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民事訴訟法講義
判決の効力 4関西大学法学部教授
栗田 隆 |
法的性質
この判決の法的性質については、基本的な結論に差異をもたらさない次の3つの見解がある([竹下ほか*1996a]1112号121頁以下参照)。
いずれの見解をとるにせよ、実質的な議論は、原判決で考慮されたのとは異なる事態が生じた場合に、原判決による紛争解決を部分的に放棄して新しい事態に即した新たな紛争解決を図ることをどの範囲で認めるかと言うことであり、既判力の時的範囲・客観的範囲の問題が主たる論点となる。
変更の範囲は、訴え提起の日以後に支払い期限が到来する定期金に係る部分に限定され、また、変更前の判決と変更後の判決とで内容が共通する範囲では、判決主文の構成のいかんに関わらず、変更前の判決の正当性は維持される。定期金の増額を求める場合には、原判決で裁判された請求の趣旨の拡張を伴う。
適用範囲
具体的な適用範囲をみておこう。(a)この訴えは、過去の不法行為に基づく既発生の損害の賠償を命ずる場合に限られる。将来の不法行為に対する損害賠償については、追加請求が認められているので、本条の対象外となる。(b)人身事故のため介護が必要となった場合の介護費用は、定期金賠償によく親しむ。物価の上昇による介護費用の上昇は、判決変更の理由となる。(c)他方、被害者がその事故とは別の原因で死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用は、人身事故による損害として請求することができない(最高裁判所
平成11年12月20日 第1法廷 判決(平成10年(オ)第583号))ので、死亡は、給付請求権の消滅事由となる[1]。変更の訴えによるまでもなく、請求権消滅を請求異議の訴え等により主張できる考えるべきであろう。
裁判管轄 複数の裁判所の存在を前提にした、裁判権行使の分担の定め。 国内裁判管轄 一つの国の中での裁判権行使の分担の定め 国際裁判管轄 各国の裁判所が裁判権を行使することができる事件の範囲 直接管轄 各国が定めている自国の裁判所の国際裁判管轄(自国の裁判所が裁判権を行使することができる事件の範囲の定め) 間接管轄 外国判決の承認の要件要素としての国際裁判管轄 |
我が国の公序良俗に反しないこと(3号) 判決内容のみならず訴訟手続も日本の公序良俗に反しないことが必要である(判決の成立についても、3号の適用がある。最高裁判所 昭和58年6月7日 第3小法廷 判決(昭和57年(オ)第826号))。外国判決の承認に関して特に問題となるのは、アメリカ合衆国内の裁判所が下した懲罰的損害賠償を命ずる判決である。懲罰的損害賠償を命ずる部分は、日本の公序に反するので承認されない(最高裁判所 平成9年7月11日 第2小法廷 判決(平成5年(オ)第1762号))。しかし、訴訟費用の負担についてどのように定めるかは、各国の法制度の問題であって、実際に生じた費用の範囲内でその負担を定めるのであれば、弁護士費用を含めてその全額をいずれか一方の当事者に負担させることとしても、民訴法118条3号所定の「公の秩序」に反するものではない(前掲最判平成10年)。
相互の保証があること(4号)
当該判決等をした外国裁判所の属する国において、我が国の裁判所がしたこれと同種類の判決等が、同条各号所定の要件と重要な点で異ならない要件の下で効力を有するものとされていることを意味する(判決国承認要件が118条条の要件と同等又はそれより緩やかであることは必要ない。前掲最判昭和58年)。
外国判決の効力が判決手続内で問題になる限りは、判決手続内で承認要件の存否を判断すれば足りる。しかし、外国判決に基づいて執行する場合には、執行手続内で承認要件の存否を判断することはできず、予め執行判決と呼ばれる特別の判決を得てこれと当該外国判決とが一体となって強制執行の基礎となる債務名義になる(民執24条)。