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民事訴訟法講義
期日・期間関西大学法学部教授
栗田 隆 |
双方の立ち会い | 一方当事者の通信出頭 | 備考 | |
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口頭弁論の期日 | 87条・139条 | なし(ただし、158条・277条に注意) | 不出頭者が放棄・認諾の書面を提出していれば、陳述が擬制される(266条2項) 不出頭者が和解条項案の受諾書面を提出していれば陳述擬制がなされる(264条) |
弁論準備手続の期日 | 169条1項 | 170条3項・4項。平成15年改正により、通信出頭者は、訴えの取下げ、和解、請求の放棄・認諾もできる。 | 同上(266条3項カッコ書き) |
和解の期日 | (89条+和解の性質) | なし | 同上(266条3項カッコ書き) |
参考人等の審尋期日 | 187条2項 | なし | |
進行協議期日 | 規則95条1項 | 規則96条1項・2項。通信出頭者は、訴え取下げ、放棄・認諾をすることができない(規則96条3項) |
期日の指定
期日は、裁判長が指定する(93条1項)。出頭場所[4]・年月日・開始時刻を明示して指定しなければならない。期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる(93条2項)。
当事者の期日指定申立権
当事者は、期日の指定を申し立てることができる(93条1項)。裁判長は、当事者が指定した日時以外の日時を指定することもできる。なお、口頭弁論期日の指定申立ては、審理の続行の申立ての趣旨を含み(263条参照)、これを却下することは、訴訟手続の進行ないし続行を拒否することを意味するので、裁判所が決定によりなす。和解や訴えの取下げなどによりすでに終了していると裁判所が考えている事件について、当事者から期日指定の申立てがあった場合には、それらの行為の効力を明確にする必要があるので、必要であれば期日を開いて審理の上、裁判所が判決で対応する(これらの行為が無効な場合には、中間判決でその点を明確にして、審理を続行する。有効であれば、訴訟終了を宣言する判決を下す)。
口頭弁論期日の指定の申立てを却下する決定に対して通常抗告(328条)が許されるかについては、見解が分かれている。
弁論準備手続の期日・ 弁論準備手続を経ていない口頭弁論期日 |
最初の期日 | 顕著な事由(3項本文)または当事者の合意(3項但書) |
その後の期日 | 顕著な事由(3項本文) | |
弁論準備手続を経た口頭弁論期日 | すべての期日 | やむをえない事由(4項) |
期日の変更 | 期日の到来前に期日指定を取り消して、新たな期日を指定すること。 |
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期日の延期 | 期日を開いた上で、予定された訴訟行為をすることなく期日を閉じて、新たな期日を指定すること。 |
期日の続行 | 予定された訴訟行為をしてその期日を閉じ、新たな期日を指定すること。 |
期日の変更を希望する当事者は、変更を必要とする事由を明らかにして、変更を申し立てなければならない(規36条)。その事由の証明も必要である([条解*1997a]80頁)。
次に掲げる事由に基づく期日変更は許されない。ただし、1と2については、やむを得ない事由があるときは、この限りではない(規37条)。
期日の呼出し(94条)
呼出方法 | 出頭しない者に対して不利益を課すことができるか |
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呼出状の送達 | できる |
当該事件に出頭した者に対する告知 | できる |
その他相当の方法(簡易な呼出) | 原則としてできない。ただし、期日の呼出を受けた旨を記載した書面を提出したときは、不利益を課すことができる[1]。 |
呼出しがなされたことが確実と言えるか否かにしたがい、出頭しない者に対して法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を課すことができるか否かが異なる(94条2項)。
期日の実施
期日は、指定の日時・場所において行う。口頭弁論の期日は、裁判長が事件を特定して期日の開始を宣言することにより開始し(事件の呼上げ)(規62条)、裁判長が期日の終了を宣言することにより終了する。事件の呼上げは、裁判所と当事者のみならず、公開法廷で傍聴する者にも、どの事件について審理が行われるのかを明確にするために必要である。口頭弁論期日以外の期日では、事件の呼上げは必要ない([条解*1997a]136頁)。指定された場所と日時に会合すること自体により、どの事件について期日が開かれたのかが裁判所と当事者との間で明確になるのが通常だからである(なお、弁論準備手続の期日の傍聴は制限されている。169条2項)。
期日に予定した訴訟行為ができない場合
期日を開いたが、その期日に予定した事項を行うことができない理由は、さまざまである。その理由に従い、適当な措置をとる。
期日の続行
期日に予定された訴訟行為が完了しないときは、その訴訟行為を次回期日において続けて行なうのが原則となるが(期日の続行)、裁判所は、審理の状況を考慮して、予定された訴訟行為を打ち切ることもできる。ある期日に予定された訴訟行為が完了したがさらに審理を続ける必要がある場合にも、新期日を指定する。いずれであるかを問わず、2回目以降の期日を続行期日という(277条参照)。初回期日との区別は、158条との関係で重要である。
「最初の口頭弁論の期日」と「最初にすべき口頭弁論の期日」 93条3項但書きでは、「最初の(口頭弁論の)期日」の語が用いられ、これは、第一回口頭弁論期日として最初に指定された期日をさす。期日が変更された場合に、変更後の期日は含まれないとするのが多数説である。235条ただし書きの「最初の口頭弁論の期日」も同じである。 158条では、「最初にすべき口頭弁論の期日」の語が用いられ、少なくとも一方の当事者が出頭して、現実に期日を実施する最初の期日を意味する。双方不出頭のため弁論が行われなかった期日は除かれる。 このように、「最初の口頭弁論の期日」と「最初にすべき口頭弁論の期日」とは、意味内容が異なるが、同義で用いられる場合もある。例えば、規則61条では、見出しで「最初の口頭弁論期日」が用いられ、1項で「最初にすべき口頭弁論の期日」が使われている。見出しの「最初の口頭弁論期日」は、「最初にすべき口頭弁論の期日」の意味である([条解*1997a]133頁参照)。 |
口頭弁論一体の原則
口頭弁論は、複数の期日にわたって行われても、一体のものとして扱われる(前の期日でしたことは、繰り返す必要がない)。
このように、訴訟を迅速に進行させるために、一定の行為が一定の期間内に限りなしうるものとされている場合に、その期間を行為期間という。当事者その他の関係人の行為に関する期間を固有の行為期間(固有期間・真正期間)と呼び、裁判所の行為に関する期間を職務期間(不真正期間)と呼ぶ。職務期間は、ほとんどが訓辞的なものである(判決言渡しに関する251条など。他方、変更判決をなしうる期間に関する256条1項は訓辞的でない)。
当事者の利益保護のために、裁判所その他の者が次の訴訟行為をなすまでに置かなければならない最小限度の期間を猶予期間という。中間期間とも呼ばれる。例えば、民執規114条1項では、動産の競り売り期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、差押えの日から1週間以上1月以内の日としなければならないと定めていて、この1週間が猶予期間である。
期間の計算
期間の計算は、民法の規定に従う(95条1項)。期間を定める裁判において始期を定めなかったときは、期間は、その裁判が効力を生じた時から進行を始める(95条2項)。期間を定める裁判は、通常、決定または命令であり、原則として告知により効力が生ずるので(119条)、裁判が行為をなすべき者に告知された時から期間の進行が始まり、その日が期間の初日となる。期間の末日の決定にあたっては、初日不算入原則が適用される(民140条)。期間の末日が日曜日、土曜日、1月1日を含む国民の祝日に該当する場合、並びに12月29日から31日までおよび1月2日・3日の年末年始の期間中に当たる場合には、これらの広義の休日(裁判休日)をもって期間を満了させるのは適当ではない。その後にくる最初の非休日(裁判休日以外の日)が満了日になる(95条3項)。例えば、12月16日に第一審判決が送達された場合には、控訴期間の末日は、2週間後の12月30日であるが(95条1項、民140条・143条)、12月30日から1月3日までは裁判休日であるので、1月4日が末日となる。1月4日が土曜日の場合にはさらに延びて、1月6日が末日となる(95条3項)。
当事者の行為期間の分類
当事者の行為期間は、さらに次のように分類される。
通常期間の伸縮の制限
通常期間は裁判所が伸縮できるのが原則であるが、実際には、明文の規定によりあるいは解釈により、例外が認められている。
訴訟行為の追完
当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後1週間以内(外国に在る当事者については2月以内)に限り、不変期間内にすべき訴訟行為を追完することができる(97条1項)[7]。追完は、期間徒過後に追完事由(当事者の責めに帰すことのできない不変期間不遵守の事由)を主張してその行為をすることである。裁判所は、当該訴訟行為の適法性を判断する際に、追完事由の有無を判断する。
当事者の責めに帰することのできない事由として、次のことがある。
公示送達あるいは付郵便送達がなされたために当事者が送達書類を了知することができなかったこと自体は、追完事由にはならない(この理由による追完を認めれば、これらの送達制度が機能しなくなる)。しかし、これらの送達が相手方の過誤によりなされ、それにより生じた期間懈怠の不利益を懈怠当事者に課すのが不公正であると評価される場合には、追完は認められるべきである。
訴訟代理人がいる場合には、責めに帰することのできない事由の有無は、訴訟代理人を基準にして決めるのが原則である。しかし、原告が当該訴訟行為を行為期間内に自らなすことができた事情がある場合には、追完は否定される。
なお、追完期間は1週間と短いために、その始期の認定が重要な問題となる。東京高等裁判所 平成6年5月30日 民事17部 判決・判例時報1504号93頁は、金融機関が連帯保証人に対して提起した保証債務履行請求訴訟において、被告が高齢でその経歴を考慮すれば自ら訴訟追行することは期待できず、また、弁護士を訴訟代理人に選任するだけの資力を有しなかったことを考慮して、控訴の追完期間の始期を、控訴人が法律扶助決定の通知を受けて弁護士に事件を委任しうる状態となった日とした[5]。