- [L1] 債権者Xが保証人Yに対して保証債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った主債務者Zは、Yからの求償権行使を回避するために、この訴訟に参加して主債務が存在しないことを主張したいが、どのようにしたらよいか。
- [L1] 次の2つのケースについて、補助参加の利益及び被告敗訴の場合の参加的効力について検討しなさい。
(ケース1) 債権者Xが受託保証人Yに対して保証債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った主債務者Zは、この訴訟に補助参加することができるか。
(ケース2) 債権者Xが主債務者Zに対して主債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った受託保証人Yは、この訴訟に補助参加することができるか。
- ヒント: まず補助参加の利益と参加的効力の一般論を書くこと。
- ヒント: 各ケースについて参加的効力を述べるときには、参加人・被参加人間の後訴を特定して(具体的に想定して)書くこと。
- ヒント: ケース2については、(α)受託保証人が既に保証債務を履行している場合と、(β)まだ履行していない場合とを想定して検討するとよいであろう。答えを出しやすいのは(α)の場合である。これについて答えた後で(β)の場合を検討するとよい(2つの場合で結論が同じになるか否かは、意見が分かれるであろう。どちらでもよい)
- [L1] 債権者から保証債務の履行を求められた保証人が主債務者に事前の通知をしたところ、主債務者から弁済ずみであるとの返事がきたので、支払わないでいた。債権者が保証債務履行請求の訴えを提起した。
(小問1)主債務者は、保証人を補助するためにこの訴訟に参加して、主債務の消滅を主張したい。それは可能か。
原告は、主債務の成立の要件事実を含めて、保証債務履行請求権の発生・行使の要件事実事実を主張した。被告(保証人)は、第1回口頭弁論期日に出頭して、原告主張事実を全て否認し、請求棄却判決を求める旨の答弁をしたが、それ以降の期日には出頭しなかった。主債務者は、第1回口頭弁論期日に出頭して、主債務の成立を認めた上で、それが弁済により消滅したことを主張した。
(小問2)裁判所は、主債務の要件事実について証拠調べをする必要があるか。
裁判所は、口頭弁論及び証拠調べの結果に基づき、主債務の発生、弁済期の到来、保証契約の成立を認め、主債務の弁済の事実についてはこれを認めるに足りる証拠はないとして、請求認容判決を下した。保証人が保証債務履行後に主債務者に対して求償請求の訴えを提起した。
(小問3)主債務者は、次のように主張することができるか:「主債務は前訴の口頭弁論終結前に弁済により消滅しており、保証人が敗訴したのは彼自身が十分に訴訟を追行しなかったからであり、主債務がない以上、求償に応ずる義務はない」。
- [L2] 労災保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項所定の規模以上の事業所の労働者が事故で負傷した。労働基準監督署長は業務起因性を否定して労災保険給付の不支給の処分をした。その労働者が、事故は長時間労働による過労が原因であり、業務起因性があると主張して、その取消訴訟を提起した。
(1)この場合に、事業主は、被告(処分をした行政庁(労働基準監督署長)が属する国)を補助するために、この訴訟に参加することができるか。
(2)事業者は、次のことをもって補助参加の利益とすることができるか:この訴訟の請求が認容され、その判決理由中で業務起因性が肯定されると、その認定はその後に労働者が事業者に対して提起すると予想される安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟において事業者に不利益な影響を及ぼす可能性がある。
- ヒント:最高裁判所
平成13年2月22日 第1小法廷 決定(平成12年(行フ)第3号)。
- メモ :小問の並びが幾分不細工であるが、小問(1)だけであれば、判旨2を書いて終わりになる(それだけを書いた答案も合格答案にしなければならない)。判旨1にも言及してもらうために、小問(2)を立てた。
- [L1] ある物について、XがYに対して所有権確認の訴えを提起した。その物が自己の所有物であると考えているZは、どうしたらよいか。
- [L2] AはBに対して500万円の債権(α債権)を有すると主張しているが、Bはこれを否定している。Aが、α債権に基づいて、BのCに対する500万円の貸金債権(β債権)を行使する債権者代位訴訟を提起し、Bに対する訴訟告知をした。訴訟告知を受けたBは、どうしたらよいか。なお、Cは、β債権の存在を争っているものとする。
- [L2a] Aが、Bに対する債権(α債権)に基づいて、BのCに対する債権(β債権)を行使する債権者代位訴訟を提起した。訴訟告知を受けたBは、β債権を守るために、この訴訟に参加したいと考えている。どのような参加が可能か。債権者代位訴訟について説明した後、BやCの主張内容について場合分けをして説明しなさい。
- ヒント:債権者代位訴訟については、特に判決の効力がBにどのように及ぶかについて説明すること。
- ヒント:例えば次のような場合分けが可能である。(1)Bがα債権を争い、Cがβ債権を争う場合。(2)債権の支払を怠っていたCが、Aによる代位訴訟提起後にβ債権の存在を認め支払の意思を表明しているが、α債権の存在を争うBを信用して、Aへの弁済を拒んでいる場合。
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Cがβ債権を争う場合 |
Cがβ債権を認める場合 |
Bがα債権を争う場合 |
(1) 独立当事者参加 |
(2) |
Bがα債権を認める場合 |
(3) |
(4) 通常は、参加の必要はない。 |
- ヒント:民423条・423条の6、民訴42条・47条・115条・142条。最高裁判所
昭和48年4月24日 第3小法廷 判決(昭和47年(オ)第908号)
- メモ:解答にかなりの時間がかかる問題であるので、試験時間に注意して出題すること。
- [L1] 債権者Xが債務者Yを被告にしてα債権の給付訴訟を提起した。その訴訟の係属後・事実審の口頭弁論終結前に、Xはα債権をZに譲渡し、その通知をYにした。
小問1 このまま訴訟が続行されると、どのような結果が予想されるか。
小問2 α債権の満足を得たいZは、どうしたらよいか。
小問3 訴訟がYに有利に展開している場合に、この訴訟を利用してZとの関係でもα債権の不存在を確定させるためには、Yはどうしたらよいか。
- ヒント:小問1につき115条、小問2につき47条−49条、小問3につき51条・50条・41条・48条・49条
- ヒント:訴訟承継主義について十分に説明すること
- ヒント:債権譲渡の対抗要件について、民467条
- [L2] Yの建物が存在する土地について、XとYとが互いに所有権を主張して争っている。Xが、「Yが権限なしに建物を建築して土地を不法占拠している」と主張して、Yに対して建物収去土地明渡しの訴えを提起した。その訴訟の係属中に、Yがその建物をZに譲渡して、所有権移転登記をなし、かつ引き渡した。Xが、Yを相手に訴訟を進めた場合に、Xが得ることのできる成果は何か。Xは、よりよい成果を得るために、どうしたらよいか。
- [L2] Y所有の建物が存在する土地について、XとYとが互いに所有権を主張して争っている。Xが、「Yが権限なしに建物を建築して土地を不法占拠している」と主張して、Yに対して建物収去土地明渡しの訴えを提起した。その訴訟の係属中に、Yがその建物をZに賃貸して、かつ引き渡した。Xが、Yを相手に訴訟を進めて勝訴した場合に、Xが強制執行により得ることのできると予想される成果は何か。Xは、よりよい成果を得るために、この訴訟においてどうしたらよいか。
- [L2] 債権者からの執行を逃れるために、Xが売買契約を仮装してYに不動産を譲渡し、所有権移転登記をした。執行の虞がなくなったので、XがYに返還(YからXへの再度の所有権移転登記)を求めたが、応じてもらえないので、訴訟を提起した。Yは、双方に売買契約の締結の意思がなく、代金の支払いもなかったことは認めたが、仮装譲渡であることを否定し、贈与であると主張した。口頭弁論終結前にYがその不動産をZに売却し、所有権移転登記をすませた。それを知ったXは、どうするのがよいのか。Zがこの訴訟に加えられた場合に、Zは、XY間の売買契約について、双方に契約締結の意思があり、売買契約書通りに代金を支払われたと主張することができるか。Zは、どのような主張をするのがよいか。
- [L2] Xは、ある建築工事現場から発せられた注文に応じて商品を納入した。Xは、建築工事の請負人Yが買主であると思い、Yに対して代金支払請求の訴えを提起したところ,Yが「買主は施主(請負工事の注文主)のZである」と主張した。XがZに訴訟告知をしたが、Zは補助参加をしなかった。裁判所は、「買主は請負人ではなく施主である」と判断し、Yに対する代金支払請求を棄却する判決を下し、同判決が確定した。その後で,XがZに対し代金支払請求をした。
上記の事例について、次の各小問に答えなさい
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[小問1]
民訴法42条にいう「利害関係」について説明しなさい。
[小問2]民訴法46条の参加的効力について説明しなさい。
[小問3]前訴の判決理由中の「買主は施主である」との判断の抵触する主張をZはすることができるか。「買主は請負人ではない」との判断についてはどうか。
- [L3] Xが、Yに対する売掛代金債権の取立訴訟を提起した。その訴訟の係属前に係争債権を譲り受け、対抗要件も具備していると主張するZが訴訟に参加した(Yに対して支払請求、Xに対して債権の帰属確認請求)。Xは、Zに債権譲渡したことを認め、訴訟から脱退した。その直後にYが、当該債権には譲渡禁止特約があることを主張した。裁判所は、審理の結果、当該債権が存在することを認め、譲渡禁止特約があり、Zはその点について善意であるが重過失があったと認定した。裁判所はどのような判決をすべきか。訴訟脱退に関する見解を2つ挙げて説明しなさい(取り上げる見解の内の少なくとも一つは教科書等で取り上げられている見解でなければならないが、他の一つは解答者の独自説でもかまわない)。
- [L3] XがAに対して1億円のα債権を有し、AがYに対して5億円のβ債権を有している。もっとも、β債権の存否については、AとYとの間の因縁の争いがあり、Yはその存在を否定している。Xが債権者代位権に基づきYに対してβ債権のうちの1億円の支払を求める取立訴訟を提起した。Xは、Aに訴訟告知をしたが資金繰りに追われていたAは、この訴訟に参加しなかった。訴訟は、Yに有利に進行した。もう1回口頭弁論を行えば、弁論が終結するという段階で、景気回復とこれに伴う急激な株価上昇により経済的苦境から脱したAがXに対して債務全額の弁済をした。Xは、訴え取下書を提出したが、Yは、これに対して直ちに異議を述べた。Yは、この訴訟を利用してAとの間でもβ債権の存否に関する争いを有利に解決することを望んでいる。その方法はあるのか(債権者代位訴訟については訴訟担当説と固有適格説との対立があるが、それぞれの説に従えばどのような解決になるかを検討しなさい)。