注関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法講義「判決の効力1」の注


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注3 かつては自己拘束力も含めて覊束力ということもあったが、現在では少ない。

注4 登記手続に協力することを命ずる判決は、登記所に登記申請に必要な意思表示を命ずる判決であり、給付判決である。その判決の内容の実現は、意思表示の擬制によりなされ(民執173条)、原告がその判決を添付して単独で登記申請すれば、判決で命じられた登記手続がなされる(不登法63条)。そこでは、執行機関が介在する必要はないので、これをもって広義の執行といい、その判決は広義の執行力を有するという([新堂*1998a]621頁)。

注5 行政処分の取消・変更を命ずる判決の仮執行宣言も認められない。行訴法33条にいう判決は、確定判決を意味し、これに限られると理解すべきである。原告の利益の保護は、行政処分の執行停止の決定により図るべきである(行訴25条)。

注6 旧法についてであるが、林淳「仮執行宣言の理論」講座民事訴訟(6)261頁参照。訴訟費用の負担の裁判自体は、負担割合を定めるだけであり、債務名義とならないが、71条1項が「負担の裁判が執行力を生じた後」と規定しているので、仮執行宣言により広義の執行力が生じた場合も含まれると解される。

注7 その他に、行訴法25条7項をあげることができる。

注8 債務名義に基づく強制執行を許さないとの判決を求める訴えを請求異議の訴えという(民執法35条)。異議を認容する判決を下す場合に、即時に執行を停止させるためには、その判決の中で、執行停止を宣言するだけでは足りず、執行停止の裁判に仮執行宣言を付すことが必要である(判決は確定しないと内容的効力を生じないのが原則だからである)。この執行停止の裁判は、被告に一定の行為を認める裁判とは言い難く、これに認められる効力も通常の意味での執行力ではないが、判決に含まれたこの裁判の効力を判決確定前に発生させるために仮執行宣言を付すのである。

注9 広義の執行力は、狭義の執行力を含まないものとして定義されることが多いが、狭義の執行力を含むものとして定義する文献もある(例えば、[伊藤*民訴]504頁は、広義の執行力を給付判決にも肯定している)。

注10  なお、弁済効肯定説の論拠として、債務者が仮執行免脱担保(259条3項)を提供した場合には、債権者はその担保に質権を取得し、倒産になっても別除権ないし更生担保権として保護されることとの対比を挙げるのは適当ではなかろう。仮執行免脱担保は、執行遅延による損害の担保でしかなく、執行債権そのものの担保ではないと理解されているからである。

注11  主観的予備的併合の場合に、第一審は主位請求を認容したが、控訴審は予備請求を認容するときには、もちろん、260条2項の適用がある([注釈*1998b]256頁(本間))。

注12  このサイトの小さな判例集から例をあげておこう。

注13  更正決定も、告知により効力を生じ(119条)、告知の時から即時抗告期間が進行する。判決言渡後・判決正本送達前であれば、判決の原本及び正本に更正決定を付記し(規則160条1項前段)、判決正本の送達により告知がなされたことになる。判決正本の送達後であれば、当事者から正本を回収して付記することが必要であり、付記された正本を再送達することにより告知がなされる。当事者に渡された正本を回収することが容易ではないとき、その他裁判所が相当認めるときは、更正決定書を作成し、決定書を当事者に送達することも認められている(規則160条1項後段)。この場合には、更正決定書の原本を訴訟記録に添付し([条解*1997a]335頁)、したがって、更正決定を判決書原本に付記することは必要ない。

注14  この場合に、控訴審は第一審判決を取り消す必要がないとするのが最高裁の立場である。最判平成1・9・19判時1328-38・[百選*1998a]74事件]。私は、原判決を取り消すべきであると考えるが、いずれにせよ、本文に述べた理由により、260条2項は適用がないとすべきである。