注1 当然承継がある場合には、新当事者に手続関与の機会を保障するために、原則として手続が中断されることが規定されている。しかし、訴訟承継がなくても手続の中断が生ずる場合がある(例えば、訴訟能力の喪失、法定代理権の消滅(124条1項3号)。また訴訟承継があっても例外的に手続は中断しないとされている場合がある(例えば、訴訟代理人がいる場合の当事者の死亡(58条1項1号、124条1項2号))。
注2 これに対し、人事訴訟で検察官が当事者となる場合(人訴12条3項・26条2項・42条1項・43条2項)は、国家機関としての抽象的な検察官職が当事者であって、個々の検察官ではないから、担当検察官の交代があっても、中断にはならない(新担当者が旧担当者から事務を引き継ぐことで対応できる)。
注3 この見解は、本条の参加がフランス法に由来する明治民訴法の詐害再審(同法483条)の流れを引くという沿革から、その立法趣旨は第三者に詐害的訴訟防止手段を与えるものであると理解する。基本的にはこの説に従いつつ、詐害の意思的要素をできるだけ捨象して、詐害的な訴訟追行が行われる場合(十分な訴訟活動の展開が期待しがたい場合)に参加が認められるとする見解もある。
注4 旧法下では、最高裁判例は片面的参加を否定していた。最高裁判所 昭和42年9月27日 大法廷 判決・民集21巻7号1925頁参照。
注5 この論文は、引受承継または参加承継があった場合の手続規整を、被告側承継・原告側承継、全部承継・一部承継・重畳的承継ごとに検討している。結論部分を表にすると、次のようになる。
被告(債務者)側承継 |
原告(債権者)側承継 |
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全部の免責的債務引受、又は債権譲渡 | XのYに対する1000万円貸金返還請求訴訟の係属中に、Wが全額について免責的債務引受があったとして訴訟引受の申立てをし、それが認められた場合 41条の準用あり。申出は必要だが、引受申立てに定型的に含まれている。 |
XのYに対する1000万円の貸金返還請求訴訟の係属中にXが債権をZに譲渡したとして、YがZに対して訴訟引受の申出をし、それが認められた場合 41条の準用あり。申出は必要だが、引受申立てに定型的に含まれている。 |
一部の免責的債務引受、又は一部譲渡 | 上例において、700万円のみについて免責的債務引受があった場合 41条の準用あり。 |
上例において、300万円が譲渡された場合 Xが請求金額を700万円に減縮すれば、41条の準用なし。 |
重畳的債務引受 | XのYに対する建物収去・土地明渡請求訴訟の係属中に、Yが建物をMに賃貸したとして、XがMに対して訴訟引受の申立てをし、それが認められた場合 請求は両立しうるから、同時審判申出のある共同訴訟の規制を形式的に準用すべきでない。 |
被告(債務者)側承継 |
原告(債権者)側承継 |
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全部の免責的債務引受、又は債権譲渡 | XのYに対する1000万円貸金返還請求訴訟の係属中に、Wが全額について免責的債務引受があったとして訴訟参加し、Xに対して債務不存在確認を求めただけの場合(片面的参加) 合一確定の必要はないから、40条の不適用。41条の準用あり。申出は必要だが、引受申立てに定型的に含まれている。 |
XのYに対する1000万円の貸金返還請求訴訟の係属中にXが債権をZに譲渡したとして、Zが訴訟参加した場合 両面参加の場合には40条の準用がある。他方、Yに対してのみ請求を立てる片面参加の場合には、41条の準用で足りる。申出は必要だが、参加申立てに定型的に含まれている。 |
一部の免責的債務引受、又は一部譲渡 | 上例において、700万円のみについて免責的債務引受があった場合 合一確定の必要はないから、40条の不適用。。XがWの参加に伴いYに対する請求を300万円に減縮するときは、41条の準用も必要ない。 |
上例において、700万円が譲渡され、Zが訴訟参加した場合 Xが1000万円の請求を維持し、Zが両面参加する場合は、40条の準用がある。他方、Xが請求を300万円に減縮するときについては、Xの申出があるかぎりで同時審判の申出のある共同訴訟の規律を及ぼす。*注* |
重畳的債務引受 | XのYに対する建物収去・土地明渡請求訴訟の係属中にYが建物をMに賃貸したとして、Mが訴訟参加の申立てをし、Xに対してだけ請求を立てた場合。 合一確定の必要はないから、40条の不適用。。41条の準用も必要なし。通常共同訴訟で足りる。 |
*注* 次のように述べている。
「Xが請求を300万円に減縮するときにも、Xとの関係では、債権譲渡が有効であるとの理由で請求が棄却され、Yとの関係では、債権譲渡が有効であるとの理由で請求が棄却されるという危険は残るのでXの申出があるかぎりで同時審判の申出のある共同訴訟の規律を及ぼす方が妥当であろう。」
文中の「Yとの関係では、債権譲渡が有効であるとの理由で」の部分の「有効」は、「無効」の誤植であろうか。
注6 なお、控訴審から訴訟に加わることになった承継人が独自の攻撃・防御方法を提出できる場合には、それについて審級の利益を保障することが望まれる。形式説では、承継人は控訴審で審理裁判を継続することが原則となるが、事案によっては、承継人もしくは相手方が求める場合に事件を原審に差し戻すことも考えられてよいのではなかろうか(承継人については、彼が自ら参加した場合には審級の利益を放棄したものと考えてよいので、相手方の引受申立により彼が当事者となった場合のみが問題となる)。
注7 もっとも、3人の内の2人が出頭し、1人が出頭しない期日において、出頭者がその準備書面に記載していない事実を主張すれば、それが不出頭者との関係でも訴訟資料とするのが妥当かは、問題である。独立当事者参加訴訟においては、当事者間には連合関係がないのが通常であり、不出頭者との関係で擬制自白の成立を認めることは、彼の手続保障に欠けることになるからである(特に詐害訴訟防止参加の場合に、参加人が出頭していないときが問題である)。迷うところではあるが、民事訴訟は、手続の迅速な進行のために、40条2項を準用したのだ理解して、不出頭者の擬制自白を認めるのがよいであろう。
注8 補助参加人が被参加人を原告とする訴えの変更をすること、あるいは被参加人を反訴原告とする反訴を提起することが許されないという意味である。補助参加人が相手方に対して自らが原告となって別訴を提起することは、何ら妨げられない。この場合に別訴と本訴の審理につき弁論の併合がなされるかは事案に依存するが、両請求の関連性が深ければ、通常は弁論が併合されることになろう。実例として、東京地方裁判所 平成12年7月14日 民事第47部 判決(平成8年(ワ)第23184号ほか)参照。
注9 [河野*1997a]170頁以下・172頁は、45条1項に「再審の訴え」の語句を入れたことに批判的である。
注10 少数説として、参加人は原告が被告に対して提示した請求の当事者となるとする見解もある([森*1956a])。一つの請求に3人の異なる当事者がおり、既判力は3者間に及ぶのであるから、まさに言葉の真の意味での「三面訴訟」である。極めて魅力的な見解である。
古くは、本訴訟に主参加訴訟(大正民訴60条)が併合された訴訟であり、判決の合一的確定のために各当事者間に事案に応じて特別の補助参加関係が生ずるとする見解(主参加併合訴訟説)もあった([山田*1932a]5頁以下)。この見解は、必要的共同訴訟の特則を定める62条(現40条)の準用を当事者間の特別の補助参加関係(準共同訴訟的従参加関係)の成立の意味に理解しようとする点でも特異な見解である。なお、主参加訴訟が平成民訴法では廃止された現在では、歴史的意味しかない。
注11 もしYにZのXに対する請求についても原判決の取消申立てをなすことを要求すると、何らかの事情でYがそれをしなかった場合に、すっきりした解決が得られなくなる。その取消申立てがなくても、合一確定の要請により控訴審はZのXに対する請求部分についても原判決を取り消すべきであるとする方が、明快である。その意味で、Yがこの部分について取消申立てをすることができない(しても効力がない)というのである。
注12 例えば、XがYに対する給付訴訟の係属中に訴求債権をZに譲渡したにもかかわらず、Zが訴訟参加せず、Yも訴訟引受の申立てをしない場合に、Xは現在の債権者ではないから、Xの請求は棄却されることになるが、それでもXに不利益が生ずることはない。Zが再度Yに対して給付の訴えを提起すればよいからである。債権譲渡が否定された上で、Xの訴求債権はそもそも当初から存在しなかったとの理由でX敗訴判決が確定した場合でも、ZのYに対する後の訴訟で、債権譲渡が前訴の係属中に有効になされていたと判断されれば、結果は同じである。但し、後の訴訟(ZのYに対する訴訟)でも前訴係属中の債権譲渡は無効であると判断される場合に備えて、XはYとの訴訟を真剣に追行する必要がある。その負担から逃れるために、Xは、Zを訴訟に参加させ、自らは訴訟脱退することに利益を有するが、X自身の主導によりZの訴訟に参加させる手段は、訴訟告知以外には特に用意されておらない。ただ、その利益はそれほど大きくない。脱退したところで、債権譲渡前に債権が存在していたことを主張・立証するために、XはZに補助参加することを求められるのが通常であるから、いずれにせよ、XはYとの関係で当該債権の存在を真剣に争うことが要求されるからである。
なお、参加人と被参加人との利害関係はさまざまであること、被参加人が事実上応訴できないために異議権を行使できない場合があることを考慮すると、肯定説では要件が緩やか過ぎないか不安になる。被参加人が異議権を行使できない状態にある場合には「当該権利行使につき被参加人と参加人と間に明白な利益相反関係がないこと」を要件にしたいところである。ただ、この要件を課す必要がある場合を想定することが難しい。
注14 例えば、原告が所有権確認訴訟において財産隠匿のために故意に敗訴しようとする場合には、参加人は<原告が係争物について所有権を有することの確認の請求>を立てればよく、参加人はこれについて確認の利益を(従って当事者適格も)有することになる。原告の被告に対する請求が給付請求である場合も同様であり、参加人は<原告が被告に対して給付請求権を有することの確認の請求>を立てればよい。
注15 参加命令を受けてから実際に参加するまでの間の訴訟状態の変動に拘束されることになるというのが理論的ではあるが、このままでは実際の行動指針となりえない。
注16 [福永*1974b]145頁は、詐害防止参加に関し、「参加が適法であるためには、参加人に当事者適格のあることは必ずしも必要でないと解する余地があるように思う」と述べている。これは、参加人の当事者適格の有無を問題にすべき訴訟物として、原告の被告に対する請求そのものを考えていると読むことができ、もしそうだとすれば、独自請求不要説を前提にしていることになる。
注17 事例として、次のものがある(補助参加の許否が争われたわけではない)。
注18 最高裁判所 昭和25年9月8日 第2小法廷 判決民集4巻9号359頁、最高裁判所 昭和37年1月19日 第2小法廷 判決(昭和36年(オ)第469号)民集16巻1号106頁。
これに対して、上訴提起とともに補助参加する場合は参加人も被参加人の上訴期間内に上訴すべきであるが、第一審からの補助参加人については、彼に判決が送達された時から彼の上訴期間を計算すべきであるとする見解(独自上訴期間説)も有力である。[高橋*2004a]305頁など。
注19 口頭弁論終結前に承継があったことがその後に判明するという事態は、実際上は少ないであろう。承継人は承継の事実を認識しているはずである。被承継人の相手方については、多くの特定承継について対抗要件の具備が必要であり、115条1項3号との関係でも対抗要件の具備が必要であると解すれば、相手方は適時に承継の事実を知ることができるであろう。建物収去・土地明渡請求訴訟において被告により建物が賃貸されたような場合には、原告たる土地所有者が賃貸の事実を適時に知ることができるとは限らないが、そのような場合には占有移転禁止の仮処分により対処すべきである。
ともあれ、口頭弁論終結前に承継があったことがその後の訴訟係属中に判明したという場合には、次のようにすべきである。
注20 親が失踪して子供たちが親の所有する住宅に残って家を守っている場合はどうであろうか。この場合でも、親が敗訴判決を受けて自宅が競売されてしまうことのないように、子(成人に達した子)が親のために補助参加する必要があることに変わりはないであろう。
このような場合には、被告の配偶者あるいは子が不在者の財産管理人(民法25条)となって、訴訟を追行することも考えられる(訴訟上の地位は、法定代理人)。しかし、その方法があるから補助参加を許す必要はないとするのは硬直的なように思われる。何らかの事情で財産管理人の選任が遅れると、被告側欠席のまま判決が確定する場合もありえよう。また、不在者の財産管理人として財産を全面的に管理するまでの必要はない場合もあろう。したがって、補助参加も許されるものと解したい。より一般的にいえば、≪法律上の利害関係の判定に際して、補助参加申立人が自己の利益を守るために他に適切な手段を有するか否かを考慮し、他の手段よりも助参加の方法により自己の利益を守ることが有効適切であると認められる場合に補助参加の利益を肯定すべきである≫と定式化できる。もっとも、前記の設例がこの定式の要件を満たすかについては、なお異論の余地があろう。
注21 最高裁判所平成11年4月22日第1小法廷判決(平成9年(行ツ)第165号)は、自治体職員に対する損害賠償請求の住民訴訟において、行訴法15条の準用により当事者変更を認めつつも、同条4項は出訴期間の徒過による不利益を救済するに留まり、時効中断の効力は中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶとする民法148条の原則を修正する規定であると解することはできないとした。行訴法15条による当事者変更は、「原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤った」という緩やかな要件の下で当事者変更を許すものであり、この要件のみではたしかに時効中断の効果を新被告に拡張することは困難である。しかし、変更される当事者間に密接な関係がある場合、あるいは、被告の誤認について被告側に帰責事由がある場合には、旧被告に対する訴えによる時効中断の効果を新被告に拡張することは許されるべきであり、また、民事訴訟における当事者変更はそのような場合に許されるのが原則である。
注22 行訴法15条は上訴審での当事者変更を認めて、新被告の審級の利益の保護のために管轄裁判所に移送すべきものとしている。しかし、民事訴訟においては、新旧被告間に密接な関係があり、新被告の審級の利益を第一審管轄裁判所への移送により保護する必要がない場合には、第一審への移送は必ずしも必要でないと考えたい。
注23 この事件は、自らも監査請求手続を経て住民訴訟を提起する資格を有する住民が、他の住民の提起した住民訴訟に共同訴訟参加できる期間内に補助参加した事案であり、共同訴訟参加可能な期間を徒過した後で補助参加する場合、あるいは、監査請求手続を経ていない住民が補助参加する場合にどうするのかがなお問題となる。
注24 残存当事者間で新請求が定立される場合に、そのことを脱退者に通知することが必要となるような場合があるかを検討してみよう。
以上のことから、次のように言うことができる:残存当事者間で新請求が提起された場合に、そのことを脱退当事者に通知して、彼に訴訟に復帰する機会を与える必要は、通常はない。しかし、例外的に、新請求が脱退者の請求と抵触する場合、あるいは参加人の脱退者に対する請求を上回る場合には、脱退者にそのことを通知して訴訟に復帰する機会を与える必要がある。この場合に、そのような新請求を許さないと言うのも一つの解決策であるが、紛争解決の適切性との視点からは、この解決策は適当でないと評価されよう。
注25 その点からすれば、当然承継と参加承継・引受承継を訴訟承継の概念の中に一まとめにするのが適当かも問題となる。
注26 この場合に補助参加を肯定するのが多数説である。例えば、[書記官研修所*2002a]262頁、[新堂*新民訴]692頁(但、請求自体についての判断が相手方と参加人間の法律関係の先決関係となっている場合には、既判力が相手方と参加人間にも拡張されるとしている(699頁)点に注意)。
注27 インターネット上で「補助参加」の語を検索すると、「補助参加人募集」の広告をよく見かける。公益的要素を含んだ訴訟においては、支持者が多数存在することを補助参加の形で明らかにすること自体に意味があるのであろう。ただ、多数の補助参加人の存在は、訴訟運営を難しくする。こうした実情が、補助参加の要件論にどのような影響を与えるかも、興味のわく点である。
注28 通説の立場にたつ文献として、次のものがある:[梅本*民訴]644頁以下。
他方、少数説として次のような見解がある。
注30 他人間の訴訟の係属を補助参加の要件としてあげない文献:[書記官研修所*2002a]262頁。
要件としてあげる文献:[中野=松浦=鈴木*2004a]526頁(井上治典)(訴訟係属は潜在的でよい)、[松本=上野*民訴法v2] 538頁(但し、「現に訴訟が係属すること」は要件とされていない)、[梅本*民訴]637頁(但し、補助参加人の再審の訴えの提起による訴訟の復活も否定していることに注意)。
注31 [中野=松浦=鈴木*2004a]526頁(井上治典)
注32 肯定説:[中野=松浦=鈴木*2004a]526頁(井上治典)、[書記官研修所*2002a] 262頁。
否定説:浦和地裁平成11年6月25日判決(平成11年(ワ)835号)。
注33 旧法64条の「訴訟ノ係属中」という文言は、平成8年法では削除されたが、だからといって、補助参加の利益を有する者が被参加人を原告とする訴えを提起することが一般的に許されるわけではない。
次のような場合をどうするかは、迷う。
この講義は、補助参加人がこのような訴えを提起することはできないとの立場に立っている。もし、これらの訴えの提起と共に補助参加することが認められるようになると、本文で述べた要件の(a)及び補助参加人のなしうる訴訟行為についての記述は、変更しなければならない。
注34 事実上の利害関係」・「法律上の利害関係」の概念の内容を、補助参加を許すのが適当かどうかという規範的視点から離れて明確化していくことができるのであればよいが、実際上は、≪補助参加を許してもよいほどに強い利害関係≫が認められるかという規範的視点から、個々の事例類型ごとに決定して行かざるをえないであろう。
注35 後者の意味での合一確定を「論理的合一確定」という。これとの対比で、40条1項の本来の合一確定を「既判力的合一確定」と呼ぶことができる(ただし、使用する頻度の低い用語である)。
注36 民訴124条2項の規定が、破産法13条を通じて破産法44条の受継に準用されることもない。
注37 なお、この判旨を反面解釈的に推し進めると、売主が買主の代理人と締結した売買契約に基づいて買主に対して提起した代金支払請求訴訟において代理権の授与が問題となっている場合には、代理人は、敗訴した売主から無権代理人の責任を追及されることを回避するために、売主側に補助参加することが認められてよいことになる。
注38 人訴法15条4項により、民訴法40条1項が準用されているが、その適用結果は、民訴法45条1項本文の適用と同条2項の適用排除の組合せから導くことができる範囲内のことであるので、40条1項の準用は確認的なものと言うことができる(40条1項の準用により検察官のした自白は参加人の否認により効力を失う点に意義を見出そうとしても、人事訴訟においては、同法19条により民事訴訟法179条前段(自白に係る部分)の適用が排除され、自白の拘束力自体が否定されているので、その意義は成立しない)。人訴法15条4項による民訴法40条2項の準用は、検察官の当事者としての地位を弱めることになるが(検察官が不出頭で補助参加人が出頭している期日に原告が準備書面に記載されていない事項を陳述する場合を想起すればよい)、これは検察官が訴訟の結果に現実的な利害関係を有しないことにより正当化されよう。
注39 検察官が被告になっている人事訴訟において、訴訟の結果により相続権を害される者が参加する場合に、その参加は共同訴訟的補助参加と解されているが、この場合には、民訴法45条1項ただし書の適用を排除する規定がないので(人訴法15条3項参照)、参加人は参加当時の訴訟状態に拘束されることになる。ただし、人事訴訟においては、自白に関する規定(民訴法179条)も時機に後れた攻撃防御方法の却下に関する規定(民訴法157条・157条の2)も準用が排除されているので、参加時の訴訟状態に拘束される度合いは高くない([長谷部*2017b]105頁参照)。それでも、既に中間判決がなされていれば、それに反する主張は許されないし、事件が控訴審に係属している場合には審級の利益を失うことになる。
注40 ただし、「2.4 上訴審における各当事者の地位」の「合一確定の必要があるとはいえない場合の処理」の中に紹介した[井上*1981a] 216頁以下の議論に萌芽があるとみてよい。
注41 最高裁判所 平成22年10月19日 第3小法廷 判決(平成21年(受)第708号)の裁判官田原睦夫の補足意見参照。田原意見は、「独立当事者参加(民訴法47条)をすることができるか否か」が問題となるとするが、その趣旨は、49条1項に言うところの47条の訴訟参加(承継参加)であると理解したい。ただし、49条から切離された独立当事者参加の余地もあり、その趣旨であるかもしれないが、被保全債権にの承継人に49条所定の時効中断の遵守の利益を否定することは、適切でなかろう。
注42 大正15年法の下では両面参加のみが許され、片面参加は許されないとされていた(最高裁判所 昭和45年1月22日 第1小法廷 判決(昭和42年(オ)第867号))。現行法の制定の際に改められた。