目次文献略語
民事訴訟法講義

当事者 1


関西大学法学部教授
栗田 隆

1 当事者の概念


1.1 形式的当事者概念と実体的当事者概念

「当事者とは何か」という問に対する答として、次の2つの選択肢がある。
  1. 実体的当事者概念  訴訟物たる権利関係との関連性を考慮して、訴えにより主張された権利・義務の帰属主体を当事者と規定する立場。
  2. 形式的当事者概念  訴訟物たる権利関係との関連性を考慮することなく、純粋に訴訟法上の観点から次の者を当事者とする立場。
    • 原告=民事裁判権の行使(判決)を求めて、自己の名において訴えを提起する者
    • 被告=原告によって相手方とされた者

実体的当事者概念では、次の場合の説明が困難であるので、現在では、形式的当事者概念がとられている。
AがBに対してα債権を有し、BがCに対してβ債権を有している。
  A───(α債権)──→ B ───(β債権)──→C

事例1:BがCに対してβ債権支払請求の訴えを提起した。
  B──(β債権支払請求)─→C

事例2:Aが、民法423条によりBに代位して、Cに対してβ債権支払請求の訴えを提起した。
  A──(β債権支払請求)─→C

問 実体的当事者概念では、事例2を説明できないことを確認しなさい。

1.2 当事者権

当事者が訴訟手続の主体たる地位において有する諸権利を総称して当事者権という。手続上の権利であるので、手続権ともいう。次のような多種多様な権利がこれに含まれる。

2 当事者の確定


はじめの1歩
設例1  XとYは夫婦である。XとYとは不仲になり、Yが家を飛び出したが、住民票上の住所はそのままである。Xは、Yに対し離婚の訴えを提起した。Yに送達されるべき訴状と第1回口頭弁論期日の呼出状は、Xと親しくなったAがXの住居において受領した。AがYになりすまして期日に出頭した。離婚判決が下され、確定した。

 この訴訟の被告は誰か。

2.1 当事者に結び付けられた効果

当事者には、次のような訴訟法上の重要な効果ないし問題が結びつけられているので、「誰が当事者か」が重要な問題となる。

2.2 当事者確定基準

個々の訴訟において誰が当事者であるかが問題となる場合に、それを確定する基準を当事者確定基準という。これについては、次のような見解がある[13]。

 (意思説  原告の意思を基準とすべきである。冒頭の設例では、Yが被告となる。これに対しては、どのような資料に基づいて意思を確認するのかが明確でなく、また、原告の確定に関しては循環論に陥いり、確定基準とはなりえないとの批判がある。

 (A'新意思説  意思説は長らく支持者がいなかったが、最近になって、原告の内心の意思ではなく、外部(特に訴状)に表明された原告の意思により当事者を確定すべきであり、原告の意思の解釈にあたっては、訴状提出後の訴訟経過も斟酌してよく、原告は訴状等から推断される意思によって特定されれば足りるとする見解([松本=上野*1998a]69頁)が現われている[15]。この見解は、後述の実質的表示説と重なり合う部分が広い([小島*民訴]128頁以下は、意思説一般についてこのように指摘する)。

 (行動説(挙動説)  訴訟上当事者らしく振る舞い、または当事者として取り扱われた者が当事者である。冒頭の設例では、Aが被告となる。これに対しては、訴訟代理人が法廷に現われる場合も考慮すると、基準として不明瞭であるとの批判がある。また、訴状をこれから送達する段階では、まだ被告らしく振舞った者は存在せず、この段階での被告の確定基準とはなりえない。

 (表示説  訴状における当事者の表示を基準にして当事者を確定する[21]。冒頭の設例では、Yが被告となる。「訴状における当事者の表示」の意味について、次の2つの見解に細分される。
上記の3つの伝統的見解の中では、表示説、その中でも実質的表示説が通説である([伊藤*民訴v4]112頁注5)。判例の立場は微妙に変動しているが、大判昭和10.10.28民集14-1785・[百選*1998a]38事件は、被告側冒用の事例において、判決が被冒用者(Y)を名宛人にして下された場合には、判決の効力は冒用者ではなく被冒用者に及び、被冒用者は再審の訴えを提起することができるとした。これは、表示説と理解することができる。

このほかに、比較的最近の見解として、次のものがある。

 (規範分類説(折衷説)  これから手続を進めるにあたって誰を当事者として扱うかを考える段階(行為段階)と、既に進行した手続を振り返ってその手続の当事者は誰であったかを考える段階(評価段階)とを区別して、次のように確定基準を設定する([新堂*新民訴v3.1]119頁以下、[高橋*重点講義・上v2]153頁。これに批判的なものとして、[梅本*民訴v4]99頁注1がある)。
 (複数要素考慮説  これは、伝統的な見解が意思・行動・表示のうち一つを確定基準とするのに対し、これらの内の複数のものあるいはその他の要素を確定基準に取り込むべきであるとする見解であり、種々のものがある。例えば、訴状の表示を第1基準としつつ、手続保障の観点から、送達を受けたか、実際に訴訟活動をしたか等を第2基準として考慮すべきであるとする見解がある([小島*民訴]128頁以下)。

 (当事者特定責任説  当事者の確定は、原告によってなされるべき当事者の特定(被告の特定)の解釈・補完の問題ないし当事者特定責任の一環として把握されるべき問題であるとする([納谷*1981a]250頁以下、[佐上*1984a]71頁以下)[12]。この見解は、意思説と近親関係にあり、また、原告が被告の特定を誤った場合に彼は何をなすことができるかという点に議論の重点を置き、それは「表示の訂正」や「任意的当事者変更」等の問題であって当事者の確定の問題ではないとするので、当事者確定基準により解決される問題の範囲の縮小論(確定機能縮小論)でもある。

以上のようにさまざまな見解があるが、原告が誰であり、被告が誰であるかは、裁判所・原告・被告の3者にとって手続開始時からの共通の関心事であり、さらには後訴の裁判所や当事者から権利義務を承継する者の関心事でもある。したがって、当事者確定基準に用いられる資料は、客観的な資料(これらの者が共通の認識を得ることができる資料)に限定するのがよく、その範囲でできるだけ多くの資料を用いる基準が望ましい。その点からすれば、実質的表示説が優れている。そこで、この講義では、実質的表示説を原則的な基準とする。ただし、実質的表示説に従って確定される当事者を基準にして、当事者が関係するすべての問題を画一的に処理することは、必要でも適当でもない。最終的には、各規定の趣旨に従い、その適用の有無・効果が決められるべきである。当事者確定基準は、比較的多くの規定に妥当するように当事者を確定するにすぎず、問題解決の万能の鍵となるわけではない[14]。なお、確定機能縮小論を押し進めると、当事者確定論の機能する場面を第一回口頭弁論期日までに限定することになるが([長谷部*民訴v2]116頁参照)、当事者として確定された者が口頭弁論に呼び出され、判決の基礎資料を提出し、判決の名宛人になり、判決の効力を受けるのが原則であり、当事者確定論の機能を第一回口頭弁論期日までに限定するのは行き過ぎであろう。

2.3 氏名冒用訴訟

訴状に記載された当事者以外の者が当事者の名を勝手に用いて訴訟を追行する場合に、その訴訟を氏名冒用訴訟という。2の冒頭で取り上げた設例も氏名冒用訴訟(被告側冒用例)である。ここでは、もう一つ例をあげておこう(原告側冒用例)[10]。
設例2  XはYに対して300万円の貸金債権を有している。
  • 前訴: Cが、Yに頼まれて、Xの名で貸金返還請求の訴えを提起し、請求棄却判決が確定した。
  • 後訴: Xがそのことを知らずにYに対して300万円の貸金返還請求の訴えを提起した。

表示説による取扱い
表示説にしたがった場合には、氏名冒用訴訟は次のように取り扱われる。

)訴訟手続中に冒用訴訟であることが判明した場合
  1. 原告の氏名が冒用されている場合には、当事者本人の意思に基づかない無効な訴えであるので、不適法な訴えとして却下する。 ただし、追認の余地がある(34条2項の類推)
  2. 被告の氏名が冒用されている場合には、冒用者の弁論を禁止し、被冒用者に弁論をさせるために手続をやりなおす。ただし、追認の余地がある(34条2項の類推)。
  3. 冒用者の訴訟追行によって生じた訴訟費用は、70条の類推適用により、冒用者の負担となる。

)判決確定後に冒用訴訟であることが判明した場合
  1. 被冒用者は判決の名宛人として判決の効力を受けるのが原則であり、再審の訴えを提起することができる(338条1項3号の類推適用。[伊藤*民訴v4]113頁)。
  2. ただし、当事者の一方が、相手方の権利を害する意図の下に、相手方が訴訟手続に関与することを妨げるなどの不正な行為を行って確定判決を不正に取得するなど、その行為が著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合には既判力は制限されるとの法理[1]により、被冒用者に判決の効力は及ばないとする余地がある(当事者の確定基準の問題というより、115条1項1号の解釈問題である)。この法理の適用が肯定される場合には、再審の訴えにより取り消される以前においても、被冒用者は判決の効力を否定することができる。例えば、上記の設例2で、前訴の請求棄却判決を再審の訴えにより取り消さなくても、Xは貸金返還請求の訴えを提起して勝訴判決を得ることができる(後訴の口頭弁論の終結間際に、Yからの主張により前訴判決の存在があきらかになった場合に、このことは重要である)。逆に被告の氏名が冒用された場合には、請求異議の訴え(民執法35条)や判決無効確認の訴えを提起できる)。しかし、この法理により判決の効力が被冒用者に及ばない場合でも、判決が形式的に存在することにより被冒用者の法的地位は不安にさらされるので、再審の訴えも許される。
  3. 冒用者には判決の効力は及ばないのが原則である。また、設例1のような離婚訴訟における氏名冒用の場合には、離婚判決の効力を冒用者に及ぼしても無意味である。しかしそれでも、例外的に、冒用行為の効果として、冒用者が被冒用者に代わって判決の効力を受ける場合があることは認めておくべきであろう。

行動説による取扱い
行動説に従えば、冒用者が当事者であるので、判決の効力はこの者に及び、被冒用者には及ばない。その点で被冒用者の手続負担が軽くなるが、冒用の事実は何らかの訴訟で確定せざるを得ず、再審の訴えによらせるのと大差はなく、むしろ、行動説を貫徹すれば被冒用者は上訴や再審の訴えにより救済を求めることができなくなるという問題が生ずるとの指摘もなされている([伊藤*民訴v4]114頁注7)。もっとも、再審の訴えの管轄は専属的であるので、例えば、氏名を冒用された債権者が提起する債権取立ての訴えの管轄裁判所と再審の訴えの管轄裁判所が異なる場合には、再審の訴えの提起が被冒用者にとって負担が重くなることもありうる。また、被冒用者が冒用訴訟において下された確定判決に気付かないまま訴えを提起して、例えば控訴審になって相手方からその確定判決の存在が主張された場合に、再審の訴えにより確定判決の取消しが必要であるとすれば、従前の訴訟手続が無駄になり、被冒用者にとって負担が極めて重くなることがある。ただ、これらの問題が行動説を採らなければ解決できない問題かいうと、そうではない。前述のように、実質的表示説にしたがっても、かなりの程度解決できる問題である。

規範分類説による取扱い

設例2の前訴について言えば、行為段階では、原告は被冒用者Xである。表示説による()1の取扱いは、そのまま妥当する。評価段階では、判決がなされてもその既判力は被冒用者に及ばない(表示説による()2の取扱いと比較して、要件が緩やかになる)。しかし、自己を当事者とする判決が存在する以上、Xはその取消しを求めて再審の訴えを提起できる。

3 表示の訂正と任意的当事者変更


設例  吹田市山田99丁目99番99号に主たる営業所のある山田鋼業物産株式会社(代表者A)に商品を売却したXは、その代金の取立てのために、訴えを提起したが、訴状には、被告の会社名を山田鋼業株式会社(代表者A)と書いてしまった。

 Xは、訴状の当事者欄における被告の表示を山田鋼業物産株式会社に変更することができるか。その変更は、どのような意味をもつか。

原告が本来当事者とすべき者を訴状に正しく表示しなかった場合に、正しい表示に変えることを、広く「当事者の表示の変更」と呼ぶことにしよう。これには、次の2つが含まれる。

 (表示の訂正  表示の変更前と変更後とで当事者が同一の場合。この場合には、訂正は誤記の訂正としていつでも許される。典型的には、上記の設例において、吹田市山田99丁目99番99号には山田鋼業株式会社が存在しない場合である。表示の訂正の場合には、手続のやり直しは必要ないのが通常である。

  山田鋼業物産 山田鋼業
販売先
×
販売当時の代表者
訴え提起当時の代表者
 (任意的当事者変更  表示の変更前と変更後とで当事者が異なる場合。例えば上記の設例において、吹田市山田99丁目99番99号に山田鋼業株式会社も主たる営業所を置いていて[11]、同社の代表者は、Xが山田鋼業物産株式会社に商品を販売した当時はBであったが、その後に両社の代表者が入れ替わり、訴え提起当時の代表者はAであるとしょう。この場合に、Xが被告の表示を「山田鋼業株式会社 代表者A」から「山田鋼業物産株式会社 代表者B」に変更することは、単なる誤記の訂正というわけにはいかない[16]。この場合には、当事者の表示の変更は、当事者(被告)の変更をともなう。旧被告に対する訴訟を新被告に引き継がせる形で当事者を変更することができるかが問題となる。法律がそのような効果をもつ当事者変更を認めている場合を法定当事者変更というが、上記の例はこれに該当しない。上記の当事者変更は、法律の規定に基づかない変更であり、任意的当事者変更と呼ばれる。従前の被告の利益と新たに被告とされる者の利益の保護のために、どのような要件の下で許容するかが問題となる。後述する。

4 死者名義訴訟


死者を当事者として表示した訴えが提起される事情は様々である。次のような場合が想定される([梅本*民訴v4]99頁以下参照[4]):

)原告側について、
  1. 時効の完成あるいは出訴期間の満了が切迫しているために、死者の周辺の者がとりあえず死者名義で訴えを提起して、その後に相続人を探し出して、相続人に訴訟を引き継がせる場合
  2. 一定の地位に基づく請求について、その地位にあった死者の相続人が、その地位の承継手続に時間を要するために、取り合えず死者名義で訴えを提起する場合
  3. 弁護士に訴訟委任をした後に委任者が死亡し、弁護士がそれに気付かないまま訴えを提起した場合

 ()被告側について
  1. 被告の死亡に気付かないまま原告が訴状を裁判所に提出した場合
  2. 訴状提出後・送達前に被告が死亡した場合
  3. 原告が被告とする予定であった者の死亡を知りながら、相続人の存否もしくは所在の不明のため、又は相続人が極めて多数であるために、ひとまずその者(死者)を被告として訴えを提起し、その後に相続人を探索しようとする場合

不在者のための財産管理人が介在する場合については、今立ち入る余裕はないので、それ以外の場合を想定して、一般的に考えてみることにしよう。

設例  Xが訴訟代理人を選任して、Yに対する訴えの提起を委任した後で死亡した。訴訟代理人は、それに気付かないまま、訴えを提起した(下記の図のaの段階でXが死亡した)。この訴訟は、どうなるか。
 +Xが訴訟代理人を選任して、Yに対する訴え提起を委任する
 | (a)Xが死亡する
 +訴訟代理人が訴状を裁判所に提出する
 | (b)
 +訴状がYへ送達される
 | (c)

この問題を考えるにあたっては、当事者が訴状送達後に死亡した場合(cの時点での死亡の場合)から遡って考察していく方がよい。キーとなるのは、訴訟係属の概念であるので、これを先に説明しておこう:訴状が被告に送達された時点で、原告・被告・裁判所の3者間に訴訟法律関係が成立し、裁判所が訴えに対して原則として判決で応答すべき状態が発生する。この法律関係の成立を訴訟係属という;この訴訟法律関係上の地位(原告又は被告という地位)は、相続人による承継の対象となり、相続人が「当事者の地位を承継」したとき、彼は「訴訟を承継」したという(訴訟承継)。

訴訟係属後の死亡の場合(c)──訴訟承継
訴訟係属後に当事者が死亡した場合には、相続人が当事者たる地位を承継するが、彼が実際に訴訟活動ができるようになるまで訴訟手続が中断する(124条1項1号)。しかし、訴訟代理人がいる場合には、訴訟代理人は相続人のための代理人になるとしておけば(58条1項1号。民法111条1項1号の例外である)、訴訟手続を中断する必要はないので、そのまま訴訟は進行する(同2項)。

訴状提出後・訴訟係属前の死亡の場合(b)──訴訟承継の拡張
訴訟承継は、訴訟係属後に認められるのが本来であるが、訴訟係属前でも、訴状提出後であれば、原告死亡の場合と被告死亡の場合とを区別することなく、訴訟承継を認めるのが多数説である[17]。しかし、原告死亡の場合と、被告死亡の場合とに分けて考察するのがよい。

原告側死亡の場合  相続人は、被相続人が訴状を裁判所に提出することにより裁判所と被相続人との間で生じた訴訟法律関係における原告の地位を承継する。この地位の承継は、次の2つの点で重要である。
訴訟手続は、124条1項1号により中断する(124条は訴訟係属後にのみ適用があるとの立場に立てば、その類推適用)。ただし、中断の効果を定める132条との関係で、次の点に注意しなければならない。
被告側死亡の場合  被告については、訴状送達前には、承継されるべき訴訟上の地位はなにも形成されていないから、訴訟承継は認められない[20]。
訴状提出前の死亡の場合
原告側死亡の場合  (α)冒頭の設例のように原告が訴訟委任後に死亡した場合には、訴訟代理権は委任者の死亡によっては消滅せず(58条1項1号。民111条1項1号の特則である)、訴訟代理人のなす訴状提出行為の効果は、被代理人である相続人に及ぶ。訴状提出後に訴状における当事者の表示を変更することは、単なる表示の訂正として扱われる(最判昭和51.3.15判時814-114)。 (β)法定代理人が本人の死亡に気付かずに本人を原告とする訴状を提出した場合にも、同様に扱われる。36条1 項・58条1項は、「法定代理人または訴訟代理人の訴訟行為の効果が実質上死亡者の相続人に帰属することを容認する」ものと解すべきだからである(最判昭和28.4.23民集7-4-396)。ただし、訴訟代理権と異なり、法定代理権は本人の死亡により当然に消滅するから、反対の結論(法定代理人による訴状提出の効果は相続人に及ばないとの結論)も容易に根拠付けられ得ることに注意する必要がある。 (γ)原告本人が訴状を作成して裁判所に向けて発送したが、被告に送達される前に死亡した場合には、相続人は、訴状を提出した原告の地位を承継し、訴訟手続の中断・受継の規定が類推適用される(前述参照)。

被告側死亡の場合  (α)訴状審査の段階で、訴状の記載自体から被告の死亡が明らかになれば、裁判長は訴状の補正を命じ、補正がなされなければ、訴状を却下すべきである。新聞報道等から被告の死亡が明らかになった場合にも、訴状の送達不能が確実であるので、補正を命ずる。もっとも、原告が被告の生存を明らかにする資料を提出すれば、送達を試みることになる。 (β)訴状提出前の被告の死亡が訴状審査の段階を過ぎて訴状の送達段階で明らかになった場合は、訴状提出後・訴訟係属前における被告死亡の場合に準ずる。

目次文献略語
1998年6月15日 −2017年5月27日