民事訴訟法講義
上 訴 1関西大学法学部教授
栗田 隆 |
上告審 | 法律審(事実審理を行わない) |
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控訴審 | 事実審(事実審理を行う) |
第一審 |
形式的不服説 | 当事者が第一審で求めた判決 > 第一審判決 (例外あり) |
実質的不服説 | 当事者が控訴審で求める判決 > 第一審判決 |
新実質的不服説 | 上訴以外の方法では得ることのできない利益(あるいは回避することのできない不利益)が存在すること |
自己責任説 | 新実質的不服説+自己責任による上訴の抑制 |
XがYに対して1000万円の損害賠償請求の訴えを提起し、600万円が認容され、その余が棄却された。Xは、これに不満はあったが訴訟を終了させようと思い、控訴しなかった。ところが、Yが控訴して、請求棄却判決を求めた。Xは、控訴審において、第一審で認められなかった400万円の支払を命ずる判決を求めることができるか。 |
XがYに対し建物明渡請求の訴えを提起し、請求が認容された。Yが控訴したので、XがYの行為により建物が損傷を受けたことを理由に損害賠償請求を追加した(297条・143条)。この請求の追加は附帯控訴の方式でなされるべきか。Yが控訴を取り下げた場合に、新請求についての訴訟係属はどうなるか。 |
XがYに対して300万円の債権を有している。時効の完成まで後1カ月のところで、AがXになりすまして弁護士Bに訴訟委任をし、Bは、X名義の訴訟委任状がAによって偽造されたものであることに気づかずに訴えを提起した。裁判所は、弁論準備手続を経て、Yに対する貸付けをしたときのXの代理人R等を証人として尋問し、さらにYも尋問した。その結果、請求を棄却すべきとの心証を得たが、口頭弁論の終結日に委任状の偽造が発覚し、Xの所在がつかめないためその追認が得られないので、訴え却下判決を言い渡した。訴え提起から1年後のことである。その1週間後にこのことを知ったXが、従前の訴訟追行を全部追認の上、上訴を提起した。Xは控訴審の第一回口頭弁論期日において、追認の意思を明確にしたが、その後の期日には出頭しなかった。控訴裁判所は、第一審の訴訟経過ならびに控訴審におけるXの訴訟追行の態度から見て、請求に理由がないとの心証を得、かつ、民訴307条ただし書により自判しようと思えばすることができると考えている。控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。 控訴審判決に対して上告が提起されないまま確定した後で、その1ヶ月後にXが同じ債権について再度訴えを提起した場合に、裁判所はどのようにすべきか。今度はXは、十分な訴訟資料を提出して債権の存在を証明できそうであるとする。 ヒント:時効の点については、裁判上の催告の法理にも言及すること。 |
上訴人 | 控訴審の本案についての判断
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請求認容判決がなされるべきである。 | 請求棄却判決がなされるべきである。 | 本案判決をするためには「事件につき更に弁論をする必要」がある。 | |
原告 | 原判決を取り消して、請求認容判決をする。 | (α)不利益変更禁止原則との抵触を避けるために、原判決を取り消して、原審に差し戻す。(β)ただし、被告が紛争の迅速な解決のために控訴棄却判決を申し立てているときには、控訴審は、控訴棄却判決をするにとどめることもできるとすべきである。(注1) | 一審判決を取り消して、原審に差し戻す。 |
原告・被告双方 | 原判決を取り消して、請求棄却判決をする。 | ||
被告 | 不利益変更禁止原則に抵触しないようにするために、原判決を取り消して、原審に差し戻す。(注2) |