関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法講義「期日・期間」の注


注1 実務では、裁判所書記官が当事者に電話で期日の呼出しを通知し、折り返し通知を受けた旨の文書(期日請書)をFaxで提出する(規3条)ことが行われている。[最高裁*1997b]49頁以下、[法務省*1998a]100頁参照。

注2 その形式的理由として、訴訟指揮の対象とならない期間であるということが挙げられている。

注3 [伊藤*1998a]198頁注18は、受送達者の合理的期待の有無によって判断すべきであり、公示送達申立人側の故意・過失はその推認事由として扱われるべきであるとする。

注4  出頭場所は、口頭弁論期日について言えば、法廷の開かれる裁判所またはその支部である。実際に使用する法廷(室)は、出頭場所の特定要素にはならず、期日の呼出しの際にそれを指定しても、使用する法廷の変更は期日の変更をもたらさない。ただ、混乱回避のために、連絡は必要不可欠である([注釈*1997b]195頁(須藤))。

注5  この判決は支持してよいであろう。追完期間の始期の認定に当たって、どの範囲の要素まで考慮すべきかは難しい問題である。法文上は、当事者の生活状況や請求の特質は考慮事項となっていないのは確かである。しかし、追完を認めないと被告たる高齢者の持家が売却され、その生活が破壊し、生活維持が社会の負担になることが予想される場合には、追完期間の徒過を責めるよりは正しい裁判を実現するほうが良く、その方向で追完期間の始期が認定されることになろう。

もっとも、判決が被告本人に交付送達されていた場合に、法律扶助を受けなければ訴訟代理人に訴訟追行を委任することができないほどに困窮しており、控訴提起期間満了までに法律扶助の決定を受けることができなかったことが追完事由となりうるかという疑問は残る。しかし、訴状の交付送達を受けていた場合には、第1回口頭弁論期日までに法律扶助の決定を受ける十分な時間的余裕は通常はあろう。他方、訴状を受領しておらず、判決の交付送達により初めて訴訟が開始されていることを知った場合に、控訴期間内に法律扶助の申請をしたにもかかわらず控訴期間経過後にやっと扶助決定を受けたのであれば、事案に従い、追完を求めてよいであろう。ともあれ、この判決が救済的色彩を帯びているのは確かである。

注6  一般にこのように説明されているが、第一回期日の指定にあたって、原告の都合を聴くことは可能であろう。しかし、原告の都合を考慮して第一回期日を決定した場合でも、被告の都合だけで期日を変更すると、今度は原告の都合が無視されることになりかねないから、結局、当事者の合意または顕著な事由の存在を第一回期日の変更の要件とすべきことになる。

注7  特別の規定

注8  不変期間の語は、裁判所に対する行為について用い、当事者間の行為については用いない。132条の2第1項の提訴前照会期間と132条の4第2項の証拠収集処分の申立期間とを対照。