目次文献略語

民事執行法概説

債権執行1/3


関西大学法学部教授
栗田 隆

第1章 強制執行
 第2節 金銭執行
  第4款 債権およびその他の財産権に対する強制執行
   第1目 債権執行等


1 概説


復権執行に関する 文献  判例

1.1 債権執行の位置付け

現代の経済社会は、取引の迅速化・活発化のために、高度の信用取引の上に成り立っており、債務者の財産中に占める債権の比重が高まっている。 また、企業経営の大規模化にともない、賃金労働者が増加し、彼らが執行債務者となった場合には、給料債権以外にみるべき財産がない場合が多い。 さらに、特許権を初めとする各種の知的財産権が法の保護のもとで非常に重要な価値を持つようになり、また、取引社会においてゴルフ会員権などのさまざまな対人的権利が作り出されている。 民事執行法は、これらの無形の財産を対象とする執行を次の2つに区分して規定している。
  1. 金銭債権および動産・船舶の引渡請求権に対する執行(債権執行。法143条以下)
  2. その他の財産権に対する執行(法167条

ここでは、債権執行を取り上げ、その他の財産権に対する執行は、別に取り上げることにする。なお、その他の財産権に対する執行に関する最近の文献として、次のものがある。
債権執行には、執行債権者とこの者に給付義務を負う執行債務者の外に、後者に給付義務を負う第三債務者が登場し、法律関係が複雑となる。 しかし、その点を別にすれば、手続はここでも差押え・換価・配当の3段階に区分される。ただし、換価の方法は、他の財産に対する執行の場合と比較して特異性がある。 執行債権者自身による第三債務者からの取立て(法155条以下)、 当該債権を券面額において執行債権者に帰属させる転付(法159条)、 およびその他の方法(法161条以下)があり、前二者が中心となる。

国際的債権執行
一般に、執行事件に渉外的要素がある場合、すなわち、強制執行事件の関係人あるいは執行の対象となる財産などについて外国に関係する要素がある場合に、その強制執行を国際的執行事件という。 債権執行においては、重要な利害関係人として第三債務者が登場し、彼が外国に居住する場合が問題となる。 また、執行対象は、多くの場合に特定性を有しない金銭の給付を内容とする債権であり、したがって、その準拠法が外国法の場合もある。 国際交流が盛んになるのに応じ、債権者の権利もこうした国際的債権執行の形で実現を図る必要が生ずる。 しかし、執行対象となる債権が観念的存在であるだけに、その執行には様々な問題が生ずる([酒井*2005b]=酒井一「国際的債権執行における若干の問題」国際私法年報7号(2005年)116頁−138頁参照)。

国際的債権執行に関しては、興味深い問題が尽きないが、この概説では残念ながら取り扱うことができない。以下では、渉外的要素のない純国内的な債権執行を念頭において説明する。
用語法
「差し押さえる債権」あるいは「差し押さえられた債権」を「差押債権」という。「被差押債権」と言ってもよいのであるが、差し押さえられた動産を「差押物」(123条3項)と言うのにならって、「差押債権」と言うことが多い。

1.2 管轄

債権執行を管轄するのは地方裁判所である。その土地管轄は、原則として執行債務者の普通裁判籍所在地の裁判所に専属し、これによることができないときは、執行対象たる債権の所在地の裁判所に専属する (法144条1項・19条)。

債権の所在地は、次のように規定されている(144条2項)。

1.3 債権執行の対象(143条

債権執行の対象となる債権
債権執行の対象となるのは、次のものである。なお、すでに他の執行手続の対象の一部となっている債権(強制管理における賃料債権など)は、債権執行の対象とはならず、その手続により換価・配当される。
 ()金銭債権[26]。
 ()動産の引渡請求権  第三者が占有している動産は、その者が任意の提出を拒む場合には、動産執行の方法によることができないので、 債務者が第三者に対して有する引渡請求権が債権執行の対象になる(法124条163条)。 換価は、執行官が目的物の引渡しを受けて、動産執行の売却の手続により売却する方法によりなされる。売得金は執行裁判所に提出され、執行裁判所により配当等が行われる(法163条2項)。 銀行の貸金庫に保管されている動産については、貸金庫契約に基づく引渡請求権(内容物全体の一括引渡請求権)が執行対象となり、引渡請求訴訟において債権者は内容物を特定する必要はない (最高裁判所平成11年11月29日第2小法廷判決(平成8年(オ)第556号))。
 ()船舶等の引渡請求権  執行開始段階で場所的固定が必要になる船舶等の準不動産が第三者により占有されている場合も、準不動産執行の方法によることができず、 その引渡請求権が債権執行の対象となる。この場合には、債権執行手続として直接規定されているのは差押えと船舶保管人への船舶の引渡しまでであり、その後の手続は船舶執行の方法により行われる(法162条。 動産の場合と異なり、船舶の換価は裁判所の担当である。換価と配当を裁判所が担当するのであるから、船舶保管人への引渡し後の手続は、ひとまとめにして、船舶執行の方法によるものとされている)。 執行対象として船舶と同様な特質を有する次の物の引渡請求権についても、同様な処理がなされる。
注意すべきもの(1)
債権は、債務者に属するものでなければならないが[45]、対象の無形性のゆえに、その点は差押命令の発令時には調査されない。その代わり、債務者に属しない債権の差押えは、当然に無効とされる。

)債権は、私法上のものでも公法上の関係から生ずるものでもよい。

)反対給付にかかる権利、質権の対象となっている権利でもよく、差押債権者を第三債務者とする債権でもよい。

)履行期未到来の債権、条件付債権でもよい。
)将来発生する可能性のある債権も、発生の基礎となる法律関係が存在し、執行対象とするに足りる程度に発生の可能性が高いもの(財産的価値のあるもの)は、差押対象となる[7][CL2]。
注意すべきもの(2)−譲渡された賃金債権
賃金債権については、労基法24条1項の直接払の原則が適用される結果、慎重な検討を要する問題が生じやすい。
問題は、差押え前に対抗要件を具備していた譲受人が、差押債権者に対して受領金を不当利得として返還請求できるかである。賃金債権の譲受人の権利は、上述のように、譲渡人の手を介してのみ実現できる弱いものである。 執行手続を経て譲渡人に先んじて賃金債権から債権を回収する地位を認められている執行債権者の給付保持力を優先させるべきである、と考えたい。[52]。

1.4 債権執行の対象とならない債権

動産執行の対象となる有価証券上の債権
債権を表章する有価証券が発行されていて、権利の譲渡が有価証券の譲渡の方法でなされる場合には、その有価証券が動産執行の対象となる。 裏書が禁止されている有価証券以外の有価証券がこれに該当する(122条)。 他面、そのような有価証券に表章された債権は、債権執行の対象とならない(143条)[6]。

差押禁止債権(152条
債務者の最低生活の保障のために、法152条1項により、一定範囲の債権は差押禁止債権とされている。 しかし、多様な社会関係のなかにある債権者と債務者の利害をこれだけで調整することは困難であるので、動産執行の場合と同様に、執行裁判所に差押禁止債権の範囲を伸縮する権限が認められている(153条)。

 ()給料債権・退職年金債権等の、現在または過去の継続的役務に対する報酬として継続的に支払われる金銭についての債権は、支払期に受けるべき給付(所得税・社会保険料を控除した額)のうちの3/4に相当する額が差押禁止となる(1項2号)。 ただし、このルールだけでは、債務者が高額所得者の場合に、彼に留保される債権額が多くなりすぎるので、差押禁止額の上限は「標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額」−−2017年4月1日現在で月33万円−−とされている(民事執行法施行令2条)。 逆に低所得者については、所得の1/4が差し押さえられると、その最低生活が脅かされることになるが、この場合の救済は153条に委ねられる。 差押禁止部分が債務者に支払われた後では、それが現金で支払われた場合には131条3号により保護される。 口座振込の形で支払われた場合には、153条によらざるをえない。

しかし、この方法では、執行債務者(法的知識が十分にあるとは言い難い一般労働者)にかかる負担が大きく、 預金債権に対して転付命令が発せられた場合に彼の利益(日々の生活資金の入手)を守る手段として実効性を欠くことが指摘されている。 そして、給料等の振込みがなされている預金口座に係る預金債権の差押命令においては、差押禁止額に相当する金額を超える部分の差押えのみが許され、 これに反する差押命令に対しては、執行債務者は執行抗告により是正を求めることができるとする見解が有力になっている([中野*民執v5]635頁[中野*民執v6]657頁など)。

 ()債務者の生活維持のために支払われる継続的給付に係る債権も、同様に保護されるべきであるが、このうち国または地方公共団体からの給付については、 給付の根拠法により、通常、全額が差押禁止となる(生活保護法58条など)。それ以外の者からの給付については、給料債権と同様の範囲で差押禁止となる(152条1項1号)。 生命保険会社等との私的年金契約による継続的給付債権などがこれに含まれる。なお、(a)と(b)とが競合する場合にも、差押禁止額の上限は合計で33万円である。

民法の規定による扶養料請求権については、これも民執法152条1項1号に該当し、1項柱書の範囲でのみ差押えが禁止されるとする見解と([中野*民執v5]636頁[中野*民執v6]658頁など)、 扶養料請求権は扶養権利者の生活維持の目的のために支払われることを重視して、その目的の達成のために全額が差押禁止対象になるとする見解とがある。

民法881条の趣旨を債権執行の局面でどのように適用していくかの問題である。扶養料は、しばしば扶養義務者の生活費を削って支払われるものであり、 扶養料請求権の一部について差押えが許されるのであれば、その金額だけ扶養料額を削減してよいはずであるとの要求が扶養義務者から出されることもあり得よう。 他方で、扶養義務者に十分なゆとりがあり、権利者に最低生活以上の生活を保障するために十分な金額の扶養料が支払われる場合もあり得よう。 さまざまな場合に柔軟に対応するために、結局のところ、153条により解決せざるを得ない。同条の適用にあたっては、差押命令の発令(命令書の送達)の際に、 執行裁判所が執行債務者に153条1項・2項の差押命令取消制度があることを教示することが必要であり、令和元年改正によりそれが一般的に(差押債権がどのようなものであるかを問わずに)明規された(145条4項)。

 ()退職時に一時金として支払われる退職手当については、差押禁止額の上限を33万円とするのは適当でないとの判断の下に、 上限なしに3/4が差押禁止債権とされている(152条2項)。 退職手当が銀行等の債務者の預金口座に振り込まれた場合には、全額が差押可能となる。 ただし、退職金は老後の生活資金の意味を有することがあるので、債務者が老齢である場合にはその点を考慮の上、153条により差押命令の取消しが広く認められてよい。

扶養料債権のための特則  151条の2第1項各号掲記の扶養料債権者の保護のために、 その債権が執行債権である場合には、差押禁止範囲は、「4分の3」から「2分の1」に引き下げられている(152条3項)。 その基礎には、次の考慮がある([法務省*2002b2]57頁。なお、[谷口=筒井*2004a]104頁も参照)。
執行債権は、151条の2第1項に掲げられた扶養料債権であれば足り、同条が適用される場合(確定期限未到来部分について執行を開始する場合)のみならず、 履行期到来済の扶養料債権に基づき通常の差押えがなされる場合にも適用される([谷口=筒井*2004a]105頁[49])。

他の法律による差押禁止
民事執行法以外の法律においても、債権の特質を考慮して差押えが禁止されている場合がある[36]。これには3つのタイプがある。
  1. 受給権を差押禁止とするもの  例:自賠法18条(被害者の保険会社に対する直接請求権の差押禁止)・74条、雇用保険法11条(「失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない」)。
  2. 受給権とあわせて受給された金品も差押禁止とするもの  例:生活保護法58条「被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押さえられることがない。」 ; 東日本大震災関連義援金に係る差押禁止等に関する法律[53]。
  3. 受給権の差押えを原則として禁止しつつ、例外的に、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による差押えを許すもの  例:農業者年金基金法39条「受給権は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。 ただし、年金給付及び脱退一時金に係る受給権については、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。」

その他
法令により差押禁止が明規されていない債権でも、債権の性質により譲渡あるいは他人による行使が許されないものは、差し押さえることができない。例えば、次のものがこれにあたる[43]。
ただし、私人間の譲渡禁止の特約(民法466条)により、一般債権者のための責任財産性を排除することを認めるわけにはいかないので、 そのような特約のある債権も、差し押さえることができるのみならず、被転付適格も肯定される (最判昭和45年4月10日民集24-4-240[百選*1994a]67事件)[47]。 判例により古くから認められていたこの法理は、平成29年民法改正により明文化され(民法466条の4第1項)。 それとともに、同改正により、譲渡禁止特約付き債権であっても債権譲渡の効力は妨げられないとの原則をとりつつ(466条2項)、譲受人がその特約について悪意又は善意重過失の場合には、 債務者は譲受人その他の第三者に対して弁済を拒むことができる(同条3項)とされたことに伴い、そのような譲受人の債権者により差押えがなされたときは、債務者は執行債権者への弁済を拒むことができると規定された(466条の4第2項)。

以下では、金銭債権に対する執行に重点を置いて、債権執行について説明することにしよう。

2 金銭債権の差押え


2.1 差押命令の申立てと裁判(145条

申 立
申立書には、執行当事者のほかに第三債務者も表示する(規133条1項)。差押債権を特定するために、 債権の種類および額等を記載し、債権の一部を差し押さえる場合には、その範囲を明らかにしなければならない(規133条2項)。

差押債権の特定
観念の世界でのみ存在する債権は、外部からは動産以上に把握しにくいのであり、動産差押えについて場所単位主義が取られていること(個々の動産を特定する必要のないこと)も考慮すると、 債権差押えの申立ての段階で個々の債権を精確に特定することを要求することはできない。 債権の特定は、次の2つの判断を可能にする程度に特定されれば足りる。
一般に、債権執行においては、差押債権を特定するためには、当該債権の当事者である執行債務者と第三債務者の特定の外に、次の事項を特定すべきものとされている。
  1. 第三債務者が複数の営業所を有していて、各営業所ごとに債権の管理がなされている場合には、その営業所
  2. 債権の種類(給料債権、売掛代金債権、普通預金債権、定期預金債権等の種別)
  3. 同種の債権が複数発生している場合に備えて、第三債務者においてどの債権が差し押さえられたかを認識するための基準。例えば、 債権発生日による基準、金額の大小による基準、利率の大小による基準、弁済期による基準、差押債権のための担保権の有無による基準、 先行する仮差押えの執行又は差押えの有無による基準(先行する差押え等がない債権から差し押さえるのが通常である)、差押債権の上に担保権が設定されているか否かによる基準など。 預金債権については、このほかに、口座番号の大小による基準を用いることができる。

複数店一括順位付け方式
執行債務者が一つの金融機関(法人)に対して預金債権を有している場合に、第三債務者となるのは、金融機関であって各営業所ではないので、営業所を営業所番号の小さい順といった基準をもって特定したうえで、 各営業所が管理している預金債権について差し押さえられるべき債権の順位を特定することにより、差押債権を特定することも、理論的には可能である。この方式による特定を「複数店一括順位付け方式」と呼び、 そのうちで、一つの金融機関の全店舗を対象とするものを「全店一括順位付け方式」と呼ぶことにしよう(最高裁判所 平成23年9月20日 第3小法廷 判決(平成23年(許)第34号)の田原補足意見参照)。

コンピュータシステムによる管理がなされていなかった時代(営業所ごとに文書で管理されていた時代)には、営業所の特定は必要不可欠であり、複数店一括順位付け方式は許されなかった。 しかし,現在ではコンピュータによる集中管理が進んでいる金融機関もあり、そのような金融機関については、複数店一括順位付け方式でも足りるとする議論も有力になってきていた(高田昌宏[百選*2005a]128頁参照)。

しかし、最高裁判所 平成23年9月20日 第3小法廷 判決(平成23年(許)第34号)は、次のように説示して、大規模金融機関について、全店一括順位付け方式では差押債権の特定として不十分であるとした。
この見解は正当であり、支持されるべきである。しかし、全店一括順位付け方式の許容を求めた執行実務の動きの中には、差し押さえられるべき債権の探索の負担を軽減したいという執行債権者の要求も読み取ることができる。 執行制度は、経済社会を支える法的基盤のうちでも特に重要なものであることを考慮すると、この需要には別の方法で応える努力がなされるべきであろう。 すなわち、債務名義又は仮差押命令を得た債権者は、裁判所を通して、執行債務者が預金債権を有している可能性のある金融機関に預金債権の有無及びそれを管理している営業所を照会することができ、 金融機関は執行債務者に内密にこれに回答する義務があるとする制度を創設することが必要とされているように思われる。 もちろん、この照会に回答するにあたっては、金融機関に相当の事務負担が生ずるであろうから、相応の手数料が執行債権者によって払われるべきである。

そのような制度として、「第三者からの情報取得手続」の制度(204条以下)の一部として、「債務者の預貯金債権等に係る情報の取得」の制度(207条)が創設された。 金融機関は、情報ほ書面で執行裁判所に提供し、執行裁判所が書面の写し(この写しは、金融機関が作成して裁判所に提出する)を申立人(債権者)に送付する (208条2項。ただし、金融機関から申立人に直接送付することも許容されている、民執規則192条参照)、金融機関は、債務者に対して通知する義務を負わない(従って内密性が保たれる)。 ただし、債務者に関する財産情報が提供されたのであるから(債務者が個人の場合には、個人情報の提供があったのだから)、そのこと自体は債務者に知らせる必要がある。 208条2項は、その通知を執行裁判所がすべきものとした。その時期については特に規定はなく、実務運用に委ねられていることになるが、債権執行の実を挙げるためには、 債権者執行債権者が債権差押えの申立てを即時にして差押え命令効力を生ずるに通常要する期間が経過してから通知するとの運用が必要であろう。145条で差押命令の送達が規定されているが、 実務においては、第三債務者に送達され前に債務者に送達されることがないように配慮されているのと同じである)

差押えの範囲146条
金銭は分割給付が可能であるが、一個の債権に対しては、執行債権額がそれより小さくても、全体を差し押さえることができる(法146条1項。国税徴収法63条は、債権全額を差し押さえなければならない(本文)としつつ、ただし書で、全額を差し押さえる必要がないと認めるときは一部を差し押さえることができると規定している。民執法146条1項が「債権の全部について差押命令を発することができる」と明示したことにより、両者の足並みがそろった)。 目的債権が複数ある場合には、超過差押えは禁止され、一部の債権の価額(実価)でもって執行債権の完全な満足を得ることができる場合には、他の債権の差押えは許されない(146条2項)。 ≪差し押さえた債権の額≫(差押債権額)が≪執行債権と執行費用の合計額≫(請求債権額)を上回る場合でも、後者の金額を超えて支払を受けることはできない(法155条1項ただし書)。 この場合に、第三債務者について破産手続が開始されている場合には、執行債権者が行使する破産債権額は差押債権額であり、 これを基準にした配当額が請求債権額を下回る場合には、その配当額全部の支払を受けることができる。

実務 上記のように1個の差押債権額が請求債権額上回る場合でも、債権全体を差し押さえることができることが民事執行法により明確にされたが、 実務では、執行債権額制定前の書式が現在もなお用いられている。 すなわち、現時点(2020年9月時点)で裁判所が用意しているものがほとんどの書式では、「差押債権額は、請求債権額を超えることはできません」との注意書きが付されたり、 あるいは差押債権目録の頭書に請求債権額に相当する金額を記し、差し押さえる債権の範囲を「頭書金額に満るまで」と記す構成になっている。

損害金については、第三債務者に利息計算の負担を負わせることを避けるために、書式の注意書きで、≪差押命令の申立ての日までに限定して算出する≫ことを求めるものが多い。

審 理
適式な申立てがあれば、執行裁判所は申立書の記載に従い目的債権の被差押適格を調査し、差押えの許否を判断する。目的債権の存否の判断は取立訴訟等に委ねられるので、執行裁判所は判断しない。 また、差押えを予知した債務者の債権譲渡・取立てなどによる執行の挫折を防止するためにも、執行債務者・第三債務者の事前審尋はおこなわれない(145条2項)。

裁判と不服申立て
申立てが不適法であれば申立てを却下し、適法であれば差押命令を発する。これらの決定に対しては、執行抗告をすることができる (145条6項。不動産執行の場合と異なり、執行債務者の側の不服申立方法が、執行異議でなく、執行抗告であることに注意)。

執行債権について不執行の合意等がなされていても、それは、実体法上,債権者に強制執行の申立てをしないという不作為義務を負わせるにとどまり,執行機関を直接拘束するものではないから, その債権のために債権執行がなされても、執行抗告によってその排除を求めることはできない。請求異議の訴えによるべきである(最高裁判所 平成18年9月11日 第2小法廷 決定(平成18年(許)第13号))。

第三債務者は、差押債権が弁済等により消滅しているにもかかわらず差押命令が送達されると、さらに弁済をしなければならないのかと不安を感じ、差押債権が現在では存在しないことを理由にして執行抗告をしようすることがある。 しかし、第三債務者は、執行債権者が提起する債権取立訴訟等において差押債権の不存在又は消滅を主張することができ、差押債権の全部又は一部が存在しないときは、 その部分につき執行が効を奏しないことになるだけであ。そのような債権につき債権差押命令が発付されても、第三債務者が法律上の不利益を被ることはない。 したがって、第三債務者は、差押債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできない。このことは、物上代位権の行使として差押えがなされた場合でも同じである (最高裁判所 平成14年6月13日 第1小法廷 決定(平成13年(許)第30号))。

2.2 差押命令(145条

命令の内容
執行裁判所は、差押命令において、執行の根拠(執行債権・債務名義)および目的債権と差押えの範囲を明らかにした上、次のことを命ずる(法145条1項)。
差押債権が特定されなければ差押命令は無効であるが、特定の程度は、どの債権が差し押さえられたかを第三債務者が差押命令を基に認識できる程度で足りる。 差押命令の申立ての際になされる差押債権の特定がこの要求を満たしているべきであるので、それを前提にして、実務では、申立ての際に差し押さえられるべき債権を別紙「差押債権目録」に記載し、 その写しを申立書に添付して、これを差押命令の別紙「差押債権目録」として利用するのが通常である。 第三債務者においてどの債権が差し押さえられたのかの判断が可能である限り、差押債権の発生原因・額等につき不正確な表示があっても、差押えの効力は妨げられない。

裁判所書記官による教示
民事執行法は、債務者の生活維持に必要な継続給付(給料等)あるいは老後の生活基盤になるのが通常であると想定される退職金債権の差押え可能範囲を制限している(152条)。 その制限規定は、実務において運用しやすいように、給付の一定割合の差押えを制限する単純な原則を立て、その上で、個別事件の状況に柔軟に対応することができるように、 債務者及び債権者の生活状況(家族構成や年齢・疾病の有無等)その他の事情を考慮して、差押禁止範囲を変更することができるものとした(153条)。 しかし、特に少額の給与により生計を立てている者(非正規雇用の労働者など)について問題になることであるが、差押禁止範囲の変更制度は、従来十分に活用されているとは言い難かった。 そこで、2019年5月に、裁判所書記官が差押命令の送達に際して、153条1項・2項の規定による差押命令の取消しを申し立てることができる旨その他の最高裁判所規則で定める事項 (民執規則133条の2第2項により「差押命令の取消しの申立てに係る手続の内容」)を教示しなければならないことが規定された(145条4項)。

送達・効力発生時期
差押命令は、執行債務者と第三債務者の双方に送達され、後者に送達された時に差押えの効力が生じる(145条3・5項)。 送達は、民訴98条以下に従ってなされる(20条)[44]。 公示送達は好ましいことではないが、許される(差押債務者について、145条7項かっこ書参照。第三債務者については、差押債権に関し確定した給付判決があり、 その判決手続において被告への訴状の送達が公示送達によりなされていた場合があり得ることを想定すると、公示送達も許さざるを得ない)。

対抗要件を備えた債権譲渡との優劣[37]は、この時を基準にして判定される (民法467条。到達時説−最判昭和58.10.4判時1095-95[百選*1994a]86事件)。 なお、指名債権の譲渡の対抗要件が、現在では次のように複数あることに注意が必要である([住友証*1998a]参照)[51]。

私法上の効力(時効完成猶予・更新)
債権差押えは、強制執行の一種として、時効完成猶予の効力を与えられている(民法148条1項1号)。この効力は、断固とした権利行使の意思が表示された時、すなわち差押命令の申立て時に生じ、強制執行が終了した時に時効期間が更新される(同条2項)。

執行債務者への送達  差押命令は第三債務者に送達された時に効力が生じ、執行債務者への送達は取立権発生の要件(送達の時から1週間後に取立権発生)とされているにとどまるため、申立て時に生ずる時効完成猶予効は差押命令が執行債務者に送達されることを条件としているかが問題になる。これは、訴え提起による時効完成猶予効が訴状の被告への送達を条件としている(これは、訴状が却下される場合には裁判上の請求があったとは言えない)と解されていることとの比較の問題でもある)。次のような見解がある(行きに挙げる不文兼・判例は平成29年改正前の規定に関するものであるが、改正法下の見解としても通用する)。
  1. 執行債務者は民法153条1項(改正前148条)の時効完成猶予事由の生じた当事者であり、同法154条(改正前155条)の類推適用は許されず、彼に強制執行の開始をに了知されることを要せず、執行債務者への差押え命令の送達が完了しない場合でも、完成猶予効は生ずる(最高裁判所 令和1年9月19日 第1小法廷 判決)。
  2. 民法154条(改正前155条)の法意に照らせば,債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためには,当該請求債権の消滅時効期間が経過する前に債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要する(前掲最判の原審であるというべきである福岡高(宮崎支)判平成30年3月28日)。。
  3. 差押命令が債務者に送達されることを条件として、差押命令の申立時に時効完成猶予効が生ずる([条解*2019a]1264頁以下(下村眞美)。何時までに債務者に送達されるべきかは明示されていない)。

強制執行の終了時  差押債権が取立てられても、執行債権の全額の満足に至らない場合には、残債権について時効の更新が生ずる。更新の時期は、(α)差押債権の全部の取立てが完了した場合には、その完了時と解すべきである(裁判所が管理する執行事件の意味での執行手続は、支払を受けた旨の届出(民執法155条4項)により終了するが、その時を時効更新時期としたのでは、届出の遅滞を誘発することになる)。(β)差押債権全部について取立てが未了である場合に、民執法155条6項の規定により差押命令が取り消された場合には、その時から時効は更新される(この取消制度は、執行裁判所の事件管理を容易にするため設けられたものであり、その取消しは、民法148条1項かっこ書・2項ただし書の「法律の規定に従わないことによる取消し」には該当しないと解される)。(β')差押債権全部について取立てが未了である理由が第三債務者の無資力あるいは第三債務者の財産の探知不能等による取立ての困難である場合には、債権者がそれを理由に強制執行を終了させる旨の意思表示を裁判所にした時から時効は更新されると解すべきである(その意思表示により差押えの効力が消滅し、裁判所は執行債務者と第三債務者にその旨を通知すべきことになるので、そのような意思表示は、「差押命令の申立ての取下げ」となろう。この取下げについては、民法148条1項かっこ書・2項ただし書の適用はないとすべきである。そうしないと、執行債権者は155条6項の規定による取消しをまつことになり、債権執行制度の運用として好ましくない状況に陥るからである。「申立ての取下げ」では誤解を招きやすいので、それを避けるという意味で「取立権放棄」等の意思表示を観念することも考えられるが、実質は同じである)。また、(γ)差押債権の一部取立て・残部未了の場合には、(β・β')で述べたことが執行債権の残額に妥当する。

差押債務者への送達の不能による取消し145条7項・8項)
差押債務者への送達がなされる前であっても、第三債務者への送達が有効になされると差押えの効力が生ずる。ここから、次の問題が生ずる([内野=吉賀=松波*2020a]353頁等参照)。
  1. 差押債務者への送達がなされないと、差押債権者は取立権を取得せず(155条1項参照)、 事件が進行しない(転付命令が発せられる場合でも、転付命令は確定せず、差押債権を取得した者として取立てをすることができず、事件が終了しない)。その結果、裁判所における未済事件数が増加する。
  2. 債権差押事件の長期化は、第三債務者の債務管理(金融機関の場合には預金口座管理)の負担を増大させる。
  3. 強制執行による時効完成猶予効は、差押命令が執行債務者に送達されなくても生ずるので、執行債務者が了知しないまま時効完成猶予効が生じて長期間が経過し、その間に累積した遅延損害金が多額になことがあり、そうなると債務の時効消滅を想定していた執行債務者の予定が狂う。

もちろん、差押命令は債権差押命令申立書に記載された執行債務者の住所・居所宛てに送達することが試みられ、転居先不明等の理由により送達ができない場合には、裁判所書記官が債権者に執行債務者の住所・居所の調査を求めるのであるが、第三債務者から陳述(147条)から差押債権の金額が少額であることが判明すると、その調査を怠ることになりやすい。その結果執行債務者に差押命令が送達されないままになるという事態が生ずるのである(前掲最判令和1年9月19日の研究である下村信江・金法2145号23頁及び同書引用の文献参照)。

そこで、事件の完了を促すために、裁判所は、差押債権者に対し、相当の期間を定め、 その期間内に債務者の住所、居所その他差押命令の送達をすべき場所の申出」又は「公示送達の申立て」をすべきことを命ずることができ(7項)、 申出(又は公示送達の申立て)がないときは差押命令を取り消すことができる(8項)とされた(令和元年改正)。

仮差押えが先行する場合
強制執行としての差押え(本差押え)に先立って執行債権の保全のために仮差押えの執行がなされている場合には、仮差押えの執行の時点で生じた処分禁止の効力は、本差押えにも及ぶ。 仮差押えの執行と本執行との関係については、諸説があるが、現在では、両者が独立に併存し、各々について独立に取下げや取消しがなされ得ると解する立場(併存説)が多数説になっている。 最高裁判所 平成14年6月7日 第2小法廷 判決[百選*2005a]120事件(宇野聡)も、これを前提にして、次の趣旨を説示している: 債権の仮差押えの執行後・本執行による差押えの効力が生ずるまでの間に第三債務者が差押債権を弁済した場合において,債権者が仮差押えを取り下げたときは, 仮差押えの執行によって第三債務者につき生じていた上記弁済禁止の効力はさかのぼって消滅し,第三債務者は差押債権の弁済をもって債権者に対抗することができる。

先日付の振込依頼がなされている場合
債務の弁済方法として、債務者が自己の取引銀行(仕向銀行)に債権者の取引銀行(被仕向銀行)の預金口座に振り込むことを依頼する方法がある。 この口座振込みは、振込依頼がなされた後直ちに実行されるのが原則であるが、依頼者は、将来の一定の時期に振り込むことを依頼することもできる(先日付の振込依頼)。 この振込依頼が一旦なされた後で、その実行前に撤回することも可能であるが、安易な撤回は銀行業務を混乱させるので、取引実務において相応の手続を踏むことが要求されている。

では、差し押さえられるべき債権の弁済のために第三債務者が先日付の振込依頼をした後で、かつその振込みが実行される前に第三債務者に差押命令が到達した場合に、差押えの弁済禁止効はどうなるだろうか。 最高裁判所 平成18年7月20日 第1小法廷 判決(平成16年(受)第226号)は、仮差押命令に関し、次のように説示した: この場合には、第三債務者は、振込依頼を撤回して債務者の預金口座に振込入金されるのを止めることができる限り,弁済をするかどうかについての決定権を依然として有するというべきであり, 取引銀行に対して先日付振込みを依頼したというだけでは,仮差押命令の弁済禁止の効力を免れることはできない; 第三債務者は,送達を受けた時点において,その第三債務者に人的又は時間的余裕がなく,振込依頼を撤回することが著しく困難であるなどの特段の事情がある場合に限り,上記振込みによる弁済を差押債権者に対抗することができる。

上記の説明は、銀行以外の金融機関が関与する振込みについても妥当する。

2.3 差押えの効力

客観的範囲
差押えの効力は、差押命令において限定がなければ、目的債権の全額に及び、従たる権利(担保権、差押え発効後に支払期が到来する利息債権等)にも及ぶ。 債権の一部が差し押さえられた場合に、その残余の部分を超えてさらに差押え・仮差押えの執行があった場合には、差押えの効力は、債権の全部に及ぶ(149条)。

差押債権者の地位
差押債権者は、差押命令じたいに基づき取立権限を取得する(法155条)。 さらに、転付命令等の換価処分を申し立てることもできる(法159条161条。 これは、差押命令の申立てと同時にすることもできる)。時効完成猶予の効力は、差押命令申立時に執行債権について生ずるが(民法148条1項1号・149条1号)、差押債権についてまで生ずるわけではない。

執行債務者の地位
執行債務者は、差押え後も債権の帰属主体であることに変りはないが、取立権限は彼から執行債権者に移転しており、執行債権者の満足を害するその他の処分行為(免除等)をなすこともできない。 差押債権の基礎となる法律関係自体の処分により差押債権を消滅あるいは減額させることができるか等は、法律関係自体の処分の自由の必要性に依存する。

)次の類型の処分は妨げられない。
)他方、次の類型の処分により差押債権者の利益を害することは許されない。
訴訟追行権限等  債権が差し押さえられると、債権の帰属主体である執行債務者と差押債権者の双方が、その債権の実現について利益を有する。 そのため、執行債務者が差押債権につき給付訴訟を追行することができるか、その判決効は差押債権者に及ぶか、 執行債務者は差押えが効力を失うことを条件に給付を命ずる判決を求めるべきであるかといった問題が生ずる。 この点については、大きな分類として、差押債権者を執行債務者の訴訟担当者(民執法115条1項2号)とみる訴訟担当説と、 差押債権者は自己の利益のために訴訟を追行する権限(固有適格)を認められた者であると見る固有適格説とがある。

訴訟担当説は、平成29年民法改正後は、同法423条の6を類推適用して、執行債務者の利益を保護することになろう。取立訴訟を提起した差押債権者は執行債務者に対して訴訟告知をすることが必要であり、この告知は訴訟要件の一部となり、訴訟告知がしなければ訴えは却下される。訴訟告知を受けた執行債務者が差押債権者の側に補助参加する場合には、共同訴訟的補助参加となる(民訴法115条1項2号により判決効が執行債務者に拡張されるからである)。

固有適格説の中で、次のような見解が有力である([中野*民執v5]647頁・665頁注11、[中野*民執v6]672頁・692頁注11):
  1. 差押債権者は、執行債権の満足という固有の目的のために、差押債権に関する訴訟について固有の当事者適格を有する。他方、執行債務者も訴訟追行権限(当事者適格)を失わず、彼を当事者とする判決の効力は、差押債権者に当然には及ばない。 しかし、執行債務者が給付判決を得た場合には、差押債権者は、それを利用して差押債権を取り立てることができる。 差押債権者が提起した訴訟で下された判決の効力も、当然には執行債務者に及ばない。
  2. 第三債務者は、執行債務者と差押債権者の双方から訴求され得ることになるが、いずれか一方から訴えを提起された場合には、民執法157条1項の類推適用により、他方が共同原告として参加することを求めることができる (ただし、[中野=下村*民執]738頁注7は、判決効の拡張との関係で「法157条の類推には賛成できない」と述べる)。
  3. 一方が提訴した後で157条1項の参加命令が発せられる前に他方が別訴を提起した場合には、必要であれば移送後に、弁論を併合すべきである。 併合後の訴訟は、通常共同訴訟であり、判決が区々になることはあり得るが、ともあれ、これにより第三債務者は二重応訴の負担から解放される。
  4. 執行債務者は、自己が得た債務名義に基づいて差押債権の取立てのための強制執行の申立てをすることができるが、 配当等を得ることはできない(執行債務者は、差押債権の代物弁済的満足をもたらす転付命令を得ることもできない)。 第三債務者は、自己に対する強制執行の手続において、執行機関に執行債権が差し押さえられていることを申し出て、執行債務者への配当等を阻止する責任を負う。 差押債権者は、取立権限の行使として、配当等を受領することができる。
  5. したがって、執行債務者は、差押えがなされた後でも、無条件の給付判決を求めることができる。

なお、上記bに関し、参加命令にもかかわらず他方が参加しなかった場合に、157条3項の類推適用により判決効を他方に拡張させることができるかが問題になるが、固有適格説を前提にすれば、それは無理である。 したがって、第三債務者は参加しなかった者を被告にして債務不存在確認の訴えを提起し、既に係属している訴訟との併合を求めることができるとしなければならない。 また、他方が訴訟に参加する場合でも、それは通常共同訴訟になるから、民訴法52条の共同訴訟参加には該当しない。しかし、第三債務者に対して訴えを提起するとともに既存の訴訟の併合を求めることができる (裁判所は併合しなければならない)という意味での類推適用は可能である。

第三債務者の地位
第三債務者は、差押えの発効後に執行債務者に弁済しても、執行債権者に対抗できず、二重払を免れない(民法481条)。 ただし、差し押さえられるべき債権の支払のために差押えの発効前に第三債務者が手形・小切手を振り出していた場合には、手形の流通性の確保の要請が優先し、 その手形金等の支払は、差押えの発効後になされた場合でも、差押債権の弁済として差押債権者に対抗できる(最判昭和49年10月24日民集28-7-1504)。 第三債務者は、差押えの発効時に執行債務者に対して有していたすべての抗弁事由を差押債権者に対抗できる(cf.民法468条1項・511条)。

譲渡制限特約付き債権について譲渡と差押えが競合した場合[54]
譲渡禁止あるいは譲渡制限の特約は、本来、譲渡される債権の債務者の利益のために付された特約であるが、平成29年改正前は、譲渡人及びその債権者(特に破産管財人や差押え債権者)も譲渡の無効を主張することができるとの解する立場が強かった。

しかし、本来、譲渡人は譲渡特約付債権の譲渡の無効を主張することについて法的保護に値する利益を有せず(そのような利益と債権譲渡とは両立しない)、そのことは譲渡人の債権者についても同様である。 平成29年民法改正は、この趣旨を徹底し、かつ譲渡制限特約により保護されるべき債務者の利益の範囲を≪弁済その他の債務消滅行為の相手方を従前の債権者(譲渡人)に固定する利益≫に限定するとの方針を採用した([内田*民法3v4]246頁)。 この方針に基づき、譲渡制限特約付き債権が譲渡されて対抗要件が具備されたときは、譲受人が特約について悪意または善意重過失であっても、債権はすでに譲受人に移転し、 譲渡人は債権者でないことを前提にしつつも、債務者は、特約について悪意または善意重過失の譲受人その他の第三者(譲受人の債権者等)に対して履行を拒絶することができると規定し(民法466条3項前段)、 それとともに、譲渡人に弁済すれば、その弁済による債権の消滅をもって譲受人に対抗することができるとした(同項後段)。 債務者が譲受人に対して履行を拒絶する場合に、譲渡人が債務者に対して履行請求権を有することになるのかが問題になるが、譲渡人はすでに債権者ではないので、履行請求権を有しない([内田*民法3v4]247頁参照)。 このままでは債務者は誰からも履行を強制されないことになるので、債務者の履行拒絶権を消滅させるために、譲受人は、 債務者に対して、相当な期間内に譲渡人への弁済その他の債務消滅行為をなすことを催告することができ、その期間内に弁済等がなければ履行拒絶権は消滅するとされた (民法466条4項。条文上は「前項の規定は・・・適用しない」であるが、「履行拒絶権の消滅」と表現してよいであろう)。 譲渡人について破産手続が開始された場合に、債務者が破産管財人に弁済しても、その弁済金は譲受人に帰属すべきものであるので(破産債権者はその弁済金から配当を受けるべきことを期待すべきでないから)、 譲受人の譲渡人(破産者)に対する弁済金引渡請求権(ないし弁済金相当額の支払請求権)は財団債権になると解される([内田*民法3v4]247頁以下)。 このことを前提にして、譲受人が弁済金を確実に受領できるように、譲受人は債務者に弁済金を供託させることができ(466条の3)、供託金の還付請求権を有するのは譲受人のみとされた(466条の2第3項。ただし、債務者の負担軽減のために、譲受人は債権の全額を譲り受けていることが必要である)[55]。

したがって、債権者Gが債務者Sに対して有する譲渡制限特約付き債権がAに譲渡されて、その対抗要件が具備された後でGの債権者Bがその債権を差し押さえた場合に、 Aが特約の存在について悪意又は善意重過失であるためSがGへの弁済金を支払う予定であるときに、差押債権者Bが弁済金を受領しても、改正後の現行法の下では、その弁済金受領はAとの関係で不当利得となり、 BはAに返還しなければならない(反対説も十分に予想されるが、466条の3の規定の趣旨ないし根拠を考慮すると、このように解すべきであろう)。

ただ、SがBに弁済金を交付して、AがBから不当利得の返還を受けることは迂遠であるので、多くの場合に、 (α)Sは、履行拒絶権を行使することなくAに弁済金を支払うか、(β)履行拒絶権を行使する場合でも民法466条の2に従い弁済金を供託し、 弁済金が最終的に帰属すべき者であるAの利益に配慮すると思われる。(γ)Sが差押債権者Bに弁済金を支払うことは少ないと思われるが、 Bへの支払は許されないとの解釈論を立てることは試みられてよいと思われる。

その解釈論は、次のようになろう:上記の場合に、Sは弁済金の支払いについて3つの選択肢を有しているが、 (γ)の選択肢の前提となる民法466条の2第3項後段中の「譲渡人への弁済」は、譲渡人(G)が譲受人(A)に弁済金を引き渡すことができることを前提にした規定であり、 (1)譲渡人の資力が不十分であることが顕在化した状況において(譲渡人について民事再生手続、会社更生手続若しくは特別清算手続が開始されたこと、 又は強制執行手続(特に譲渡した債権の差押え)が開始されたことはこの状況に該当する)、かつ、(2)その選択肢を採ることを必要とする特段の事情がない場合に、 「譲渡人の弁済」を選択することは、権利の濫用に当たる。上記2つの要件で権利濫用を基礎付けることができるかについては、評価は分かれよう。別の解釈論として、 ≪民法466条の2第3項後段中の「譲渡人への弁済」は常に許されるのではなく、供託が困難な場合に限定され、供託が困難でない場合には供託の方法を採らなければならない≫と解釈することも考えられる。

第三債務者による相殺(順相殺)
執行      執行      第三
債権者     債務者     債務者
 X─(α債権)→Y─(β債権)→Z
         Y←(γ債権)─Z
 X←───(δ債権)─────Z
転付命令によりXがβ債権を取得する。
 X────(β債権)────→Z  

 順相殺:Zがγ債権をもってβ債権と
相殺すること。
 逆相殺:Xがβ債権をもってδ債権と
相殺すること。
第三債務者が執行債務者に対して反対債権を有している場合に、相殺に供することができる反対債権の範囲は、平成29年民法改正により拡充された。 すなわち、従前は、(α)相殺による差押債権の消滅を執行債権者に対抗するためには、反対債権を差押えの発効前に取得していたことが必要であった (民法旧511条・新511条1項)。両債権の弁済期の要件については見解が分れているが、 判例は、弁済期の先後を問わず第三債務者は差押え前から有する反対債権により相殺をなす期待を執行債権者に対抗でき、相殺予約を介してであれ、差押え後に相殺適状に達しさえすれば相殺できるとしている (無制限説。最(大)判昭和45年6月24日民集24-6-587[百選*2005a]65事件(河野正憲))[27]。 改正後は、次の反対債権も相殺に供することができるようになった。(β)差押え前の原因に基づいて差押え後に取得した反対債権(民法511条2項);ただし、差押え後に他人の債権を取得した場合ときは、この限りではない。

執行債権者による相殺(逆相殺)
もっとも、差押債権者が転付命令を得て差押債権を取得した場合には、彼がこの債権を自働債権として彼の第三債務者に対する債務と相殺すること(逆相殺)も可能であり、 第三債務者による執行債務者に対する債権との相殺(順相殺)との優劣は、相殺適状の発生時期ではなく、相殺の意思表示の先後により定まる (最判昭和54年7月10日・民集33巻5号533頁)[百選*2005a]78事件(菱田雄郷)[39]。

差押えの効力の相対性(手続相対効)
差押えの効力に抵触する執行債務者の処分行為は、その差押えに基づく執行手続が配当に至ることなく途中で終了すれば、完全に有効となるが、そうでない限り、 差押債権者のほか、その差押えに基づく執行手続に参加するすべての債権者に対する関係で相対的に無効(対抗不能)である。 例えば、債権者Gの申立てに基づく差押えの発効後にAが債務者から差押債権を譲り受け、対抗要件を得ても、Aは、 他の債権者がその後に二重差押えまたは配当要求によりGの執行手続に参加して配当等を受けることを排除できない。 債権者に満足を与えた後に剰余金があれば、それは執行債務者に交付される(法166条2項・84条2項)。

第三債務者の陳述義務147条
執行債権者が存在するであろうと思っていた債権も、現実には存在しなかったり、相殺により消滅する運命にある場合がある。 執行債権者は、そうした点について正確な情報を得て、その後の行動(取立訴訟の提起あるいは他の債権回収手段の選択)を決定する必要があるので、 第三債務者に差押債権の存否その他所定事項について陳述をなすよう催告することを執行機関に求めることができる(法147条)。 この催告に応じて第三債務者がなす陳述は、事実報告の性質を有するに過ぎず、彼が誤って債権の存在を認めて弁済の意思を述べ、 あるいは相殺の意思を表明しなかった場合でも、債務承認・相殺権喪失等の効果は生じない[35]。 ただし、故意・過失により不実の陳述をなし、あるいはなすべき陳述をなさなかった場合には、これにより差押債権者に生じた損害について賠償義務を負う (例:差押債権が存在するとの不実の陳述を信用したために、別の取立手段を直ちにとらなかったことによる回収不能の損害[40]; 差押債権が存在しないとの不実の陳述を信用したために、差押債権から債権を回収することができなくなったことによる損害)。

債権証書の引渡し148条
差押債権について証書(借用書、預貯金証書、債務名義たる文書、供託証書など)があるときは、執行債務者はそれを執行債権者に引き渡さなければならない。 差押えによる処分禁止の効果を確実にするとともに、執行債権者の取立てを円滑にするためである。 債務者が任意に引き渡さないときは、差押命令を債務名義として、強制執行により引渡しを得ることができる(148条)。 債務名義から対象となる証書が特定できる限り、執行文は不要であるが、特定できない場合には、執行文による補充が必要になる。 ただし、指名債権については、債権証書がなくても取立ては原則として可能である( 民法487条は弁済と債権証書の返還とを同時履行の関係に立たせるものではない、とするのが判例・多数説である。 第三債務者としては、不安がある場合には、156条1項の供託により弁済関係を明確にするのがよい)。

執行債務者の報知義務
執行債務者は、権利行使に必要な情報・資料を債権者に提供する義務を負い、148条の債権証書の引渡義務はその一つの現れであると理解すべきである ([内山*2000a]がドイツ法を紹介しながら強く主張するところである)。 その義務の強制方法は、民事執行法では用意されていないが、しかし強制方法はなくても義務であることには変わりはない (執行債権者は債務者の事務所等に行き情報の提供を迫ることができ、社会的許容限度を超えない限り業務妨害等の責任を負わない)。 この報知義務は、差押債権者が執行債務者との関係で差押債権を適正に行使する義務を負い、 それを怠れば債務者に対して損害賠償義務を負うこと(158条)と対応関係にある。

2.4 継続的給付債権の差押え(151条

意義
給料その他継続的給付に係る債権が差し押さえられた場合に、差押えの効力を特定の支払期の債権に限定すると、執行債権者に執行申立ての繰返しの負担が生じ、 かつ、債務者の処分による執行の挫折等の問題が生じうる。 そこで、この場合の差押えの効力は、執行債権・費用の額を限度として、差押え後に受けるべき給付にも及ぶとされた (151条)[CL1]

151条の適用を受けない債権については、第三債務者の負担軽減のために、差し押さえられる債権の範囲(終期)を設定することが必要である。 逆に、151条の適用を受ける債権であっても、終期を設定して差し押さえることは妨げられない([中野*民執v2]533頁[中野*民執v5]645頁[中野*民執v6]671頁)。

要件
)同一の基本的関係から第三債務者の給付義務が継続的に発生することが必要である。給料のほかに、次のような支払請求権も、これに含まれる。
)毎期の給付の金額の一定性は、必要ない([内山*1990a]53頁)。もっとも、額の変動が大きい債権、発生が不確実な債権については、151条の適用になじまないとの見解も有力である ([佐藤*1994a]149頁参照)。しかし、金額の変動があっても、第三債務者が各期の給付に差押えの効力が及ぶか否かを判断する際に困難が生ずるとも思われない。 また、債務者にとって、どの期間の債権にまで差押えの効力が及ぶかを予測し、それを超える将来の債権を担保等に供することができれば便宜であることは確かであるが、 しかし、執行債務者のその利益よりも、執行債権者の利益を優先させるべきである。したがって、次の債権も151条の適用に服する。
)全面的差押禁止債権も、153条1項により差押命令を発することができる場合には、151条の適用に服する。例:
差押えの効力の拡張
執行債権の満足に至るまで差押えの効力が無期限に拡張される。給付の内容(額、支払期)の変更があっても、差押えの効力は変更後の債権に及ぶ。 将来の賃料債権の差押えの効力は、賃貸不動産の譲渡によって害されることはない(前掲最判平成10年)。

定年退職の翌日から再雇用される場合に、定年退職前の雇用契約と退職後の再雇用契約とは別個の契約であるのは確かであり、また、そこに執行妨害の意図を認めることはできないが、 それでも、差押えの効力は再雇用後の給料債権に及ぶとすべきである。差押えの効力のこうした拡張は、執行債務者及び第三債務者にとって十分に予期可能なことであり、 彼らに不測の損害を及ぼすとは思われないからであり、債権執行の実効性を高めるためにそうする必要があるからである。

拡張の限界
差押えの効力は、同一の基本関係から発生する給付債権に及ぶが、異なる基本関係から発生する債権には及ばない。問題となるのは、差押え後に退職して一定期間経過後に再雇用された場合である。 最高裁判所昭和55年1月18日判決・金融・商事判例592号3頁は、 退職から再雇用まで6カ月の期間があった事案において、差押命令の効力は再雇用後の給料債権には及ばないとした。 債務者が退職後直ちに再雇用された場合には、それは執行を免れるための通謀虚偽表示(民法94条)であり、 雇用契約は法律的に前後同一であり、退職前の差押えの効力が再雇用後の給料債権にも及ぶとすることに問題はない。 しかし、雇用中断期間が1月以上あるような場合には、執行を免れるための通謀虚偽による退職・再雇用と言えるかは微妙となる。 発生原因の同一性は、形式的な法的同一性の視点からではなく、第三債務者に判断の誤りの危険を不当に負わせることのないように配慮しつつ、 継続的給付債権について差押えの効力が拡張されたことの趣旨に従い、実質的に判断されるべきである[9]。

退職金は給料の後払の性格を有するが、臨時給付である。定期的給付である給料(毎月の給料や賞与)に対する差押えの効力は、これに及ばない。別途に差し押さえることが必要である。

2.5 扶養料債権のための期限前差押え(151条の2

151条の2第1項所定の扶養料請求権は、(α)少額であり、かつ、その不履行が債権者の生活に与える影響が大きい。 これらの少額定期金債権は、債務不履行があるからといって、各定期金債権の全てについて期限が直ちに到来するわけではないが、一旦債務不履行がある以上、その後の不履行も予想される。 そして、執行債権の履行期の到来の度に執行申立てをするのでは、債権者の負担が重くなる。 (β)他方で、弁済期未到来の債権のための差押えを広く認めると、債務者の財産処分の自由が過度に制約されることになる。

法は、これらのことを総合的に考慮して、30条1項の特則として、 次に述べる要件のもとで、扶養料債権のためにその弁済期前の差押えを認めた([法務省*2002b2]56頁以下。以下では「期限前差押え」と呼ぶ。 「予備差押え」と呼ばれることもある)。 この差押えがなされても、執行対象財産(継続的給付債権)を直ちに換価できるわけでないので、実際上の機能は次の点にある: (α)債権執行申立ての繰り返しの負担の軽減と(β)執行対象財産の保全。後者の機能のみであれば、仮差押えによっても、 実現可能である(民保20条2項により、期限未到来債権のための仮差押えが認められている)。

要件
次の要件が満たされる場合には、債権者は、弁済期未到来の債権のために、債務者の有する債権を差し押さえることができる。

151条の2第1項列挙の扶養料請求権であること
  1. 民法752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
  2. 民法760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
  3. 民法766条の規定による子の監護に関する義務(同法749条、771条及び788条において準用する場合も含まれる)
  4. 民法877条から880条までの規定による扶養の義務

人身侵害の不法行為に基づく定期金賠償の請求権は含まれない(平成15年改正時には、これを含めることも検討された。[法務省*2002b2]56頁参照)。

)確定期限付定期金債権であること  不確定期限付の扶養料請求権もありうるが、これらは執行文付与の段階で期限の到来が確認されるべきものであり、 151条の2の適用対象に含まれない([谷口=筒井*2004a]103頁注108。これについては、一般原則に従い、期限の到来を証明してから執行文の付与を受けて(27条1項)、執行を申し立てる)。

)定期金債務の一部に不履行があること[48]  定期金が弁済期に任意に弁済されている場合には、期限未到来の定期金のために執行を開始する必要はない。 過去に不履行があっても、その後任意弁済がなされ、執行申立時には不履行状態が解消されている場合も、同様である。 執行申立時に存した不履行状態が執行により解消された場合に、(α)これも同様に扱うべきか、それとも、(β)債務者が再度不履行状態に陥り債権者は執行申立てをしなければならなくなる危険性があることを重視して、 引続き差押えを認め、債務者の任意弁済が継続的になされることによりその必要性が消滅したときに初めて差押えは取り消されると考えるべきかが問題となるが、後者の解決を採るべきであろう。 なぜなら、例えば、毎月の給料日を20日とし、扶養料支払日が28日とされている場合に、前月の未払扶養料が当月の給料から取り立てられると、その時から28日までは不履行状態にないことになる; しかし、28日に扶養料が任意に支払われなければ、再び不履行になる; この場合に、26日に差押えを取り消して、29日に再度申立てをさせていたのでは、扶養料債権のための期限前差押えの制度の機能が低下するからである。 この立場からすれば、事情変更(任意弁済が継続的になされたこと)を理由とする差押えの取消規定が151条の2の中に置かれるべきであるが、 その規定を欠く現行法下では、この差押えが保全的差押えの機能を営むことを考慮すれば、民事保全法38条を類推適用して取り消すべきである。その類推適用が可能であるということを含んで、151条の2第1項では「債権執行を開始することができる」と規定されているものと解したい。

 弁済の有無の証明責任  規定の文言上、不履行についての証明責任は、債権者が負う。債務の弁済がないことの証明は、一般には困難であるが、 弁済方法を特定の銀行への振込みに限定すれば、当該銀行の預金口座の通帳の記録から、債務の弁済がないことの証明は比較的容易にできよう (一般的に言えば、弁済について証人となりうる第三者を介在させればよい)。通帳の記載の単純化並びにプライバシーの保護のために、その口座は、扶養料の入金のための特別の口座として利用することが望ましい。 そうした支払方法の限定措置がとられていない場合には、裁判所は、少なくとも債権者を審尋して、弁済の有無を判断せざるをえない。 145条2項の規定により債権差押命令は債務者を審尋することなく発するのが原則であるが、しかし、 差し押さえられるべき債権が債務者による処分を許さない性質のものである場合(譲渡や質入れが禁止されている場合)、あるいはそれが事実上困難である場合には、 差押命令の発令について密行を保つ必要は低いので、債務者の不履行について心証を得るために必要であれば、債務者を審尋することも許されるべきである。 もっとも、債権者が執行債権への弁済の不存在を証明することは困難であることを理由に、債権者は定期金債権の一部の期限が到来したことを主張すれば足りるとする見解もある([谷口=筒井*2004a]103頁注110)。 ともあれ、定期金の支払が定期になされているにもかかわらず151条の2により弁済期未到来の定期金債権のために差押命令が発せられた場合には、 債務者は、そのことを理由に執行抗告を提起して、差押命令の取消しを求めることができる。

効果(差押えの対象となる債権)
上記の要件が充足される場合には、弁済期が将来到来する扶養料債権のために、次の条件をすべて満たす債権を差し押さえることができる。

)給料その他継続的給付にかかる債権  「その他継続的給付に係る債権」の中には、賃料債権なども含まれる。 保険医療機関,指定医療機関等の指定を受けた病院又は診療所が支払基金に対して取得する診療報酬債権も、保険医療機関として指定を受けたという同一の基本的法律関係から継続的に発生するものであり, 民事執行法151条の2第2項に規定する「継続的給付に係る債権」に当たる。(最高裁判所 平成17年12月6日 第3小法廷 決定(平成17年(許)第19号))

)各定期金債権の確定期限の到来後に弁済期が到来する債権であること  例えば、給料日が毎月20日であり、その翌日に扶養料を支払うことになっている場合には、 ある年の5月分の扶養料債権のために、6月分の給料をその年の3月に差し押さえることができる。 5月分の扶養料債権のためにその前日に弁済期が到来する5月分給料債権を差し押さえることはできず、したがって上記の条件に従い、債務者は5月分の給料の支払を受けた翌日に5月分の扶養料を支払うことは可能である。 その支払がなされない場合には、扶養料債権者は、3月に差し押さえた6月分の給料から5月分の扶養料を取り立てざるをえない。 その点からすると、各月の扶養料の支払時期を各月の給料日の翌日とすることは、任意の履行が強く期待できる場合には賢明な選択であるが、 強制執行により取り立てることが予想される場合には、必ずしもよい選択とはいえない (支払が1ヵ月づつ遅れるだけであるので、それほど大きな問題ではないと思われるが、ただ債権者にゆとりがないときには、1ヶ月の遅れが重要になることもあろう)。

設例
152条3項による差押禁止範囲の減縮の問題も含めて、いくつかの想定問題を立てておこう。

例1: 債務者Yは、毎月、手取り40万円の給料を得ている(給与の支払はこれだけであり、いわゆる賞与の支払はないものとする)。彼は、別居中の妻Aと子供の生活費として、 Aに毎月10万円を給料の支払日(20日)の翌日に支払うことを家事調停で約束した。しかし、ある年の2月分と3月分の支払を遅滞した。 そのため、4月1日にAから弁済期到来分のみならず未到来部分についても151条の2に基づき債権執行の申立てがなされ、月給の1/2である20万円部分が差し押さえられた(152条3項)。 この債権執行が4月分の給料についてなされたことにより2・3月分の不履行が解消され、5月分の給料から4月分の扶養料の取立てがなされた。 しかし、5月分の扶養料について任意弁済がなかったため債権執行は継続された。その後、彼に対して90万円の債権を有するBが彼の給料債権に対して差押えを申し立てた。 Aは、Yの給料の1/2である20万円まで差し押さえることができ、Bは、1/4の10万円まで差し押さえることができる。配当等については、次の二つの考えが可能である。
  1. Aは、Aのみが差し押さえることができる10万円部分から弁済金交付を受け、Bは、Bが差し押さえることができる10万円から弁済金交付を受ける。
  2. AとBが共に差し押さえることができる10万円部分を両者の期限到来済み債権額に応じて分配する。したがって、この例では、10万円を1:9で配分することになるので、 Aは、ここから1万円の配分を受ける。Aの有する扶養料債権の残り9万円は、Aのみが差し押さえることのできる10万円部分から弁済金交付がなされる。

例2: 上記の例1で、Aの扶養料請求権が月額15万円であった場合に、どうなるか。

例3: 上記の例1で、Bがまず債権執行の申立てをし、その後にAが債権執行の申立てをし、その時点で未払の扶養料が6ヵ月分たまっていた場合には、どうなるか。

2.6 附帯請求の範囲

債権執行においても、基本債権に附帯する債権(利息、損害金、執行費用)を請求債権とすることができる。 ただ、債権執行においては、債権者が第三債務者に対して直接支払を求めることが認められており(155条)、 この場合には、第三債務者が附帯請求の計算の責任を負わされることがないようにすることが必要である。 そのため、債権差押命令の発令日(ないし差押命令の申立日)以降[12]の損害金を請求債権に含めることができるかが問題となる[R32]。 もっぱら執行機関が配当等の手続を行うことが予定される場合、例えば、売却命令や譲渡命令により換価されることが予定される場合には、遅延損害金の計算は執行機関が行うので、 不動産執行の場合と同様に、差押命令の発令日以降の損害金も執行債権に含めてよい。 その他の場合については、差押えの効力の及ぶ範囲が請求債権額により画されるか否かに依存する[11]。
  1. 1個の債権の全体または一定金額により特定された一部が差し押さえられる場合  この場合には、差押命令の発令日以後の損害金を執行債権に含めることができる。 執行債権者が支払を受けることができるのは、執行債権額および執行費用の額に限定されるが(155条1項)、 債権全体を差し押さえた執行債権者の取立権限は、執行債権額にかかわらず、債権全体に及ぶから([中野*民執v2]546頁[中野*民執v5]671頁[中野*民執v6]699頁)、 執行債権者の請求に応じて支払う第三債務者の弁済は、差し押さえられた範囲でなす限り、執行債務者との関係で有効な弁済となり、第三債務者が損害金の計算の誤りの危険を負うことはないからである。
  2. 継続的給付債権が差し押さえられ、151条により差押えの効力が拡張される場合  遅延損害金請求は、債権差押命令の発令日までの部分に限られる。 その後の部分まで執行債権に含めると、 第三債務者は、支払の都度、その日までに発生した附帯請求に係る遅延損害金について、自己の負担において計算をしなければならなくなり、彼の負担が重くなりすぎるからである (福岡高等裁判所宮崎支部平成8年4月19日決定・判時1609号117頁。 反対の趣旨の先例として、広島高等裁判所岡山支部決昭和63年1月14日決定・判例時報1264号66頁がある)。 もちろん、執行債権者がその後の損害金のために再度執行を申し立てることは妨げられない[10]。
  3. 一つの債権が執行債権額の範囲で差し押さえられる場合(差押えの範囲が執行債権額で画される一部差押えの場合)  この場合にも、第三債務者が支払うべき金額を明確にする必要があるので、 執行債権に含められる遅延損害金債権の範囲を債権差押命令の発令日までの部分に限定することが必要である。

なお、上記b・cの場合に、理論的には発令日までの遅延損害金を執行債権額に含めることができるが、差押債権者は申立日までの損害金額を自ら計算して発令を申し立てるのが通常である(多くの裁判所で用意されている書式にその旨が記載されているからである)。

2.7 担保権付債権の差押え

担保権の被担保債権が差し押さえられると、担保権の附従性・随伴性により、被担保債権の差押えの効力は、担保権にも及ぶ。その担保権について登記がある場合には、担保権に差押えの効力が及んでいることを公示することが望まれる。

原則
登記された抵当権等の被担保債権が差し押さえられた場合には、裁判所書記官は、申立てにより、その債権について差押えがなされた旨の登記を嘱託する(法150条) (担保物の所有者が第三債務者と異なる場合には、所有者への通知も必要となる)。被担保債権の譲受人と差押債権者との優劣は、 抵当権についても、債権譲渡の対抗要件の具備と差押命令の第三債務者への送達との先後関係によって定まるので、この限りでは、抵当権について差押えの登記をすることは、必要不可欠というわけではない。 しかし、抵当権だけが処分された場合(抵当権の順位変更(民法374条2項)、抵当権の順位の譲渡等(民法376条))には、それと被担保債権の差押えによる担保権の処分制限との優劣は、それぞれの登記の先後により定まるので、差押債権者は、被担保債権の差押えの登記を迅速に得なければならない。

抵当権等についてその被担保債権の差押えの付記登記がなされた場合、その登記事項証明書は、181条1項3号所定の文書となる。 差押債権者は、これを提出して担保執行の申立てをなすことができる。他方、その登記がなされる以前において、執行債務者が担保権の実行をどの段階までなしうるかは、 無担保債権が差し押さえられた場合に強制執行をどの段階まで進めることができるかの問題と並行する(同一ではないが、類似する。 [中野*民執v3]558頁[中野*民執v5]651頁[中野*民執v6]677頁は、差押えの発効後は執行債務者は担保権を実行できないとする)。

例外 ── 債権質権の登記
動産・債権譲渡特例法による登記は、対抗要件ではあるが、唯一の対抗要件ではない。債権譲渡登記制度は、債権の譲渡や質権設定について特別の対抗要件を創設する制度であり、「処分の制限」を登記することは予定していない。 したがって、債権譲渡登記がなされている債権について差押えがなされる場合でも、その差押えの登記をする必要はない。 そして、債権質権の被担保債権が差し押さえられた場合に、被担保債権の差押えの効力は質権にも及び、このことは、債権質権の設定登記がなされているときに、 この登記に被担保債権の差押えの登記を附記しなくても同じであるので、民執法150条は適用されないと解されている (なお、民執法156条1項の適用を排除する動産・債権譲渡特例法15条2項も、この議論の延長線上にある。後述及び[植垣=小川*2009a]135頁参照)。

2.8 抵当権に基づく物上代位権の行使との関係

物上代位権者は、担保権の行使に債務名義が不要とされたことの延長として、物上代位権の行使の要件が具備していることを文書により証明すれば、 債務名義なしに、代位の目的債権に対する差押命令を得ることができる(193条1項後段)。 申立てに際しては、次のことが証明されるべきである:
他の債権者によって差し押さえられている債権から満足を得るためには、民法304条の物上代位権者は、自ら物上代位権の行使としての差押えをすることが必要であり、配当要求ではたりない (民法304条の解釈問題である。304条が他の規定により準用される場合を含む。抵当権に基づく物上代位につき、最高裁判所 平成13年10月25日 第1小法廷 判決(平成13年(受)第91号))[百選*2005a]102事件(杉山悦子))。

抵当権に基づく賃料債権に対する物上代については、最高裁判所 平成1年10月27日 第2小法廷 判決(昭和60年(オ)第1270号)がこれを肯定して以来、このことに起因する様々な解釈論上の問題が発生し、多数の判例が報道され、論説が公表されている。 これを中心にして、抵当権に基づく物上代位権の行使に関する判例を整理しておこう。

 ()賃料債権の譲受人・差押債権者との関係  譲受人と物上代位権者との優劣は、債権譲渡の対抗要件の具備と物上代位権の基礎である抵当権設定登記との時間的先後を基準にする。 差押債権者との関係も同様である。
 (a')しかし、転付命令により目的債権が移転した後では、それより先に登記された抵当権者が物上代位のための差押えをした場合でも、転付債権者が優先する (最高裁判所 平成14年3月12日 第3小法廷 判決(平成12年(受)第890号)(目的債権が抵当不動産の買収代金債権の事案)[百選*2005a]101事件(松下淳一)、 大審院大正12年4月7日民事連合部判決(大正11年(オ)第319号)・大審院民集2巻209頁(火災保険金の事案))。 その理由を最高裁は次のように述べている:「転付命令は,金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として, 被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって,転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押え等をしていないことを条件として, 差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項,160条)」、 抵当権に基づく物上代位権者といえども転付による独占的満足を妨げるためには転付命令に先んじて自ら差し押さえることが必要である[41]。

 ()第三債務者である賃借人は、物上代位権の行使としての差押えがあるまでは、それ以前の時期に係る賃料債務を有効に弁済することができる。しかし、それ以外の場合については、問題が多い。

 (b1)賃料債権を受働債権とする賃借人からの相殺については、議論が分かれ、最高裁は次のような解決を与えている。
  1. 抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない。 最高裁判所 平成13年3月13日 第3小法廷 判決(平成11年(受)第1345号)
  2. 賃借人が賃貸借終了・建物明渡後に敷金を未払賃料に充当することは、敷金返還請求権と賃料債権との相殺と実質的に差異はないが、 敷金関係と賃貸借関係との密接な関連性を考慮すると一般の債権による相殺とは区別されるべきであり、その充当は差押債権者に対抗できる。 最高裁判所 平成14年3月28日 第1小法廷 判決(平成12年(受)第836号)。

 (b2)賃料前払については、不動産登記法81条が「借賃の支払時期の定め」を登記事項として認め、 その解釈として賃料前払の登記が認められているので、その登記があれば第三者に対抗できる(賃借権の対抗要件が引渡しの場合には、登記なしに賃料前払を対抗できると解されている)。
 ()転借人との関係では、転貸料債権に対しても物上代位権を行使できるかが問題となるが、最高裁は、特段の事由がない限り許されないとしている。 最高裁判所 平成12年4月14日 第2小法廷 決定(平成11年(許)第23号)。

3 金銭債権の換価


3.1 総説

金銭債権の換価の方法は、次のように多様である。

3.2 差押債権の取立て(155条

差押債権者の取立権
差押命令が執行債務者に送達された日から次の期間(猶予期間)の経過後は、差押債権者は差押債権を取り立てることができる(法155条)。 この権限は差押命令自体から生ずる。
この猶予期間は、第一次的には、差押命令に対して1週間以内に執行抗告をなす権利(法145条6項・10条2項)の実効性を確保するためのものである。 特則に該当する場合には、差押対象は債務者の生活に維持のための金銭の給付請求権であり、債務者に収入減少に対応する準備をさせる意味もある。

執行停止文書の提出による取立権の消滅・制限
執行債務者による執行停止文書の提出により執行手続が取り消される場合には、裁判所書記官はその旨を第三債務者に通知する(規136条3項)。 執行債権者の取立権限は、執行手続取消しの時点で消滅する。 その点について善意で執行債権者に弁済した第三債務者は、民法478条により救済される[2]。 債権執行の申立てが取り下げられた場合も同様である(規136条1項)。

差押えの発効後に単純停止文書(法39条1項7・8号)が提出された場合には、差押えによる処分禁止効を維持しつつ、執行債権者の取立権限を制限することになる。 執行裁判所の裁判所書記官は、差押債権者及び第三債務者に対し、単純停止文書が提出された旨、ならびに、執行停止の効力が失われるまで、差押債権者は取立てをすることができず、 第三債務者は(執行債務者のみならず差押債権者にも)弁済してはならない旨を通知する(規136条2項)。

執行停止により制限されるのは、(α)差押債権の消滅をもたらす執行債権者の行為(弁済金の受領)及びこれと表裏の関係にある第三債務者の弁済である。 第三債務者の側からの差押債権者に対する債権と差押債権との相殺もこれに準ずるものとして、禁止される。他方、(β)執行債権者による第三債務者に対する取立訴訟の提起・続行は妨げられない。

取立権の行使
取立権限を得た差押債権者は、自己の名で、差押債権の取立てに必要な裁判上・裁判外の一切の行為ができるが、取立目的を超える行為(差押債権の免除・放棄等)はできない。 取立権の範囲は差押えの効力の範囲と同じであり、(α)執行債権より金額の大きい1個の債権全体が差し押さえられた場合には(法146条1項)、 差押債権全額について取立権限を有する。ただし、(β)その取立金からの満足は、執行債権と執行費用の額を限度とする(155条1項ただし書)。執行競合・配当要求がない場合ついていえば、これは次のことを意味する。
取立権に基づく形成権行使
定期預金債権を差し押さえた債権者が満期前に預金を取り立てるためには、執行債務者が有する解約権を行使して、履行期を到来させることが必要である。執行債務者がその権利を有する場合には、差押債権者は(α)債権者代位権または(β)差押債権者の取立権限に基づいて、それを行使することができる。前者の場合には、債務者が無資力であること(他の弁済手段を有しないこと)が必要となるが、後者の場合には、無資力要件が不要となる。財産を探索して執行を開始した債権者の利益と債務者の利益とを比較考量すれば、無資力要件は不要としてよく、この点で取立権限に基づく解約権行使を積極的に認める意義がある。解約権が行使されることにより、執行債務者は利息の減少や場合によれば元本割れの不利益を受けることになるが、履行期にある執行債権を弁済できない以上、やむを得ない。執行債務者が解約権を有しない場合には、執行債権者も解約することができず、満期の到来を待って取り立てることになる(預金者には期限前解約権を認めないが、預金債権が差し押さえられた場合にはやむを得ない事情があるものとして差押債権者に解約権を認める特約がある場合には、その特約に従って差押債権者は、期限前に預金契約を解約することができる)。

生命保険契約に基づく解約返戻金債権が将来の債権として差し押さえられた場合にも、差押債権者は同様に解約権を行使できる (最高裁判所平成11年9月9日第1小法廷判決(平成10年(受)第456号))[R56]。 解約権行使の一身専属性を問題にする必要はない(一身専属性を認めるべきではない)。債務者が解約権を有しない場合、あるいはそれを即時に行使できない場合には、 満期まであるいは解約権を行使できる時期まで待つことになる(期限付債権の場合と同じである)。 保険法は、このことを是認した上で、保険契約が遺族等の生活保障の機能を有することに鑑み、 そのような機能を有すると定型的に認められる保険契約(死亡保険契約又は傷害疾病定額保険契約であって保険料積立金があるもの)の受取人 (保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者であって、差押え債権者による解除通知当時の保険契約者(=執行債務者)以外のもの)に介入権 (解除が効力を生じたとすれば保険者が支払うべき金額を差押債権者に支払うことにより解除の効果の発生を阻止する権利)を認めた(同法60条以下・89条以下。[萩本*2010a]201頁以下参照)。介入権者による支払は、当該差押手続との関係で、保険者による支払とみなされるが(60条3項)、その効果は、その支払いの限度でその後の差押手続・破産手続等においても効力を有すると解すべきである。例えば、最初の差押債権者に対して介入権者が60万円を支払い、その後に他の債権者が解約返戻金債権を差し押さえた場合に、介入権者はその時点で解除の効果が生じたとすれば保険者が支払うべき金額(80万円とする)から前回の支払金額(60万円)を控除した残額20万円を支払えば足りる。

投資信託の受益者が受益権販売業者に対して有する条件付一部解約金支払請求権を差し押さえた債権者は,取立権の行使として,販売業者に対して解約実行請求の意思表示をすることができ, 投資信託委託業者によって一部解約が実行されて販売業者が一部解約金の交付を受けたときは,販売業者から一部解約金を取り立てることができる(最高裁判所 平成18年12月14日 第1小法廷 判決(平成17年(受)第1461号))。

持分会社の社員の持分が差し押さえられた場合には、差押債権者は、持分の換価(持分払戻金の受領)のために、当該社員を退社させることが必要となるが、持分会社は退社する社員に代わる社員を捜す必要に迫られることもあろうし、 また、当該社員に支払うべき持分払戻金が高額の場合には、その資金調達に時間を要する場合もあろう。 そこで、社員がその意思に基づいて退社する場合と同様に(会社法606条1項)、差押債権者は6ヶ月前までに差押えを受けた社員の退社を予告しなければならない(同609条1項)。 差押債権者は、この予告をして当該社員を退社させることができる(同609条1項及び608条3項の規定に鑑みれば、606条1項に定める場合に該当しないときでも、 差押債権者は差押えを受けた社員を退社させることができると解すべきであり、従って、この退社させる権利は、社員が有する退社権とは異なるというべきである)。 会社法609条2項を考慮すると、この予告自体が法的効力のある意思表示と解すべきであり、それは予告から6ヶ月以上後の一定の時点で当該社員を退社させるという形成権行使の意思表示と解すべきであろう。 この意思表示は、当該社員の退社の効力が生ずる時までに執行債権の弁済がなされると、効力を失う。 請求異議の訴えにより債務名義の執行力が失われたこと等により差押えも効力を失う場合、あるいは強制執行の一時停止を命ずる裁判が発せられた場合も同様である。 会社の利益を保護する必要性を考慮すると、これらの事由による退社予告の効力喪失には、時期的制限が定められてもよいと思われるが(例えば退社予定時期の1月前まで)、現行法上は特に制限はない。 これらの事由は、退社予定時期までに会社に対して証明することが必要と解すべきであり、退社予定時期までにその証明がなければ退社の効力が生ずる。 その後に執行停止文書が提出されても、配当等の実施を阻止しうるにとどまる。

差押債権者の善管注意義務(158条
差押債権者は、債権差押えにより差押債権の取立権限を取得するに至ると同時に、執行債務者との関係では債権の実現につき善良なる管理者としての注意義務を負う。 それを怠って時効を完成させた場合、あるいは適時に取り立てなかったために第三債務者の財産状態が悪化して取立不能となった場合には、差押債権者は。執行債務者に対して損害賠償義務を負い、 執行債務者はこれと執行債権とを相殺できる。差押債権者の追行する取立訴訟の既判力が執行債務者にも及ぶとの立場に立てば、その不適切な訴訟追行による取立不能も同様に損害賠償の原因となる (これを回避するためにも、差押債権者は、執行債務者に訴訟告知(民訴法53条)をすべきである)。

第三債務者による支払(155条3項以下)
第三債務者による支払は執行債務者の財産からの支払と位置付けられるので、差押債権者が第三債務者から直接支払を受けたときも、その執行債権および執行費用は、 支払を受けた額の限度で弁済されたものとみなされる(法155条3項)。

執行事件の終了は、裁判所の記録上も明確にされる必要がある。差押債権者は、第三債務者から支払を受けたときには、 直ちにその旨を執行裁判所に届け出なければならない。(155条4項)。しかし、この届出は、過去に必ずしも励行されなかったし、また、支払がなかった場合の届出も規定されていなかった。その結果、実際には完了している事件が裁判所の記録上は未済事件のままになっていることがあり、裁判所の事件処理ないしその記録の管理に支障が生ずることになった。そこで、令和1年改正により、次のことが規定された。
  1. 差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、直ちにその旨を執行裁判所に届け出なければならない(法155条4項。方式について規則137条参照)。全部の支払がなされた場合と一部の支払がなされた場合の双方を含む。一部支払がなされた場合に、当該差押債権のその余の取立てを諦める場合には、差押命令の申立ての取下げもすべきである(この取下げの効果は、取立て済みの部分には及ばない。将来に向けての取下げである)。
  2. 取立権発生日(155条1項の規定により差押金銭債権の取立てが可能となつた日)から2年を経過しても支払を受けていないときは、支払を受けていない旨を執行裁判所に届け出なければならない(5項。方式について規則137条の2参照)。届出は、2年を経過した後4週間以内にしなければならない(6項参照)。一部支払あり・一部支払なしの届出は、支払がなされた時点でなされるべきであり、取立権発日から2年を経過する前でもすることができる。全部支払なしの届出は取立権発生日から2年を経過してからなされることが予定されているが、それ以前にすることが禁じられているわけではない(8項参照)。一部支払あり・一部支払なしの届出又は全部支払なしの届出が期限までになされると、次の届出は、前の届出の時から2年を経過した後4週間以内にしなければならないと解される(5項・8項)。
  3. 最終の届出期間の満了時までに何の届出もないときは、執行裁判所は、差押命令は取り消す旨の決定をすることができる(6項)。この取消しの効果も既往に遡らない。
  4. 差押債権者が取消決定の告知を受けてから1週間内に支払又は不支払の届出をしたときは、取消決定は効力を失う。全部支払ありの届出がなされた場合には、取消決定を失効させる必要はないので、かっこ書でその趣旨が示されている。この場合には、取消決定自体が無意味であった(取消対象を欠いていた)と説明することが許されよう。

差押債権について全部又は一部の支払がない場合に、差押債権者が届出をせずにいると、差押命令の取消しという不利益を受けるので、それを避けるために彼は届出をするであろうことを期待することができる。全部の支払があった場合に、これにより執行債権の全部の(又は全部に近い)回収ができたのであれば、彼が届出をせずにいても、彼に大きな不利益が生ずるわけではないので、届出をせずにいる可能性がある。この場合には、執行事件は、記録上は、差押命令の取消しにより終了したことになり、実際と乖離することが生じうる。これを回避しようとすると、第三債務者にも届出を求めることが必要になるが、そこまでは規定されていない。

第三債務者が弁済拒絶のために主張できること
第三債務者は、差押債権の不存在、弁済期未到来、弁済や契約解除等による消滅、あるいは同時履行の抗弁権などのほか、 差押命令の無効や執行の停止・取消しがなされたことを主張して、弁済を拒むこともできる(差押債権の不存在は否認になり、弁済期の到来の有無は証明責任の分配に従い否認又は抗弁になる。 その他は抗弁である)。しかし、彼は、執行債権や実行担保権の不存在等は主張しえない。これらは、執行債務者が請求異議の訴え等により主張すべきことである。

3.3 第三債務者による供託(156条

第三債務者は、取立てに応じて任意に差押債権者に支払うほか、執行上の面倒な問題に巻き込まれることを避けるために供託することもでき、また、一定の場合には、供託義務を負う (156条)。

義務供託

第三債務者からの弁済金を奪い合う関係に立つ複数の債権者が存在する場合(債権者競合の場合)には、配当手続が必要となる。 その原資を執行機関が把握する方法として、執行機関が第三債務者から直接支払を受ける方法も考えられるが、現行法はそうせずに、第三債務者に供託義務を負わせ(義務供託)、 執行機関が供託所に支払委託(供託金の支払についての指示)をなすものとした(執行供託。供託規則30条参照)。 債権者が競合する場合には差押債権の弁済金の供託は彼の義務となり、供託することなく一部の債権者に支払った場合には、その支払を他の債権者に対抗することができない。 供託義務は、執行目的に適合するように、差押債権の支払方式を制限するにすぎない。第三債務者が弁済拒絶のためになし得る主張が制限されるわけではない。

権利供託
その他の場合でも、債権執行に巻き込まれて支払を差し止められ、さまざまな法的判断を迫られる第三債務者の負担を軽減するために、 彼は差押債権全額について供託をなすことにより債務を免れることができるものとされた。

供託所
供託は、差押債権の義務履行地を管轄する供託所になされるべきである(156条1項・2項)。 義務履行地は、差押えがなされたことによっては影響されない。供託した第三債務者は、その旨を執行裁判所に届け出なければならない(156条3項)。 供託により、第三債務者の債務は消滅し(民法494条)、 配当加入の終期が到来し、手続は配当段階へと進む(165条1項・166条1項1号)。

事情届出
第三債務者は、供託したことを最初に差押命令を発した執行裁判所に届け出なければならない(156条3項)。 この届出を事情届出という。この事情届出書において、第三債務者は、どの債権者からの申立てに基づきどの金額の差押えがなされたかを記載しなければならず、 執行裁判所はその記載に基づいて支払委託をすることになる。もし、記載漏れがあると、漏れた差押債権者には配当等がなされないことになり、 第三債務者は二重払を強いられることになるので、この事情届出を正確に行う必要がある。

3.4 義務供託(156条2項)

要 件
第三債務者は、すでに差押えあるいは仮差押えの執行を受けた同一金銭債権について、取立訴訟の訴状送達時(=配当要求の終期)までに次の送達を受けた場合には、供託をなす義務を負う。
供託義務違反の効果
供託義務にもかかわらず、第三債務者が差押債権者の一人に支払をなした場合、その支払は、彼への配当分の限度で弁済の効力を有する。 しかし、他の債権者には、その支払の全部を対抗することができない。第三債務者があらためて全額を供託しなければならない。

彼は、二重に支払った弁済金を次のようにして取り戻すことができる。債権者A・B・Cの各執行債権額を1000万円として、 執行債務者の第三債務者に対する900万円の債権をAが差し押えた直後にBとCも差押えをし、第三債務者が各差押命令書の送達を受けたにもかかわらず、誤って900万円全額をAに支払った場合を例にしよう。
供託費用の償還
執行に協力させられる第三債務者の不利益を償うために、第三債務者は、供託義務の履行に要した費用および事情届出費用につき、法定の範囲で供託金から優先的に支給を受けることができるが、供託の際に予め差し引くことはできない。 支給は、第三債務者が事情届出をするときまでに執行裁判所に請求して、配当等の一環として、執行裁判所の支給決定によりなされる(民訴費用法28条の2)。 費用の内で金額が特に大きくなる可能性があるのは、旅費・日当・宿泊料(民訴費用法28条の2第1項1号)である。

例えば、鹿児島地方法務局が供託について管轄する区域内に執行債務者が住所を有し、この者に持参債務を負っている第三債務者が新大阪駅付近に住所を有する場合には、 執行債権者がどこに居住するかにかかわらず、供託所は鹿児島地方法務局になる。第三債務者が供託所に出頭して供託することが必要であると仮定すると(民訴費用法28条の2第1項2号に該当しないと仮定すると)、 新大阪駅から鹿児島中央駅までの交通費は、新大阪から2010年11月現在で、陸路(JR新幹線)の利用の場合に、片道20,900円である。 空路(神戸空港から鹿児島空港まで)を利用すると14,860円である(Yahooによる検索結果である)。 彼は、供託後に執行裁判所である鹿児島地方裁判所に事情届出を出すことになるが、これによる追加費用は大きくないであろう。

3.5 権利供託(156条1項)

要 件
第三債務者は、供託義務を負わない場合でも、差押債権の現存額に相当する金銭を供託することができる。差押えがあれば足り、差押債権者が取立権を取得する前でも、転付命令の発令後・確定前でも供託できる。 第三債務者は、差押えに係る債権の全額を供託することができる(法156条1項)。一部差押えの場合には、全額を供託することも、差し押さえられた部分のみを供託することもできる。

執行供託として扱われる範囲
供託金のうちで執行裁判所のコントロールの及ぶ範囲(執行供託された金銭として支払委託の対象となる範囲)については、次のような見解が考えられる([稲葉*1980a](1)5頁以下に詳細な検討がある)。
  1. 執行債権額と執行費用の合計額(以下「執行債権額等」という)のみであるとする見解([中野*民執v5]678頁[中野*民執v6]706頁)
  2. 差し押さえられた部分全体とする見解([稲葉*1980a](1)6頁)
  3. 権利供託された金額全体とする見解

最初の見解にあっては、執行債権額等を超過して供託された弁済金は、純然たる弁済供託として扱われ、第三債務者は執行債務者に供託通知をなすべきであり、その部分については、執行債務者は還付請求することも、供託を受諾しないこともできることになる([中野*民執v5]678頁[中野*民執v6]706頁。ただし、この記述に続く部分では、全部差押えの場合には、差押債権者に執行債権額等の支払委託をし、残余について執行債務者への支払委託をすべきであり、一部差押えの場合に債権全額の供託がなされたときには、差し押さえられていない部分については、執行裁判所が支払委託をするのではなく、執行債務者が還付請求することができるとしており、第2見解によっているようである)。

しかし、それでは、第三債務者の負担を軽減するために権利供託を認めた趣旨が徹底できないのではなかろうか。第一説には、次の問題がある:(α)一個の債権の全部差押え又は金額を特定した一部差押えの場合には、配当等がなされる日までの遅延損害金も執行債権額に含めてよいのであるから、第三債務者も執行債務者も、支払委託の日までは執行債権額を確知できるとはいえず、弁済供託の性質を有する部分の金額も確知できない;(β)差し押さえられた部分の金額が執行債権額等の合計額を上回る場合でも、差押えが有効になされている以上、支払禁止の拘束力を全面的に否定するのは適当ではなく、供託手続との関係でも拘束力を肯定し、執行債務者への支払は裁判所の支払委託によるのが本来である([稲葉*1980a](1)6頁)。(γ)第三債務者は債権執行に巻き込まれたのであり、義務ではないと言え供託をすることによって判断ミスのリスクを回避しようとしているのである;彼は、事情届出において、差押債権者をもれなく記載する必要があり、記載漏れのリスクを負う;もし、最初の2つの見解を採るならば、供託所において差押債権者と執行債権額等あるいは一部差押額の記載漏れがあれば、供託所は漏れた部分を弁済供託として扱い、執行債務者からの還付請求に応ずることになるのであるから、第三債務者はここでも記載漏れのリスクを負うことになる([稲葉*1980a1]7頁);そうしたリスクをできるだけ少なくする趣旨で、供託された金額全部を支払委託の対象として、第三債務者が負う記載ミスのリスクを前者に限定しておく方がよい。(ε)細かな話になるが、被供託者への通知の負担は、被供託者(執行債務者)に供託通知書を発送することを供託者(第三債務者)が供託所に請求し、その通知書の送付費用を負担することにすぎないが(供託規則16条1項・2項)、それでも、事情届出の負担を負っている第三債務者に執行債務者への通知の負担を負わせるのが適当とは思われない。

一部差押えか全部差押えかにかかわらず、供託された金額全部が執行裁判所による支払委託の対象になると考えたい。事情届出までに執行競合が生じない限り、執行裁判所は、差押債権者宛に執行債権と執行費用との合計額の支払委託をし、執行債務者宛に残余の支払委託をするとともに、執行債務者にその旨を通知すべきであり、その通知が第三債務者からの弁済供託の通知(民法495条3項)の効果をもつと解したい。執行裁判所から支払委託がなされた旨の通知を受けた執行債務者は、供託された金額が実際の債務額に不足すると判断するときには、供託を受諾しないこともできるが、その場合でも、執行債権額の範囲では執行債務者との関係でも一部弁済として有効となる。執行債務者への支払委託額について、彼は還付請求権を有し、彼が受諾するまでは第三債務者も取戻権を有し(民法496条1項)、いずれもそれぞれの責任財産として債権執行の対象となりうる。

3.6 取立訴訟(157条

第三債務者が任意に支払または供託をしないときには、差押債権者は自ら原告となって取立ての訴えを提起できる(157条)。この訴訟における差押債権者と執行債務者との関係については、法定訴訟担当(民訴115条1項2号)とみて判決効の拡張を肯定するのが伝統的な見解であるが、差押債権者固有の実体的地位に基づくものとみて拡張を否定する固有適格説も有力である[33]。管轄・訴訟手続は一般の例によるが、次に述べる特則がある。

判決効の主観的範囲
取立訴訟をめぐっては、次のことが問題となる。
他の差押債権者との関係  この点の問題の解決のために、法は、まず、複数の差押債権者がいる場合に、その取立訴訟をできるだけ一本化して解決することにした。すなわち、取立訴訟の訴状の第三債務者への送達時までに同一債権を差し押さえた他の執行債権者に対して、共同訴訟人として原告に参加すべき旨の命令(参加命令)を第三債務者は申し立てることができる(第三債務者への訴状の送達時が配当要求の終期であるので、その後に差し押さえた債権者は、参加するだけの利益を有しない)。そして、判決の効力は、参加命令を受けた債権者が現実に参加したか否かにかかわらず、この者に及ぶ(法157条1項・3項。3項の「者にも」の「も」に注意)。したがって、参加命令を受けた債権者が参加すると、その訴訟形態は類似必要的共同訴訟になるので(合一確定が必要になるので)、参加の形態は、共同訴訟参加(民訴法52条)である。

他方、第三債務者への訴状送達前に差押えをしたが、参加命令を受けず、現実にも参加しなかった差押債権者には、第三債務者勝訴の判決効は及ばない。取立訴訟における請求棄却判決の効力をこの差押債権者に及ぼすことは、原告となった債権者への任意弁済の効力を他の債権者に及ぼすことが許されないのと同様に、差押えの効力により許されるべきでないからである。参加命令には、このような効果が結び付けられているので、参加命令を受ける者が訴訟上の攻撃・防御を尽くすに足りる時期を過ぎてからの参加命令の申立ては、却下されるべきである。また、参加命令を受けた差押債権者が別個に提起した取立ての訴えは重複起訴の禁止(民訴142条)に触れ、許されない(第2訴訟は第1訴訟に併合されるべきである)[19]。

なお、第三債務者への訴状送達後に差し押さえた債権者に判決効が拡張されるかについては何も規定はなく、執行債務者への判決効拡張の問題と同様に扱われよう。

執行債務者との関係
執行債務者との関係については、法は特別の規定を設けていない。問題の解決は解釈に委ねられ、次の見解が対立している。
  1. 差押債権者の勝訴・敗訴にかかわらず判決効が執行債務者に及ぶとする見解(伝統的な多数説)。差押債権者を執行債務者の訴訟担当者(民訴115条1項2号)とみる立場から主張される[15]。
  2. 差押債権者の勝訴の場合には及ぶが、敗訴の場合には及ばないとする見解(片面的効力説)[14]
  3. 判決効は常に及ばないとする見解(最近とみに有力な見解)。差押債権者は自己の利益のために訴訟追行するのであり、執行債務者の訴訟担当者ではないとする固有適格説から主張される[13]。

供託判決
執行債権者が競合するため第三債務者が供託義務を負う場合には、請求認容判決において、金銭の支払を供託の方法でなすべきことが命じられる(法156条2項・157条4項)。第三債務者は、競合債権者が存在することについて主張・立証責任を負う。第三債務者が任意に供託しないときには、供託判決に従い第三債務者に対する執行手続を担当する執行機関が換価金を直接供託し(法157条5項)、第1次の債権執行裁判所にその旨を通知すべきである(法156条3項の類推)[20]。

4 転付による換価(159条・160条


4.1 意義

差押債権が金銭債権である場合に、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、執行債権・執行費用の支払に代えて差押債権を券面額で差押債権者に移転させる旨の転付命令を発することができる(159条1項)。一種の代物弁済であり、転付命令の発効により直ちに債権執行が終了する。執行債権者は、差押債権の金銭化前においても、その債権からの独占的満足を約束される(その点で平等主義からの乖離が指摘される[4])。他面、第三債務者が無資力であるために券面額での満足を得ることができない場合には、差押債権者は不足額の満足を執行債務者から得ることができない(第三債務者の無資力の危険は、転付債権者が負う)。

4.2 転付命令の有効要件

有効な差押命令の存在  転付命令が有効であるためには、まず、有効な差押命令が存在していることが必要である。ただし、転付命令の発令は、差押命令と同時でもよく、執行債権者は両者の申立てを同時することもできる。

被転付債権の譲渡可能性  法律上または性質上譲渡の許されない債権は、転付もできない。しかし、当事者間の譲渡禁止特約は、執行による満足の一形態である転付を妨げない(最高裁判所 昭和45年4月10日 第2小法廷 判決(昭和42年(オ)第462号)[百選*2005a]73事件(我妻学))。

法定の相殺禁止の趣旨に反しないこと  法定の相殺禁止は、必ずしも転付を妨げるものではないが、相殺禁止の法意を潜脱する結果となるときは、転付は許されない。例えば、民法509条所定の不法行為債権の債務者(加害者)が債権者(被害者)に対する債権に基づき、自己に対する不法行為債権の転付を求めることは、民法509条の相殺禁止の趣旨に反し、許されない(最判昭和54.3.8民集33-2-187[百選*1994a]83事件[百選*2005a]76事件(中島弘雅))。同判決は、民法509条の規定の趣旨として、次の2つのことを挙げている: 即時決済可能性−券面額  転付命令が有効に確定すれば、差押債権は執行債権者に帰属し、これにより執行債権は満足を受けたものと扱われる。この法律関係を即時に明確にできない場合には、執行債権者と執行債務者との間の法律関係が不安定となる。そのため、被転付債権については即時決済可能性が要求される[17]。法159条1項は、この即時決済可能性の主要部分を「券面額」の語で表わそうとしている。券面額とは、執行債権者が執行債権の満足に充てられるべきものとして主張すべきであり、かつ主張することのできる名目額である。第三債務者の資力により定まる実価とは異なる。実在額(債権の客観的な金額)とも異なるが、券面額が存在するということができるためには、実在額が確定していることが必要である。券面額のない債権は、被転付適格を有しない。券面額のある債権でも即時決済の可能性のないものは、被転付適格を有しない。

独占可能性  転付命令が第三債務者に送達される時を基準にして、それまでに目的債権から満足を求める他の債権者が現れた場合、すなわち、他の債権者から差押え・仮差押えの執行または配当要求が効力を生じた場合には、転付命令は許されず、発せられた転付命令が確定しても転付の効力は生じない(法159条3項。配当要求については、要求書が第三債務者に送達された時ではなく、裁判所に提出された時が基準時となる)。ただし、次の場合には、差押債権について他の債権者との比例配分は問題とならないので、転付命令は許される。

4.3 即時決済可能性が問題となる例

執行債権と被転付債権との決済ができないと、執行債権の不消滅を前提にしての再執行、あるいは消滅を前提にしての不当利得返還請求による調整が必要となる(→4.5 弁済効)。いずれも、あらたな法的紛争を引き起こす可能性がある。これをできるだけ少なくすべきであるとの立場に立てば、券面額を中心とする決済可能性の問題を厳格に判断することになる。逆に、決済不能という結果は、執行正本再取得あるいは不当利得返還請求訴訟の提起を執行債権者に負担させるにすぎないとみる立場に立てば、執行債権者がそうした負担をあえて覚悟して転付命令を求める場合にそれを拒む理由はないとの理由で、券面額の存在を緩やかに認めることになる。

券面額の判断について見解は分かれているが、おおまかに言えば、学説・実務は被転付適格のある債権の範囲を狭く捉え、抗告審の判例は広く捉える傾向があるとされている。大まかな判断基準を立てれば、次のようになろう。
被転付適格が否定される例
a1将来の債権  保険事故発生前の保険金請求権のような将来の請求権ないし停止条件付債権は、おおむね被転付適格を有しない。
 ただし、請求権の発生や行使が将来に到来することが確実な事実に係るにすぎない場合には、被転付適格を認めてよい。例えば、自動車事故の被害者が保険金の支払を保険会社に直接求める請求権が消滅時効にかかった場合には(自賠法16条1項・19条)、被害者は、加害者に対する賠償請求権の執行として、加害者の保険会社に対する保険金請求権の転付を求めることができる。保険金請求権は被害者に転付されることにより行使可能となるからである(最判昭和56.3.24民集35-2-271[百選*1994]81事件[百選*2005a]74事件(三輪和雄))[22]。このことは、被害者以外の債権者が転付命令を申し立てる場合には妥当しないことに注意。

a2金額が将来確定する債権  例えば、委任者により受任者に前払費用として交付された資金の返還請求権が委任契約終了前に差し押さえられた場合でも、受任者は、委任事務のためにその資金をなお支出することができる。したがって、差押債権者が取り立てることができるのは、委任契約終了時においてなお支出されていない残額のみである。その意味では、この債権は、停止条件付債権の面があるが([佐野*2007a]212頁参照)、その点は別にしても、つまりたとえ残額が存在することが確実であるとしても、委任契約が終了するまではその額が確定しないので、この債権は被転付適格を欠く(最高裁判所 平成18年4月14日 第2小法廷 決定(平成17年(許)第33号)、[佐野*2007a]212頁)。賃借人が賃借建物を明け渡す前の敷金返還請求権も同様である。

被転付適格を欠くとはされない例
次のような事由のある債権であっても、それだけでは即時決済可能性は否定されない。
b1実在額について争いのある債権  客観的に発生していて金額も確定していると考えられる債権については、当事者間で争いがある場合でも、転付命令は許される[23](保険事故発生後の保険金請求権は、おおむねこれに該当する)。執行債権者は、実在すると考える金額を券面額として主張し、その範囲で転付を求める。執行債務者がそれより多くの債権額を主張して、残余の支払を第三債務者に求めることは、妨げられない。執行債権者が第三債務者に支払を請求したが、実在債権額が券面額に満たないことが明らかになった場合については、4.5 弁済効を参照。

b2質権の目的となっている債権  質権の目的となっている債権も、質権が消滅するまでは、第三債務者が自己の債権者(執行債務者)に給付すべき金額が実際上確定しない。そのため、これについて被転付適格を肯定すべきか否かについては、後述のように見解は分かれることになるが、最高裁は、その不確定から生ずるリスクを執行債権者が甘受して転付命令を求める以上、被転付適格を肯定すべきであるとしている(最高裁判所 平成12年4月7日 第2小法廷 決定(平成11年(許)第42号)[百選]*2005a]75事件(遠藤功))。(a2)との区別は微妙となるが、金額を不確定にする要素が差押債権に内在的であるか外在的であるかにより区別しているとみてよいであろう。

なお、この最高裁決定前においては、見解が次のように分かれていた。
  1. 全面的肯定説  被担保債権の確定の前後を問わず、質権が設定されている金銭債権全額が転付命令の対象となることを認め、券面額での弁済の効果が生じた後に質権が実行された結果、執行債権者が転付された金銭債権の支払を受けられないという事態が生じた場合には、転付命令により執行債権者が取得した債権によって質権の被担保債権が弁済されたことになるから、執行債権者は、支払を受けられなかった金額について、求償権や不当利得返還請求権を行使することができるとする見解。
  2. 制限的肯定説  (α)優先債権額が客観的に確定していない間は、券面額は存在せず即時決済可能性を欠くというべきであるが、(β)優先債権額が客観的に確定した後では、たとえ当事者間に争いがあって、それが通常の場合にはない決済不安定要因になったとしても、それは転付命令を否定すべきほどの要因ではないとして、被転付適格を肯定する見解(執行債権の消滅の効果は、差押債権の金額から被担保債権額を控除した金額について生ずる[34])。
  3. 全面否定説  優先権が行使された結果執行債権者と債務者との間で再清算の必要が生ずると法律関係が混乱するから、被担保債権の確定の前後を問わず、質権が設定されている金銭債権全額が転付命令の対象となることを認めるべきではないとする見解。

全面的肯定説に立った場合の執行債権者の救済としては、次のことが考えられる。
被転付適格が肯定されるか不明確なもの
c1代替的反対給付にかかる債権  発生・金額がすでに確定しているが代替的反対給付にかかる債権については、見解が分れている(非代替的反対給付に係る場合には、被転付適格はない)。学説はおおむね否定する(なお、161条が反対給付に係る債権につき譲渡命令を認めていることに注意)。

c2営業保証金等に対する優先権(先取特権)  このタイプの優先権については対抗要件が定められておらず、そのために、(α)移転そのものを否定して優先権を保護すべきか、(β)取戻請求権の移転にもかかわらず優先権は存続すると構成すべきかが問題となる。この優先権を取戻請求権上の先取特権と考え、そして「先取特権には追及力がない」という動産先取特権について認められた原則(民法333条)の準用を肯定すれば([注釈*1965a]209頁(西原))、優先権者の保護のために、(α)の選択肢をとらざるをえない。他方、保証金の提供自体のなかに、すでに優先権が公示されていると考えて(あるいは、取戻請求権に優先する還付請求権が存在すると考えて)民法333条の準用を否定すれば、(β)の選択肢も可能となり、(b2)の場合と同様に扱われることになる。責任財産の有効利用のために、後者の選択肢を採るべきであろう。

4.4 手続(法159条

申立てについての裁判と執行抗告
適式な申立てがあれば、執行裁判所は要件を審理し[1]、要件を具備していなければ申立却下の裁判をし、具備していれば決定をもって転付命令を発する(法159条1項)。転付命令は、執行債務者および第三債務者に送達する(同条2項)。申立却下決定に対しても転付命令に対しても、執行抗告が許される(同条4項)。

転付命令の効力の発生時期
転付命令は確定により効力を生じ(同条5項)、執行債権者は、この時から転付債権を自己の債権として取り立てることができる。目的債権の執行債権者への移転の効力は、転付命令確定の時に、第三債務者への送達時に遡及して生ずる(法160条)。 遡及効が認められているのは、確定までの間に競合債権者が現れた場合でも、転付債権者の独占的満足を維持するためである(同条3項参照)。
1.第三債務者への転付命令の送達
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   |他の債権者Aによる差押え・配当要求(α)
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2.即時抗告(債務者への送達から1週間以内)
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   |他の債権者Bによる差押え・配当要求(β)
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3.転付命令の確定=債権移転の効力が1の時点に遡及⇒(α)(β)とも無効。
           ∵転付債権者に独占的満足を与えるためである。
特則  差押債権が法152条1項・2項所定の差押禁止債権である場合には、転付の効力は、≪転付命令が確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過するまで≫は生じない(法159条6項。執行債権者は転付債権を自己の債権として取り立てることができない)。この場合でも、差押債権者の債権の中に法151条の2第1項所定の扶養料請求権が含まれている場合には、この特則は適用されない(法159条6項かっこ書。転付命令が確定すれば、取立てをすることができる)。

転付命令に対する抗告理由

転付命令に対する抗告理由となりうるのは、転付命令を発するに際し執行裁判所が自ら調査し確認すべき事項の欠缺である([竹下*1985a]244頁)。
転付命令に対する抗告権者
債務者のみならず第三債務者も執行抗告をなすことができる。後行の差押債権者・配当要求債権者は、債権者競合があったので転付命令が許されないことを理由に抗告できる。

抗告手続
一般原則に従うが(10条参照)、次の特則がある。
)次の文書を提出して執行抗告がなされたときは、抗告裁判所は他の理由により転付命令を取り消す場合を除き、執行が取り消されるべきか否かの結論が他の手続において出されるまで、執行抗告についての裁判を留保する(159条6項)。
  1. 執行の一時停止を命ずる裁判(39条1項7号)  153条3項の第三債務者に対する支払禁止命令もこれに含まれる([竹下*1985a]229頁)。
  2. 弁済受領文書または弁済猶予文書(39条1項8号)
)執行停止の裁判が出されているとの抗告理由は、その裁判を得るのに時間がかかること、ならびに事柄の重要性により、抗告理由書提出期間(10条3項)経過後でも追加主張することができる(見解の対立がある。甲斐哲彦[百選*2005a]162頁以下参照)[21]。ただし、その追加主張の予定があることを執行裁判所に知らせておく必要があり、抗告人は、提出期間内に提出する抗告理由書において、どのような理由により停止決定の申立てをしたか、あるいは申し立てる予定であるかを明らかにしておくべきである。それが欠ける場合には、執行裁判所は、執行抗告を却下することができる。

4.5 転付の効果(法160条

転付命令が効力を生ずると、被転付債権が存在し、券面額等の要件が満たされている限り、次の2つの効果が生ずる。
転付の効果は、差押命令および転付命令が適式な執行正本に基づいて発せられている限り、執行債権の不存在・消滅あるいは債務名義の無効の瑕疵によって影響されない(第三債務者の保護のためにそうしなければならない)。担保執行においても、担保権の不存在・消滅を理由に転付の効果を争うことはできない。執行債権・実行担保権の不存在は、執行債務者の執行債権者に対する不当利得返還請求権をもたらすにすぎない。

権利移転効
転付の効果として、被転付債権は、その同一性を維持しつつ、執行債務者から執行債権者に移転する。転付命令は第三債務者にも送達されるので、債権譲渡の通知を別個になす必要はない。執行債務者から債権を譲り受けた者との優劣は、(α)転付命令の有効要件である差押命令の送達日時と、(β民法467条の対抗要件の具備の日時(動産・債権譲渡特例法による譲渡の登記がなされた場合には、登記の日時)との先後により決められる。

被転付債権に従たる権利(担保権等)[32]も転付債権者に移転する。従たる権利が登記された担保権である場合には、裁判所書記官は、申立てにより、当該担保権の移転登記を嘱託するとともに、150条により差押えの登記がなされている場合には、その抹消登記も嘱託する(164条)。

しかし、転付された債権のための担保権が動産・債権譲渡特例法の登記がされた債権質権である場合には、164条は適用されない(動産・債権譲渡特例法15条2項)。それは、次の理由による([植垣=小川*2009a]135頁参照):債権譲渡及び債権質権の対抗要件は、登記に一本化されているわけではなく、譲渡登記のなされている債権を更に譲渡する場合の対抗要件も譲渡登記に限られない(民法467条の通知・承諾でもよい。特例法8条5項参照)。特例法の登記のなされている質権の移転についても同様である(特例法14条1項参照)。したがって、特例法の登記のなされている債権質権が被担保債権の転付に伴い移転する場合にも、それを登記する必要は必ずしもない。そして、特例法は、差押え等による処分の制限を登記すべき権利変動としてはいないのであるから、差押えを前提とする転付命令による権利移転も登記すべきでないことになる。

第三債務者は、執行債務者に対抗できたすべての実体上の事由(弁済、相殺、解除権・取消権の行使等)をもって転付債権者に対抗できる[25]。第三債務者が執行債務者に対する債権でもって相殺するためには、民法511条1項(差押えの発効前に取得された債権)又は同条2項(差押え前の原因により生じた債権)の要件を満たすことが必要である。第三債務者からのこの相殺の意思表示の前であれば、転付債権者は、被転付債権と第三債務者の自己に対する債権とを相殺(逆相殺)することができ、その後は、第三債務者からの相殺(順相殺)の意思表示がなされても効力を生じない。

弁済効
被転付債権が執行債権者に移転することにより、執行債権と執行費用は、券面額の範囲で弁済されたものとみなされる。執行正本に転付命令が発令された旨の記載をなし、これを執行債権者または執行債務者に交付する(規145条62条)。

被転付債権の不存在・消滅の場合の処理
弁済効が否定される場合  転付命令の確定の時点で被転付債権が全部または一部存在しない場合には、その限りで弁済効は発生しない。転付命令確定後の相殺・取消権・解除権の行使により転付命令の確定時前に遡及して被転付債権が消滅する場合、したがって第三債務者から執行債権者への弁済がありえない場合も、これに含まれる。被転付債権者は、転付の無効を主張して、執行債務者の他の財産に対する執行を申し立てることができる。この場合に、実務は、執行債権者は第三債務者の被転付債権の不存在証明書等を添付して執行正本の再度付与を申し立て、再付与された執行正本により再度の強制執行を申し立てうるものとしている[5]。執行債権者は再度給付の訴えを提起しなければならない、とされているわけではない。

弁済効が肯定される場合  他方、被転付債権が質権の目的になっていて、質権が実行されたため転付債権者が行使できる債権額が減少した場合については、判例は、この転付命令も有効であるとした上で、転付による執行債権の消滅を肯定し、執行債権者の執行債務者(被担保債権の債務者)に対する不当利得返還請求権を認めている[3]。

4.6 手続の終了

転付命令が確定して転付の効力が生ずれば、第三債務者はもはや執行供託をなしえず、被転付債権に対する執行手続は終了し、裁判所による配当手続の余地がないのが原則である。

しかし、競合債権者が存在して転付の効力に疑問の余地がある場合には、第三債務者はなお執行供託をなすことができ、転付債権者と競合債権者に転付命令の効力を争う機会を保障するために、執行裁判所は全債権者を当事者として配当手続を行うべきである(配当表の内容は、転付命令の有効・無効に左右される)。

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Author: 栗田隆
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1998年6月5日−2020年11月6日