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民事訴訟法講義

訴訟参加


関西大学法学部教授
栗田 隆

1 補助参加(42条−46条)


「補助参加」に関する 文献  判例

1.1 意義

はじめの一歩[設例1.1]
債権者Xが保証人Yに対して保証債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った主債務者Zが、Yからの求償権行使を回避するために、主債務が存在しないことを主張して、Yに補助参加した。
補助参加とは、他人間の訴訟の結果について利害関係を有する第三者が、当事者の一方を勝訴させることによって自己の利益を守るために訴訟に参加することをいう。補助参加人は、自らの利益を守るために自らの名と費用において訴訟を追行するが、相手方との間に請求が定立されているわけではないので、当事者ではない。この点で当事者参加人(47条)や共同訴訟参加人(52条)と異なる。

1.2 補助参加の要件(42条

次の要件がすべて充足されることが必要である。
他人間の訴訟の係属  他人間に訴訟が係属中であるか、または潜在的に係属すること(訴訟が復活し若しくは訴訟に移行すること)が必要である。平成8年法では、補助参加人が再審の訴えを提起すると共に補助参加できることを明確にするために、旧法にあった「訴訟の係属中」に参加できる旨の文言は削除された([法務省*1998a]61頁)[33]。しかし、それでも、訴訟の係属は、「訴訟の結果」の論理的前提であり、また、補助参加人は訴訟自体を設定する行為はなしえないことの論理的帰結である。この講義では、これも独立の要件としてあげることにする(もっとも、これを要件とせずに、「他人間の訴訟」を要件としてあげる文献が多いことに注意[30])。係属中の訴訟がいかなる審級にあるかは、問わない。

潜在的に係属するというのは、具体的には、補助参加人が補助参加の申出をなすとともに次の行為をすることにより、他人間の訴訟が開始ないし再開されることを意味する。
利害関係  訴訟の結果について補助参加を認めるのが適当な程度の利害関係(充分な利害関係)を有すること  一般に、これを「法律上の利害関係」という[27]。これは、概括的に言えば、当事者の一方の敗訴によって参加人の法的地位に不利な影響が及ぶこと、又は勝訴によって有利な影響が及ぶことの可能性があることを意味する。参加人に判決の効力が及ぶことは、必要条件でもなければ、十分条件でもない(例えば、もっぱら当事者のために目的物を所持する受寄者にも判決効(既判力や執行力)は及ぶが(115条1項4号、民執法23条3項)、その根拠は、彼が訴訟の結果に利害関係を有しないからであり、彼の補助参加を認める必要はない)。

判例=法的利益影響説  最高裁判所は、この要件を次のように定式化している。≪民訴法42条所定の補助参加が認められるのは、専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ、これは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合を指す≫(最高裁判所平成13年1月30日第1小法廷決定(平成12年(許)第17号))。

この定式化と前述の定式化(十分な利害関係)との間に大差はない。補助参加を肯定するほどに強くない利害関係を「事実上の利害関係にすぎない」と呼び、他方、補助参加を認めてもよいほどに強い利害関係を「法律上の利害関係がある」と言い換えているにすぎないからである[34]。もちろん、判例が「法律上の利害関係」を「当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれ」と定式化して、概念の明確化に努力をしている点には注意すべきである。しかし、どの程度の影響を及ぼすおそれがあれば法律上の利害関係と言えるかは、依然として明確ではない。この講義でも、「法律上の利害関係」の語や、「法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれ」といった表現を用いるが、その実質は上述のような意味であり、「充分な利害関係」に置き換えることもできると考えている。

補助参加により参加人が訴訟の結果から自己に生ずる不利益を回避しあるいは利益を向上することができることが必要であるが、補助参加がそのための唯一の手段であることは必要でない。他の手段により不利益を回避しあるいは利益を向上することができる場合でも、補助参加がその一つの手段として有効である限り、参加の利益は肯定される。

訴訟の結果  訴訟の結果の意義については、見解の対立がある。
  1. 伝統的な見解は、訴訟物についての判断と参加人の地位との間に論理上の先決関係があることを要求する(例えば、[書記官研修所*2002a]262頁、最近では[笠井*2008a]227頁以下)。この見解は、「訴訟の結果」を、表面的には「訴訟物についての判断」に限定しており、したがって訴訟物限定説と呼ばれる。しかし、114条2項により既判力が生ずる事項の判断を「訴訟の結果」に含めることを否定するものではなかろう(被告が相殺の抗弁に供する反対債権が補助参加人から譲渡されたものである場合に、被告側への補助参加を肯定してよい)。そのような拡張を前提にすれば、この見解は、既判力事項限定説と呼ぶことができる。
  2. これに対して、比較的新しい見解は、訴訟物についての判断に限らず、理由中の判断によって参加人の法的地位が影響を受ける場合でもよいとする。この見解は、訴訟物非限定説と呼ばれ、あるいは既判力事項非限定説と呼ぶことができる。

たしかに、既判力が生ずる事項が補助参加人の法的地位の先決的法律関係である場合には、原則として、法律上の利害関係を肯定してよい。例えば、主債務の存在は保証債務の先決問題であるから、保証人は主債務履行請求訴訟において主債務者に補助参加することができる。保証債務の存在は主債務者の保証人に対する償還債務の先決問題であるので、主債務者は、保証債務履行請求訴訟において保証人に補助参加することができる)。

しかし、法律上の利害関係をこうした先決関係がある場合に限定する必要はない。例えば、会社が役員責任追及訴訟を提起しないため、株主が会社に代位してその訴訟を提起する場合に(会社法847条3項)、会社が被告側に補助参加することが認められている。民訴42条の訴訟の結果を訴訟物に限定すれば、請求棄却判決により会社の賠償請求権が否定されるのであるから、会社が被告側に補助参加する利益はないことになろう。ところが、最高裁判所 平成13年1月30日 第1小法廷 決定(平成12年(許)第17号)は、「取締役の個人的な権限逸脱行為ではなく,取締役会の意思決定の違法を原因とする,株式会社の取締役に対する損害賠償請求が認められれば,その取締役会の意思決定を前提として形成された株式会社の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがあるというべきであり,株式会社は,取締役の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有するということができる」とした。平成18年の会社法849条1項は、さらに進んで、取締役会の意思決定の違法を原因とする損害賠償請求という要件さえもはずした。民訴法42条の特則と見ることができる会社法849条1項は脇に置いて、最高裁平成13年判決に関して言えば、取締役の意思決定の違法は、訴訟物の特定要素の一つではあるが、しかし、取締役会の意思決定の違法の判断に既判力が生ずるわではなく、その意味でその意思決定の違法は訴訟物自体ではなく、理由中の判断と見るべきであり、その場合にも補助参加の利益を肯定することは、訴訟物限定説の維持が困難であることの証左である(なお、[笠井*2008a]228頁は、「訴訟物の特定要素たる権利関係についての利害関係までは補助参加の利益に含むべき場合があるように思われる」とし、この限度での拡張に肯定的である)。

もっとも、「訴訟の結果」が訴訟物に限定されないとしても、無限定というわけにはいかない。非限定説を採用した場合には、どの範囲に限定するのかという難しい問題が生ずることは、[笠井*2008a]229頁の指摘するとおりである。ただ、「訴訟の結果について利害関係を有する」との要件を「訴訟の結果」と「利害関係」とに分析し、「訴訟の結果」の意義を論ずることに意味があるとしても、それを独立の要件とすること(「利害関係は訴訟物に関する判断に依存するものでなければならない」との要件を設定をすること)が妥当であろうか。理由中において判断されるべき争点が補助参加人の利益に強く関わる場合には参加の利益を肯定してよい場合があり、それを前提にすれば、「訴訟の結果」と「利害関係」は一体的に判断されべきであり、両者とも、「訴訟の結果について利害関係を有する」という一つの要件の独立化できない構成要素と見る方が妥当なように思われる。

判例の判断枠組みで考えてみよう
債権者Xが債務者Yに対して提起した金銭支払請求訴訟に、保証人Zは補助参加するだけの利害関係を有するか。判例の定立した判断枠組みにしたがって考えてみよう[26]。

)「訴訟の結果」として、まず債権者勝訴の場合を想定しよう。請求認容判決が確定すると、主債務者は、既判力の標準時前の事由で債務の存在を争うことができなくなる。しかし、その判決の既判力は、保証人に[及ぶ|及ばない]ので(115条1項)、保証人の地位がこの判決から受ける影響は、[大きい|小さくない|小さい|あまりない]。

a')ただし、保証人がすでに保証債務を履行したために主債務も消滅しているような場合には、債権者が勝訴すると、主債務者の財産状況が一層悪化し、保証人の求償権行使は[困難になる|容易になる]。そのような場合には、Xの請求を認容する判決が確定するという訴訟の結果により、Zの法的地位に影響を及ぼすおそれは、[大きい|小さくない|小さい|あまりない]。

)「訴訟の結果」として、次に債務者勝訴の場合を想定しよう。この判決が確定した後で、債権者が保証人に保証債務履行請求の訴えを提起した場合に、保証人は、「主債務が存在しないことが債権者・主債務者間の訴訟で確定しているから、債権者Xは保証人Zに対しても主債務の存在を主張できない。従って、Xは、保証債務の附従性により保証債務の存在を主張できない」と主張することになろう。この主張の第一段は、いわゆる判決の反射効の主張であるが、反射効の理論を承認するか否かにかかわらず、通常であれば、ZはXY間の請求棄却判決を援用して、Xとの訴訟を有利に進めることができる。少なくとも、XのZに対する訴訟提起の意欲をそぐことができる。したがって、この判決がZの法的地位に及ぼす影響(Zの地位の向上)は、[大きい|小さくない|小さい|あまりない]ということができる。

以上の分析から、Zは、XY間の訴訟に補助参加するのに必要な利害関係を有していると[いえる|いえない]。

事 例
)冒頭の設例以外に、次のような場合に補助参加が認められる。
  1. 買主が第三者から追奪請求された場合に、売主はその訴訟に参加できる(買主の売主に対する追奪担保請求(民法561条)は、追奪請求に理由があることを前提とする)。
  2. 債務者の権利不行使以外の債権者代位要件が満たされるときは(民法423条参照)、債権者は債務者の財産権に関する訴訟に補助参加することができる。
  3. 共同不法行為者の一人であるYは、他の共同不法行為者Zに対する被害者Xからの賠償請求が棄却されることにより自分だけが賠償責任を負う結果に実際上なることを回避するために、Xの側に補助参加することができる[17]。YとZが共同被告の場合でも同じである。
  4. 部品の供給者Zは、その部品を用いた完成品の製造販売業者Yがその部品により知的財産権を侵害されたと主張するXから損害賠償請求等の訴えを提起された場合に、Yに補助参加することができる(実例:東京地判平成12年7月14日(平成8年(ワ)第23184号ほか))。
  5. 労災保険の不支給決定取消訴訟において被告(労働基準監督署長)が敗訴すると労災保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項により次々年度以降の保険料が増額される可能性がある場合には、事業主は、被告を補助するため訴訟に参加することができる(最高裁判所平成13年2月22日第1小法廷決定(平成12年(行フ)第3号))。
  6. 行政法規が一定範囲の個々人の生活利益を保護することも目的としていると解される場合には、これに該当する者はその法規に基づく行政処分に関する訴訟(取消訴訟等)に補助参加する利益を有する(最高裁判所 平成15年1月24日 第3小法廷 決定(平成14年(行フ)第7号)──廃棄物処理法15条に基づいてなされた管理型最終処分場の設置許可申請に対する不許可処分の取消訴訟において、地元住民が被告側に補助参加をすることが認められた事例)
  7. ある債権者が提起した配当異議訴訟に債務者の参加の利益は肯定してよい(ただし、係争債権に既判力のある債務名義がある場合でも、債権者は配当異議の訴えを提起することができるとの見解を採用した場合に、債務者が補助参加人として既判力ある判断に反する主張をすることができるかは、別途検討が必要である)。

)次のことは、補助参加の理由として不充分であるとされている。
  1. 原告が本案訴訟の終了後に参加申出人に対しても別訴を提起する可能性がある場合に、判決理由中の既判力の生じない判断が別訴で参加申出人に事実上不利益な影響を及ぼす可能性があるというだけでは、参加理由として不十分である(最高裁判所平成13年2月22日第1小法廷決定(平成12年(行フ)第3号))。

b')次のことも、補助参加の理由として不充分である。
  1. 離婚訴訟の原告と恋愛関係(不倫関係)にあり、離婚後の原告と結婚したいこと。事実上の利害関係は肯定できるが、それは法的な保護に値する利害関係とはいえず、したがって補助参加の利益とすることはできない。
  2. ある債権者が提起した配当異議訴訟に他の債権者が補助参加する利益は原則として否定される。原告が勝訴しても、他の債権者への配当が増加することはないからである(民執法92条2項の反面解釈。なお、原告が敗訴しても、他の債権者の配当額が減少させられることはない)。
  3. 当事者(会社)が敗訴して財産が減少すれば、株主への利益配当が少なくなるということ。株主への利益配当の減少は法的利益であるが、会社制度の下で一般的に補助参加によって保護すべき利益であるとは言い難い。会社役員責任追及訴訟については、株主にも補助参加の利益が肯定されているが、これは責任追及訴訟の特質に基づく例外というべきである。ただし、ここで例外が認められている以上、会社が当事者となっている他の類型の訴訟においても、株主の補助参加の利益が肯定されるべき場合があることは認めておくべきであろう。

)次の場合には、補助参加の利益の存否の判断は、微妙である。
  1. 被参加人が敗訴して財産が減少すれば、被参加人に対する補助参加人の扶養を受ける地位が侵害されること。名古屋高等裁判所 昭和43年9月30日 民事第2部 決定(昭和43年(ラ)第87号)は、失踪中の夫に対する保証債務履行請求の訴えが提起され、送達が公示送達の方法でなされている場合に、夫婦の協力義務(民法752条)を根拠に、妻が夫のために補助参加することを許容した[20]。異論の余地はあろうが、このような場合には補助参加の利益を肯定すべきである。
  2. 交通事故の被害者の治療に当たった医師に過失があり異時的共同不法行為が成立すると主張して、被害者が医師の使用者に対して損害賠償請求を求める訴訟に、交通事故の加害者が被害者側に補助参加すること。このような補助参加は、最高裁判所平成13年3月13日第3小法廷判決(平成10年(受)第168号)などに見られる(参加の利益は問題にされていない)。もし、病院側が勝訴すれば、交通事故の加害者は被害者から損害の全部について賠償金の支払を求められ、かつ、病院側に求償することが困難となるから、それを避ける点に補助参加の利益を見いだすことはできる。また、被害者が勝訴した場合には、交通事故加害者は病院から求償請求されたり、あるいは被害者からなお支払請求される可能性は残されているものの、それでも、賠償金の全額を負担しなければならないというリスクは大幅に低下する。こうした点に、補助参加の利益を見いだすことができる。もっとも、賠償金の全額の支払義務は、共同不法行為が成立するか否かに関わらず生ずるものであり、また、病院に対する求償訴訟においては、被害者の病院に対する請求を棄却する判決の効力も、被害者の交通事故加害者に対する請求を認容する判決の効力も及ばないのであるから、(b)1と2に掲げた先例に照らせば、被害者の病院に対する請求が棄却されることにより交通事故加害者が受ける不利益が法律上の影響とは言えないとの見解も可能であろう。
  3. 工事現場に搬入された商品の買主が建築工事の施主であるか請負人であるかが問題となっている場合に,売主が請負人に対して提起した代金支払請求訴訟に施主が補助参加して、「買主は自己ではなく請負人である」と主張することについて、補助参加の利益は認められない。最高裁判所 平成14年1月22日 第3小法廷 判決(平成10年(オ)第512号)が、訴訟告知の効力が問題にされた事案において、訴訟の結果によって施主に対する代金支払義務の有無が決せられる関係にあるとはいえないことを理由に、この趣旨を説示している[37]。もっとも、この先例は、参加的効力の及ぶ理由中の判断とは「判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではない」としており、買主は施主であって請負人ではないとの理由中の判断のうち、買主は施主であるとの判断には参加的効力が生じないことを前提にしている。しかし、この前提に立っても後訴において、買主は請負人ではないとの判断に参加的効力を肯定する余地はある。そして、売主の請負人に対する代金請求が認容されれば、施主に対する代金請求は実際上なされず、逆に棄却されれば、施主に対する代金請求の訴えが提起されるのであるから(現に提起された)、この訴訟の結果は施主の法的地位に影響を及ぼすと言うことができる。買主が第三者であったりあるいはそもそも買主が存在しないという余地は残されているものの、しかし、売主が納入した商品が建築工事に現に使われたことを前提にするならば、通常の場合は、買主は請負人か施主であろう。この前提が成り立つ限り、施主も紛争の公平な解決のためにこの訴訟に補助参加することを肯定すべきであり、売主敗訴の場合には、買主は自分ではないことの理由付けのために、買主は請負人であるとの主張(否認の理由付けのための間接事実の主張)を禁じられる形で敗訴の不利益を分担すべきである。ただ、その問題と、53条3項の適用の前提となる訴訟告知に応じて補助参加すべき義務(責任)とは別個の問題である。本決定は後者に関する先例と見るべきであり、前者の問題(42条の参加の利益)については未解決のままにされていると見るべきであろう。

c')実際の補助参加の事例の中には、最高裁の示した先例に照らすと参加の利益の存在を肯定すべきか迷うものもある。 補助参加の利益が否定されるべき場合でも、当事者から異議の申出がなければ、補助参加が不許になることはないからである。
  1. 債権の譲渡と差押えとが競合し、債権譲渡と債権差押えの優劣が不明確であるために債務者が供託し、譲受人が差押債権者を被告にして払渡請求権が自己に属することの確認訴訟を提起した場合に、当該債権の債務者がいずれかの側に補助参加する場合。いわゆる一括支払システムに関する最高裁判所 平成15年12月19日 第2小法廷 判決(平成10年(行ツ)第149号)の事件では、債務者が譲受人側に補助参加しているが、この事件ではおそらく当事者から異議が述べられていなかったであろう。異議が述べられた場合に、補助参加が許されるか否かは、微妙である。

補助参加の利益が定型的に肯定される場合
株主による会社役員に対する責任追及の訴えについては、会社が被告側に補助参加する場合に、補助参加の利益の有無が問題となる。訴訟物たる権利関係が会社の権利であり、会社被告側に参加することは、自己の権利を否定するための参加であり、そのような参加を許すべきではないとの考えも成り立つからである。この点について、最高裁判所平成13年1月30日第1小法廷決定(平成12年(許)第17号)は、取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において、会社は、特段の事情がない限り、取締役を補助するため訴訟に参加することができるとした。

しかし、新会社法は、会社は訴訟物についての判断及び理由中の判断について利害関係を有するのが通常であり、また、原告勝訴の場合の費用償還請求権を考慮すると訴訟の運営についても利害関係を有し、かつ、補助参加の利益の有無を巡る争いを避けるのが賢明であるとの判断の下に、責任追及等の訴訟においては会社は定型的に民訴42条の補助参加の利益を有し、個別の事案において参加の利益の有無を問うことなく会社は被告側にも補助参加することができるとの趣旨で、同法849条1項本文の規定を置いた([相澤*2005a]262頁)。この規定が最高裁が示してきている「法的利益影響論」の枠組みに収まるとは思えない。この枠組みを超えて参加を許容した規定とみてよい。

会社の参加のみならず、株主の参加についても同様である。また、多数の株主が補助参加すると、訴訟手続を著しく遅延させたり、裁判所に過大な負担を及ぼす場合があるので、そのような場合については補助参加することができないとされた(会社法849条1項ただし書)。その場合には、当事者から異議が述べられなくても、裁判所は職権で補助参加を許さないとする裁判をすることができると解すべきである。このただし書は、他の類型の補助参加にも類推適用されてよい(端的に言えば、会社法849条1項ただし書の内容は、本来、民訴法42条に規定されるべきである)。

準用・類推適用

補助参加に関する42条以下は、直接には判決手続(訴訟)に関する規定であるが、決定手続にも準用され(民事執行法20条、民事保全法7条、破産法13条)、準用を定める規定がない場合でも類推適用されうる(文書提出命令の手続においても、準用と言うべきか類推適用と言うべきかは別として、補助参加を許すべきである)。

1.3 補助参加の手続(43条・44条)

補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない(43条1項)。訴訟法律関係を明確にするために、補助参加の申出は明示的になされなければならない。共同訴訟人間でも同様であり、共同訴訟人が利害を共通にするということは、明示的申出を不要とする理由にはならない(最高裁判所昭和43年9月12日第1小法廷判決・民集22巻9号1896頁)。なお、明示の申出を不要とする見解もある(当然の補助参加論)。

補助参加の申出は、補助参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができる。例えば、上訴提起あるいは再審の訴えの提起とともにすることができる。

申出があったことは、参加により影響を受ける当事者に確実に知らされなければならない。書面による申出の場合には副本が、口頭による申出の場合には申出を録取した調書が、当事者双方に送達される(規則20条1項・2項・1条

補助参加がなされると、それだけ訴訟手続が複雑になるので、当事者(被参加人およびその相手方)は、参加を阻止するために、参加申出に異議を述べることができる。ただし、当事者がこれを述べないで弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後は、述べることができない(44条1項・2項)。

異議が述べられると、裁判所は、補助参加の許否について決定で裁判する。この場合に、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない(44条1項)。この裁判に対しては、即時抗告をすることができる(44条3項)。参加許可決定に対しては異議者が、不許可決定に対しては参加申出人および被参加人が抗告の利益を有する。

異議が出されても、参加不許の決定が確定するまでは、参加申出人は訴訟行為をすることができ、不許可決定が確定した場合でも、当事者(被参加人)が援用すれば、その訴訟行為は効力を維持する(45条3項・4項)。

1.4 補助参加人の訴訟上の地位(45条

補助参加人は、次のように当事者に準ずる面を有する。
補助参加人は、他方で、次のように非当事者の面を有する。
参加人は、被参加人に従属して、これを補助する者であるので、次の訴訟行為はなしえない(しても無効)。
参加人の行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない(45条2項)。例えば、参加人が否認した事実を被参加人が後から自白した場合には、被参加人の自白が優先する。また、被参加人が自らの自白を維持する意思であることが明らかな限り、参加人は自白された事実を争うことはできない(被参加人がした自白は、彼自身が撤回するのが本則である。しかし、≪撤回要件が満たされるのであれば、被参加人は自白を撤回する意思を有する≫と認められるときは、参加人は、撤回要件の充足を主張・立証しつつ、被参加人のした自白を撤回できる)。

形成権の行使
被参加人が訴訟外ですでに解除、取消し、相殺、時効の援用等の意思表示をしている場合には、補助参加人は、これらの意思表示がなされた事実を主張することができる。他方、被参加人がその意思表示をしていない場合に、参加人がこれらの形成権を訴訟上行使できるかについては、見解が分かれているが、肯定説で良いであろう[13]
  1. 否定説  私法上その権能が認められている場合(民法423条436条2項・457条2項など)は別として、当然にはできない。
  2. 肯定説[29]  参加人はあらゆる手段を利用して被参加人を勝訴に導く固有の権限を有していること、被参加人には異議権が留保されているので、被参加人の保護に欠ける点はないことなどを理由に、参加人が被参加人の私法上の権利を行使することを認める。
補助参加人の地位の承継
補助参加人の地位(訴訟上の地位)も承継可能である。すなわち、補助参加により守られるべき実体法上の地位が承継されると、その承継人が参加人の地位を承継する。 補助参加人の行為と被参加人の訴訟行為との重複──控訴提起について
事実の主張などについては、訴訟行為の重複を問題にする必要はないが、上訴の提起については、後でなされた行為をどのように扱うべきかが問題となる。

最高裁判所 令和3年2月24日 大法廷 判決 (令和元年(行ツ)第222号,同年(行ヒ)第262号)は、(α)補助参加人の控訴提起後に被参加人が提起した控訴は,二重上訴であって不適法であるから,却下すべきであるとした。このことは、(β)被参加人の控訴提起後に補助参加人が控訴を提起した場合でも同じである。
(α) の場合について、敷衍しておこう。
  1. 被参加人が自己の提起した控訴を取り下げることは、二重上訴を理由とする控訴却下を目的とするものと理解され、その控訴取下げは、参加人が提起した控訴に影響を与えない。
  2. 参加人の控訴提起後に提起された被参加人の控訴を不適法として却下することとの関係で,参加人による控訴の取下げは参加人に不利な行為であるから,被参加人の同意なしにはなしえないとしなければならない。参加人が控訴提起後に訴訟追行の意欲をなくし,その意思を表明した場合でも,控訴の取下げについて被参加人の同意が得られないときには,参加人は訴訟にとどまらなければならないが、控訴審で被参加人が敗訴して訴訟が終了した場合に,参加人が訴訟追行の意思を表明した以降の訴訟費用を参加人に負担させるのは,適切でないであろう。
  3. α請求とβ請求の複数請求訴訟において被参加人が全面敗訴し,参加人がα請求敗訴部分について不服を申し立てる目的で控訴を提起した後で,被参加人が一審判決のうちβ請求に関する部分について不服を申し立てる目的で控訴を提起した場合は、どうすべきか。この場合でも,参加人の控訴自体は不適法として却下されるべきであるとしつつ,参加人の控訴により開始された控訴審手続の中で,被参加人は不服申立て範囲を拡張することができるとし、控訴提起の手数料について逓減原則を受けるとすべきである。
  4. 被参加人が提起する控訴は、参加人の先行控訴により不適法として却下されるリスクがあるので、その場合にそなえて、参加人は、参加人の先行控訴が存在しないことを確認することでできるまで控訴手数料の納付を留保して控訴を提起することができるとすべきである。

1.5 補助参加人に対する判決の効力(46条

はじめの一歩[設例1.5]
債権者から保証債務の履行を求められた受託保証人が主債務者に事前の通知をしたところ、主債務者から弁済ずみであるとの返事がきたので、支払わないでいた。ところが、債権者が保証債務履行請求の訴えを提起してきた。主債務者が直ちに補助参加して主債務の消滅を主張したが、裁判所は主債務の存在を認めて、請求認容判決を下した。保証人が主債務者に対して求償請求の訴えを提起した。主債務者は、主債務は前訴の口頭弁論終結前に弁済により消滅しており、保証人が敗訴したのは訴訟追行がまずかったからであり、主債務がなかった以上、求償に応ずる義務はないと主張した。どうなるか。
参加人が被参加人と共同して訴訟を追行した以上、彼は被参加人敗訴の責任を公平に分担すべきであり、敗訴の原因を被参加人の訴訟追行の不十分に帰すことができないとすべきである。この思想に基づいて46条が、「補助参加に係る訴訟の裁判は、補助参加人に対してもその効力を有する」と定める。

これにより、例えば、債権者の保証人に対する保証債務履行請求訴訟において、主債務者が保証人側に補助参加したが敗訴した場合に、保証人からの求償訴訟において、主債務者は、主債務が消滅していたことを保証人に主張しえないことになる。この効力は既判力とは別個の拘束力であり、参加的効力と呼ばれる(参加的効力説=通説)[28]。その特質は、次の点にある。
例 外
参加的効力は、参加人が十分な訴訟行為をなす機会を有していたことを前提とする。46条各号所定の場合には、この前提が満たされないので、その限りで参加的効力は生じない。

参加的効力の生ずる判断の範囲
参加的効力は、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断にも及ぶ(最高裁判所昭和45年10月22日第1小法廷判決(昭和45年(オ)第166号))。

ただし、参加的効力は、理由中のすべての判断に生ずるのではなく、敗訴の不利益の公平な分担に必要な範囲でのみ生ずる。具体的な範囲について議論が詰められているとは言い切れないが、最高裁は、訴訟告知を受けたが補助参加しなかった者に対する参加的効力につき、≪参加的効力の及ぶ理由中の判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではない≫との基準をうち立てている(最高裁判所平成14年1月22日第3小法廷判決(平成10年(オ)第512号))。これは、商品の売主が建築工事の請負人に対して代金支払請求の訴えを提起したところ、請負人から「買主は施主である」との主張がなされたため、売主が施主に訴訟告知をした事案である。施主は補助参加しなかったが、訴訟告知を受けていたので、53条4項により参加的効力が及ぶ余地があった(ただし、最高裁は、この施主は売主と請負人間の訴訟の結果に法律上の利害関係を有しないので、そもそも補助参加人にはなれず、したがって訴訟告知を受けても参加効力が彼に及ぶことはないとした)。裁判所が、買主は請負人ではなく施主であるとの理由で請負人に対する代金支払請求を棄却し、その判決が確定した後で、売主が施主に代金支払請求をした場合に、施主は「買主は自分ではない」と主張することができるかが、問題となった。最高裁は、前訴判決中の「買主は請負人ではない」との判断は主要事実に関する判断であるが、「買主は施主である」との判断は、主文を導き出すために必要な判断ではなく、傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから、これに参加的効力が生じることはないとした。

参加的効力のある判断と既判力のある判断との抵触
幾分複雑であるが、次のような事例を考えてみよう。
  1. Yが占有している物について、XがYを被告にして所有権確認の訴えを提起し、その請求認容判決が確定した。
  2. その後で、XY間でその物についてXを賃貸人、Yを賃借人とする賃貸借契約が成立して、Yが引き続き占有使用している時に、Zが「真の所有者は自己であり、Xが所有権を取得したことは当初からない」と主張して、Yに対して所有権に基づく引渡請求及び不当利得返還ないし損害賠償の請求の訴えを提起した。
  3. YがXに訴訟告知をし、Xが補助参加したが、Zの主張が全面的に認められ、Zの請求を全て認容する判決が確定した。
  4. その後で、YがXに対して損害賠償ないし不当利得返還請求を提起し、XがYに対して賃貸借契約が有効に存続していることを前提にして賃料支払請求及び所有権確認請求の反訴を提起した(XY間の訴訟の口頭弁論終結後にXの所有権の喪失をもたらす実体法上の事由は、何もないものとする)。

XY間のこの第2訴訟では、XY間の第1訴訟における「Xに所有権がある」という内容の既判力ある判断と、ZY間の訴訟の判決理由中における「真の所有者は当初からZであり、Xが所有権を取得したことはない」という内容の参加的効力の生じている判断とが抵触する。どのように解決すべきであろうか。

この場合には、Yは、Xの所有権の主張を参加的効力により封ずることができるとすべきであろう。参加的効力の生じた判断は、XY間の訴訟の既判力が及ばないZを当事者とする訴訟において、Xを補助参加人として下された最新の判断であり、その判断を優先させることは、同一当事者間における紛争の蒸し返しを許容することにはならず、また、XY間におけるX勝訴判決の存在は、ZY間の訴訟におけるY敗訴の負担をXに分担させる必要を減ずるものではないからである。

一般に、既判力の生じた判断の通用力は、その後の実体上の変動がない限り維持されるのが原則であるが、例外的に、実体的変動がなくても、その後の訴訟の結果により否定されることがある。上記の事例の解決も、その一例である。

1.6 共同訴訟的補助参加

意 義
判決の効力(既判力・執行力・形成力)が補助参加人にも拡張される場合には、補助参加人の実体法上の地位ないし利益は、判決により強く影響される。通常の補助参加人に与えられた手段では、彼がその法的利益を十分に守ることができない場合には、彼の訴訟上の地位を強化する必要がありる。そこで、民事訴訟法に明文の規定はないが、解釈上、共同訴訟的補助参加という参加人の地位が強化された補助参加形態が認められている。

どのような場合に共同訴訟的補助参加が認められるかは、(α)参加人が有する実体的利益の大きさ、(β)その利益が判決効の拡張により影響される度合い、(γ)その利益の保護を被参加人の訴訟追行のみに委ねたのでは不十分であることの度合い(被参加人が参加人の利益保護のために訴訟追行する立場にない場合にはその度合いが高まる)を考慮して決定され、共同訴訟的補助参加人の訴訟上の地位をどの程度強化をすべきかも、上記の要素を考慮して決定される(基本的に[長谷部*2017b]102頁以下に従う)。

具体的にどのような場合に共同訴訟的補助参加が許されるかについては議論が錯綜しているが([長谷部*2017b]89頁以下)、次の場合には、おおむね肯定される。
  1. 判決の対世効が及ぶ場合
    • 取締役選任の株主総会決議の取消訴訟において、被選任取締役が被告(会社)の側に補助参加する場合
    • 訴願棄却裁決の取消を求める訴訟は、公権力の行使に関する法律関係を対象とするものであつて、右法律関係は画一的に規制する必要があるから、その取消判決は、第三者に対しても効力を有し、その訴訟に参加した利害関係人は、民訴法69条2項[現45条2項]の適用を受けることなく、あたかも共同訴訟人のごとく訴訟行為をなし得べき地位を有するものであり、被参加人と参加人との間には同法62条[現40条]の規定が準用され、いわゆる共同訴訟的補助参加人と解するのが相当である(最高裁判所 昭和40年6月24日 第1小法廷 判決(昭和37年(オ)第1128号))
    • 実用新案登録無効の審判については、その確定審決の登録がなされたときは、同一の事実及び同一の証拠に基いて再びその審判を請求することができないものであつて、その限度において審決に対世的効力があるから、このような審決の取消訴訟に補助参加した者には、補助参加人としてなしうる訴訟行為の範囲において、必要的共同訴訟における共同訴訟人と同様の地位を与え、民訴法第62条(現40条)の規定を準用するのが相当である(大正10年実用新案法の事件 。東京高等裁判所昭和51年9月22日判決・無体財産権関係民事・行政裁判例集8巻2号378頁)。
  2. 判決効が及ぶ場合 1 被担当者として及ぶ場合(115条1項2号)
    • 債権者代位訴訟において被代位者が債権者側に参加する場合(代位訴訟について法定訴訟担当説を前提にする)。
    • 遺言執行者が当事者となっている遺言執行に関する訴訟(例えば、受遺者が提起する遺贈義務履行請求訴訟)に、相続人が遺言執行者側に参加する場合([長谷部*2017b]97頁以下)
  3. 判決効が及ぶ場合 2  その他の理由により及ぶ場合
    • 受益者を被告とする詐害行為取消訴訟において、債務者は被告にならないが(民法424条の7第1号)、法律関係の混乱(不統一処理)を避けるために、請求認容判決の効力(債務者がした行為の取消の効果)は債務者(及び全ての債権者)にも及ぶとされている(民法425条)。判決の効力は、債権者と債務者の間に及ぶのみならず、債務者と受益者との間にも及ぶ(そうでないと、法律関係の統一的処理ができない)。この判決により債務者が受ける不利益は大きいので、債権者は債務者に対して訴訟告知をしなければならない(民法427条の7第2項。この訴訟告知は、債務者に判決効を及ぼす前提条件であり、訴訟告知がなされない場合には、訴えを却下すべきである)。債務者は、請求認容判決により受ける不利益が大きのであるから、債務者が補助参加した場合には、共同訴訟的補助参加と解すべきである(債権者が民訴法46条所定の要件が)。
    • なお、転得者を被告とする詐害行為取消訴訟については、転得者のみを被告とすれば足りるとされ(民法424条の7第2号)、また、判決効は債務者に及ぶこと及び債務者への訴訟告知がなされなければならないことは同じであるが、転得者の前者(受益者及び前転得者)への判決効の拡張や訴訟告知の必要性は規定されてない。取り消されるのは債務者の行為であり、債務者の行為が転得者に対する取消訴訟により取り消されれば、転得者は、受益者の債務者に対する権利(反対給付返還請求権(民法425条の2)又は取消しにより消滅しなかったことになる債権(同425条の3)を行使することができるので(同425条の4)それで足りると考えられているのであろう。では、債務者の時価1億円の不動産を債務者が受益者に100万円で売却し、受益者が転得者に1100万円で売却し、転得者に対する取消請求訴訟により債務者の行為が取り消された場合はどうか。転得者は債務者に対して100万円の返還請求を行使することができるが(民法425条の4第1号)、これだけでは、転得者は受益者に支払った1100万円を回復することができない。転得者は、受益者に対して差額の返還を請求することができるとしなければならないが、これは、受益者と転得者間の売買契約を解除して、請求することになろう(転得の当時に債務者・受益者間の売買が債権者を害する行為であることを知っている場合にでも、民法543条の規定にかかわらず解除できる場合があることを前提にする)。もしそうであるとすれば、解除の前提として、転得者は、受益者に対して債務者・受益者間の売買が詐害行為に該当することを確実に主張できるようにしておかなければならないが、それは通常の訴訟告知(民訴法53条)で足り、また、受益者の補助参加は民訴法46条の適用のある補助参加(通常の補助参加)とすることで足りることになろう。

判決効が拡張される場合であっても、共同訴訟参加(52条)をすることができる地位にある者が補助参加した場合には、参加人の意思(共同訴訟参加を選択しなかったという意思)を考慮すれば、共同訴訟的補助参加として扱う必要はないとされることがある(最高裁判所 昭和63年2月25日 第1小法廷 判決(昭和61年(行ツ)第178号))[23]。

共同訴訟的補助参加人の地位
判決効が参加人にも及ぶことを考慮して、通常の補助参加人の場合に比べて、次のように独立性が高められる。
その他の点については、通常の補助参加人と同じである。
 () 最も重要なのは参加時の訴訟状態に拘束されることである(控訴審で参加する場合には審級の利益を失い、中間判決による手続整序に従わなければならず、自白の拘束力が認められる訴訟手続において被参加人がすでに自白している場合には撤回要件を具備しないと撤回できず、時機に後れた攻撃防御方法の提出を制限される。以下「訴訟状態拘束効」というが、「参加人の訴訟状態承認義務」([長谷部*2017b]103頁)ということもある)。この点について、参加人は被参加人の訴訟行為によっては十分に保護されない実体的利益を有しているので、参加時点の訴訟状態に拘束されないとし、相手方の利益保護については、相手方が補助参加人に訴訟告知をさせ、被告者が参加可能になった時点以降の訴訟状態に拘束させれば足りるとする見解がある([長谷部*2017b]103頁以下。判決効が参加人に対世効として及ぶのか、訴訟担当を理由に及ぶのかを問わない)。訴訟状態拘束効が生ずる事項が専ら相手方の利益保護のために認められる場合(例えば、相手方の同意があれば撤回可能な自白の拘束力)については、そのように解してよいであろう。
 ()共同訴訟的補助参加にあっても、補助参加により守られるべき実体法上の地位が一般承継されると、一般承継人が参加人の地位を当然に承継する。多くの場合に訴訟手続全体が中断し、受継手続を経て手続を受継する(ただし、124条2項に注意)。例外的に、人訴15条による参加の場合のように、訴訟手続が中断しないものとされている場合には、承継人は裁判所に一般承継があった事実を申し出て補助参加人としての訴訟行為をすることになる。特定承継の場合には、通常の補助参加について述べたことが妥当する。

検察官が被告となっている人事訴訟への補助参加(人訴15条
例えば、認知の訴えにおいて、父が死亡している場合には、検察官を被告にすることになる(人訴12条3項)。しかし、検察官自体は、私人間の身分関係に関する訴訟を熱心に追行する立場にはないのが通常である。この場合に、訴訟の結果により相続権を害される第三者(利害関係人)に訴訟参加の機会を与え、彼の利益を自ら守ることができるようにするのが適当である。そのような場合には、裁判所は、その利害関係人を訴訟に参加(補助参加)させることができる(特に、本来の被告である父と同居していた長男等が、父の行状に関する資料を提供できる場合には、彼を補助参加させることにより真実の発見の可能性が高まることが期待できる[小野瀬=岡*2004a]69頁)。利害関係人が自ら補助参加したのであれ、裁判所の決定により補助参加したのであれ、この補助参加人は、訴訟の結果について強い利害関係を有するので、独立性が高くされている(民訴法45条2項の不適用、40条1項から3項の適用(3項は中止についてのみ))[38]。これも共同訴訟的補助参加である。

行政事件訴訟法22条の参加
同法32条により処分又は裁決を取り消す判決の効力は第三者に対しても効力を有するとされていることを考慮して用意された同法22条の参加も、単なる補助参加ではなく、共同訴訟的補助参加に類するとされている。参加の要件が「訴訟の結果により権利を害される」とされ、民訴法の補助参加の要件よりも厳しく、かつ、参加人には必要的共同訴訟人の地位が与えられているからである(行訴法22条4項による民訴法40条1項から3項の準用)。参加の要件に関して、次の判例がある。
  1. 最高裁判所 平成14年9月26日 第1小法廷 決定(平成13年(行ニ)第5号、6号 )   不当労働行為事件において、労働組合の申立てによりその所属組合員たる労働者に差額賃金を支払うべきことを命ずる救済命令が発せられた場合に、当該労働者は、その救済命令の取消訴訟について行政事件訴訟法22条1項にいう「訴訟の結果により権利を害される第三者」には当たらず、その訴訟に参加することができない。

2 独立当事者参加(47条−48条)


2.1 特質

はじめの一歩[設例2.1]
ある物について、XがYに対して所有権確認の訴えを提起した。その物が自己の所有物であると主張するZがこの訴訟に独立当事者参加し、XとYに対して、その物がZの所有に属することの確認の訴えを提起した。
独立当事者参加は、二当事者対立訴訟に第三者が独立の当事者として参加し、従前の当事者に対する自己の請求と在来当事者間の請求とについて論理的に矛盾のない統一的審判を求める参加形態である(47条)。参加の目的は、次の2つである。
  1. 在来当事者間で参加人に不利な判決が確定することを防止すること
  2. 自己の請求を貫徹すること

上記の設例において、XYZ間において、ある物の所有権がXY間ではXにあり、YZ間ではYにあり、ZX間ではZにあると判断することは、既判力の相対性の原則からすれば、既判力の抵触とはいえないが、それでも論理的には矛盾している。独立当事者参加は、こうした論理的に矛盾した解決を防止して、論理的に合一性のある解決を目指すものである。したがって、三者間での主張共通・証拠共通が生じる。それは、各当事者が合一確定に必要な範囲で他人間の請求にも干渉でき、各請求について三者が独自の立場から攻撃防御方法を提出することができる。

こうした特質があるので、この訴訟は、通常の二当事者対立訴訟との対比において、三面訴訟と呼ばれる[10]。

片面的参加の許容
在来当事者の一方が参加人の権利主張を争わない場合がある。この場合には、参加人はその者に対する請求を定立する必要はない(無理に定立しても、訴えの利益がないと判断されることがある)。このような参加を片面的参加という[4]。この場合でも、前記の二つの目的(a,b)は達成される。

なお、独立当事者参加の基本的機能を前記aと見て、いずれの在来当事者に対しても請求を定立することなく参加できるとする見解も有力である([森*1956a]132頁など)[16]。防御方法を提出できることに意味がある。

2.2 独立参加の要件・類型(47条

詐害訴訟防止参加(詐害防止参加)
他人間の訴訟の結果によって権利が害されると主張する者は、その訴訟が自己に不利な結果にならないように、その訴訟に当事者として介入することができる。このタイプの参加は、一般に、詐害訴訟防止参加(あるいは詐害防止参加)と呼ばれている。この要件がいかなる場合を指すかについては、見解が分かれている。
  1. 既判力影響説  当事者参加が許されるのは、在来当事者間の判決の既判力が当事者双方と参加人との間でも生ずる場合か、少なくとも判決を参加人も承認せざるをえない(反射効を受ける)関係上その訴訟を放置すると判決の効力によって参加人の利益が害される場合に限られる([兼子*体系]412頁以下)。
  2. 論理的依存関係説  第三者の権利または法律上の地位が他人間の訴訟の訴訟物たる権利関係の存否を論理上の前提としているため、判決確定により不利益を受けざるを得ない場合にも許される。
  3. 詐害意思説  当事者がその訴訟を通じて参加人を害する意思をもつと客観的に認められる場合に参加が許される。

第二説(上記B)にあっては補助参加との競合が生ずることになるが、それを率直に認めつつも、補助参加をなしうる利害関係人の内で在来当事者の訴訟に独立の当事者として介入してまで自己の利益を守る必要性があると認められる者にこの参加が許されると考えて、その類型化をはかるのが適当であろう。具体例:
いずれの場合についても、参加人の請求をどうするかが問題となるが、もともと他人間の訴訟において自己に不利な結果をもたらす判決が確定することを防止することを主目的とするのであるから、参加人が自己の請求を立てる必要は必ずしもない。彼は、当事者たる地位において訴訟資料を提出し、上訴の提起等ができれば、それで自己の利益を守ることができるからである。しかし、現行法は、何の請求も提示しない独立当事者参加を認めていないので、適当な請求を立てて参加すべきである[14]。

権利主張参加
設例2.1が典型例である。そのほかに、次のような例がある。
上記のいずれの類型に該当するかで取扱いがそれほど異なるわけではない(ただし、48条の文言上は、権利主張参加の場合にのみ既存当事者の一方の脱退が認められている)。ある事例がいずれに該当するかについて、神経質になる必要はない。一つの事件が両類型の要素を持つ場合もある。

はじめの一歩[設例2.2]
債権者代位訴訟への参加
Aが、Bに対する債権(α債権)に基づいて、BのCに対する債権(β債権)を行使する債権者代位訴訟を提起したとしよう。この場合に、Bは、Aによる権利行使を知った後では、その妨げとなるような行為をすることができず、別訴でCに請求することはできない(当事者適格を有せず、また、二重起訴の禁止に触れると解されている)。他方、Bがα債権の不存在を主張し、自分がβ債権を行使できることを主張してこの訴訟に当事者参加することは許される(Aに対しては債務不存在確認請求、Cに対しては支払請求)。それは、二重起訴の禁止の趣旨に反せず、また、代位の基礎であるα債権の存否自体が争われていて、Bによるβ債権の行使の許否はこれに依存し、Bにとって彼の権利が他人によって行使されること自体が不利益だからである(この点は、法定訴訟担当説をとっても、固有適格説をとっても同じである。事案は異なるが、最判昭和48.4.24民集27-3-596頁・[百選*1998b]175事件(吉野)参照)。なお、BがAまたはCの側に補助参加することも可能である(Aの側への補助参加は、法定訴訟担当説では共同訴訟的補助参加となる)。

債権者代位訴訟に債務者が独立参加したときの判決内容を、場合分けをして、考えてみよう。

1. 裁判所が、α債権が存在しないと判断し、かつ
  1. β債権が存在すると判断した場合  AのCに対する訴えは原告適格の欠如を理由に却下される。BのAに対する請求は認容される。BのCに対する請求についてBは当事者適格を有し、この請求も認容される。
  2. β債権が存在しないと判断した場合  ____________________________________________


2. 裁判所が、α債権が存在すると判断し、かつ
  1. β債権が存在すると判断した場合_______________________________________________
  2. β債権が存在しないと判断した場合______________________________________________

2.3 審理・判決(47条4項・40条1項−3項)

独立当事者参加訴訟では、判決の論理的合一確定が要請されるので、必要的共同訴訟に関する40条1項から3項までの規定が準用される(47条4項)。なお、40条1項の「合一にのみ確定すべき場合」は、必要的共同訴訟において既判力の拡張があることを前提にして、「同一人に矛盾した判断の既判力が及ぶことを阻止すべき場合」を指す。これに対し、独立当事者参加訴訟においては、個々の請求の当事者以外の者に既判力が及ぶことは必ずしも前提とされておらず(例えば所有権確認請求訴訟に参加人が自己の所有権の確認を求めて参加する場合に、原告被告間の請求についての判断の既判力が参加人に拡張されることは予定されていない)、従って47条4項によって40条1項が準用される場合の「合一にのみ確定すべき」は、「論理的に矛盾のない判決がなされるべき」を意味する[35]。ただし、この差異は40条の準用に影響を与えるものではない。
弁論の分離・一部判決は、論理的合一確定を阻害するので許されない。

判決は、すべての請求を通じて論理的に矛盾のないものでなければならない。ただし、実体法上の権利主張の相対性から同一の権利を複数の者に認める判断となってもよい。例えば、Yが同一不動産をXとZに二重に譲渡し、所有権移転登記がまだいずれにもなされていない状態で、XがYに対して所有権確認の訴えを提起し、Zがこれに参加してXとYの双方を相手に自己の所有権の確認を請求すれば、XもZもYに対しては自己の所有権を主張できるので、いずれの請求も認容される。他方、ZのXに対する所有権確認請求は、対抗要件を具備していないので、棄却される。

2.4 上訴審における各当事者の地位

[設例2.1]において、第一審裁判所が目的物はZの所有物であると認定して、Xの請求を棄却し、Zの請求を認容したところ、Yのみがこれに不満を持ったとしよう。Yは、Zを被控訴人にして、Zの自己に対する請求を認容した部分の取消しを求めることになる。他方、ZのXに対する請求を認容した部分については、これもYにとっては不満であり、Yはこの部分の取消しを求めることができるとすることも考えられてよいのであるが、他人間の請求に関する部分に直接に取消申立てをすることは、認められていない(認めなくても、次のbにより同じ結果がもたらされる)[11]。このことを前提にして、各当事者に上訴審で次のような地位が与えられる。
  1. 上訴の相手方とされず、自ら上訴しなかった当事者(X)は、被上訴人の地位につく(最判昭和50.3.13民集29-3-233)。
  2. 裁判所が上訴人(Y)の主張を認めてZのYに対する請求を棄却する場合には、これと論理的に矛盾するZのXに対する請求についても、原判決を取り消して参加人に不利に変更することができる(最判昭和48.7.20民集27-7-863)。

上告審が原判決を破棄して事件を差し戻す際にも、差戻審において論理的に矛盾のない裁判をすることに支障が生じないように配慮される。例えば、
合一確定の必要があるとはいえない場合の処理
上訴審において上訴人に関する請求を変更する場合に、上訴を提起しなかった者に関する請求をその者に有利に変更することが論理的合一確定の維持のために必要であれば、後者も変更される。しかし、その必要が常にあると言うわけではない。

単純な例を挙げよう。X・Y・Zの三者間である不動産の帰属が争われ、XのYに対する所有権確認請求訴訟にZが独立当事者参加をしてXとYに対してそれぞれ所有権確認請求を提起した;第一審は、Yの主張を認めてXとZの請求を全て棄却した;これに対してXのみが控訴し、Zは控訴を提起しなかった。この場合に、控訴審が、第一審及び控訴審で得られた訴訟資料に基づき、
  1. 所有権はXにあると判断すれば、XのYに対する請求を認容する前提として、この部分について第一審判決を取り消す必要があるが、ZのXおよびYに対する各請求を棄却した部分までは取り消す必要はない。
  2. 所有権はZにあると判断すれば、Xの控訴を棄却することになるが、Zの請求まで認容する必要はないであろう。第一審がZの請求を棄却した理由と、控訴審がXの控訴を棄却する理由とに矛盾が生ずるが、既判力の生ずる判断内容については、論理的矛盾はない。

独立当事者参加制度は、矛盾のない紛争解決を確保することを目的とするものであるが、それは、既判力の生ずる判断の間で矛盾がなければ足りると考えれば、上記1の場合はもちろん2の場合においても、Zの請求について原判決を変更する必要はなさそうである。

ここからさらに進んで、上記のように原告Xと当事者参加人Zの請求を全て棄却する判決に対して原告のみが上訴したという類型一般について、(α)Xの上訴にかかわらず、上訴を提起しなかったZの請求部分は控訴審の審判対象にする必要はなく、(β)原判決中のこの部分は確定を遮断されないとし、したがって(γ)Zは控訴審において当事者の地位に就くこともないとしてよいかは、ひとつの問題である。これを肯定する見解も有力である([井上*1981a] 216頁以下)。

しかし、現実の訴訟には予想外の類型があることを考慮すると、比較的単純な事案について妥当な結果をもたらすことが確認されたルールを一般的なルールとすることには、不安を感ずる。例えば、XがZから賃借して占有している不動産について、Yが、以前から自己が所有者であり、Zが所有者であったことはなく、したがってXがYに対抗できる賃借権を有することもないと主張して明渡を要求するので、XがYを被告にしてZが所有者であることの確認請求(及び明渡義務不存在確認請求)の訴えを提起した場合に、Zが当事者参加してXに対して明渡請求、Yに対して所有権確認請求を提起したところ、第一審ではXとZの請求が全て棄却され、これに対してXのみが控訴したときに、控訴審がXの主張を全面的に認めて当該不動産の所有者がZであることを確認する判決をするときには、ZのYに対する請求を棄却した部分をも変更すべきかが問題となる。判決の論理的合一的確定という目標を強調すれば、変更すべきであろう(そうしなければ、「当該係争物は、XY間ではZのものであり、ZY間ではZのものではない」とする判決が確定してしまう)。反対の結論もあり得ようが、この場合の結論はともあれ、一般論としては、多種多様な現実に適切に対応するためには、この類型(被告全面勝訴・原告のみ上訴の類型)の場合にも、上訴不可分の原則(判決全体の確定遮断と移審効)は維持しつつ、上訴を提起しなかった当事者については、その意思に基づく訴訟手続からの離脱を認める(期日への呼出しをせず、準備書面等の送付を不要とし、上訴審における訴訟費用を負担させない)とする方が、妥当な結果を得やすいと思われる。

XのYに対する債権をZに譲渡する合意がなされた場合に、Xが譲渡の合意に錯誤があると主張してその効力を否定し、Yに対して支払請求の訴えを提起した後で、Zがこの訴訟に独立当事者参加し、Xに対しては当該債権の帰属確認請求を、Yに対しては支払請求を提起した。Yは、訴求債権は弁済ずみであると主張し、さらにZに対しては、当該債権には譲渡禁止特約が付されているから、XからZへの債権譲渡は無効であると主張した。第一審は、債権譲渡の合意に要素の錯誤はなく、有効であるとししつも、Yの弁済の抗弁を認め、XとZの請求を全て棄却した。これに対して、Zのみが控訴し、ZのYに対する請求を棄却した部分の取消しと請求認容を求めた。控訴審は、Yの弁済の抗弁は認められないが、譲渡禁止特約の存在とZの重過失は肯定した。控訴審裁判所はどのような判決を下すべきか。

2.5 訴訟脱退(48条

例えば、XがYの占有する動産について所有権に基づく引渡請求の訴えを提起したところ、Zもその動産について所有権を主張して、Yに対して引渡請求、Xに対して所有権確認請求を提示して参加したとしよう(権利主張参加)。Yは、Xに引き渡すべきかZに引き渡すべきかを迷っているだけであり、いずれに引き渡してもよいと思えば、この訴訟を自ら追行する意味はなく、訴訟から脱退することができる。これを訴訟脱退という。

訴訟脱退の意味については、次のように見解が分かれている(ただし、他にもある)。
  1. 伝統的な見解(兼子説・訴訟処分説1)  脱退は、自己の立場を全面的に参加人と相手方との間の勝敗の結果に委ね、これを条件として自己が関係する請求について予告的に放棄または認諾する性質をもつ訴訟行為であるとする見解([兼子*体系]417頁以下)。放棄又は認諾がなされるのは、勝訴者と脱退者との間の請求である。敗訴者と脱退者との間の請求については、放棄または認諾はなされず、また、判決もなされないので、その請求は未解決のままとなる。
    • 参加人勝訴の場合  脱退者は、参加人の自己に対する請求について認諾したことになる。
    • 相手方勝訴の場合  脱退者は、自己(原告)の相手方に対する請求を放棄し、又は相手方の自己(被告)に対する請求を認諾したことになる。
  2. 新しい考え1(井上説・当事者権処分説ないし訴訟追行放棄説)  脱退者に関係する請求部分をこれまでに提出された訴訟資料ならびに残存当事者が今後提出する訴訟資料に基づいて審判することを認める訴訟行為(訴訟追行の権利の放棄)と構成する見解([井上*1981a7]251頁以下)。なお、この見解にあっては、脱退により相手方の利益が害されることはほとんど考えられないので、48条が相手方の承諾を要求していることは無意味なこととなる。
  3. 新しい考え2(伊藤説・訴訟処分説2)  伝統的な見解を基本としつつ、請求放棄の効果の生ずる範囲を拡張し(脱退原告の放棄は脱退の時点で確定的になされるものとし)、かつ、「残存当事者間の判決の既判力は、脱退者にも及ぶ」として紛争解決の実効性を高めようとする見解([伊藤*民訴3.2]627頁以下)。
    • 原告脱退の場合には、残存当事者間の訴訟の結果にかかわらず、原告の被告に対する請求は放棄された(脱退調書は放棄調書としての効力を有する)ものとされ、かつ、参加人と被告の間の判決の効力は脱退原告にも拡張される。
    • 被告脱退の場合には、脱退の意思表示は参加人・原告間の訴訟の勝訴者の請求を認諾する効果をもつ(条件付認諾)。かつ、参加人の請求を認容する判決の既判力は、原告・被告間でも被告のために拡張され、参加人の請求を棄却する判決の既判力は、被告・参加人間でも、被告のために拡張される。

当事者権処分説が妥当である。いくつかの例について考えてみよう。
Xが占有する動産について、XがYに対して所有権確認の訴えを提起し、その訴訟にZが独立当事者参加をして、Xに対して所有権に基づく引渡請求、Yに対して所有権確認請求(Zの所有物であることの確認請求)を立てた。この場合について、XまたはYが脱退し、残存当事者間で判決が下されると、脱退人にどのような効力が及ぶかを各説に従って確認してみよう。

1. Xが脱退し
  1. Z→Y請求が認容された場合
  2. Z→Y請求が棄却された場合

2. Yが脱退し
  1. Z→X請求が認容された場合
  2. Z→X請求が棄却された場合

こうした比較的単純な基本的事例では、訴訟処分説の欠陥はあまり目立たない。しかし、訴訟処分説は、結局の所、訴訟の内容から離れて、残存当事者間の訴訟の勝敗の結果という抽象的なレベルで問題を処理しようとするので、基本的な事例から離れると、妥当な結論を導くことが難しくなる。
Xが、Yに対する売掛代金債権の取立訴訟を提起した。その訴訟の係属前に係争債権を譲り受け、対抗要件も具備していると主張するZが訴訟に参加した(Yに対して支払請求、Xに対して債権の帰属確認請求)。Xは、Zに係争債権を譲渡していたことを認め、訴訟から脱退した。その直後にYが、当該債権には譲渡禁止特約があることを主張した。裁判所は、審理の結果、当該債権が存在することを認め、譲渡禁止特約があり、Zはその点について善意であるが重過失があったと認定した。

裁判所はどのような判決をすべきか。その判決はどのような効力を有するか。

(ヒント:ZのXに対する請求についての判断に迷う場合には、この請求はなかったものとして(片面的参加であったとして)解答してもよい)

脱退は、48条の文言上は、権利主張参加の場合にのみ認められているが、これをあまり厳格に解釈する必要はない。詐害防止参加の場合には、通常は脱退が必要となることはないので、脱退が規定されていないだけであり、脱退を認めるのが適切な場合には、脱退を認めてよい(反対の立場に立つ場合には、当該参加をできるだけ権利主張参加と認定することになる)。

脱退者に対して新たな請求を定立する必要が生じた場合には、脱退者に当該請求について訴状またはこれに相当する書面(訴え変更の書面や反訴状)を送達し、脱退者がその新請求についても残存当事者間の訴訟追行の結果を受容する意思(脱退継続の意思)があるかを確認することが必要である。受容の意思がなけば、当該新請求について再び当事者として訴訟行為をすることになる(判決の論理的合一確定が要求される場面なので、その訴訟行為の結果から得られた資料は、脱退当時の請求の当否の判断に際しても斟酌される)。[24]

2.6 片面的参加

在来当事者の一方と参加人との間に争いがない場合には、参加人は、その当事者に対して請求を立てることなく参加することができる[42]。例えば、次のような場合がこれに該当する。
  1. XがYに対してYの占有する物の所有権を主張して引渡請求の訴えを提起し、その訴訟に、Zがその物の所有権を主張して参加する場合に、YがZの所有権を認め、ZY間にその物に関する賃貸借契約の存在について争いがなければ、Zは、Xに対する所有権確認請求のみを立てて当事者として参加すれば十分である(補助参加でも足りる場合であるが、このような当事者参加も可能である)。
  2. XがYに対して契約に基づく金銭債権(α債権)の取立訴訟を提起し、その訴訟に、Zがその債権をXから訴訟係属前に譲り受けたと主張して参加する場合に、XがZへの債権譲渡を争わなければ、Zは、Yに対する金銭支払請求のみを立てて参加することができる。XZ間の債権譲渡がXY間の訴訟係属後になされた場合には、承継参加になる(49条参照)。
  3. XがYに対してYの占有する物の所有権を主張して引渡請求の訴えを提起し、その訴訟に、Zがその物をXから訴訟係属前に買受けたと主張して参加する場合に、XがZとの間の売買契約を争わなければ、Zは、Yに対する引渡請求のみを立てて参加することができる。XZ間の売買契約がXY間の訴訟係属後になされた場合には、承継参加になる(49条参照)。

前記bとcの場合には、XはYに対する請求を維持する必要性はあまりないが、Yが譲渡の事実を否認する場合や、譲渡の効力を妨げる抗弁(bの場合について債権譲渡禁止特約の存在)を主張する場合には、XのYに対する請求を維持しておく必要がある。

真正の片面的参加
参加人は、片面的参加で足りると考えて参加したが、参加人が請求を立てなかった在来当事者(例えば前記bの原告)が参加人の主張を争って請求を立てることもありうる(例えば、前記bで原告が参加人に対してα債権が自己に属することの確認請求を立てることが考えられ)。この場合には、片面的参加は許されず、両面参加をすべきであるとする見解も考えられるが、判決による紛争解決の必要性についての認識が人によって異なることは是認してよく、このような場合でも、片面的参加自体は許容してよいであろう。ともあれ、このような場合には、片面的参加であるが、三面訴訟であり、その取り扱いは、基本的に、両面参加の場合と同じである。参加人と在来当事者の一方との間に争いのないまま弁論を終結することになる類型の片面的参加を真正の片面的参加と呼んで、区別しておこう。

真正の片面的参加の場合の審理・裁判
真正の片面的参加の場合にも、法律の条文上は、47条3項により40条1項から3項が準用される。ただ、真正の片面的参加のうちの一定の範囲のものについては、40条1項から3項を準用する必要性が必ずしも高くないものがあり、単純な通常共同訴訟あるいは41条1項・3項を準用ないし類推適用すれば足りる通常共同訴訟と考えることができるものもある([高見*2002a]38頁参照)。41条・50条3項を有するに至った現行法の下での新たな問題といってよい[40]。

前記の設例aとbについて、40条1項から3項が準用される意味を確認しておこう。

設例aの場合
  1. Xが係争物の所有権取得を根拠づける事実の追加的主張を準備書面に記載することなく口頭弁論期日においてその主張をするときに、40条2項の準用を前提にすると、Yが期日に出頭していれば、Zが出頭していなくてもその主張を陳述することができ、その効果はZにも及ぶ。他方、40条2項の準用を否定すると、Zとの関係では、準備書面に記載されていない事項を陳述することができない(161条3項)。
  2. Xがその所有権取得に関する事実を陳述し、これをZが否認し、Yが沈黙している場合に、40条1項の準用を前提にすると、Yについて擬制自白の効力は生じない。このようにZは、40条1項の準用によりXY間の請求に関する審理・裁判に干渉することができる。他方、40条1項の準用を否定する場合には、XのYに対する請求を認容する判決が速やかに下され、その後にZのXに対する請求が認容される可能性が生ずる。この場合に、41条1項・3項を類推適用するとしても(類推の基礎があるとは思えないが、仮にそうするとしても)、XのYに対する請求を認容しZのXの請求を認容する一つの判決が下され、それが確定することがあることにかわりはない(第一審がXの全面勝訴の判決を下し、これに対してZのみが控訴し、控訴審がZの請求を認容すべきと判断する場合にも、Zの控訴による確定遮断効・移審効はXのYに対する請求を認容した部分には及ばないので、その部分が先に確定することになる)。

このように、設例aとの関係では、条文通りに40条1項から3項を準用することが望ましい(特に前記2との関係では、準用する必要がある)。

設例bの場合
  1. Yが譲渡禁止特約の抗弁を準備書面に記載することなく口頭弁論期日において主張するときに、40条2項の準用を前提にすると、Xが期日に出頭していれば、Zが出頭していなくてもその抗弁を陳述することができ、その効果はZにも及ぶ。40条2項の準用を否定すると、Zとの関係では、準備書面に記載されていない事項を陳述することができない(161条3項)。
  2. ZがXからα債権を譲り受けた事実を陳述し、これをXが認め、Yが否認する場合に、40条1項の準用を前提にすると、Xの自白は効力を生じない。このことは、請求の定立されていないZX間で特に意味を持たないが、XY間では、Xの自白は効力を生ぜず、したがってXのYに対する請求が直ちに棄却されることはないという形で意味をもつ。他方、40条1項の準用を否定する立場に立つと、Zの債権譲渡の事実の陳述は、ZY間の請求についての陳述であり、Xがこれについて沈黙していても、XY間の請求との関係で擬制自白の規定(159条1項)の適用はなく、債権譲渡の事実は陳述されなかったと扱われることになろう。その意味で、Xは、Zの債権譲渡の陳述について沈黙を守るべきことになる。
  3. 第一審でα債権の存在とZへの譲渡が認められて、XのYに対する請求が棄却され、ZのYに対する請求が認容されたとしよう。この判決に対して、Yのみが控訴し、控訴審がα債権の存在を認めつつも、債権譲渡は無効であると認定し、Zの請求は棄却されるべきであるが、Xの請求は認容されるべきであると判断するときに、40条の準用があれば、控訴審の認定に即した判決が可能となる。他方、40条の準用を否定すると、たとえ41条の準用を肯定する立場に立っても、Xからの控訴がない以上、XのYに対する請求棄却判決は確定済みであり、控訴審は、原判決中のY敗訴部分(Zの請求を認容した部分)のみを取り消してZの請求を棄却することになる。

上記1から3の内で特に重要なのは、3の取扱いである。Xの請求とYの請求の双方が棄却されても、既判力の生ずる判断に論理的矛盾が生ずるわけではない。その点では、確かに、40条1項を準用して、XのYに対する請求部分についてまでYの控訴の確定遮断効と移審効を及ぼす必要は高くないと言うこともできる。この場合に、このような評価が可能になるのは、ZのXに対する請求(α債権がZに属することの確認請求)が定立されていないからである。もしこの請求が定立されていて、第一審がこの請求を認容し、これに対してXが控訴しないためにこの部分も確定すべきものと仮定すると、「α債権がZに属する」との第一審の判断と「債権譲渡は無効であるからZに属しないからZの請求は棄却されるべきである」との控訴審の判断とは論理的に矛盾することになり、これを回避するために40条1項から3項を準用すべきことになる。その意味で、ZがXに対してこの請求を定立することなく当事者参加していることは重要であり、その意味が問われる。

ZがXに対して請求を定立しなかったのは、α債権がZに有効に譲渡されたとの主張がXによって認められているからではあるが、それのみならず、裁判所によっても認められることを前提にしてのことと理解すべきであろう。それが裁判所によって否定されるのであれば、Zは債権譲渡が無効であったことを理由とする不当利得返還請求等の訴えをXに対して提起する必要に迫られるのであるから、その意味で、XY間に潜在的に紛争は存在すると言うべきである。そして、XのYに対する請求が債権譲渡の有効を理由に棄却され、ZのYに対する請求は債権譲渡の無効を理由に棄却されという事態は、XとZの立場から見て最悪の結果であり、それを避ける必要がある。それを回避するための選択肢として、次の3つが考えられるのである。
  1. 片面的参加の場合でも、40条1項ないし3項の準用を肯定すること、又は
  2. 片面的参加の場合には、40条1項から3項の準用は否定されるが、前記の最悪の結果を避けるために、
    • ZはXに対しても請求も立てて両面参加するべきであるとすること、あるいは
    • Xは、自己の請求を棄却した第一審判決に対して控訴を提起すべきであるとすること

B1の解決は、ZX間の紛争が顕在化していない状況でXに対する請求の定立をZに要求するものであり、紛争実態に適合するかは疑問である。それよりは、条文の文言に素直に従って、Aの選択肢を採用する方がよいであろう。

処分権主義の立場を強調すれば、B1の選択肢にも説得力があることは言うまでもない。しかし、X自身は、第一次的にはZの請求が認容されるべきであると考えている場合に、自己の請求が第一次的に認容されるべきであるとことを内容とする控訴を提起させることは、紛争実態に適合しない。この難点は、Zの請求を認容した部分の取消を求めるYの控訴が認容される場合に備えて、XがYを被控訴人にして予備的控訴(Yの控訴が棄却されることを解除条件とする控訴)を提起すれば回避することができるのは確かである。しかし、条文の文言から離れる解釈(片面的参加の場合に40条1項から3項の準用を否定する解釈)を採用したうえで、条文の文言に素直に従えば必要のない申立てを要求することに実益があるのか疑問である。

従って、この設例bとの関係でも、準用肯定説が望ましい解釈というべきであろう。

2.7 請求を立てない参加

権利主張参加の場合には、参加人は自己の主張する権利について請求を立てることができる。しかし、詐害参加にあっては、参加人は、多くの場合に原告の被告に対する請求が認容されることを阻止すれば目的を達成することができ、かつ、少なからぬ場合に立てるべき請求が見あたらない。例えば、会社を被告に支配株主から提起された会社解散の訴えについて、請求の認容を阻止するために少数株主が独立当事者参加する場合がそうである(後掲最判平成26年における裁判官山浦善樹の反対意見参照)。このような場合については、()請求を立てない独立当事者参加も許すべきであるとの見解も有力であるが、()最高裁判例は、「参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されない」との立場である(最高裁判所 平成26年7月10日 第1小法廷 決定(平成25年(ク)第1158号,同年(許)第35号))。

3 訴訟承継


「訴訟承継」に関係する 文献  判例

3.1 概 説

訴訟承継制度の必要性と意義
訴訟はその開始から終了までに相当の年月を要することがあるので、その間に当事者が死亡したり、係争物の譲渡の必要が生ずることがある。訴訟の承継とは、このような場合に、既存当事者とは別個の者(承継人)が、既存当事者のなした訴訟活動の結果を引き継ぐ形で当事者の地位につくことである[CL1]。

訴訟承継の種類
承継の対象は、承継の形態によって異なる。例えば、当事者死亡による承継の場合には、当事者の地位そのものが相続人に承継され、訴訟費用に関する権利義務も承継される。しかし、係争物の譲渡による訴訟承継の場合には、当事者の地位そのものが承継されると解することは適当でない。承継関係自体に争いが生じ、承継人と被承継人が争うこともあるからである。訴訟費用の負担に関する権利義務も、原則として承継されない。実体法上の権利義務の承継の特質に応じて、新当事者が従前の訴訟状態に拘束されるという意味で訴訟の承継があるにすぎない[25]。

3.2 参加承継・引受承継

はじめの一歩[設例3.2]
XがYに対してα債権を有している。その給付訴訟の係属後・事実審の口頭弁論終結前に、Xがα債権をZに譲渡し、その通知をYにした。訴訟はどうなるか。
訴訟の目的である権利の承継
[設例3.2]の訴訟をXY間でそのまま進めても、その判決の効力はZには及ばない。Zは、115条1項のいずれにも該当しないからである(口頭弁論終結前の承継人であるから、1項3号にも該当しない)。それでは、訴訟が無駄になる。これまでの審理結果を活用して、ZとYとの間でα債権を巡る紛争を解決するために、次の2つの道が開かれている。一つは承継人であるZのための道であり、他の一つは相手方であるYのための道である。

 (訴訟参加  Zは、XY間の訴訟の目的債権が自己の取得した債権であることを主張して、この訴訟に当事者参加することができる(権利主張参加)。

 (訴訟引受の申立て  この訴訟で、Yが弁済の抗弁を提出し、それが認められそうであるとしよう。YがXを相手に訴訟を続行して勝訴しても、Yはその判決の既判力をZに主張できない。Zから訴えられた場合に、再度弁済の事実を主張して証明していかなければならない。Yは、そうした負担を回避し、Zとの間でも権利関係を明確にしておくことに利益を有し、51条後段・50条により、現在の訴訟をZに引き受けさせることを裁判所に申し立てることができる。

訴訟の目的である義務の承継
債権者の債務者に対する義務履行請求の係属中に第三者がその義務を免責的に引き受けた場合には、債権者は、その者に対して訴訟の引受を申し立てることができる(50条)。逆に、債務引受人と主張された者の側からその訴訟に参加することもできる(51条前段。これはあまりわかりやすい例ではないが、債務者側に訴訟が有利に進行している場合に、債務引受人がその訴訟を利用して債務の不存在を確定させるために自ら参加することはありうることである)。

はじめの一歩[設例3.2a]
土地の所有者Xが、権原なしに建物を建築して土地を不法占拠しているYに対して、建物収去・土地明渡しの訴えを提起した。その訴訟の係属中に、Yがその建物をZに譲渡して、引き渡した。訴訟はどうなるか。

しかし、50条が適用される義務の承継は、実体法上の義務が承継される場合に限られない。義務自体については承継がなくても、義務の発生基盤について承継関係があり、その承継関係のゆえに、承継人のその義務に関する紛争もこれまでの訴訟の結果を利用して迅速に解決を図るのが適当であると評価される場合には、承継人は訴訟を引き受けさせられることになる。このような広い意味での権利義務の承継を紛争主体たる地位の承継という(権利の承継についても妥当することであるが、義務の承継について特に重要である)。

例えば、[設例3.2a]の訴訟の目的は、原告の所有権に基づく建物収去・土地明渡請求権ないしこれに対応する被告の義務である。Zがこの義務をYから引き受けたと考えることは、Zの意思に反する。この場合には、家屋の譲受人が土地を不法占拠したことにより譲受人に原始的に生ずる義務であると考えるのが適当である。しかし、それにもかかわらず、Zは、建物の承継取得により紛争主体たる地位を承継取得したと考えてよく、係属中の訴訟を彼に承継させることができるべきである(口頭弁論終結後の建物の承継取得の場合に既判力が115条1項3号によりZに拡張されるのと同じ論理である)。

承継原因のまとめ
承継の原因は、既判力の拡張の場合と同様に、紛争主体たる地位の移転を指す。訴訟の目的たる権利・義務が第三者に譲渡された場合が典型例であるが([設例3.2])、これに限らず、当該権利義務に係る係争物の譲渡あるいはその占有移転があった場合も含む([設例3.2a])。承継の原因は訴訟係属後のものでなければならない。訴訟係属前に承継原因がある場合には、引受申立ては許されない(被承継人の相手方当事者が承継人との間の紛争を訴訟により解決するためには、別訴を提起すべきである)。また独立当事者参加自体は許されるが、それに49条が適用されることはない。

承継原因に関する発展問題
訴訟承継は、当事者適格を基礎付ける法的地位の移転よっても生ずることを肯定すべきである。例えば、債権者代位訴訟において、原告の被保全債権が移転した場合には、これにより、従前の原告は原告適格を失うことになるが、被保全債権の承継人は、代位訴訟の承継人として、その訴訟に参加することができるとすべきである。

債権者取消訴訟において、被保全債権の存在が原告適格を基礎付ける要素なのか、それとも取消権自体を基礎付ける要素の1つなのかの問題の答えは明瞭ではないが、前者の場合はもちろん後者であるとしても、被保全債権の全部が原告から他に移転すれば、その承継人は、取消訴訟の承継人として、その訴訟に参加することができるか否かが問題となるが[41]、これも肯定すべきである。

これらの場合には、被保全権利の承継人は、代位訴訟あるいは取消訴訟により実効性の高まった被保全権利を取得した評価してよい。その実効性の高まりの中には、代位訴訟の目的となっている債権(被代位債権)等の時効中断の利益も含まれるのであるから、49条の適用を肯定すべき。相手方からの訴訟引受申立てを肯定すべきかは、別個の問題になるが、相手方がこれらの訴訟を有利に展開していたにもかかわらず、被保全債権の移転すると、従前の訴訟では勝訴しても、承継人から再度提訴されるというのでは、彼の利益が害される。訴訟引受の申立ても肯定すべきである。

参加承継の手続49条51条
承継人が自ら進んで訴訟に参加する場合には、独立当事者参加の形式で参加する(47条・48条の適用を受ける)。権利の承継人のみならず(49条)、義務の承継人もこれにより参加できる(51条前段)。

請求の定立  既存当事者間の請求が承継人に当然に向けられると考える余地もあるが、同じ請求が承継人との紛争解決に役立つとは限らないので、承継人は、相手方当事者に対して自己の請求を定立すべきである。
何れの場合にも、被承継人が承継の事実を争えば、承継人(参加人)は、被承継人に対しても請求を提起する。

承継人・被承継人間に争いがない場合の規律
承継人・被承継人間に争いがなけば、参加人は被参加人に対して請求を立てる必要はない(片面参加)。この場合には、被承継人は訴訟から脱退することが多いであろう。被参加人が脱退しない場合に、()法文上は47条4項により40条を準用することになる。しかし、()この場合には合一確定の必要はなく、47条4項はこの場合にまで40条の準用を要求するものではなく、41条の準用を認めれば足りるとする見解([高見*2002a]38頁)も有力である。

しかし、先に片面的参加の項で検討したように、一般には、40条1項から3項の準用を肯定する方が望ましい結果が得られやすい。準用が不当な結果をもたらす場合以外は、条文通りに準用を肯定すべきであろう。

引受承継の手続50条51条
承継人が自ら進んで訴訟に参加しない場合には、相手方当事者は、訴訟引受の申立てをして、承継人を当事者の地位につけることができる。義務の承継人に対してのみならず(50条)、権利の承継人に対しても引受の申立てをすることができる(51条後段)。訴訟引受の申立ては、訴えの主観的追加的併合の一種である。なお、被承継人は、訴訟引受の申立てをなしえない[12]。

参加承継の場合と同様に、ここでも新請求の定立が問題となり、見解は分かれているが、次のように解したい。
このように、訴訟引受の申立ても、訴訟参加の場合と同様に、新たな訴えの提起の実質を持つ。また、被承継人が承継の事実を争う場合には、被承継人も訴訟に留まり、これも三面訴訟の実質を有するが、民事訴訟法は、47条4項(したがって40条1項から3項)を準用せずに、41条1項・3項を準用しているので(50条3項)、同時審判型の通常共同訴訟となる(47条4項を準用する場合に比べて、上訴の場面で手続は柔軟となる)。

50条3項の文言からは、41条1項・3項が常に準用されるかのようにも読めるが、権利または義務の承継の場合に、常に41条の要件が満たされるとは限らない。例えば、重畳的債務引受の場合には、債権者の両債務者に対する請求権は両立しうる関係にあり、41条1項の要件が満たされない。この場合には、50条3項による41条1項・3項の準用はないとする見解が有力である([高見*2002a]34頁)。これに賛成すべきであろう。

申立ては、事実審の口頭弁論終結前に限られる(事実審の口頭弁論終結後の承継であれば、115条1項3号により判決の効力が承継人にも拡張される[19])。申立てを却下する裁判に対しては、抗告ができる(328条1項)。しかし、引受決定に対しては独立の不服申立てはできない(訴え変更不許の決定(143条4項)の取扱いと同じである)。

時効中断効等の引継ぎ
訴訟の承継があった場合には、当初の訴えの提起による時効中断効あるいは期間の遵守の効力は、承継人に引き継がれる(49条・50条3項・51条。時効の中断に関しては、民法148条と部分的に重なる)。例えば、債権者の債務者に対する給付訴訟が時効完成の1月前に提起され、それから1年後に訴求債権を譲り受けた者が訴訟参加した場合に、承継人は、債権者(被承継人)の訴え提起による時効中断の効果を援用することができる(49条)。

発展的問題−−訴訟状態の引継ぎ(生成中の既判力)
明文の規定はないが、承継関係を考慮して、Zは、参加当時の訴訟状態(審理状態)を引き継ぐ。すなわち、すでに収集された訴訟資料・証拠資料は、新当事者との関係でもそのまま裁判資料となり、被承継人が提出できなくなった資料は承継人も提出できないのが原則となる。中間判決は、承継人との関係でも拘束力を有する。控訴審段階で訴訟承継があった場合に、そのことのみを理由に第一審判決が取り消されて事件が第一審裁判所に差し戻されることはない。

訴訟の審理は判決に結実し、判決主文中の判断に既判力が生ずるのであるから、審理は既判力の生成過程と考えることができ、審理の途中の状態について生成中の既判力を観念することができる。既存の訴訟状態を引き継ぐことは、生成中の既判力に拘束されることであると表現される([兼子*研究1a]42頁・133頁以下)。訴訟引受の場合にも、従前の訴訟状態はZに引き継がれるのが原則である。

それが原則であるとはいえ、その範囲は、個々の実体法上の地位の承継の事情ならびに訴訟の承継の態様に依存し、一律な処理に馴染みにくいのも確かである。例えば、訴訟引受の場合と比較して、訴訟参加の場合には、新当事者がみずからの意思で参加している以上、従前の訴訟状態が自己に有利であるから参加しているだろうと推測されるので、従前の訴訟状態に拘束されるとの結論はこのことによっても正当化されやすい。しかし、訴訟引受の場合には、そうした要素はない。したがって、訴訟承継の場合に新当事者が従前の訴訟状態に拘束されるか否かについては、個々の事案類型ごとの検算が必要である。

批判と反論  生成中の既判力論に批判的な見解もある。例えば、「『生成中の既判力論』に、さようなら」のタイトルを付した[新堂*2006a]378頁以下は、次の趣旨を説く:民訴法が明文の規定で承認しているのは、判決確定により生ずる既判力の口頭弁論終結後の承継人への拡張であり、口頭弁論終結前の承継人はこれには該当しないのであるから、彼が訴訟参加あるいは訴訟引受により訴訟を承継する場合には、彼の独立の当事者としての地位を尊重すべきであり、既存の訴訟状態に彼が拘束されるとする見解は、妥当ではない。

しかし、訴訟承継人が既存の訴訟手続にまったく拘束されないと言うのでは、訴訟承継を認める意味がなくなる(明治23年法の訴訟犠牲主義に戻ってしまう)。新当事者は、既存の訴訟状態に一定の範囲で拘束されるとしなければならず、それを「生成中の既判力」という観念で説明することは、一つの優れた説明方法というべきである。

訴訟状態の引継ぎと拘束の内容  既存の訴訟状態の引継ぎは、一般的には(全体としてみれば)、次のようになされるべきである。
新当事者が承継人として従前の訴訟状態に拘束されるか否か、拘束されるとしてどの程度拘束されるかの最終的判断は、判決においてなされる。それ以前に、新当事者からの攻撃防御方法の提出を157条により却下する決定の中で、その旨の判断を示すこともできる。では、どの範囲で拘束を認めるべきか。判決に近い段階から見ていこう。
  1. 控訴審で訴訟承継があった場合に、新当事者は、自己の審級の利益のために事件を第一審に差し戻すことを求めることはできないとすべきである(審級の利益の一部喪失)。上告審から事件の差し戻しを受けた事実審において訴訟承継があった場合に、上告審の判断の拘束力(325条3項)は、新当事者との関係でも肯定される。
  2. 中間判決後に訴訟承継があった場合に、新当事者は、その中間判決の基礎資料を提出する機会を与えられていなかったのであるから、自己との関係では中間判決にかかわりなしに終局判決をすべきであると主張することができるか。これを肯定する余地はあるものの、それでも中間判決により審理を整序して手続を迅速に進めるという中間判決制度の趣旨並びに訴訟承継制度の趣旨を考慮すれば、訴訟承継人は既存当事者間でなされた中間判決に拘束されるとすべきである([新堂*2006a]は、承継人も中間判決に拘束されることを原則的に肯定しつつ(379頁)、中間判決の内容に反する新しい主張立証の余地を完全に封ずることは許されないとする)。
  3. 第一審の争点整理後・集中証拠調べ前に訴訟承継があった場合には、訴訟承継人のために再度争点整理を行うことは可能である。ただ、それを無制限に許すと、争点整理が被承継人の相手方に有利に進められた場合に、彼の迅速な紛争解決を得る利益が害される。訴訟承継人があらたな攻撃防御方法を提出する際にも167条・174条・178条の適用があるが、その際には訴訟承継に至った事情も説明事由とすることができるとするにとどめるべきであろう。集中証拠調べがほぼ終了して結審直前の段階で訴訟承継があった場合に、訴訟承継人のために第一審手続を最初からやり直すことは認めがたい。
  4. 被承継人がした自白の拘束力を承継人にも及ぼすべきかの問題は、訴訟承継主義による紛争の迅速な解決と承継人の手続上の利益の綱引きの問題として、手続のどの段階で自白がなされ、どの段階で訴訟承継が起きたかも考慮して、多様な解決が考えられるが、承継人は、被承継人との間の承継関係が広い意味での信頼関係を基礎とするものである限り、原則的には、拘束力が及ぶとすべきであろう。
  5. 時機に後れた攻撃防御方法の却下の問題についても、同様な事が当てはまる。被承継人について審理の計画が定められている場合に、157条の規定により彼が提出することが許されなくなった攻撃防御方法は、承継人も提出することができないとすることにより、紛争の迅速な解決について相手方の有する利益を守るべきである([新堂*2006a]389頁は、訴訟承継人に関する新請求についての審理計画の中で、被承継人の自白に反する主張や、被承継人を基準にすると時機に後れたものとなる攻撃防御方法を提出する機会が認められることになるとする)。
  6. 参加人は、訴訟を承継するとは言え、被承継人の地位をそのまま承継するわけではない。被承継人とは別個の当事者である。彼が関係する請求についての審理の計画は、新たに立てられるべきである。ただし、その計画は、前記a−eに述べたような形で彼が従前の訴訟状態に拘束されることを考慮して立てられるべきである([新堂*2006a]379頁は、反対)。

以上のことは、被承継人(既存当事者)が承継人(新当事者)を害する目的で相手方と馴れ合った訴訟追行をしていないことを前提とする。この前提が欠ける場合には、別の判断がなされるべきである。また、生成中の既判力の拡張は、114条・115条規定の趣旨の範囲で認められることであり(ただし、ここでは「紛争の確定的解決」よりも「迅速な解決」に力点が置かれる)、訴訟承継を根拠づける実体法上の関係が生じた時点において訴訟物となっていた法律関係との関係でのみ拡張が肯定される。

はじめの一歩[設例3.2b]
債権者からの執行を逃れるために、Xが自己の不動産をYに譲渡し、所有権移転登記をした。執行のおそれがなくなったので、XがYに返還を求めたが、任意に応じないので、訴訟を提起した。訴訟中にYが目的物をZに譲渡した。訴訟はどうなるか。
承継人の独自の主張  さらに、承継人固有の攻撃防御方法の提出が生成中の既判力によって妨げられることはない。[設例3.2b]の場合に、Xは、Zに対して訴訟引受の申立てをすることができる。Zは、これまでの訴訟状態に拘束される。特に、Yが通謀虚偽表示の点について自白している場合は、これに拘束される。しかし、Zは、民法94条2項の善意者であることを主張できる。これはYの提出することのできない主張であり、これについては、Zは従前の訴訟状態に拘束されない。Zが民法94条2項の善意者であることが認められれば、Zが勝訴することになろう。

独自の主張についての審級の利益  控訴審において訴訟を承継した者が自己の固有の攻撃防御方法について審級の利益を主張して、第一審への差戻を求めることができるとすべきかは、決断に迷う問題であるが、115条1項3号による既判力の拡張について、口頭弁論終結後の承継人は固有の攻撃防御方法の提出を妨げられないとされているのであるから、訴訟引受の場合には審級の利益を主張しうるとするのが本来である。しかし、審級の利益も絶対的なものではない。紛争の適切な解決のために、在来当事者間の請求と分離することが、47条あるいは50条・41条の規定の趣旨に照らして適当でない場合には、第一審の審判を受けることなく控訴審の審判を受けるという不利益を彼も甘受すべきである。例:
信義則の視点からの説明との比較  このように、生成中の既判力の理論は、画一的な解決を可能にするものではなく、その実体は、様々な事項を考慮して決定される攻撃防御方法の提出の制限であり、内容的な曖昧さがあることは、確かである。その点に鑑みれば、「生成中の既判力による攻撃防御方法の遮断」と言わずに、訴訟係属中に係争権利関係を承継して訴訟に加わった者について認められる「信義則による攻撃防御方法の提出制限」と言う方が確実であるのは確かである。しかし、それでも、提出制限の根拠は、紛争の解決の実効性の確保という点では、既判力の拡張と共通する点があり、この攻撃防御方法の提出制限を「生成中の既判力」で説明することは、一つの明快な説明方法である。

訴訟資料の流用のための訴訟承継(形式的訴訟承継)
新当事者との関係で従前の訴訟資料を利用することができるというメリットと、生成中の既判力を新当事者に及ぼすことによる紛争の迅速な解決の実現とは、相互に関連することではあるが、しかし常に結合させておく必要はない。前者のためにのみ訴訟参加・訴訟引受の制度を利用することも、それが紛争の解決方法として適切な場合には、許容してよい。この場合には、新当事者は従前の訴訟状態に拘束されないことになる。これを形式的訴訟承継と呼ぶことにして、生成中の既判力の拡張をともなう訴訟承継と区別することにしよう。例:
参加又は引受による訴訟承継の効果のまとめ
参加の場合であるか引受の場合であるかを問わず、訴訟承継には、次の効果がある。
流動性の高い権利の権利者と義務者が当事者となる場合の工夫
信託法では、受益者が多数あるいは変動性が高い場合に、受益者の権利行使を容易にするために、受益者代理人を指定することが認められている(138条)。受益者代理人は、受益者のために裁判上の行為もすることができ(139条1項)、受益者代理人がその代理する受益者のために行為をするときは、その代理する受益者の範囲を示せば足りる(同条2項)とされている。受益権が小口化されて流通性が高い場合に、受益者の変動があるたびにその変動を訴訟手続上も明示していくことが困難であることを考慮した制度である。例えば、ある受益者が受託者に対して損失填補責任(40条)を追及する訴えを提起する場合に、受益権が譲渡されると、損失填補請求権も移転し、訴訟承継がなされるべきであるが、それは煩雑である。そもそも、受益権が小口化されている場合には、個々の受益者がそのような訴えを提起することも困難となろう。そのような場合に、受益者代理人が存在すれば、受益権は、受益者代理人が損失補填請求権を行使していることにより財産的価値が高まることが期待できる権利として受益権を有利な価格で譲渡することができる。また、当該受益者(本人)のために損失補填請求権を行使している受益者代理人は、訴訟係属中に本人が変動しても、それをいちいち訴訟手続に反映する必要なく訴訟手続を追行することができる(その前提として、受益者代理人の代理権が本人の変動によって影響を受けないことも認められるべきである)。類似の代理人として、次のものがある。
このような代理人が交替する場合には、訴訟手続を中断する必要が生じよう。民訴法124条1項4号では、受益者代理人の任務の終了(例えば死亡による任務終了)の場合について訴訟手続の中断を規定していないが、実質的に見て、彼は信託管理人に近く、同号ハを類推適用すべきように見える。

3.3 当然承継

一定の事由が生ずると従前の当事者の地位が法律上当然に他の者に移転し、その者が当然に新当事者になることを当然承継という。ここで、「訴訟の承継」は、「訴訟上の地位(原告や被告の地位)の承継」を意味する。

当然承継の原因

これについては明文の規定がなく、訴訟手続の中断・受継の規定から次のものが当然承継の原因であると推知される。しかし、中断原因と当然承継原因とは同じではない[1]。
なお、当事者について破産手続が開始されると、破産財団に関する訴訟は中断され、そのうちで破産債権に関しないものは破産管財人が受け継ぐことができる(破産法44条1項・2項)。会社更生手続の開始の場合(会社更生52条1項・2項)、民事再生手続が開始され、管理命令が発せられた場合(民再67条)も同様である。これらの規定によって訴訟手続が破産管財人等によって受継される限りでは、訴訟は破産管財人等に当然承継されたことになる。

当然承継と訴訟手続の続行
訴訟手続の中断を伴うときは、承継人あるいは相手方による受継申立て、または、裁判所による続行命令によって手続が続行される。真の承継人でない者が受継しても、真の承継人との関係では、手続は依然中断していると見るべきである。

訴訟代理人がいる場合の非中断
訴訟代理人がいる場合には、訴訟代理人が承継人のための代理人となって訴訟手続を進行させることが可能である。そこで、訴訟手続の円滑な進行のために、訴訟承継人と被承継人との間に利害の対立がない通常の場合について、訴訟の当然承継があっても訴訟代理権は消滅せず(58条参照)、訴訟手続は中断しないとされている(124条2項)(他方、破産者と破産管財人との間には利害の対立があるので、訴訟代理人がいても中断する(破産法44条中に民訴124条2項に相当する規定がないことに注意[36]))。訴訟代理人がいるため手続が中断しない場合には、承継人を当事者として訴訟が続行されていることになる。裁判所は承継の事実を知りしだい、当事者の表示を改める。判決後でも判決の更正(257条)により何時にても当事者の表示を訂正できる(伝統的にこのように説明されている)。

もっとも、最高裁判所 平成24年5月28日 第2小法廷 判決(平成21年(受)第1567号)は、破産管財人が提起した破産財団所属の債権の取立訴訟において、請求を棄却すべきものとした控訴審の口頭弁論終結後に破産管財人が交替した場合に、上告審が請求を認容すべきものと判断したときに、控訴審の口頭弁論終結後に生じた上告人(破産管財人)による権利の承継に基づき訴えを変更させるために,事件を原審に差し戻した(原告側に訴訟代理人がいる事件であり、判決理由を読む限り、破産管財人の交替がなければ原判決破棄後に自判が可能であったと思われる事件である)。この事件は原判決破棄の場合であり、上告棄却の場合にどのように処理されるのかは明瞭ではないが、前者の場合に自判可能であっても判決の更正により当事者の表示を変更するだけでは不十分であると考えているのであれば、後者の場合にも同様にすることになると予想される。 

訴訟代理人のいる当事者について控訴審の口頭弁論終結後に当然承継が生じ、上告審が判決をする場合の処理については、見解が分かれ得る。
  1. 差戻説  当事者の交替がある以上訴えの変更が必要であり、訴えの変更は、原則として、原審の口頭弁論終結時までにしなければならないから差し戻すべきである。請求を棄却すべきとした控訴審の口頭弁論終結後に原告である破産管財人の交替が生じた事案において、最高裁は、原判決を破棄して請求を認容すべきであると判断した場合に、この立場に立って、事件を原審に差し戻している(最高裁判所 平成24年5月28日 第2小法廷 判決(平成21年(受)第1567号)。ただし、この判決自体では前述の理由は明示されておらず、前述の理由は、柴田義明「最高裁判所判例解説」法曹時報66巻9号303頁注2の説明である)。
  2. 差戻不要説  差戻しをする必要はないとの立場であるが、その根拠については、次の2つの立場が考えられうる。
    1. 当事者の交替により訴えの変更は必要であるが、新たな事実審理が必要になるわけではないから、上告審でも訴えの変更を許容してよく、訴え変更後の請求について上告審は自判をすることもできる。
    2. 当然承継の場合には、承継原因が生じた時点で当事者が交替し、当然承継の中に旧請求の撤回・新請求の定立が含まれていると観念される。したがって、訴訟代理人がいない場合には訴訟手続の中断・受継の問題が生ずるが、訴訟代理人がいる場合には訴訟手続を中断することなく進行させてよく、当然承継が判明した時点で当事者の交替を手続上明確にして置く必要はあるが、訴え変更の手続は必要ではない。

前掲の最判平成24年は、特段の理由を示すことなく原判決を破棄して事件を差し戻しているため、その論理の適用範囲は明瞭でないが、調査官解説に示された論理を推し進めれば、請求を棄却する場合にも控訴審での訴え変更の手続が必要になろう。しかし、当事者の交替の点を除けば原審の確定した事実関係に基づいて自判をすることができる場合には、上告審が自判をして事件を速やかに終了させることが望ましく、差戻不要説を採るべきであると考えたい(根拠付けは、2がよい)。そうでないと、上告審が判決を言い渡す直前に当然に承継があったため、上告審がその事実を知ることなく原判決を破棄して請求認容の自判をしてしまった場合に、どのような後処理をすべきかが問題になる(訴え変更手続がなされていないから、判決の効力は新当事者に及ばないとせざる得ないが、それが妥当とは思われない。もしこの場合に訴え変更手続がなされていないくても判決の効力は新当事者に及ぶとするのであれば、差戻説の一貫性が問題になろう)。

なお、原判決に破棄事由が存しない場合には、上告審が上告を棄却すれば足りよう。この場合に、控訴審の口頭弁論終結後・上告審判決の確定までの承継人の位置付けについて、これを115条1項2号の承継人にあたるとする立場に立てば、同号の規定により承継人は原判決の効力を受けるのであるから、訴えの変更は必要ないことになる。他方、この承継人は同項1号の当事者として判決の効力を受けるとの立場に立ちつつ、差戻必要説をとると、訴え変更のための差戻しが必要になってしまうが、差戻不要説(そのうちの2)をとれば、そうした問題は生じない。

3.4 任意的当事者変更

意 義
「任意的当事者変更」の意味は、一定しているとは言えない。この講義では、様々な当事者交替現象を次のように分類して、その中の一部のものを指す言葉として使うことにする。
  1. 訴訟物たる権利義務の帰属またはその管理処分権の帰属の変更に伴い当事者の交替が必要となる場合
    1. 当然承継
      1. 相続等の包括承継に伴うもの(124条1項1号・2号)
      2. 受託者等の信託に関する任務の終了に伴うもの(124条4号)
      3. 管理処分権の帰属の変更に伴うもの  当事者の破産または破産手続の終了(破産法44条−46条)など 
    2. 参加承継・引受承継
      1. 売買等の特定承継に伴うもの(49条−51条)
  2. 訴訟係属中の選定当事者の選定またはその変更・取消し(民訴30条)に伴い当事者が交替するもの(124条1項6号)  訴訟物たる権利義務の帰属の変更や訴訟外での管理処分権の帰属の変更がない点でaと区別される。
  3. 上記の原因またはこれに類する原因がないが、原告または新原告の訴訟行為により従前の訴訟手続を全面的または部分的に引き継ぐ新被告または新原告が登場する場合  その典型例は、原告(ないしその代理人)が被告にすべき者についての判断・認識を誤った場合に、それを是正するためなされる当事者変更である。
    1. 許容規定がある場合  例:行訴法15条
    2. 許容規定がない場合

この講義では、上記のうちのcを「(広義の)任意的当事者変更」、c1を「法律の規定に基づく任意的当事者変更」、c2を「(狭義の or 法律の規定に基づかない)任意的当事者変更」と呼ぶ。「任意的当事者変更」は、通常、cまたはc2を指す語として使用されている。

具体例
許容されるか否かは別として、次の場合は任意的当事者変更になる。
原告側の任意的当事者変更の例
 X──(損害賠償債権)──>Y
被害者           加害者
未成年者
 ‖
 ‖
 A
法定代理人

Xの法定代理人Aが自己の名で提起した損害賠償請求訴訟において、
原告名をAからXに変更する。


被告側の任意的当事者変更の例
賃貸人              賃借人
 X──(1建物明渡請求権)──→A会社
 │
 └──(2建物明渡請求権)──→Y個人(A会社の代表取締役をしている)

XはA会社と賃貸借契約を締結したつもりでAに対して明渡請求の訴えを提起したが、
訴訟係属中に、その賃貸借契約の当事者はA会社ではなく、その代表取締役であるY個人であることが判明したので、被告をA会社からY個人に変更する。

許容の根拠と限界
任意的当事者変更は、当事者を誤認した原告ないし原告と密接な関係にある者の利益のために、従前の訴訟手続を新しい当事者との訴訟に一定の範囲で流用するものであるので、次の点を考慮してその許否が判断される。
法的性質
法的性質については、次のような見解がある。
  1. 複合行為説  新当事者に関する新訴の提起と旧当事者に関する旧訴の取り下げとの複合行為とみる見解。
  2. 特殊行為説  当事者変更を生じさせることを目的とする特殊な単一行為とみる見解。
  3. 訴え変更説  任意的当事者変更を143条に定める訴え変更の一種と見て、その要件・効果を同条によって律していこうとする古い説である。要件が緩やか過ぎるので、現在では主張されていない。

複合行為説でよいであろう。ただし、任意的当事者変更が許されることの趣旨に従い、通常の新訴提起・旧訴取下げと異なった取扱いを幾つかの点で認めるべきである(後述の「効果」の項を参照)。その意味では、「一体性のある複合行為」と言うのがよい。

要件
手続
当事者変更は、旧訴の取下げと新訴の提起の複合行為であるので、それに相応した形で明示的になされるのが原則である。当事者変更申立書の形式で被告の変更がなされる場合には、その申立書は、旧被告と新被告の双方に送達されるべきであり、裁判所がその許否を判断すべきである。旧被告から異議が提出されなければ、訴え取下げについて同意があったものとみなされる(261条5項)。

実質は当事者変更であるが、「当事者の表示の訂正」と題する書面が提出され、表示の訂正として手続が進められてしまったような場合には、その書面の提出でも足りるとしてよい(90条の異議権の喪失の対象になると解すべきである。被告側の変更の場合でも、新被告に新たに訴状を送達する必要がないときは(例えば、旧被告が会社で、新被告がその代表取締役の場合)、送達のないまま手続を進めてよい)。

効果
当事者変更を正当化する事情が存在することにより、次の効果が認められる。
表示の訂正か任意的当事者変更か
表示の訂正と任意的当事者変更との間には、当事者が同一のままか否かという重要な差異がある。しかし、いずれにあたるか微妙な場合もある。当事者の同一性が微妙な場合には、訴訟係属中であれば、任意的当事者変更とした上で許容されるか否かを議論する方が、被告となる者の利益保護の点で好ましい。判決確定後であれば、115条1項各号のどれにも該当しなくても例外的に判決効が拡張される場合があることを前提にして、判決効の拡張の問題として扱う方がよい。

ただ、当事者変更として扱うより、表示の訂正として扱う方が、処理が楽になる(当事者変更であるが許されると言うより、表示の訂正にすぎないと言う方が、説明しやすい)。そのため、裁判例では、被告を取り違えたことにつき原告の責任を問うことができず、むしろ被告の側にその原因があると見られる場合には、任意的当事者変更ではなく、表示の訂正として処理される傾向がある([佐上*1984a]76頁)。

大阪地判昭和29.6.26下民集5-6-949[百選*1998a]40事件
事実の概要
原告Xは、「株式会社栗田商店代表取締役栗田末太郎」を振出人とする約束手形を所持している。振出人Y(株式会社栗田商店)が本店を移転し、商号をY'(栗江興業株式会社)に変更したため、手形所持人は、株式会社Yは存在しないものと錯覚し、やむなく訴状の被告欄に「株式会社栗田商店こと栗田末太郎」と表示して訴えを提起した(この表示は、「株式会社栗田商店を名乗る栗田末太郎」が被告であることを意味する)。

その後、Yの本店の移転および商号変更の事実が明らかになったので、Xが訴状における被告の表示を「栗江興業株式会社右代表者栗田末太郎」に訂正すると申し立てた。これに対して被告側が、これは当事者の変更にあたるとして争った。

裁判所は、当事者の変更と表示の訂正の区別、および当事者の確定方法について表示説をとるべきことを明らかにした上で、次のように述べて本件の当事者欄記載の変更は、表示の訂正にすぎないとした。
判旨
 当事者の確定にあたっては「訴状全般(単に当事者の表示欄のみでなく請求の趣旨・原因その他)の記載の意味を客観的に解釈して何人が原告であり、被告であるかを決する」べきである。本件の場合には、前記のような事情があることから、「当初より原告Xが右手形の振出人を被告とする意思を有していたことを認めうることはもちろん、訴状の記載上も振出人を被告としたものと解し」うる。

自然人と法人とは別個の存在であるが、上記の先例では、表示の訂正として扱われた。その理由を考えてみよう。
もう一つ、例を挙げておこう。
大阪地判昭和53.6.30無体裁集10-1-237
事実の概要
昭和19年設立の株式会社公益社(旧公益社)が昭和38年に設立された株式会社に葬祭請負に関する営業を譲渡し、自らは霊柩車による運送を主目的とする会社となった。両会社は、本店所在地も代表取締役も同一である。昭和48年に株式会社高槻公益社等の同業他社に対して商号使用禁止の訴えを提起するに当たって、訴訟代理人が訴状の請求原因欄に、「原告は昭和19年に設立された」と書いてしまった。第7回口頭弁論期日において、原告が、訴状の当事者の表示欄における原告会社名の直後に「(ただし、葬儀行為を営業目的とするもの)」との文言を補充した。被告は、これは任意的当事者変更にあたり、許されないと主張した。裁判所は、次のように判示して許されるとした。
判 旨
 「訴状の記載全体を通覧し、また原告代理人の証拠提出活動等の挙動を総合判断すると、本件各訴訟における原告は専ら自己の主営業である葬儀請負業に関し、その同業者である被告らが不正競争行為をしていると主張して本訴を提起したものであり、本訴の訴旨はほかならぬ葬儀請負業界における競業秩序維持を求めるところにあることが明白で、その趣旨につき他意は認め難いところである。そうすると、本件原告はまさに昭和38年設立にかかる葬儀請負業を主目的とする「公益社」であつて、昭和19年設立にかかる霊柩車運送を主目的とする「旧公益社」ではないと解すべきである。もつとも、各訴状の請求原因一項の前段部分だけを精読すると、「原告は昭和19年に設立された。」と主張している部分があり、あたかも「旧公益社」が原告であるかのように受けとれる部分も存するが、他方その後段では原告が葬儀請負を業とする会社であることを明示している点からすると、右前段部分の記載は代理人が調査不十分のため両者を誤つて混同した結果であると解するのが相当で、右のような点をもつて前記の説示判断を左右すべきではない。」。

この結論が正当であることに、異論の余地はない。ただ、判決が結論を正当化するためにさまざまな要因を列挙しているために、当事者の確定についてどのような見解をとったのかが明瞭でなくなっている。この判決が特定の見解を前提にしていると考えのはおそらく正当ではないであろうが、ともあれ、実質的表示説の範囲でもこの判決の結論は説明できる。

4 共同訴訟参加(52条


意 義
必要的共同訴訟において、第三者が原告または被告の共同訴訟人として参加することを共同訴訟参加という。この参加は、類似必要的共同訴訟について許されるのが典型例であるが、固有必要的共同訴訟で、共同訴訟人が欠けていた場合に、それを追加するためにも許される。

要 件
共同訴訟参加は訴えの提起に準ずるものであるから、参加人が参加に係る訴えを提起することができないときには、原則として、参加申出も不適法とすべきである。
次の場合には、参加申出は不適法である。
参加が許される場合の訴訟形態
参加後の訴訟形態は必要的共同訴訟になるので、原告側参加人は、既存原告の請求と同じ請求を提起するのが原則となる。ただし、(α)固有必要的共同訴訟において請求の定立なしに参加が認められた場合には、既存当事者間の請求が参加人と被告との間の請求にもなったものとみなすべきである。(β)類似必要的共同訴訟(例えば、株主総会決議取消訴訟(会社法830条))の場合には、原告側参加人の請求と既存原告の請求とが同一であるとは限らず、また、既存原告が訴えを取り下げる場合もあるので、参加人も自ら請求を定立すべきである。

被告側参加の場合には、共同訴訟が類似必要的であるか固有必要的であるかにかかわらず、原告の請求は参加被告にも当然に向けられると考えてよく、参加人は請求棄却または訴え却下の申立てをすれば足りる([菊井=村松*1984a]429頁)。

参加人の地位
参加人が従前の訴訟状態に拘束されるかは、見解が分かれよう[39]。共同訴訟参加の類型ごとに検討する必要があるが、株主代表訴訟などを念頭に置いて、一般論としてみるならば、次のような見解があり(下記のA)、あるいは考えられる。

 ()非拘束説  参加人は、従前の訴訟状態に拘束されないとする見解([山木戸*1961a5]84頁)。最高裁判所平成14年1月22日第3小法廷判決(平成10年(オ)第282号)は、株主代表訴訟について非拘束説を前提にして、原告株主が第1審において被告の主張事実を自白したため敗訴した場合に、控訴審において、他の株主が自白された事実を争うために共同訴訟参加することが許されるとした。

 ()折衷説  類似必要的共同訴訟の場合には、拘束されるが、固有必要的共同訴訟の場合には拘束されないとする見解。
 ()拘束説  類似必要的共同訴訟であるか固有必要的共同訴訟であるかにかかわらず、参加人は原則として従前の訴訟状態に拘束されるとする見解。折衷説の理由付けのうち、固有必要的共同訴訟に関する部分を次のようにする。
非拘束説をとった場合には、従前の訴訟状態に反する参加人の訴訟行為により訴訟手続が著しく遅滞することになる場合の規整をどうするかが問題となる。会社法849条1項ただし書のような規定(訴訟を著しく遅滞させることになる場合には、参加は許されない)がある場合には、その適用問題となる。他方、そのような規定がない場合には、従前の訴訟状態にかかわらず攻撃防御方法を提出することができるということが原則となろうが、その原則を貫徹することができるかは疑問であり、何らかの規整が必要なように思える。また、中間判決の拘束力は、本来は裁判所に対する自己拘束力であるが、参加人は中間判決に拘束されることなく、中間判決の基礎となる口頭弁論期日前に存在した事実を主張しあるいは証拠を提出してその判断を争うことができるのかも問題となろう(従前の訴訟状態に拘束されるかされないかという大枠の議論だけでは不十分であり、個別事項ごとに検討することが必要になろう)。

いずれの見解を取るべきか迷うが、その一つの原因は、可能な選択肢を出し尽くしているとは言い切れないことにある。その点はともあれ、非拘束説は、判例で問題になった事案については妥当な結論を可能にしているとしても、紛争の迅速な解決の要請を軽視しており、一般論としては採用できない。拘束説を原則として上で、一定の範囲では例外を認めるべきであると思われる。ただ、折衷説に示した例外でよいのかが詰め切れない。

いくつかの共同訴訟参加類型を取り上げ見よう。

5 訴訟告知(53条


「訴訟告知」に関する 文献  判例

概 説
訴訟に参加するだけの利害関係を有する者に訴訟係属を通知するために、訴訟告知の制度が用意されている(ここで参加は、補助参加に限らず、当事者参加等も含む)。参加するか否かは告知を受ける者(被告知者)の自由であり、また、実際に参加する場合には、それぞれの参加に関する規定に従い、参加要件が充足されているか否かがあらためて調査される。被告知者が補助参加する場合でも、告知者側に補助参加するかその相手方に参加するかは、被告知者の選択に委ねられている。

被告知者が告知者側に補助参加していたならば参加的効力(48条)が生ずべき場合に、被告知者が訴訟告知にもかかわらず補助参加しなかったときは、補助参加することができた時に補助参加していたものとして参加的効力が生ずる(53条4項)。

訴訟告知の要件
一般人にとって、裁判所から訴訟告知書の送達を受けること自体が精神的負担になろう。したがって、訴訟告知は適式でさえあれば無限定に許されると言うべきものではなく、一定の要件のもとで許されるとすべきである。どのような場合に訴訟告知が許されるかについて一般的な規定はない。訴訟告知によって生じうる最も重要な法律効果(被告知者に不利な効果)は53条4項の参加的効力であるが、この効力が生じ得る場合に限定する必要はない。訴訟告知は、それ以外の目的のためにも利用できる制度であり、その許容範囲は広めに認めてよい。なお、参加的効力が発生するか否かは告知者の被告知者に対する後の訴訟において判断されるのであり、訴訟告知が許されるか否かを判断する時点でその予測をすることは困難であることにも留意すべきである。

訴訟告知が許される場合
   次の場合には、訴訟告知は許される。
)明文の規定により訴訟告知が義務づけられている場合
)法令により訴訟告知が許されている場合
)法令又は契約により通知義務ないし通知責任を負わされている場合  通知は訴訟告知の方法による必要はないが、それでもその後に紛争がどのように展開するか予測しがたいことを考慮すると、訴えが提起された段階で訴訟告知をすることも許容すべきである(訴訟開始前の段階で通知し、訴訟開始後に訴訟告知することも許される)。  
)上記以外の場合に、どの範囲で訴訟告知をすることが許されるかが問題になる。抽象的に言えば、(α)告知者が訴訟告知をすることについて正当な利益を有する場合、あるいは(β)被告知者が訴訟係属について通知を受けることについて利益を有する場合に許されるべきである。一つのの訴訟告知がこれら2つの場合に該当することもありうる。例えば、被告知者が告知者側に補助参加する利益を有する場合には、告知者は被告知者の応援を得るために訴訟告知をする利益を有し、被告知者は補助参加により自己の法的地位を安定させるために、訴訟告知は受ける利益を有するので、訴訟告知は許されるべきである。
4')よく問題になるのは前記(4)(α)の場合である。それは、上記1から3以外の場合に関しては、告知者の立場から見て53条4項の規定により参加的効力を発生させる必要がある場合である(参加的効力の発生の有無は、後訴において被告知者の利益も考慮して判断される)。すなわち、(α)告知者が現訴訟で敗訴すれば被告知者に対して訴えを提起する必要があり、二重敗訴を回避するために参加的効力を得ておく必要があるときにも、訴訟告知は許される。被告知者に対する訴訟として、次の2類型がある([松本*2014a]8頁以下参照):(α1)被告知者から補償を得るための訴訟;(α2)現訴訟の原告の主張によれば、原告が被告と被告知者のいずれかに対して請求権を有するはずであるが、何れに対して請求権を有するのか明確でないため、さしあたり現訴訟を提起したが、敗訴すれば被告知者に対して提起する必要のある訴訟。さらに、(β)告知者が負っている実質的に同一の給付義務について、現訴訟の相手方と被告知者の双方から二重に履行を求められる虞がある場合には、現訴訟で敗訴した後で被告知者からの訴訟でも敗訴することを防止するために、訴訟告知をして参加的効力を生じさせる必要がある。(α)の場合には、後訴において参加的効力が認められるか否かを現訴訟で判断するのは困難であり、告知者が被告知者に対して訴訟を提起することを予定していると主張しているのであれば、それでもって訴訟告知は許されるとしてよいであろう(その様な状況であれば、被告知者も現訴訟の係属について通知を受ける利益を有すると言いうる ) 。(β)の場合についても、告知者が主張する二重請求が法律上あり得ない場合は別として、そうでない限りは訴訟告知を許すべきでである。
被告知者
  被告知者となりうるのは第三者である。現訴訟の訴訟当事者がこれに当たらないのはいうまでもなく、現訴訟の受訴裁判所を構成する裁判官、訴訟代理人もこれに当たらないと解すべきである([松本*2014a]8頁)。

告知者  告知者は現訴訟の当事者(独立参加人を含む)、補助参加人である。被告知者も、現訴訟に参加する前の段階で第三者に訴訟告知をすることができる(53条2項)。

訴訟告知の手続
訴訟告知は、告知者が作成した訴訟告知書を裁判所が被告知者に宛てて送達する方法によりなされる。具体的には、次のようになる。告知者は、「その理由及び訴訟の程度を記載した書面」(53条3項)を作成する。この書面を訴訟告知書という。告知者は、訴訟告知書の正本、副本及び写しを裁判所に提出して、被告知者への送達を求める。裁判所は正本を記録に編綴し、訴訟告知の要件を充足するかを審査し、要件が充足される場合には副本を被告知者に送達する(規則22条1項・2項)。それとともに、相手方当事者にも写しを送付する(規則22条3項)。相手方当事者への送付は、被告知者が訴訟手続に参加する場合の対応を準備させるためのものであり、送付がなされなかったとしても、そのことは訴訟告知の効力を左右しない。

訴訟告知書には、現訴訟事件を特定してその訴訟に関して訴訟告知する旨を記載し(明文の規定があるわけではないが、当然のことであろう)、さらに次の事項を記載することが必要である。
訴訟告知の効果(1)−−参加的効力
訴訟告知に結びつけられた主要な効果は、参加的効力である(53条4項)。例えば、保証人が債権者から保証債務履行請求の訴えを提起された場合には、民法463条443条により通知をなすだけでは求償権確保の措置としては不十分である。主債務者が述べる弁済の事実を保証債務履行請求訴訟で保証人が主張したにもかかわらず認められなかったため保証人が敗訴した場合に、主債務者に対する求償請求訴訟では主債務者がその事実を主張して今度はそれが認められて保証人が敗訴することがあり得るからである。この場合には、保証人は、求償訴訟において主債務者に主債務が消滅していたとの主張をさせないようにする必要がある。主債務者に訴訟告知をしておけば、主債務者が補助参加しない場合でも、参加することができた時に参加したものとみなして、参加的効力が生じ、主債務者の前記の主張を封ずることができる(53条4項)。

もっとも、訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対して常に参加的効力が及ぶわけではない。告知者と被告知者との間に敗訴の責任を分担すべき関係があることが前提条件であり、この前提が成立する範囲でのみ参加的効力が生ずる。

この点について、最高裁判所 平成14年1月22日 第3小法廷 判決(平成10年(オ)第512号)は、次の2つの限定を設けた。
  1. 法律上の利害関係  訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても判決が効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が42条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ,ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう。
  2. 参加的効力の生ずる事項  参加的効力の及ぶ理由中の判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではない。

第1の要件は、必要条件として肯定できる。実際、被告知者が補助参加しようとしたら、相手方からの異議により参加が不許になれば、参加的効力を生じさせる前提を欠くことになるからである(しかし、参加的効力を発生させるためには、これだけでは不足である)。第2の要件は、次のような配慮に基づくものであろう:告知者が敗訴した場合に参加的効力が生ずる事項を被告知者が認識できないと、被告知者は不必要に補助参加を強制されることになる;それは妥当ではないから、被告知者が補助参加しなかった場合に参加的効力が生ずる事項は、参加的効力の発生を比較的明確に認識できる重要な事項に限定すべきである;その点からすれば、補助参加しないにもかかわらず参加的効力が生ずるのは、主要事実の存否についての判断に限定することが好ましいことになる。しかし、訴訟の勝敗を決める争点が主要事実であるとは限らず、間接事実が重要な争点になることもあるのであるから、現実に補助参加がなされた場合には、そのような間接事実の認定について補助参加人が敗訴の責任を分担すべき場合があると考えたい。

補助参加責任  補助参加の許容要件としての利害関係と、訴訟告知による参加的効力の発生要件としての利害関係とは密接に関連するが別個であり、後者の認められるためには、被告者が告知者の補助のために参加すべき義務ないし責任を負っていることが必要であると解すべきである。なぜなら、
  1. 補助参加することは、一般人にとっては、訴訟代理人の選任を伴うそれなりに大きい負担である。被告知者は、将来自己に降りかかるであろう不利益が明確に大きなものでなければ、なかなか参加できないことを考慮すると、訴訟告知による参加的効力が生ずるためには、被告知者は告知者のために補助参加すべきであるという当為(補助参加責任ないし補助参加義務)を生じさせるだけの利害関係の存在が必要であると考えるべきである。
  2. 被告知者が補助参加責任を負うか否かは、(α)告知者の補助を求める必要性だけで決定するのは妥当ではなく、これと、(β)被告知者に生ずる参加の負担及び彼にとって現訴訟がもつ意味(重要性)との緊張関係の中で決められるべきものである。従って、後者の考慮から、補助参加責任が生ずるためには現訴訟が被告知者の法的地位に与える影響が一定水準以上のものでなければならないという要件が導かれる(その水準は、被告知者の視点のみから決まるのではなく、告知者の補助を求める必要性をも考慮して、両者の相関関係の中で決定されるべきものである)。
  3. 参加責任の有無は、46条の解釈と関連する。例えば、受託保証人から訴訟告知を受けた主債務者は、保証人側に補助参加して主債務の不存在を主張すべきであり、第一審で敗訴した場合には、告知者(被告知者)が上訴しない場合でも、自ら上訴を提起して自己の主張を貫徹すべきである。上訴を提起すれば勝訴する可能性があったが、被参加人が上訴をしなかったために敗訴で終った場合に、自ら上訴を提起しなかったことを棚に上げて、46条の除外理由に該当すると主張して参加的効力から逃れることは許されない。主債務者は受託保証人に対して保証委託契約に基づきそこまでの補助責任を負うと考えるべきである。しかし、主債務者と保証人との間に保証委託契約が存在しない場合には、そこまでの責任を負わせるのは酷であろう。ここから、(α)「補補助参加責任とは、告知者側に補助参加し、必要であれば自ら上訴して告知者を補助する責任をいう」との一般的命題を定立するのがよいか、それとも、(β)「被告知者が告知者をどの程度補助すべきかは、告知者と被告知者の間の法律関係により定まり、その法律関係により要求される以上の補助行為をしなくても、告知者がその行為をなしうるにもかかわらずその行為をしなかったことが一因となって敗訴したときには、参加的効力を免れることができる」という柔軟な命題を定立するのがよいかは迷うところである。ただ、両者は必ずしも不両立の関係にあるものではない。したがって、被告知者の予見可能性を高めるために、前者の命題を原則としつつ、後者の命題による責任軽減の余地があることを前提して補助参加責任の生ずる場合を具体的に設定するのがよいであろう。
  4. 補助参加責任を根拠付けるのは、基本的に告知者と被告知者との間の法律関係である。例えば、主債務者は、保証委託契約に基づき、主債務者から訴えられた受託保証人に対して補助参加責任を負うが、無委託保証人に対しては負わない。しかし、補助参加責任の有無の判断に当たっては、そうした契約関係のみならず、その他の法律関係も考慮されるべきである。例えば、無委託保証人が主債権者に弁済をして主債務者に求償を裁判外で求めている段階で、主債務者が主債権者から債務履行請求の訴えを提起された場合には、無委託保証人は、自己の求償権を貫徹するためにはそのような状況にある主債務者を補助する責任を負っていると言うべきである。

以上のことを整理すると、次のようになる。
  1. 要 件  訴訟告知による参加的効力が生ずるためには、被告知者が現訴訟に参加する利益を有し、かつ、告知者に対して補助参加責任を負うことが必要である。
  2. 参加的効力の生ずる事項  判決主文中の判断並びに判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断に生ずる。当該事実が現訴訟で問題になっていることは必要でなく、被告知者が補助参加をすれば主張すべきである事実に係る認定及び法律判断にも生ずる。

判例をあげておこう。
下記の場合について、参加的効力を検討しなさい。

1. Zは、見ず知らずのYから訴訟告知を受けた。訴訟告知書には、次の趣旨のことが記載されている。「ZがXに対して負っている債務について、Zの委託を受けてYが連帯保証人になった。Xが、Zから債務の弁済がなかったと主張して、Yに保証債務の履行を求める訴えを提起した。そこで、Zがこの訴訟に補助参加するように、訴訟告知をする。訴訟は、まだ第一回口頭弁論期日前の段階にある」。Zは、「Xから金を借りたことはあるが、既に弁済済みである。Yに保証人になることを頼んだ覚えはない」との趣旨を記載した書面を上申書として裁判所に郵送の方法により提出し、あわせて同趣旨の書面をYに送付し、補助参加はしなかった。Zの証人尋問の申請がなされないまま、Y敗訴判決が確定した。Yが保証債務を履行し、YがZに対して、求償の訴えを提起した。ZはYに対して、主債務が存在しなかったことを主張できるか。なお、求償訴訟において証拠調べをすれば、保証委託がないこと、およびZがすでにXに債務を弁済済みであったことが証明されるものとする。

2.Yの過失のある運転によりXが負傷し、XがYに対して損害賠償の訴えを提起した。Yは、Xが交通事故により受けた傷はそれほど大きくなかったのに、Xの持病と搬送された病院の医療過誤により損失が拡大したと主張するとともに、Xに生じた損害を争うことについて補助を求めて、病院を経営するZに訴訟告知をした。しかし、ZはYの側に補助参加することなく、逆にXの側に補助参加して、Yの主張をことごとく争った。裁判所は、YとZの共同不法行為を認め、Xの持病を否定し、Yに5000万円の支払を命じた。Yは、Xに支払った賠償金について、Zに対して求償請求の訴えを提起した。この訴訟においても、YとZの共同不法行為が認定された。問題は、Xに生じた損害額である。Zは、Xには持病があり、稼働能力が低かったことを考慮すれば、YとZがXに賠償すべき金額は2000万円であったと主張することは許されるか。Zが前訴においていずれの側にも補助参加していなかった場合はどうか。

訴訟告知の効果(2)−実体法上の効果
訴訟告知には、実体法の規定により、時効中断の効力が付与されていることがある。
  1. 手形の裏書人が自己の後者から償還請求の訴えを提起された場合に、自己の前者(裏書人・為替手形の振出人)に対する償還請求権は、訴えを提起されたときから6箇月をもって消滅時効にかかるが(手形法70条3項。引受人に対する請求権については同条3項参照。約束手形につき77条1項8号)、訴訟告知をすることによりこれを中断することができる(同法86条。小切手について小切手法73条1項参照)。また、地方公共団体の職員の行為により地方公共団体が損害・損失を受け、地方公共団体がその職員等に対して損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有する場合に、住民は、地方公共団体が職員等に対して損害賠償請求権等を行使することを当該地方公共団体に訴求することができる。この場合に、被告(地方公共団体)は、その損害賠償請求権等の時効を中断するために義務者(職員等)に対して訴訟告知をすることができ、その訴訟告知は民法147条1号の請求とみなされる。
  2. 訴訟告知書において告知者の被告知者に対する権利主張が記載されている場合には、その記載は民法153条の催告として時効中断の効力を有する。いゆわる裁判上の催告として、現訴訟の終了まで催告が継続したものと扱われるかは問題であるが、現訴訟の結果を見て被告知者に対する訴訟を提起するかを決するのが合理的である場合には、裁判上の催告の効力を認めるべきである。

上記1の場合の時効中断効の発生時期は、147条を類推適用して、送達のために訴訟告知書を裁判所に提出した時点とすべきである。 他方、上記2の場合の時効中断効の発生時期は、被告知者が告知書の送達を受けた時とすべきであろう。

練習問題


問題

  1. Yの主張によれば、XYZの三者間に次のような債権債務関係がある。XがYに対して1000万円の債権(α債権)を、YがZに対して1000万円の債権(β債権)を、ZがXに対して1000万円の債権(γ債権)を有している。
  2. XがYに対して、α債権の弁済請求の訴えを提起した。
  3. その訴訟で、Yが次のように主張した:Xの訴え提起前に、XYZは、ZがYのXに対する債務(α債務)を免責的に引き受けることを合意し、これによりα債権が消滅し、XのZに対する債権(α'債権)が発生した;この免責的債務引受を前提にして、YはZの債務(β債務)を免除し、Zはγ債権でα'債権と相殺することを合意し、Zはその相殺の意思表示をしたから、YはXに対して債務を負っていない。
  4. Zも、この主張に同調している。
  5. これに対して、Xは、免責的債務引受の合意も、γ債権の存在も否定している。
  6. この紛争を整合的に解決するためには、誰がどのような申立てをしたらよいか。

問題

  1. Xは、Yに対して1000万円の債権(α債権)を有していると主張し、YはZに対して1000万円の債権(β債権)を有していると主張し、ZはXに対して1000万円の債権(γ債権)を有していると主張している。
  2. Zは、XのYに対する取立訴訟の係属中にXからα債権の譲渡を受けたと考えている。Zは、XY間の訴訟にどのように関与したらよいか。
  3. Yは、α債権の発生を認めつつも、XのYに対する訴えの提起前に、β債権の代物弁済としてγ債権の譲渡を受けたと考えており、α債権とγ債権との相殺の抗弁を提出していた。しかし、Xは、γ債権の存在自体は認めつつも、譲渡禁止特約が付されているので、譲渡は無効であるから相殺もできないと主張している。ZがXY間の訴訟に参加した後で、Yは、紛争をうまく解決するために、どうするのがよいか。

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目次文献略語
2000年4月30日−2017年6月5日