XがYに対して300万円の債権を有している。時効の完成まで後1カ月のところで、AがXになりすまして弁護士Bに訴訟委任をし、Bは、X名義の訴訟委任状がAによって偽造されたものであることに気づかずに訴えを提起した。裁判所は、弁論準備手続を経て、Yに対する貸付けをしたときのXの代理人R等を証人として尋問し、さらにYも尋問した。その結果、請求を棄却すべきとの心証を得たが、口頭弁論の終結日に委任状の偽造が発覚し、Xの所在がつかめないためその追認が得られないので、訴え却下判決を言い渡した。訴え提起から1年後のことである。その1週間後にこのことを知ったXが、従前の訴訟追行を全部追認の上、上訴を提起した。Xは控訴審の第一回口頭弁論期日において、追認の意思を明確にしたが、その後の期日には出頭しなかった。控訴裁判所は、第一審の訴訟経過ならびに控訴審におけるXの訴訟追行の態度から見て、請求に理由がないとの心証を得、かつ、民訴307条ただし書により自判しようと思えばすることができると考えている。控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。
控訴審判決に対して上告が提起されないまま確定した後で、その1ヶ月後にXが同じ債権について再度訴えを提起した場合に、裁判所はどのようにすべきか。今度はXは、十分な訴訟資料を提出して債権の存在を証明できそうであるとする。
ヒント:時効の点については、裁判上の催告の法理にも言及すること。 |