされている場合に,ライセンシーの商標登録はライセンサーの承諾により得ることができたものとみるべきであるから,ライセンス契約終了後にライセンサーからの不正競争防止法に基づく差止請求に対して商標権を有することを抗弁として主張することは許されないとされた事例。
 3.被告が,「ピーターラビット」のライセンス契約終了後に,ピーターラビットの図柄のない「ピーターラビット」等の表示のみを使用した被告商品を,その図柄の付されている原告グループ会社の商品とともに販売した場合に,その販売方法は消費者に出所の混同をもたらすものであり,「ピーターラビット」等の表示を被告が不正の目的なく使用しているとは認められないとされた事例。
 4.ライセンス契約における「ファミリア[被告・ライセンシー]が,その意思により,ライセンス商品の製造を行わないことを決めた場合,ファミリアはウォーン[原告・ライセンサー]とファミリアの間で相互に合意する合理的な条項及び条件に従って前記商標をウォーンに移転しかつ譲渡する。」との条項について,「被告が,自らの意思に基づいて自発的にライセンス製品の製造を中止した場合には,本件商標権を原告に移転するという意味のものである」と解するのが相当であり,ライセンス契約の改定交渉が決裂した場合は含まれないとされた事例。(契約の解釈/意思表示の解釈)
 5.ライセンス契約終了後の商品の出荷高金額を記載した被告提出文書について,販売態様はライセンス契約存続中と変わらないのに売上金額が極端に減少しているので不自然であると原告が主張したのに対し,裁判所が,顧客吸引力の大きいピーターラビットの図柄を使用していないことを考慮すれば信用できるとした事例。(自由心証主義)
 6.原告が特定した「Peter Rabbit」の表示を付した商品を被告が販売することの差止請求訴訟の係属中に,被告が,これとは字体が異なりかつ「familiar」の表示が付加されている商品について原告が差止請求権を有しないことの確認請求の反訴を提起した場合に,その反訴は原告と被告との紛争を抜本的に解決するために必要なものとして確認の利益を認めることができるとされた事例。
 6a.反訴は本訴事件の解決を長びかせるために提起されたものであり,訴権の濫用に当たるとの主張が排斥された事例。
 6b.差止請求権不存在確認請求の反訴について,対象となる物件目録の変更が軽微であるから訴えの変更に当たらないとされた事例。(訴訟物) /知的財産権/無体財産権/不正競争防止法/キャラクター商品/
参照条文: /不正競争.2条1項1号/商標.4条1項7号/民訴.143条/民訴.247条/民訴.146条/
全 文 h141227tokyoD.html

東京地方裁判所 平成 14年 9月 5日 民事第46部 判決 ( 平成13年(ワ)第16440号 )
事件名:  著作権侵害差止等請求事件
要 旨
 原告(サイボウズ株式会社)が被告(株式会社ネオジャパン)に対して,被告が制作販売するコンピュータ用ソフトウェア(グループウェア)「i office 2000」は原告が制作販売する同種のソフトウェア「サイボウズoffice」に依拠して作られたものであり,表示画面(画面に表示される影像)が類似しているので,表示画面ならびに表示画面の選択・配列について原告が有する著作権を侵害していると主張して,損害賠償ならびに製造・頒布等の差止め等を請求したが,認められなかった事例。
 1.電子計算機に対する指令により画面(ディスプレイ)上に表現される影像についても,それが「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)である場合には,著作物として著作権法による保護の対象となり,このことは,ビジネスソフトウェアについても当てはまる。
 1a.原告ソフトの表示画面と被告ソフトの対応する表示画面との間で共通する点は,いずれもソフトウェアの機能に伴う当然の構成か,あるいは従前の掲示板,システム手帳等や同種のソフトウェアにおいて見られるありふれた構成であり,両者の間にはソフトウェアの機能ないし利用者による操作の便宜等の観点からの発想の共通性を認め得る点はあるにしても,そこに見られる共通点から表現上の創作的特徴が共通することを認めることはできないので,原告ソフトにおける個々の表示画面をそれぞれ著作物と認めることができるかどうかはともかくとして,被告ソフトの表示画面をもって,原告ソフトの表示画面の複製ないし翻案に当たるということはできないとされた事例。
 2.ビジネスソフトウェアにおいては,利用者がクリックやキー操作を通じてコンピュータに対する指令を入力することにより,異なる表示画面に転換するが,このような画面転換が,特定の思想に基づいて秩序付けられている場合において,表示画面の選択と表示画面相互間における牽連関係に創作性が存在する場合には,そのような表示画面の選択と組合せ(配列)自体も,著作物として著作権法による保護の対象となり得る。
 2a.被告ソフトは,原告ソフトにないいくつかのアプリケーションを備えているほか,原告ソフトのアプリケーションに対応するアプリケーションを見ても,少なからぬ数の表示画面が付加され,これに対応する牽連関係(リンク)も存在するので,この点で既に被告ソフトは,ソフトウェア全体においても,対応する個別のアプリケーションにおいても,原告ソフトと表示画面の選択と配列を異にするというべきであり,これに加えて,原告ソフトと被告ソフトとの間で表示画面とその牽連関係(配列)を共通とする部分における表示画面の選択・配列に創作性を認めることができないので,原告ソフトの全体又はこれに含まれる個別のアプリケーションに属する表示画面の選択及び牽連関係(配列)に,創作性を認めることができるかどうかはともかくとしても,被告ソフトにおける表示画面の選択・配列をもって,原告ソフトの複製ないし翻案ということはできないとされた事例。
 3.ソフトウェアの表示画面は,通常は,需要者が当該商品を購入して使用する段階になって初めてこれを目にするものであり,また,ソフトウェアの機能に伴う必然的な画面の構成は「商品等表示」となり得ないものと解されるから,表示画面が不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するというような事態は,ソフトウェア表示画面における機能に直接関連しない独自性のある構成につき,これを特定の商品(ソフトウェア)に特有のものである旨の大規模な広告宣伝がされたような例外的な場合にのみ,生じ得る。(例外に該当しないとされた事例)
 4.市場における競争は本来自由であるべきことに照らせば,著作権侵害行為や不正競争行為に該当しないような行為については,当該行為が市場において利益を追求するという観点を離れて,殊更に相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような特段の事情が存在しない限り,民法上の一般不法行為を構成することもない。(不法行為を成立させる特段の事情が認められなかった事例) /知的財産権/無体財産権/著作権/不正競争防止法/編集著作物/
参照条文: /著作.2条1項15号/著作12条1項/著作.21条/著作.27条/不正競争.2条1項1号/民法:709条/
全 文 h140905tokyoD.html

名古屋高等裁判所 平成 14年 5月 22日 民事第2部 判決 ( 平成14年(ネ)第69号 )
事件名:  執行判決請求控訴事件
要 旨
 アメリカ合衆国カリフォルニア州ベンチュラ郡上級裁判所の養育費支払条項を含む‘stipulation and order on order to show cause’(理由開示命令手続における合意及び命令)は,執行判決の対象となる外国裁判所の判決には当たらないとされた事例。
 1.民事執行法24条にいう「外国裁判所の判決」及び民事訴訟法118条にいう「外国裁判所の確定判決」とは,外国における裁判権を行使する権限を有する機関が,私法上の法律関係について当事者双方の審尋を保証する手続により終局的に行った裁判で,通常の不服申立の方法では不服申立ができないものをいう。
 1a.同法24条により執行判決を求めることができるのは,外国裁判所の判決および仲裁判断に限られ,それ以外の同判決と同一の効力を有するにすぎないものは,これに含まれない。
参照条文: /民訴.118条/民執.24条/
全 文 h140522nagoyaH.html

東京地方裁判所 平成 14年 1月 29日 民事第47部 判決 ( 平成12年(ワ)第23425号 )
事件名:  商標権侵害差止等請求事件
要 旨
 被告標章「United sports」は、「United」を要部とするものであり、原告商標のアルファベット標記「UNITED」と類似しているとして、被告標章を付した衣類の輸入・販売の差止めならびに商標権侵害による損害の一部請求(2億円)が認容された事例。
 商標権侵害を理由とする損害賠償請求につき、被告標章が付された衣料の仕入単価,仕入量,販売単価,販売数量の記載のある売上元帳,仕入元帳等の帳簿の文書提出命令が発せられた場合に、被告が「コンピュータを用いて仕入,売上管理をしているから,売上元帳や仕入元帳を所持しておらず,また,コンピュータのデータについても,平成12年以降のものしか保有していない」と主張したが、正当な主張と認められず、民訴224条3項により,原告が立証しようとした事実(被告が,被告標章の付された衣料を,1枚450円以上で,平成2年11月11日から平成12年11月10日までの10年間に,1年に200万枚販売し,販売価格から仕入価格を引いた粗利益率が3割以上であったという事実)が真実と認められた事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/書証/
参照条文: /民訴.224条3項/商標.37条/商標.38条2項/商標.39条/特許.105条1項/
全 文 h140129tokyoD.html

最高裁判所 平成 13年 7月 6日 第2小法廷 判決 ( 平成12年(行ヒ)第172号 )
事件名:  審決取消請求上告事件
要 旨
 洋服等を指定商品とする「PALM SPRINGS POLO CLUB」等の文字から成る商標は、著名デザイナーであるラルフ・ローレンが被服等の商品について使用している「POLO」又は「ポロ」の文字から成る各商標と類似しており、ラルフ・ローレンの業務に係る商品と「混同を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項15号)に当たるとされた事例。
 1.商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。
 1a.「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである。
 2.著名商標の顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くと虞があると認められた事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/意匠権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1号15号/
全 文 h130706supreme51.html

東京高等裁判所 平成 12年 2月 29日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第192号 )
事件名:  商標登録取消決定取消請求事件<POLOCITY商標>
要 旨
 1.「POLOCITY」の欧文字と「ポロシティー」の片仮名文字を上下に横書きした登録商標がその指定商品である被服・寝具等に使用された場合には、これに接した取引者・需要者は「POLO」の文字部分に強く印象付けられ、その商品をラルフ・ローレンと経済的または組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本商標の登録は商標法4条1項15号により許されないとされた事例。(商標登録取消決定を支持)
 2.ラルフ・ローレンあるいはポロ社がファッション関連業者として著名といい得る状態に至っており、それらの業務に係る商品に付される商標は「POLO」等と略称されることも少なくないこと、一方、競技としての「ポロ」がわが国においては極めてなじみが薄いことに鑑みれば、ラルフ・ローレンと無関係の「POLO」の文字を含む商標は、いずれもラルフ・ローレンあるいはポロ社の業務に係る商品の標章の略称として広く知られている「POLO」等の信用力を不正に利用しようとするものであることが十分考えられるから、そのような商標が多数存在することをもって、本件商標をその指定商品に使用しても出所の混同を生ずるおそれがないことの論拠とすることはできない、と説示された事例。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h120229tokyoH51.html

東京高等裁判所 平成 12年 1月 27日 第18民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第253号 )
事件名:  審決取消請求事件<PALM SPRINGS POLO CLUB商標>
要 旨
 1.「PALM SPRINGS POLO CLUB」の欧文字と「パームスプリングスポロクラブ」の片仮名文字とを上下二段に横書きした構成よりなる本願商標は、その指定商品の取引者、需要者がこれに接した場合、極く自然に、「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」を意味するものと認識するものと認められ、ラルフ・ローレンに係る引用商標の周知・著名性を考慮しても、本願商標から、「PALM SPRINGS」にある「ラルフ・ローレンに係るポロ製品の愛好者のクラブ」との観念が生ずるとか、「POLO/ポロ」の部分のみが注目され、直ちに引用商標が連想されるとまで認めることはできないとされた事例。(登録拒絶査定を支持した審決の取消)
 2.本願商標のように結合商標中に「POLO/ポロ」が含まれている場合、当該商標からラルフ・ローレンに係る引用商標を連想するか否かは、上記の引用商標の強い識別力等を前提にして、個別具体的に判断するほかはない。
 3.本願商標がその指定商品の取引者、需要者によって「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」と認識されるために、「PALM SPRINGS POLO CLUB」が実在することは、不可欠の前提ではない。 /知的財産権/無体財産権/工業所有権/意匠権/ポロ商標/
参照条文: /商標.4条1号15号/
全 文 h120127tokyoH54.html

東京地方裁判所 平成 11年 12月 21日 民事第47部 判決 ( 平成11年(ワ)第3134号 )
事件名:  商標権侵害差止請求事件
要 旨
 1.欧文筆記体「Salvador」と「Dali」とからなる商標等について商標権を有する原告が、これと同一又は類似する標章を付した時計及びその容器を輸入する被告に対して、その差止め等を請求し、認容された事例。
 2.被告の商品輸入元が倒産したため、被告が商標権侵害となる輸入行為をするおそれがあるとは認められないが、在庫品を廃棄せず、被告の従業員や関係者に無償で譲渡することを考えているため、商標権侵害となる譲渡・引渡・譲渡又は引渡しのための展示するおそれがあると認められた事例。
 3.商標法32条の先使用権の要件の一つである周知性が満たされていないと判断された事例。 (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権)
参照条文: /商標.32条/商標.36条/商標.37条/
全 文 h111221tokyoD4.html

大阪高等裁判所 平成 11年 12月 16日 第8民事部 判決 ( 平成8年(ネ)第3445号、平成10年(ネ)第2842号 )
事件名:  営業表示差止等請求控訴、同附帯控訴事件<営業表示不正競争>
要 旨
 1.「リッツ(RITZ)」という名称(表示)が、被告が「ホテル
 ゴーフル
 リッツ」の名称でホテル経営を開始した平成元年三月当時の日本においても、原告の営業表示として周知性を獲得していた。(事例)
 2.「リッツ(RITZ)」の有する顧客吸引力に只乗りするホテルが多少存在するとしても、「リッツ(RITZ)」の表示の識別力や周知性が減殺されることにもならない。(事例)
 3.被告の洋菓子の名称である「ゴーフル(GAUFRES)」の表示と、原告の著名なホテルの名称である「リッツ(RITZ)」の表示とを結合したからといって、別個の新たな観念が生ずることはなく、単に右の二つの表示が並存しているにすぎないというべきであり、被告表示における「リッツ(RITZ)」の比重が「ゴーフル(GAUFRES)」よりも低いとはいえないから、被告表示は、全体として、原告の営業表示としての本件表示と類似性があるということができる。(事例)
 4.不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」は、親会社、子会社の関係や系列会社などの緊密な営業上の関係が存するものと誤信させる行為をも包含し、原告の営業表示として顧客吸引力を有する「リッツ(RITZ)」の表示を含む「ホテル
 ゴーフル
 リッツ」の表示を被告が使用する行為は、ホテル業者、旅行業者及び一般需要者をして、原告と被告との間に本件表示に化体された顧客吸引力を供与するためのライセンス契約等、何らかの営業上の緊密な関係があるものと誤信させるおそれのある行為(いわゆる広義の混同行為)に該当する。(事例)
 5.周知表示混同惹起行為による営業上の利益侵害の賠償請求(300万円)ならびに賠償請求訴訟の追行のための弁護士費用額の賠償請求(300万円)は認容されたが、「リッツ(RITZ)」の商標保護のための手続(商標登録無効審判手続)に費やした代理人に対する報酬等の費用については、被告の行為との間に相当因果関係を認めることはできないとして、費用相当額の賠償請求が認容されなかった事例。
 (知的財産権/無体財産権/不正競争防止法)
参照条文: /不正競争.2条1項1号/不正競争.3条/不正競争.4条/民法:709条/
全 文 h111216osakaH.html

東京高等裁判所 平成 11年 12月 16日 第6民事部 判決 ( 平成11年(行ケ)第290号 )
事件名:  審決取消請求事件<ROYAL PRINCE POLO CLUB商標>
要 旨
 1.「ROYAL PRINCE POLO CLUB」の欧文字を横書きした本願商標をその指定商品(時計
 その他本類に属する商品)に使用するときは、これに接する取引者・需要者はその構成中の「POLO」の文字に注目し、周知になっているラルフ・ローレンに係る「POLO」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがある、と判断された事例。(登録拒絶査定を支持した審決を支持) (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権/ポロ商標)
参照条文: /商標.4条1項15号/
全 文 h111216tokyoH8.html

東京地方裁判所 平成 11年 11月 30日 民事第47部 判決 ( 平成10年(ワ)第8477号 )
事件名:  特許権侵害差止等請求事件<高純度窒素ガス製造装置特許>
要 旨
 1.高純度窒素ガス製造装置の発明について、構成要件{IX}にいう「上記分縮器内の液体空気の液面の変動にもとづき、上記精留塔に対する上記液体窒素貯蔵手段からの液体窒素の供給量を制御し」とは、分縮器内の液体空気の液面のみによって精留塔に対する液体窒素貯蔵手段からの液体窒素の供給量を制御する制御方式を意味するものと解され、分縮器内の液体空気の液面によって分縮器に対する精留塔底部からの液体空気の供給量を制御するとともに、精留塔底部の液体空気の液面によって液体窒素貯蔵手段からの液体窒素の供給量を制御するという二系列の制御方式は、構成要件{IX}にいう「制御」には含まれないものと解された事例。
 2.高純度窒素ガス製造装置について、被告物件が原告の特許発明の構成要件を充足していないと判断された事例。
 (知的財産権/無体財産権/工業所有権/特許権)
参照条文: /特許.70条/特許.100条/
全 文 h111130tokyoD.html

東京高等裁判所 平成 11年 8月 31日 第18民事部 判決 ( 平成10年(行ケ)第147号 )
事件名: 
要 旨
 1.原告が「ホテルゴーフルリッツ」の商標登録を受ける以前から「Ritz」「リッツ」の表示がセザール・リッツに由来する識別力の高い著名標章として被告によって使用されていることを理由に、原告の商標登録を無効とした審決が正当であるとされた事例。 (知的財産権/無体財産権/工業所有権/商標権)
参照条文: /商標.4条1項15号/商標.46条1項1号/
全 文 h110831tokyoH.html

東京高等裁判所 平成 11年 3月 18日 第18民事部 判決 ( 平成7年(ネ)第3344号 )
事件名:  著作者人格権侵害差止請求控訴事件<三國志 III 事件>
要 旨
 1.「三國志 III 」と題するパーソナルコンピューター用シミュレーションゲームの登場人物の能力値設定ファイルに著作者の予定した範囲外の値を入力するプログラムを製作・頒布する行為が著作者人格権(同一性保持権)および著作権(翻案権)の侵害にあたらないとされた事例。
 2.ゲーム展開を処理するプログラムの改変禁止範囲の限界(同一性保持権で保護されるべき範囲)について、著作権者の意向が、ユーザーに対して明確かつ絶対的なものとしては伝えられておらず、登場人物の能力値を入力するのに著作権者所定の登録プログラムを用いるか、それでは入力できない能力値を入力するために他のプログラムを用いるかは、ユーザーの自由になし得る範囲のものであったと判断された事例。
 3.パーソナルコンピューター用シミュレーションゲームが、静止画像が圧倒的に多い等の理由により、映画の著作物に該当しないとされた事例。
 4.著作権法にゲームの著作物そのものを定義づける規定はないので、本件著作物につき、ゲームの著作物であるとして著作権侵害行為の有無を判断することはできない。
 5.プログラムの改変に関する被告の主張が事実関係の主張というより法的主張であり、原告が控訴審になってからそれを争うことにしても自白の撤回にあたらないとされた事例。
 6.訴えの追加的変更が訴訟手続を著しく遅滞させるものではないので適法であるされた事例(新請求棄却)。 /知的財産権/無体財産権/著作権/ゲームソフト/
参照条文: /著作.2条1項1号/著作.2条1項10-2号/著作.2条3項/著作.10条1項7号/著作.10条1項9号/著作.20条/著作.27条/著作.47-2条/著作.112条/民訴.143条/民訴.179条/
全 文 h110318tokyoH.html