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民事訴訟法講義
審理の枠組み 関西大学法学部教授
栗田 隆 |
審理の基本的要素 1. 当事者の主張を聴くこと。2. 争いのある事実について証拠調べをすること。 |
訴 え 当事者と審判対象の特定=処分権主義 | ↓ 審 理 | 内容面──事実主張+証拠提出=弁論主義(当事者の主導権) | | 手続面──期日の指定等=職権進行主義(裁判所の主導権) |───────────┐ ↓ ↓ 判 決 判決によらない訴訟の終了=処分権主義 (訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、和解) |
直接事実====要件───→法的効果 ↑ (該当) 法規範 (推認) | 間接事実 ↑ (推認) | 間接事実 |
要件 |
主要事実 | |
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金銭の授受(一方が相手方から金銭を受け取ったこと) | 1998年5月1日、吹田市山手町0丁目0番0号に所在するAの事務所でAがBに現金100万円を貸し渡した。 | |
返還約束(一方が相手方に返還を約束したこと)* | 返還自体の約束 | Bその返還を約束した |
返還時期の合意 | 返還時期は、1998年6月1日と定めた。 |
主要事実を「訴訟物たる法律関係の発生・変更・消滅を判断するのに直接役立つ事実」と定義する学生もいるが、適当ではない。例えば、訴訟物が原告の金銭支払請求権である場合に、被告が相殺の抗弁を提出すれば被告の反対債権の発生を根拠付ける事実も主要事実となるが、前記の定義では、これは主要事実でないことになる。「訴訟物たる」という限定句は、ない方がよい。その限定句を付けるのであれば、「又は訴訟物たる法律関係を判断するうえで必要となる他の法律関係の発生・変更・消滅を判断するのに直接役立つ事実」を付加すべきである。 |
貸金返還請求訴訟で、原告が被告から弁済のないことを主張した。被告は、当初、それを認めた上で、消滅時効あるいは債務免除を主張した。その後に弁済の事実を主張することは、自白の撤回にあたるか。 |
「権利自白」の定義の仕方
2の意味で用いる文献もあるが、この講義では1の意味で用いる。したがって、≪権利自白のうち拘束力が認められるべきものは何か≫を論ずる。 |
職権調査の対象となる訴訟要件 | 裁判資料の収集方法(通説) |
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訴えの客観的利益・当事者適格(対世効のある判決の場合を除く) | 弁論主義 |
任意管轄 | 弁論主義 |
その他 | 職権探知 |
最判昭和55.2.7民集34-2-123[百選*1998a]95事件(藤原)・[百選*1982a]71事件(上村)を簡略にした事例 | |||
XとYは死亡したBの共同相続人である。Bが死亡した当時にBの名義で登記されていた土地がYの単独名義になっていた。Xが、共有持分1/2の移転登記手続請求の訴えを提起した。
Xは、口頭弁論において次のように主張した:本件土地はBがAから買い受けた土地であり遺産に属するから、Xは相続により共有持分1/2を取得した。
Yは、口頭弁論において次のように主張して争った:本件土地は、登記上はBがAから買い受けたことになっているが、実際には、BではなくYが買い受けたのであり、もともと遺産には属さない。
裁判所は、証拠調べの結果、次のことを認定した。
aの事実は、Xにより口頭弁論において主張されている。bの事実は、いずれの当事者からも主張されていない。裁判所は、bの事実とその法的評価を裁判の基礎にして請求を棄却することができるか。 |
審理(口頭弁論)に関与した裁判官 |