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破産法学習ノート2
破産手続開始の要件関西大学法学部教授
栗田 隆 |
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破産手続開始要件に関する 文献 判例
破産手続開始のためには、次の要件が満たされることが必要である(積極的要件)。
しかし、上記の要件が具備するときでも、次の場合には、破産手続は開始されない(消極的要件あるいは障害事由)。
次のことは、破産手続開始の要件とはされていない。
倒産処理手続は、財産状態の悪化した債務者の財産について行われる。財産状態がどの程度悪化すると倒産処理手続を開始するかは、各倒産処理法がその目的に従って定めている。破産手続は、最後に開始される倒産処理手続であり、かなり悪化した段階で開始される。
これは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいう(2条11項)。「支払能力を欠く」は、弁済手段を欠くことを意味する(金銭債務については金銭、種類債務については種類物またはその調達のための金銭、特定物の給付債務については当該特定物、その調達手段または債務不履行による損害賠償の支払にあてる金銭、等)。
債務者が支払不能になると、各債権者が先を争って弁済を求め、債権者間の公平が保たれず、また、債務者もその対応に疲弊する。そして多くの場合に強制執行が嵐のようになされるが[9]、個別執行について平等主義を採用している我が国においても、これにより全債権者が公平な弁済を受けることを期待できない(配当に与かるためには原則として債務名義が必要であり、また、すべての債権者が強制執行の開始を適時に知ることができるわけではないからである)。債務者の総財産に対する総債権者のための包括的執行としての破産手続の開始が必要となる。そこで、支払不能が個人・法人を通じた一般的な破産手続開始原因とされている。ただし、相続財産については、現在ある財産をもって債務を弁済することになるのが通常であるので、債務超過のみが破産手続開始原因とされている(223条)[7]。
支払停止 債務者が支払を停止していることは、支払不能の推定事由である(15条2項)。支払停止は、債務の弁済手段を欠いているという債務者の主観的認識を外部に表明する債務者の行為ないし態度(あるいは、その認識を前提にした債務者の行動)である[8]。例:
支払不能と支払停止の異同 支払不能は、弁済手段を継続的・一般的に欠いているという客観的な状態を意味する(この状態の証明のためには、厳密には、債務者の弁済期にある財産と弁済手段として用いることができる財産を確定することが必要である)。これに対し、支払停止は、自己が支払不能の状態にあることについての債務者の主観的な認識の外部に表明する行為ないし態度である。この点で両者は区別される。債務者の認識が誤っている場合には、債務者が支払を停止しても、支払不能ではないことがある。
破産免責との関係
多額の債務を負った個人債務者の経済生活の再生のために免責制度が用意されているが、免責を得るためには、破産手続が開始されることが必要である。そこで、債務超過の状態にある債務者が破産免責を得ようとする場合でも、支払不能の状態にあるか否かが問題となる。その問題は、特に、債務者が弁済期にある債務を弁済するだけの資力を有しないが、債権者が債務者の現在の資力及び将来の所得を考慮した分割弁済を提案し、その提案によれば支払不能とはいえない場合に、生ずる。支払不能か否かを判定するに際しては、債権者の分割弁済の提案も考慮すべきである。
もっとも、現在では、「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」は、再生手続開始申立てをすることができるとされており(民再法21条1項前段)、債権者からの分割弁済の提案は、「支払不能の状態が生ずるおそれがない」程度に緩和しておかないと、債務者は、小規模個人再生や給与所得者等再生の手続を申し立てることになろう。
これは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。すなわち、弁済期の到来の有無を問わず、消極財産が積極財産を上回っている状態を指す。例えば、5億円の資産を有する株式会社が10人の債権者に対して各々1億円の債務を負っているとしよう(単純化のための、会社資産のうち4億円が普通預金であり、残りは事業を行うのに必要な不動産・動産等であるとする。また、事業活動は収支トントンの状況(利益も損失もない状況)にあるとする)。この会社の消極財産は10億円であり、積極財産5億円を上回っているので、債務超過である。しかし、債務の履行期が、債権者1については1月後、債権者2については2月後と順次ずれている場合には、債務者は、普通預金4億円を用いて債権者4までは滞りなく弁済することができ、支払不能の状態に陥ることはない。債権者5の履行期が到来した時点で初めて支払不能になる。支払不能のみが破産原因であるとすると、債権者5から10までは、残された1億円の資産から配当を受けることになる。これでは、全額の満足を得た債権者1から4と比較して、はなはだ不公平である。債務超過が明らかになった時点ですみやかに破産手続を開始して、債権者1から10までが平等に5億円の資産(から手続費用を控除した残額)から配当を受けることができるようにする方がよい。こうした考慮に基づいて、無限責任を負う者がいない株式会社等については、債務超過も破産手続開始原因とされている。
債務超過が破産手続開始原因となるか否かは、破産者の属性により異なる。
合名会社や合資会社(会社法576条2項・3項)以外にも、無限責任を負う構成員のいる法人がある(例えば、特例無限責任中間法人(一般社団・財団法人等整備法24条)。このような法人にも破産法16条2項が準用される(例えば、同整備法28条[6])。なお、準用規定がない場合には、破産法16条2項を類推適用すべきである。
法人でない社団・財団が破産者となる場合にも、法人について述べた説明が妥当する(存続中の社団に無限責任を負う構成員がいる場合には、支払不能のみが開始原因となり、その他の場合には、支払不能と債務超過の双方が開始原因となる)。
債務超過が破産手続開始原因として主張されることは、(準)自己破産の場合を除き、実際上は少ないと言われている。非常貸借対照表(企業の清算を前提として作成される積極財産と消極財産との対照表)の作成が困難だからである。しかし、企業については、国際的に時価会計主義が採用されるようになっているので、従来よりも、企業が債務超過の状態にあるか否かは、外部からわかりやすくなってきている。財産の時価評価の仕方は、財産の特質により異なり、その算定に難しい問題が生ずることもあるが、基本的には、評価時点において財産の特質に応じた相当の猶予期間をおいて換価したならば得られるであろう金額を意味する。その猶予期間は、金銭あるいは即時要求払預金の場合にはほとんど無視しうるが、不動産の場合には、売却価額と売却に要する期間との間に相関関係があり、この期間をどの程度に設定するかが重要となる。その時々の経済情勢の下で、通常の不動産取引において売却の広告をしてから売買の成立に至る期間内に売買が成立するであろうと推測される価額をもって時価とすべきであろう。裏付け資産が複雑な証券などは、金融市場の混乱時には購入希望者が激減し、客観的に見れば裏付け資産の価額をも大幅に下回る価額でしか売買されないような場合もある(2007年から2008年にかけてアメリカ合衆国のサブプライムローン問題に端を発した金融不安の中で、このことが問題となった)。市場の混乱が収まるのに相当な時間を要する場合には、時価の算定は困難な問題となる(市場の混乱が収まったときに予想される売買価額を時価と評価するのも、一つの方法ではあるが、その予想がはずれて裏付け資産の価額も下落し、評価対象の財産の取引価額がさらに低下することもあることを考慮すると、そのような算定方法は、債権者の利益を保護するために有限責任債務者について債務超過を破産手続開始原因とした趣旨に合致するとは言い難い)。
なお、債務超過は、東京証券取引所の上場廃止基準の要素の一つとなっている(東証 : 上場廃止基準概要)。その取扱いには若干の変遷があるが、いずれにせよ、債務超過になったからといって直ちに上場廃止になるわけではない。東証の上場廃止原因:
特別清算手続との関係
一般に株式会社の清算手続においては、清算株式会社は、その債権者に対し債権申し出の公告をなし、知れている債権者には各別にこれを催告し(会社法499条)、清算人は、債権者を十分に把握した上で、貸借対照表を作成する(同法492条)。その結果、債務超過の疑いが判明したときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならず、申立てにより、裁判所は特別清算開始命令を発する(同法511条2項・510条2号)。特別清算手続は、破産手続よりも簡便な手続であるので、破産手続開始決定がなされる前にあっては、破産手続開始申立ての手続よりも特別清算手続が優先する(同法512条1項1号・515条1項・2項参照)。特別清算手続が開始された清算株式会社は債務超過の疑いがあるので、弁済期にある債務を弁済する資金がある場合(支払不能でない場合)でも、弁済期の到来している債権を債権申出期間経過後に順次弁済するのではなく、まず、裁判所の監督の下で財産関係を明確にする(同法519条)。もし、全部の債権について全額の弁済が可能であることが明らかになれば、特別清算を行う必要がなくなるので、その時点で、特別清算終結の決定を行う(同法573条2号)。そうでない限りは、債権額に応じて弁済することになる。会社法は、優先的破産債権以外の破産債権に相当する債権を「協定債権」と定義し(同法515条3項)、協定債権については、債権額に応じて弁済しなければならないとの原則を定めている(537条1項)。清算株式会社は、債権者集会に協定債権の変更を内容とする協定を提案する(同法563条)。協定は、多数債権者の同意による可決後に、裁判所の認可決定の確定により効力が生じ(同法570条)、協定による変更後の債権に弁済がなされる。「協定の見込みがないとき」や「特別清算によることが債権者の一般の利益に反するとき」等に、裁判所は、申立てにより破産手続開始決定をし、「協定が否決されたとき」等には職権で破産手続開始決定をする。いずれのときにも、破産手続開始原因の存在が必要であることは当然であるが、支払不能の状態になくても債務超過であれば破産手続は開始されうる(特別清算手続は、清算株式会社に債務超過の疑いがある場合に開始され、債務超過でないことが判明すれば特別清算終結決定がなされるのであるから、その終結決定がなされていない特別清算会社には破産手続開始原因が存在するのが通常である)[10]。
た起用邸に従って弁済破産に相当する債権が支払の債務の弁済はは、が協定の見込みがない場合、特別清算手続が開始決定がなされると、その確定前でも、破産手続開始申立てに関する手続は中止され、特別清算手続されるとね破産手続開始申立ては
以上を債務者の責任範囲の点から整理すると、次のようになる。
債務者 | 破産手続開始原因 | |
---|---|---|
1 |
個人及び無限責任を負う構成員のいる存続中の社団(合名会社・合資会社、無限責任中間法人など) | 支払不能 |
2 |
社団・財団 (ただし、1に挙げたものを除く) | 支払不能と債務超過 |
3 |
相続財産 | 債務超過 |
学年末試験のある答案の中に「支払停止は、支払不能とともに一般的な破産手続開始原因である」との記述があった。これが誤りであることを説明しなさい。
(a)次の場合には、債務超過であるが支払不能とではない。
これが成立する事例として、「友情、将来の発展性、現在のところ交換価値のない技術(例えば、未完成の技術、商品開発にまで至っていない技術)等を考慮して信用が得られる場合」がよく挙げられる。その他の例:
(b)次の場合には、債務超過でないが支払不能である。
総資産の中に次のような財産が存在すると、これに該当することがある:
なお、債務者が弁済手段となりうる財産の存在を失念している場合には、実際には支払不能ではないが支払停止となり、これにより支払不能が推定されて破産手続が開始されてしまうこともある。
金融界の用語との対応関係
銀行等の金融機関は、預金者からの正当な支払要求にいつでも応ずることができなければならない。金融機関は、通常、普通預金や定期預金により集めた資金を融資に回し、その利ざやにより利益を得ている。普通預金は、いつでも引き出すことができる預金である。定期預金は、本来は、満期が到来後に引き出すことができる預金であるが、日本の通常の定期預金は、有利な利息を得る権利を放棄すればいつでも引き出すことができる。他方、銀行の貸出債権については、融資期間が設定されていて、弁済期が到来するまでは返済を求めることができない。このように、金融機関の資産である債権の弁済期が負債である預金債務の弁済期よりも長い場合に、預金者が一斉に預金の払い戻しを請求すると、金融機関は、たちまち払戻資金に欠乏し、支払不能に陥る。これは、資産の弁済期と負債の弁済期の相違により生ずるものであり、債務超過でない健全な金融機関についても、生じうることである。そこで、金融の世界では、次の2つのことの区別が重視される([白川*2013a]310頁)。
ソルベンシーを有する金融機関が流動性不足に陥った場合には、中央銀行が最後の貸し手として、当該金融機関の資産(貸出債権等)を担保にして融資をすることにより、当該金融機関の流動性を回復することができる。流動性を欠く状態にある金融機関がソルベンシーも欠いている場合にどのように対応するかは、政治的決断を必要とする問題である([岩田*2006a]146頁以下は、この場合に救済融資をすることは適切でないとする)。
「流動性」の概念は、破産法にいう「支払能力」に対応する(「流動性不足」は「支払不能」に対応する)。しかし、同じと考えてよいかは、微妙である。破産法の「支払不能」の概念は、「継続的に弁済することができない」ことを要素としているからである。「継続的」がどの程度の期間を意味するかは不明確であるが、1日や2日程度てはなく、もう少し長い期間である。ところが、金融機関については、1日間の流動性欠如が大きな問題を引き起こす(当該金融機関が決済業務を行っており、当該金融機関の債権者の中に別の金融機関Bが存在する場合に、金融機関Bを流動性欠如に陥れることがありうる。こうした形で、流動性不足が他の金融機関に伝播し、金融業界全体が混乱に陥るおそれがある)。その点で、破産法の「支払不能」は、破産手続の開始という独自の目的のために設定された概念であり、金融の世界の「流動性不足」とは異なる概念と見るのがよいであろう。ソルベンシーの逆を「インソルベンシー」の語で表すとすると、「インソルベンシー」は「債務超過」に極めて近い(同一と言ってよいかは、前者の定義次第である)。
債務超過を原因とする破産手続の開始について、次の特例規定ある。
(a)大災害が生ずると、企業は多くの資産を失う。しかし、負債はそのまま残存するので、債務超過に陥りやすい。大災害という一時的要因により債務超過に陥ったことのみを理由に破産手続が開始されて、企業が消滅すると、復興が妨げられる。そこで、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律が次の特例を定めている。
第5条(債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置)
「 特定非常災害によりその財産をもって債務を完済することができなくなった法人に対しては、第2条第1項又は第2項の政令でこの条に定める措置を指定するものの施行の日以後特定非常災害発生日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、破産手続開始の決定をすることができない。ただし、その法人が、清算中である場合、支払をすることができない場合又は破産手続開始の申立てをした場合は、この限りでない。
2 裁判所は、法人に対して破産手続開始の申立てがあった場合において、前項の規定によりその法人に対して破産手続開始の決定をすることができないときは、当該決定を留保する決定をしなければならない。
3 裁判所は、前項の規定による決定に係る法人が支払をすることができなくなったとき、その他同項の規定による決定をすべき第1項に規定する事情について変更があったときは、申立てにより又は職権で、その決定を取り消すことができる。
4 前2項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 第1項本文の法人の理事又はこれに準ずる者は、特定非常災害発生日から同項に規定する政令で定める日までの間、他の法律の規定にかかわらず、その法人について破産手続開始の申立てをすることを要しない。」
最近では、東日本大震災(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害)が特定非常災害に指定され、5条1項の破産手続開始制限期間の末日として平成25年3月10日が指定された(東日本大震災についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令(平成23年3月13日政令第19号)1条・5条)。
この特例規定による破産手続開始制限は、次の場合には適用されない:債務者自身が破産申立てをする場合;支払不能を理由に破産申立てがなされる場合。したがつて、この特例は、次のような企業(法人)を救済するものであると言うことができる。
もちろん、企業自身が災害を乗り越えて復活できると判断していることが大前提である。
破産者となりうる一般的な地位(自己の財産について破産手続を開始されうる一般的な地位)を破産能力という。
原則 破産者となりうるのは、権利義務の帰属主体である。法人格を有する者(個人・法人)は、破産能力を有するのが原則である。
私法人 私法人は、すべて破産能力を有する。解散した法人も、破産の目的の範囲内では、すなわち破産手続により配当すべき財産が法的に残存する限りは、存続するものとみなされる(19条5項。民法旧73条・旧81条、一般法人法207条・215条1項、会社法476条・645条など)。電力会社やNTTも破産能力がある。ただ、その企業を破産手続により解体することは国民生活に大きな混乱をもたらすので、現在のところ、そのことが破産の障害事由になりうる。
法人でない社団・財団 法人でない団体が社会的に見て権利義務の帰属主体として活動しており、その財産関係の清算のために破産手続を行う必要がある場合には、破産者となりうる(13条・民訴29条。[伊藤*破産v4.1]70頁)。
法人でない社団・財団について破産手続を開始するためには、その前提条件として、当該社団・財団が社会的に存在したこと(経済活動をしたこと)の結果として、破産手続の対象となる財産とその財産から満足を受けるべき債権が存在し、それらの範囲を確定することができることが必要である。
民法上の組合 民法上の組合が破産能力を有するかについては、争いがある。これを一律に否定する見解もあるが(例えば[加藤*2006a]39頁)、しかし、民法上の組合であるか否かの判断基準と、破産能力を肯定すべきか否かとの判断基準とは一致せず、また包摂関係あるいは排他関係にあるわけではない。組合が組合員から独立した財産を有する場合には[3]、その財産関係を各組合員の個別財産関係に分割して整理することは適当ではなく、組合財産に対する破産手続の開始を認めるべきである(民法677条に注意。[伊藤*破産v4.1]71頁)。組合財産に対する破産手続を肯定するか否かの違いは、組合員が破産した場合に、次のような形で現れる。
組合財産に対する破産手続が肯定される場合に、その法律構成については、次の2つが可能であるとすべきであろう。(a)組合が、法人でない社団として、社会的に見て権利義務の帰属主体として活動している場合には、破産法13条・民事訴訟法29条により組合に破産能力を肯定することができる。この法律構成が適合する組合については、組合が破産者になる。これに該当しない組合については、組合自体は債務者になり得ないことを前提にしつつも、(b)組合の目的達成のために組合員がする活動(組合のための活動)と組合員のその他の活動(固有の活動)を区別して財産関係の清算を図ることが社会的に見て必要である場合には、組合の所定の目的の達成のための活動により生じた債務と組合の所属財産(組合員の合有財産)との包括的で公正な清算のために組合財産に対して破産手続を行うことを肯定すべきである。その破産手続は、相続財産の破産手続に準ずることになろう(特に、破産法230条・234条の類推適用が重要である)。例:
公法人 公法人については、破産手続により財産関係を清算させたのではその存在目的を達成することができないことを理由に、破産能力を否定するのが伝統的な見解である。たしかに、公法人の中には、破産能力を否定すべきものがある。国や地方自治体などの統治団体がそうである(警察署の建物やパトカーが売却されれば、治安が維持されない)[4][5]。しかし、すべての公法人が破産になじまないというわけではない。公法人が統治団体から独立した存在であり、その消滅が統治目的の実現を害さず、清算の必要がある限り、破産手続による財産関係の整理を認めるべきである([伊藤*1991]39頁)。公法人に破産能力を認めるか否かの立法判断は、この視点からなされるべきである。法人の根拠法に別段の規定がない場合の解釈論も同様である。
外国人 外国人および外国法人も、日本人および日本法人と同様に破産能力を有する(3条)。
破産者となりうる者を商人に限定する建前を商人破産主義という。これに対して、そのような限定を行わない建前を一般破産主義という。現行破産法は一般破産主義を採用している。
株式会社の破産手続開始原因について説明しなさい。(1991年2部)
複数債権者の存在は、破産手続開始の要件であるか否かを述べなさい。(1992年1部)