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民事訴訟法講義
裁判所 3関西大学法学部教授
栗田 隆 |
裁判官が回避をするには、司法行政上の監督権のある裁判所(簡易裁判所の裁判官については裁80条3号・5号により地方裁判所)の許可が必要である。この許可は裁判官会議が行うのが本則であるが(裁12・20・29)、裁判官会議はこれを特定の裁判官に委任することができ(下級裁判所事務処理規則20)、また応急の措置として裁判所の長が仮に許可を与えることもできる(同19)。回避の許可は裁判ではないから、許可を受けた裁判官がその後に事件について職務を行っても、そのこと自体で違法となることはない。
忌避事由がある場合に回避することは裁判官の権能であり、義務ではないとのするのが通説的見解である(中務俊昌・民商32巻6号99頁以下)。しかし、最近では、忌避事由が裁判の公正を妨げる程度に関して除斥原因と同等以上である場合がありうるとして、回避義務を肯定し、回避義務違反の場合には、法令違反として上訴(控訴および312条3項の上告)による救済を認めようとする見解もある([佐々木*1984a] 84頁以下)。
実例 2009年8月の衆院選小選挙区の「1票の格差」を巡り、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に回付された訴訟のうちの1件で、被告(香川県選挙管理委員会)の代表者(委員長)が竹崎長官の実兄であることから、竹崎長官が回避を申し出、最高裁裁判官会議が9月15日にこれを許可した[11] 。