by SIFCA
|
破産法学習ノート2
破産配当関西大学法学部教授
栗田 隆 |
by SIFCA
|
1 概説 2 中間配当 3 最後配当 4 追加配当
練習問題
破産配当に関する 文献 判例
意義 破産手続における配当(破産配当)とは、法定の手続を経て債権者に破産法所定の平等的満足を与えることである。
配当表
配当は、誤りが生じないように、配当表を作成し(196条1項)、破産債権者に意義を述べる機会を与え、必要な是正をした後の配当表に基づいて行われる。
配当の種類
通常の配当を時間的順序にしたがって分類すると、次のようになる。
最後配当ができる場合の特種配当として、次の2つがある。
現在の実務(精確には、2013年頃の大阪地裁の実務)では、ほとんどの事案で簡易配当が利用され、わずかな事案で同意配当がなされ、最後配当は例外的な取扱いになっているとのことである([野村*2013a]43頁)。
支払場所
配当額(配当金)の支払場所は、破産管財人が職務を行う場所である(193条2項本文。取立債務)。ただし、合意で変更することができ(同項ただし書)、しばしば、破産債権者の費用負担において口座振込みの方法で支払うことが合意される。なお、破産債権者が配当額を受け取らない場合には、破産管財人は配当額を供託する(202条3号。弁済供託)。
実務と立法的提案 なお、僅少配当金の受領意思の届出の規定(111条1項4号)はあるが、届出をしない債権者がいると(換言すれば、僅少配当金を放棄する債権者がいると)、2種類の配当表(僅少配当金が生ずるか否かの判定のために一つ、僅少配当金が生じた場合にその配当を省略した配当表がもう一つ)を作成する必要があり、手間がかかるため、実務では僅少配当金受領の申出を不動文字で記載した破産債権届出書を破産債権者に送付して破産債権の届け出をさせることがあるとのことである。このことと、配当金の支払が口座振込みの方法でなされていることを考慮すると、口座振込費用は破産財団の負担にして、配当金支払を簡素化する方がよいとの立法的提案がある([野村*2013a]44頁)。
破産債権者表への記載
破産管財人は、配当をしたときは、配当額を破産債権者表に記載する(193条3項)。ここでいう「配当」は、まず「配当額の支払」を意味する。「寄託」は、これに含まれない。最後配当の段階では配当額が供託されることがあり(209条3項)、この供託も「配当」に含まれる。中間配当の段階では、供託はなされない(209条3項が202条を準用していないことに注意。ただし、破産管財人が弁済供託をすることが適切と判断する場合に、それをすることは許されよう)。
受戻証券のある債権については、各受戻証券に関する法令に従い当該受戻証券に弁済の事実を記載する(手形法39条・77条1項3号、小切手法34条等。[小川*2004a]277頁参照。電子記録債権については、電子記録債権法25条参照[9])。
配当の順位(194条)
破産法は、実体法上の要請等を考慮して、破産債権に次のような順位を設けている。先順位債権に配当して余剰があれば、それを後順位債権に配当する。 同順位債権間では、金額に応じて比例配分される。劣後的破産債権にまで配当がなされることは稀であるが、絶無ではない。
破産財団に属する財産の全部の換価が終了したものと認められた後になされる配当を最後配当という。
裁判所は、破産管財人の意見を聴いて、あらかじめ、最後配当をすべき時期を定めることができる(195条3項)。破産管財人に換価終了の時期の目標を与えるためであり([小川*2004a]281頁以下参照)、裁判所の監督権(75条1項)の一つと位置づけることができる。換価に難渋する財産があれば、定められた時期に最後配当をすることができないこも生じうるが、それはいたしかたない(配当が遅れたことのみで破産管財人が制裁を受けることはない)。
最後配当の手続の概略
最後配当の許可(195条2項) ↓ 配当表の作成と裁判所への提出(196条1項) ↓ 配当の公告または個別通知の届出(197条1項) ↓ 除斥期間(198条1項)=公告等から2週間 配当表の更正(199条) ↓ 異議申立期間(200条1項)=除斥期間の経過から1週間 配当額の定め(201条1項)と各破産債権者への通知(7項) 管財人に知れない財団債権の除斥(203条) ↓ 配当の実施(配当額の支払(193条2項)と供託(202条)) 配当の実施を破産債権者表に記載(193条3項) |
配当表の作成(196条)
破産管財人が作成する。 配当表には、次の事項が記載される。
用語法 ここで、「配当手続に参加する」は、「配当表に記載される」と同義である。193条2項の「配当を受ける」は、「配当額(配当金)を受け取る」を意味する。配当手続に参加できても、配当を受けることのできない債権もある。例えば、異議等のある債権は、債権確定のための手続が開始されていることが配当表作成時に証明されていれば配当手続に参加することができるが、配当を受けることができるか否かは、訴訟の結果に依存する。 また、破産法では、個々の破産債権に配当される金銭の意味で「配当額」(202条柱書など)の語を用いている(「配当金」の語は用いられていない)。「配当することができる金額」(196条1項3号・204条1項1号)は、「各配当において破産債権者全体に支払われる金額」(配当財団)を意味する。これと「配当をするのに適当な破産財団に属する金銭」(209条1項)とは、基本的に同義である。
別除権の不足額(広義)
破産債権のために別除権が存在する場合には、破産債権者は別除権の行使によって回収することができない部分(不足額)についてのみ破産財団から比例的満足を得ることができる(「不足額主義」。破産財団からみると不足額についてのみ責任を負うという意味で、「不足額責任主義」ともいう)。別除権を実際に行使して回収することができなかったことにより確定する不足額のみならず、担保権の放棄あるいは被担保債権の範囲の減縮により不足額となることが明らかな部分についても、破産財団から比例的満足を得させてよいと考えられる。これを前提にして、破産法は、破産財団から比例的満足を受けることができる不足額について、198条1項において、「担保権によって担保される債権の全部若しくは一部が破産手続開始後に担保されないこととなった」部分という幅広い表現を用いている。
別除権者が破産財団から比例的満足を受けることのできる不足額を「広義の不足額」と呼ぶことにしよう。次のものがこれに該当する。
1と2については、別除権者が最後配当手続に参加するためには証明が必要である(2aについては、権利放棄等の法律行為がなされたことの証明も必要である)。登記が担保権の対抗要件になっている場合に、登記も必要かは解釈に委ねられている([小川*2004a]286頁))。これに対して、3については、根抵当権者が別段の証明をしなくても、極度額は登記簿に記載されているので特段の証明活動は必要ない。根抵当権者は、最後配当の除斥期間内にこの不足額を超える不足額(1又は2による不足額)を証明しなければ[1]、極度額超過部分についてのみ最後配当手続に参加することができる(その余の不足額は除斥される)。
なお、196条3項・198条3項・4項は、中間配当に準用されていないことに注意する必要がある(209条3項参照)。担保権を放棄した場合は別として、中間配当の手続に参加するためには、根抵当権者もその他の担保権者も、担保権の目的財産の換価に着手していることを証明しなければならない。もっとも、中間配当で除斥されても、最後配当の段階で他の債権者に先だって配当を受けることができる(213条2文。ただし、中間配当後に財団不足になると、配当を受けることができない)。
別除権者・準別除権者の換価責任
抵当権の放棄あるいは被担保債権の減縮の意思表示による不足額の確定は、担保不動産が破産財団に属している場合には、問題ない。しかし、担保財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属さなくなった場合(65条2項)については問題である。この場合には、担保権が実行されることを前提にして安価に換価されているものと想定され、その想定が成立する限り、別除権者は別除権行使により不足額を確定させなければならないと解すべきである。理由付けは若干異なることになるが、準別除権者(108条2項)についても同様に解すべきであろう。
別除権放棄の時期的制限
別除権者が配当を得るためにする別除権放棄は、最後配当の除斥期間内になせばよいというのが原則である。しかし、固定資産税等の関係で財団からの不動産放棄が最後配当の除斥期間満了前になされる場合がある(破産者が個人の場合には、破産者のために放棄することができる。それ以外のばあいについては見解が分かれる[4])。この場合には、不足額について配当を得るための別除権の全部または一部放棄は、それ以前になされるべきである。別除権の放棄があっても、別除権の対象財産を破産管財人が換価して配当原資にすることができないからである。したがって、破産管財人が超過負担状態にある財産を最後配当の除斥期間満了前に放棄する場合には、その旨を別除権者に予め通知すべきである。破産規則56条後段では、破産者が法人である場合に限って、不動産放棄の通知を放棄の2週間前までに別除権者に通知すべきことを規定しているが、通知の必要性は、破産者が個人の場合でも代わらないはずである[3]。
なお、私見は破産者が法人である場合に、破産管財人が破産財団所属の不動産を破産財団から放棄することは、その不動産を現実に管理することのできる者がいる場合に、その者に対する放棄意思表示によりなすべきであるとの立場である。そのような者が存在すればよいが、通常は存在しないので、裁判所の許可を受けただけでは放棄はできない。
根抵当権者のみなし不足額
根抵当権の見なし不足額を算定するにあたっては、破産手続開始後に生ずる遅延損害金も考慮すべきであるとの政策的効力に基づき、次の式で算定されるべきものとされている(196条3項2文)。
これは、根抵当権の実行により不足額が確定する場合には、法定弁済充当の規定(民法489条以下)に従い、元本よりも先に、競売手続における配当時までの損害金に弁済金が充当されることとのバランスをとるためである([小川*2004a]288頁以下参照)。
[劣後的破産債権部分]が[極度額]を上回ることはほとんど生じないであろうが、もしそのような事態になった場合には、[劣後的破産債権部分]から[極度額]を控除した金額は、劣後的破産債権であるので、普通破産債権として最後配当をうけることができる金額は、[最後配当許可日の債権額]とである。
設例 AのB(会社)に対する債権の担保のために、B所有の不動産(時価5000万円)に極度額を4000万円とする根抵当権が順位1番で設定された。その後Bについて破産手続が開始され、開始当時の被担保債権額は4000万円であった。それから半年後にAが競売を申し立てたが、売却基準価額が3000万円に決定された(民執法60条1項)。売却手続が進まないうちに破産管財人から最後配当の通知(197条1項)を受けた。破産手続開始時から最後配当の許可が与えられた時点までに、遅延損害金が400万円増加していた。最後配当の除斥期間内には、売却は完了しそうもない。Aは、競売手続で2400万円は確実に回収できるだろうと見込み(民執法60条3項参照)、直ちに極度額を2400万円に減縮し、その登記を経由した。そして、「(最後配当の)許可があった日における当該破産債権のうち極度額を超える部分の額」(196条3項2文)は、4400万円から2400万円を控除した2000万円であるので、不足額を2000万円として配当表に記載することを破産管財人に求めた。除斥期間満了の前日のことであった。破産管財人がこれに応じて配当表を更正した(199条1項3号)。その後、担保不動産は、意外にも高く売れ、手続費用を控除した残額が4000万円になった。競売裁判所は、2400万円を交付し、後順位債権者がいないため、残額の1600万円を破産管財人に交付した。破産手続終結決定がなされる前日のことであった。破産管財人は、1600万円をもって追加配当を行うことにした。
破産管財人が追加配当になる事態を避けようと考えているのであれば、彼は早い段階で任意売却についてAと交渉するなり、担保権消滅請求をすることになり、通常は、そうするであろう。この設例は、条文の適用を説明するための設例である。
普通抵当権の被担保債権の利息部分 普通抵当権(根抵当権でない抵当権)については、利息や損害金は、満期となった最後の2年分のみが担保される(民法375条1項・2項)。担保権実行により得られた配当原資から、まず損害金に弁済充当され、次に利息に弁済充当され、それから元本部分への弁済に充当される(損害金と利息とを通算して2年分を超えることはできない)。この充当の順序は、普通抵当権でも根抵当権でも同じである[CL4]。例:
配当表に記載される債権
破産管財人は、「最後配当の手続に参加することのできる債権」を配当表に記載する。次のものがこれに該当する。
次の債権は、異議等を解決するための手続の係属を証明すれば配当表に記載されるが、そうでなければ配当表に記載されない(198条1項)。
次の債権は、債権調査手続において異議なく確定していても、破産管財人が配当表を作成する時点で所定の条件が満たされていなければ、「最後配当の手続に参加することのできる債権」とは言えず、配当表に記載されない(198条)[5]。
配当原資(196条1項3号)
換価金から次のものを控除した金額が最後配当に充てられる
配当の公告等(197条)
破産管財人は、作成した配当表を裁判所に提出する。その後、遅滞なく、配当の手続に参加することができる債権の総額及び最後配当をすることができる金額を破産債権者に知らせる。その方法には、次の2種類があり、破産管財人が選択する。
周知方法 |
除斥期間の起算点
|
|
公告 | 官報に掲載し、掲載のあった日の翌日に効力が生ずる(10条1項・2項)。全ての破産債権者との関係で一律に公告の効力が生ずるので簡便である。 | 公告が効力を生じた時 |
通知 | 通知が実際には届かない場合あるいは遅れて到達する場合もありうるので、「通常到達すべきであった時」に到達したものとみなす旨が規定されている(2項)。届出をした各破産債権者に通常到達すべき期間が経過したときは、破産管財人は、遅滞なく、その旨を裁判所に届け出る(3項) | 破産管財人が裁判所に3項の届出をした時 |
最後配当の除斥期間は、上記の起算点から2週間である。起算点は、大まかに言えば、「届出をした破産債権者に債権総額と配当総額の周知を期待することができる時」ということができる(ただし、官報に掲載された公告を全ての破産債権者がその効力発生時に見ていることを期待するのは、過剰な期待である。前記の表現は、大まかな表現にすぎない)。
この公告等は、配当手続に入ったことを破産債権者に知らせ、除斥される可能のある債権者に権利行使を急がせることに意味がある。その点からすれば、債権届出をしていない破産債権者にも知らせることができる点で公告の方が好ましいと言うことができる。しかし、(α)公告の実際の周知機能は低く、また、(β)一般調査期間の経過後又は一般調査期日終了後の債権届出は、債権者の責めに帰すことができない事由がある場合に、その事由の消滅後1月内に制限されており、これに該当する未届出債権者は少ないと予想され、未届出債権者に周知させる必要性は低い。そこで、配当手続に入ったことを知らせる方法として、届出債権者のみへの通知の方法でもよいとされた([植垣=小川*2005a]282頁)。
配当表の更正(199条)
次の事由が除斥期間内に生じたときは、配当表を更正する。
配当表に対する異議(200条)
破産管財人が作成した配当表に誤りがある場合、あるいは配当表が更正されるべきであるにもかかわらず更正されない場合に、配当表の記載に不服のある届出破産債権者がその是正を求めることができるように、次の不服申立制度が用意されている。
配当表を更正すべき事由のうち、(α)債権確定のための手続の係属の証明、及び(β)不足額等の証明及び債権確定のための手続において破産債権の不存在あるいは金額が確定したことは、比較的形式的な事項であり、異議手続と即時抗告手続のなかで決着をつけてよい。しかし、(γ)停止条件の成就は形式的事項とは言えず、最終的には判決手続により決着が付けられるべきである。
停止条件成就の異議事由 停止条件付債権者は、破産管財人が配当表を作成する前に条件が成就している場合には、破産管財人にその事実を証明して、自己の債権が配当表に記載されることを求めることが望ましい。しかし、破産管財人がそれに応じない場合、及び破産管財人による配当表の作成後に停止条件が成就した場合には、配当表に対する異議申立てにより、その是正を求めざるを得ない。問題は、これらの場合(特に後者の場合)に、異議事由として何を主張させるべきかである。選択肢としては、(α)停止条件の成就だけでよいとするか、又は(β)停止条件の成就の証明資料を破産管財人に提出したが破産管財人が不当にもそれを認めなかったことが必要であるとするか、さらに進んで、(γ)停止条件成就により破産債権が行使しうることの確認(あるいは、原告が行使しうる破産債権を有することの確認)を求める訴訟を提起したことまで必要とすることが考えられる。最後配当の除斥期間の満了日に停止条件が成就する場合のことを考慮すると、後2者の選択肢を採用することは困難であろう。第1の選択肢を採用すべきである。これを前提にすれば、停止条件付債権者は、除斥期間内に停止条件が成就したことにより配当表が更正されるべきであることを異議事由にして、異議を述べることができ、その異議手続の中で裁判所は条件成就により破産債権が行使できるものになっていることの確認訴訟を提起すべき期間を指定し、その期間内に訴えの提起がなければ異議を却下し、指定期間内に訴えが提起されたことが証明された場合には、配当表の更正を命ずるべきである。その後の手続は、異議等のある破産債権について債権確定のための手続が係属した場合と同じである。
配当額の定めと通知(201条)
異議手続終了後に、破産管財人が配当額を定める(1項)。
配当総額は、次の金額の合計額になる(2の金額はマイナスになることもある)。
最後配当手続に参加する債権者及び破産債権額は、異議及び即時抗告を経て更正された債権者表に記載されているものになる。破産管財人が作成した配当表と比較すると、次の増減が生ずる
配当調整
次の2つの債権者については、他の債権者の満足率と等しくなるように、配当調整が行われる。
中間配当後の財団不足
中間配当後に財団財産が不足し、最後配当のための金銭が確保できなかったときの措置については、次のように見解が分れている。
次の問題の解決のために、 B が妥当である。
破産手続は、破産者の乏しい財産を破産債権者に公平に分配する手続であり、手続コストを削減して破産債権者への配当額を少しでも増やすことが要請される。そこで、公平性に重点をおいた重厚な手続である最後配当に代わるものとして、簡易配当の制度も用意されている。
要 件
破産管財人は、195条1項の最後配当をすることができる場合に、裁判所書記官に簡易配当の許可を申し立てることができ、裁判所書記官は、次のいずれかに該当するときは、これを許可することができる。
中間配当をした後では、簡易配当を許可することができない(207条)。中間配当を行うのは、破産財団の規模が大きく、財産の換価に時間がかかる場合であり、そのような場合は、簡易配当になじまないからである。
3号許可の取消し 簡易配当手続、配当表に対する異議についての裁判に対する即時抗告が許されない点で、破産債権者の手続的権利に手薄である。そこで、204条1項3号(相当と認められるとき)により簡易配当が許可された場合に、破産債権者から簡易配当を行うことについて異議が述べられたときは、簡易配当の許可は取り消すことにされたいる。その異議陳述鎖期間は、配当財団額等の通知が破産債権者に通常到達すべきであった時を経過したことを破産管財人が裁判所に届け出た時から1週間である。また、破産管財人は、簡易配当についての異議のある破産債権者は前記異議陳述期間内に異議を述べるべき旨も通知しなければならない(206条)。
簡易配当の手続
簡易配当の許可があったときの手続は次のようになる。
意義 財産全部の換価が終了する前に、破産管財人が配当に適する破産財団所属の金銭があると認めるごとに、最後配当の前にする配当を中間配当という(209条1項)。中間配当については、最後配当に関する規定の多くが準用されている(209条3項。以下では、同項を附記することなく最後配当に関する規定を指示することがある)。
裁判所の許可 中間配当をするには裁判所の許可が必要である。配当としての重要性は、中間配当よりも最後配当の方が大きいが、「配当をするのに適当な破産財団に属する金銭」が存在するか否かについては裁判所書記官ではなく裁判所(裁判官)に判断させるのがよいとの考慮による(特に、中間配当後に財団不足にならないように注意する必要がある)。
配当に加えられる債権
中間配当に加えられるのは、次の債権である。なお、3と4の債権が異議等のある無名義債権にも該当する場合には、その規制にも服する。
次の債権は、異議等を解決するための手続の係属を証明すれば配当表に記載される(そうでなければ配当表に記載されない。198条1項)。
次の債権は、確定していても、破産管財人が配当表を作成する時点で所定の条件が満たされていなければ、中間配当の手続に参加することができない(配当表に記載されない)。
配当率の決定
中間配当の除斥期間内に配当表に対する異議申立てがあればその異議等の解決後に、異議申立てがなければ除斥期間の経過後に、破産管財人は配当率を定めて、中間配当の手続に参加する破産債権者に通知する(211条)。この通知には、次の効果が認められている。
配当額の寄託と交付
次の破産債権に対する配当額については、破産管財人はそれを破産債権者に直ぐに交付せずに、寄託する(214条1項。寄託された配当額(金銭)は、破産財団内の財産であるが、特定の債権者に交付されるべき可能性のある財産として、特別に管理される)。
明文の規定はないが、破産債権者が中間配当額を受け取らない場合には、その配当額は寄託される(209条3項で202条3号が準用されていないことに注意)。
寄託された金額(以下「寄託額」という)は、最後配当の段階で次のように処理される(214条2項)。
意 義
追加配当は、大まかに言えば、破産手続を終結させる配当(最後配当・簡易配当・同意配当)の後で新たに配当に充てるべき財産が確認されたときになされる配当である。精確に言えば、最後配当の配当額の通知後(簡易配当の場合には除斥期間が経過してから1週間の異議申立期間(200条1項)が経過した後、同意配当の場合には同意配当の許可後)に新たに配当に充てることができる相当の財産があることが確認されたときになされる配当である。追加配当は、破産手続終結決定前でも決定後でもすることができる。
追加配当に充てられる財産
追加配当に充てられるのは、次の財産等である。
次の財産は、追加配当の原資にならない。
次の財産が追加配当の原資になるかについては、争いがある。
追加配当を受ける債権者
追加配当は、最後配当・簡易配当・同意配当について作成された配当表によってする(215条3項)。したがって、それらの配当手続に参加することができなかった破産債権者は追加配当に与かることができない。最後配当から除斥された停止条件付債権者及び別除権者は、その後に停止条件が成就したり、不足額を証明できるようになっても、追加配当に与かることができない。
最後配当の除斥期間満了時までに解除条件が成就しなかったが追加配当の時点では解除条件が成就した場合については、明文の規定がなく、この債権者も配当に与かることができることになると解する余地がある。しかし、解除条件の成就が明らかな場合にまでこの者に追加配当をするのは妥当ではなく、彼は追加配当に与かることはできないと解すべきであろう。
追加配当の手続の特徴
追加配当をするには、裁判所の許可を得なければならない(215条)。追加配当は、最後配当表等に基づいてなされ、配当手続に参加することのできる債権者の範囲は確定しており、除斥期間を設ける必要もないので、配当の公告等は不要とされた(197条が215条2項で準用されていないことに注意。[小川*2004a]3601頁)