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民事訴訟法講義
当事者 2関西大学法学部教授
栗田 隆 |
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民法 | 民事訴訟法 |
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権利能力 | 当事者能力 |
行為能力 | 訴訟能力 |
最判昭和37年12月18日民集16巻12号2422頁・[百選*1998a]41事件 |
B1,B2,B3 銀行 |組合設立(融資先のA会社の債権の取立と3銀行の債権の保全を目的として設立された) ↓ X委員会(民法上は組合) ←−−−− A会社 | 債権譲渡 売掛代金支払請求 ↓ Y |
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Xは、バイク好きの大学1年生(18歳)である。Xは、彼の750ccのバイクを壊したY(22歳)に対して、損害賠償請求の訴えを自ら提起した。 |
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分類 | 該当者 | 訴訟行為をなすための要件 | 違反の効果 | 人訴法上の位置付け | 参考:民法上の取扱い |
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訴訟無能力者(31条) | 未成年者・ 成年被後見人 |
自らは有効な訴訟行為をなすことができない。法定代理人によって代理されることが必要。例外あり。 | 無効。ただし、34条2項により追認可能 | 訴訟行為につき能力の制限を受けた者(人訴13条) | 制限能力者が能力の補充なしにした行為は、有効であるが、取り消すことができる(民法9条・5条2項・13条4項・17条4項) |
不完全訴訟能力者(32条) | 被保佐人・被補助人 | 自ら訴訟行為をなすことができるが、原則として保佐人・補助人の同意が必要(民法13条1項4号・17条1項)。 | |||
完全訴訟能力者 | 上記以外の者 | 自ら訴訟行為を単独でなすことができる(ただし、意思能力を欠く場合は別)。 |
事項
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不完全訴訟能力者への特別授権(32条2項)
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訴訟代理人への特別委任(55条2項)
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反訴の提起 | 民法13条1項4号・17条1項 | 1号
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訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は第48条(第50条第3項及び第51条において準用する場合を含む。)の規定による脱退 | 1号
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2号
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控訴、上告又は第318条第1項の申立て | 3号
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控訴、上告又は第318条第1項の申立ての取下げ | 2号
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3号
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第360条(第367条第2項及び第378条第2項において準用する場合を含む。)の規定による異議の取下げ又はその取下げについての同意 | 3号
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4号
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代理人の選任 | 5号
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根拠規定 | 命令者 | 名宛人 | 補正事由 | |
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1 | 34条1項 | 裁判所 | 補正されるべき行為をした者 | 訴訟能力等の欠缺 |
2 | 137条1項 | 裁判長 | 原告 |
訴状の不備 |
3 | 140条(の反面解釈) | 裁判所 | 原告 |
不適法な訴え(1に該当する場合を除く) |
最判昭和29.6.11民集8−6−1055 [百選*1998a]51事件 |
事実の概要 Xが提起した訴えに精神能力12才程度のYが訴訟代理人を通じて応訴した。Y敗訴の一審判決に対して、Yが控訴を提起した。その後、Yは事実上の監護者であるDと喧嘩し、Xの訴訟代理人の勧めに従って控訴を取り下げた。その直後にYに準禁治産宣告(現:保佐開始の審判)がくだされ、Dの夫Eが保佐人に選任された。こうした事情をもとにYの訴訟代理人が控訴取下げの無効を主張した。控訴審は、控訴の取下げの無効を認めた。 これに対してXが、精神能力の欠如のゆえに控訴取下げが無効なら控訴提起も無効のはずであると主張して、上告した。 |
判 旨 Xの精神能力は12、3才の児童に比せられる程度にすぎず、しかも、その控訴取下げは姉D夫婦や訴訟代理人に相談せずになされたこと、そのためYは、控訴取下げによって前記のごとき重大な訴訟上並びに事実上の結果を招来する事実を十分に理解することができず、控訴取下げの書面をもって、漠然Xに対する紛争の詫状程度に考え、本件控訴取下げをなしたものであると認められることから、Yのなした控訴取下げは意思無能力者のなした訴訟行為にあたり、その効力を生じないものと解すべきである。これに反して、控訴の提起自体は、単に一審判決に対する不服の申立てにあたるにすぎず、かつ敗訴判決による不利益を除去するための自己に利益な行為である関係上、Yにおいてもその趣旨を容易に理解し得たものと認められるから、本件控訴の提起を有効な行為と解することは妨げられない[8]。 |