関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法(判決手続)3の練習問題

---レベル1・2・3 ---


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解答にあたっては、次の点に注意しなさい。

ヒントについて

練習問題の答案は、必ず友人とチームを作って考えなさい。それが、答案の質を高める最も確実な方法である。

なお、学部の定期試験においては、上記の出題範囲に属する場合でも、次の問題は出題範囲外とする。

参考判例の一括ファイル



複数請求訴訟

  1. [L1] XはYから不動産を買い受けたが、Yが売買契約の無効を主張している。Xは、不動産の引渡しを得たが、所有権移転登記をまだ得ていない。この場合に、
  2. [L1] Yの妻Xは、Yに対して1000万円の貸金債権を有している。Xは、Yが浮気をしたのを好機に別居し、Yに対して、離婚請求の訴えを土地管轄権を有する家庭裁判所に提起することにした。この離婚請求に、Yの浮気により受けた精神的損害の賠償請求(慰謝料請求)と貸金返還請求とを併合することは、許されるか。[人事訴訟法17条参照]

  3. [L2] Xは、Yにパソコンを売却して引き渡したが、Yが代金を支払わない。Xの代金支払請求に対して、Yは錯誤による契約の無効を主張し、代金の支払いを拒絶している。パソコンの価格低下は激しいので、Xが第一次的に欲しいのは、代金である。どのような訴えを提起したらよいか。第一審における審理裁判はどうなるか。
  4. [L2] YがXの所有する有価証券を横領した後に売却し、その代金を保有している。訴訟物について判例の立場を前提にした場合に、Xはどのような訴えを提起するのがよいか。第一審における審理裁判はどうなるか。

  5. [L1] Xは、1998年3月、Yに2000万円を貸し付け、その返還請求の訴えをXの住所地を管轄する地方裁判所に提起した。その訴訟が第一審に係属中のある夜に、Y所有の大型自動車がXの自宅につっこんできた。Yは自動車泥棒のしたことであると主張しているが、XはYの仕業であると考えている。Xが損害賠償請求を係属中の訴訟に追加することは、許されるか。
  6. [L1] X1からX10ならびにA1からA10は、道路から転落したバスの乗客であった。X1からX10については、X1が選定当事者になって訴えを提起した。X1の訴訟追行が信頼できるものと感じたA1からA10は、自分たちの請求についてもX1に訴訟追行してもらおうと考えた。A1からA10は、どのようにしたらよいか。X1は、どうすべきか。
  7. [L1] XとYは、吹田市内の住民である。XがYに対して吹田簡易裁判所に65万円の代金支払請求の訴えを提起した。これに対して、Yは、次のように考えている:自分は、Xに対して300万円の損害賠償請求権を有している;X主張の代金債権を争いつつも、代金債権がもし認められるのであれば、自分の損害賠償請求権と対当額で相殺したい;また、相殺により消滅するかも知れない部分を含めて、さしあたりは300万円全額の賠償請求の訴えを提起して、Xとの紛争を全部解決しておきたい;そして、300万円の損害賠償請求権の存否は、やはり簡易裁判所ではなく、地方裁判所で審理してもらいたい。
     (1)Yは、吹田簡易裁判所での訴訟に予備的相殺の抗弁を提出しつつ、300万円の損害賠償請求の訴えを大阪地方裁判所に提起することができるか。
     (2)Yが吹田簡易裁判所での訴訟に予備的相殺の抗弁を提出しつつ、300万円の損害賠償請求の反訴を提起すると、その訴訟はどうなるか。
     
  8. [L1] XとYは、吹田市内の住民である。Xは、これまで訴訟をしたことがなかったが、Yに対する10万円の代金債権の取立てのために、Yを被告にして、この債権の支払請求の訴えを吹田簡易裁判所に提起した。これに対して、Yは、次のように考えている:自分は、Xに対して300万円の損害賠償請求権を有している;X主張の代金債権を争いつつも、代金債権がもし認められるのであれば、自分の損害賠償請求権と対当額で相殺したい;また、相殺により消滅するかも知れない部分を含めて、さしあたりは300万円全額の賠償請求の訴えを提起して、Xとの紛争を全部解決しておきたい;そして、300万円の損害賠償請求権の存否は、やはり簡易裁判所ではなく、地方裁判所で審理してもらいたい。Yの希望は叶うか。次の2つの場合に分けて答えなさい。
     (1)Xが少額訴訟による審理及び裁判を求める申述をしなかったとき。
     (2)Xが少額訴訟による審理及び裁判を求める申述をしていたとき。
     

複数当事者訴訟

  1. [L1] 神戸市内に住所を有するXが、大阪市内に住所を有するYに1000万円を貸し付け、京都市内に住所を有するZがYの連帯保証人になった。YとZが弁済しないので、Xは、大阪市内の知り合いの弁護士Aに訴訟委任をして、訴えを提起することにした。Yに対する請求とZに対する請求を大阪地方裁判所で同時に審理裁判してもらうことは可能か。

  2. [L1a] 債権者が主債務者と保証人とを同時に訴えた。債権者は、各被告に対する請求を理由付けるのに必要な主要事実を全て主張した。保証人は、公示送達によらずに呼出しを受けたが、全ての期日に出頭せず、準備書面を提出することもなかった。他方、主債務者は債権者の主張を争った。裁判所は、証拠調べの結果、債務不存在の心証を得た。

     (1)紛争の相対的解決について説明しなさい。

     (2)共同訴訟人独立の原則について説明しなさい。

     (3)上記の設例において、裁判所はどのような判決をくだすべきか。


  3. [L2a・類題] 債権者Xが大阪地方裁判所に主債務者Y及び連帯保証人Z1と連帯保証人Z2を同時に訴えた。Xは、各被告との関係で、Yに対する債権の発生に必要なすべての事実及び弁済期到来の事実、さらにZ1とZ2との関係で、保証契約の成立に必要な事実を訴状に記載し、第一回口頭弁論期日においてこれを主張し、その後のすべての期日にも出頭した。Z1は、公示送達によらずに呼出しを受けたが、期日に一切出頭しなかった。もっとも、彼は、第1回口頭弁論期日の前に答弁書を提出することはなかったが、第2回口頭弁論期日の前になってやっと、「X主張の事実をすべて争う」との趣旨を記載した答弁書を裁判所に提出した。Z2も、公示送達によらずに呼出しを受けたが、期日に一切出頭しなかった。もっとも、彼は、第1回口頭弁論期日の前に、「X主張の事実をすべて争う」との趣旨を記載した答弁書を裁判所に提出した。他方、Yは、主位的に訴求債権の発生を争った(正確には、Xが主張立証責任を負う事実を否認し、債権の発生に関する抗弁事実は提出しなかった);その上で、予備的に消滅時効の完成を援用する趣旨を記載した準備書面を予め提出した:そして、すべての期日に出頭し、請求棄却判決を求めた。裁判所は、X及びYが申し出た証拠を取り調べた結果、XのYに対する債権が口頭弁論終結時に存在せず、XのYに対する請求は棄却すべきであるとの判断に達した。裁判所はどのような判決をくだすべきか。 必要に応じて場合分けをして解答しなさい。

  4. [L2] AとBとが共有する土地(甲地)とこれに隣接するC所有の土地(乙地)との間の境界線を巡って、A・BとCとの間で争いが生じた。AはBに、「Cを被告にして一緒に境界確定訴訟を提起しよう」といったが、Bは「訴訟は嫌いです。話し合いで解決しましょう」と言うばかりである。Aは、紛争を早く解決したい。

    [小問1] Aは、 誰をどのような当事者にして訴えを提起したらよいか。
    [小問2] 判決の効力は、誰と誰との間に及ぶか。
  5. [L2] Xは、Yの代理人と称するZと土地売買契約を締結し、自己の土地をYに1億円で売却した。しかし、YはZに代理権を付与したことはないと主張し、そもそも1億円は高すぎると言っている。Xは、Zの代理権が認められない場合には、無権代理人としてのZの責任を追及しようと考えている。最初にYを訴え、もし敗訴したらZを訴えることには、どのような問題があるか。YとZを同時に訴えた場合の訴訟手続(審理・裁判)はどうなるか。

  6. [L2] A証券会社の株主であるX1とX2は、代表取締役であったYに対して、Yが違法な損失補填行為により会社に損害を与えたと主張して、会社法847条により株主代表訴訟を提起した。第一審・第二審ともXらが敗訴した。X1は、上告を提起したが、X2は上告を断念した。この場合のX2の訴訟上の地位について論じなさい。

    ヒント:最高裁判所平成12年7月7日第2小法廷判決(平成8年(オ)第270号)参照。具体的な問題として、次のことなどに言及すること:上告審が口頭弁論を開く場合に、X2を期日に呼び出す必要があるか;控訴審判決は、X2との関係では、X2の上告期間の徒過と共に確定するか。

  7. [L2] Xの所有土地をYが賃借して建物を建てた。Yが賃料を支払わなくなったので、Xが賃貸借契約を解除した。その直後にYが死亡した。Xは、Yの相続人はA,B,Cであると認識して、これらの者を被告にして、建物収去土地明渡しの訴えを提起した。ところが、第一審の口頭弁論の終結間際になって、戸籍から判明しない相続人Dの存在が判明し、A,B,Cは、Dを被告にしていないこの訴訟は不適法であると主張して、訴えの却下を求めた。裁判所は、どうすべきか。

  8. [L2} X1とX2の共有に係る特許権について、Yの特許無効審判の請求に基づ特許無効審決がなされた。この審決の取消しを求める訴訟をX1がYを被告にして知的財産高等裁判所(東京高裁の特別支部)に提起したが、X2は提起しなかった。この訴えは、適法か。

訴訟参加・訴訟引受

  1. [L1] 債権者Xが保証人Yに対して保証債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った主債務者Zは、Yからの求償権行使を回避するために、この訴訟に参加して主債務が存在しないことを主張したいが、どのようにしたらよいか。

  2. [L1] 次の2つのケースについて、補助参加の利益及び被告敗訴の場合の参加的効力について検討しなさい。
    (ケース1) 債権者Xが受託保証人Yに対して保証債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った主債務者Zは、この訴訟に補助参加することができるか。
    (ケース2) 債権者Xが主債務者Zに対して主債務の履行を求めて訴えを提起した。それを知った受託保証人Yは、この訴訟に補助参加することができるか。


  3. [L1] 債権者から保証債務の履行を求められた保証人が主債務者に事前の通知をしたところ、主債務者から弁済ずみであるとの返事がきたので、支払わないでいた。債権者が保証債務履行請求の訴えを提起した。

     (小問1)主債務者は、保証人を補助するためにこの訴訟に参加して、主債務の消滅を主張したい。それは可能か。

    原告は、主債務の成立の要件事実を含めて、保証債務履行請求権の発生・行使の要件事実事実を主張した。被告(保証人)は、第1回口頭弁論期日に出頭して、原告主張事実を全て否認し、請求棄却判決を求める旨の答弁をしたが、それ以降の期日には出頭しなかった。主債務者は、第1回口頭弁論期日に出頭して、主債務の成立を認めた上で、それが弁済により消滅したことを主張した。

     (小問2)裁判所は、主債務の要件事実について証拠調べをする必要があるか。

    裁判所は、口頭弁論及び証拠調べの結果に基づき、主債務の発生、弁済期の到来、保証契約の成立を認め、主債務の弁済の事実についてはこれを認めるに足りる証拠はないとして、請求認容判決を下した。保証人が保証債務履行後に主債務者に対して求償請求の訴えを提起した。

     (小問3)主債務者は、次のように主張することができるか:「主債務は前訴の口頭弁論終結前に弁済により消滅しており、保証人が敗訴したのは彼自身が十分に訴訟を追行しなかったからであり、主債務がない以上、求償に応ずる義務はない」。

  4. [L2] 労災保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項所定の規模以上の事業所の労働者が事故で負傷した。労働基準監督署長は業務起因性を否定して労災保険給付の不支給の処分をした。その労働者が、事故は長時間労働による過労が原因であり、業務起因性があると主張して、その取消訴訟を提起した。

     (1)この場合に、事業主は、被告(処分をした行政庁(労働基準監督署長)が属する国)を補助するために、この訴訟に参加することができるか。

     (2)事業者は、次のことをもって補助参加の利益とすることができるか:この訴訟の請求が認容され、その判決理由中で業務起因性が肯定されると、その認定はその後に労働者が事業者に対して提起すると予想される安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟において事業者に不利益な影響を及ぼす可能性がある。

  5. [L1] ある物について、XがYに対して所有権確認の訴えを提起した。その物が自己の所有物であると考えているZは、どうしたらよいか。

  6. [L2] AはBに対して500万円の債権(α債権)を有すると主張しているが、Bはこれを否定している。Aが、α債権に基づいて、BのCに対する500万円の貸金債権(β債権)を行使する債権者代位訴訟を提起し、Bに対する訴訟告知をした。訴訟告知を受けたBは、どうしたらよいか。なお、Cは、β債権の存在を争っているものとする。
  7. [L2a] Aが、Bに対する債権(α債権)に基づいて、BのCに対する債権(β債権)を行使する債権者代位訴訟を提起した。訴訟告知を受けたBは、β債権を守るために、この訴訟に参加したいと考えている。どのような参加が可能か。債権者代位訴訟について説明した後、BやCの主張内容について場合分けをして説明しなさい。
  8. [L1] 債権者Xが債務者Yを被告にしてα債権の給付訴訟を提起した。その訴訟の係属後・事実審の口頭弁論終結前に、Xはα債権をZに譲渡し、その通知をYにした。

    小問1 このまま訴訟が続行されると、どのような結果が予想されるか。

    小問2 α債権の満足を得たいZは、どうしたらよいか。

    小問3 訴訟がYに有利に展開している場合に、この訴訟を利用してZとの関係でもα債権の不存在を確定させるためには、Yはどうしたらよいか。


  9. [L2] Yの建物が存在する土地について、XとYとが互いに所有権を主張して争っている。Xが、「Yが権限なしに建物を建築して土地を不法占拠している」と主張して、Yに対して建物収去土地明渡しの訴えを提起した。その訴訟の係属中に、Yがその建物をZに譲渡して、所有権移転登記をなし、かつ引き渡した。Xが、Yを相手に訴訟を進めた場合に、Xが得ることのできる成果は何か。Xは、よりよい成果を得るために、どうしたらよいか。

  10. [L2] Y所有の建物が存在する土地について、XとYとが互いに所有権を主張して争っている。Xが、「Yが権限なしに建物を建築して土地を不法占拠している」と主張して、Yに対して建物収去土地明渡しの訴えを提起した。その訴訟の係属中に、Yがその建物をZに賃貸して、かつ引き渡した。Xが、Yを相手に訴訟を進めて勝訴した場合に、Xが強制執行により得ることのできると予想される成果は何か。Xは、よりよい成果を得るために、この訴訟においてどうしたらよいか。

  11. [L2] 債権者からの執行を逃れるために、Xが売買契約を仮装してYに不動産を譲渡し、所有権移転登記をした。執行の虞がなくなったので、XがYに返還(YからXへの再度の所有権移転登記)を求めたが、応じてもらえないので、訴訟を提起した。Yは、双方に売買契約の締結の意思がなく、代金の支払いもなかったことは認めたが、仮装譲渡であることを否定し、贈与であると主張した。口頭弁論終結前にYがその不動産をZに売却し、所有権移転登記をすませた。それを知ったXは、どうするのがよいのか。Zがこの訴訟に加えられた場合に、Zは、XY間の売買契約について、双方に契約締結の意思があり、売買契約書通りに代金を支払われたと主張することができるか。Zは、どのような主張をするのがよいか。

  12. [L2] Xは、ある建築工事現場から発せられた注文に応じて商品を納入した。Xは、建築工事の請負人Yが買主であると思い、Yに対して代金支払請求の訴えを提起したところ,Yが「買主は施主(請負工事の注文主)のZである」と主張した。XがZに訴訟告知をしたが、Zは補助参加をしなかった。裁判所は、「買主は請負人ではなく施主である」と判断し、Yに対する代金支払請求を棄却する判決を下し、同判決が確定した。その後で,XがZに対し代金支払請求をした。

    上記の事例について、次の各小問に答えなさい 。
     [小問1] 民訴法42条にいう「利害関係」について説明しなさい。
     [小問2]民訴法46条の参加的効力について説明しなさい。
     [小問3]前訴の判決理由中の「買主は施主である」との判断の抵触する主張をZはすることができるか。「買主は請負人ではない」との判断についてはどうか。


  13. [L3] Xが、Yに対する売掛代金債権の取立訴訟を提起した。その訴訟の係属前に係争債権を譲り受け、対抗要件も具備していると主張するZが訴訟に参加した(Yに対して支払請求、Xに対して債権の帰属確認請求)。Xは、Zに債権譲渡したことを認め、訴訟から脱退した。その直後にYが、当該債権には譲渡禁止特約があることを主張した。裁判所は、審理の結果、当該債権が存在することを認め、譲渡禁止特約があり、Zはその点について善意であるが重過失があったと認定した。裁判所はどのような判決をすべきか。訴訟脱退に関する見解を2つ挙げて説明しなさい(取り上げる見解の内の少なくとも一つは教科書等で取り上げられている見解でなければならないが、他の一つは解答者の独自説でもかまわない)。

  14. [L3] XがAに対して1億円のα債権を有し、AがYに対して5億円のβ債権を有している。もっとも、β債権の存否については、AとYとの間の因縁の争いがあり、Yはその存在を否定している。Xが債権者代位権に基づきYに対してβ債権のうちの1億円の支払を求める取立訴訟を提起した。Xは、Aに訴訟告知をしたが資金繰りに追われていたAは、この訴訟に参加しなかった。訴訟は、Yに有利に進行した。もう1回口頭弁論を行えば、弁論が終結するという段階で、景気回復とこれに伴う急激な株価上昇により経済的苦境から脱したAがXに対して債務全額の弁済をした。Xは、訴え取下書を提出したが、Yは、これに対して直ちに異議を述べた。Yは、この訴訟を利用してAとの間でもβ債権の存否に関する争いを有利に解決することを望んでいる。その方法はあるのか(債権者代位訴訟については訴訟担当説と固有適格説との対立があるが、それぞれの説に従えばどのような解決になるかを検討しなさい)。

上 訴

  1. [L2] Xは、Xの土地上に建物を所有して土地を不法占拠しているYに対して、建物収去・土地明渡しの訴えを提起した。第一審で請求認容判決が出された。Xは、自ら控訴して、不法占拠による損害の賠償請求を追加することができるか。

  2. [L3] Xは、YがXの財産を横領したことを理由に、民法709条の損害賠償請求と民法703条による不当利得返還請求を選択的に併合する訴えを提起した。請求金額は、いずれの請求にあっても1億円であり、かつ、遅延損害金として、原告は訴状が被告に送達された日の翌日以降の分の支払いを求めた。第一審は、損害賠償請求を認容した。控訴審は、Yからの短期消滅時効の抗弁を入れて損害賠償請求は棄却すべきであるが、不当利得返還請求は認容すべきであると判断した。控訴審は、どのような判決をすべきか。第一審判決に仮執行宣言が付されていて、仮執行が行われていた場合に、民訴260条の適用はどうなるか。

  3. [L1]  XがYに対して1000万円の損害賠償請求の訴えを提起し、600万円のみが認容された。Xは、これに不満はあったが訴訟を終了させようと思い、控訴しなかった。ところが、Yが控訴を提起した。 Xは、第一審判決書の送達を受けてから1月後にYの控訴状の送達を受け、Yの控訴提起を知った。

    この場合について、下記の小問の全部に答えなさい。
     (1)Yが控訴を提起すると、原判決はどうなるか、事件の訴訟係属はどうなるか。
     (2)Xは、控訴審において、 原判決中自己の敗訴部分の取消しと、第一審では認められなかった400万円の支払を命ずる判決を求めることができるか。
     (3) 控訴が取り下げられると、訴訟はどうなるか。
     (4)Yは、Xの同意を得ることなく控訴を取り下げることができるか。

    ヒント: 116条・285条・292条・293条・296条・304条。控訴不可分の原則、利益変更禁止原則ないし不利益変更禁止原則にも言及すること。控訴不可分の原則との関係で286条。
    ヒント: 小問(3)については、一方的な控訴の取下げを許しても、(α)紛争を判決により確定的に解決することについての被控訴人の利益及び(β)原判決よりも有利な判決を得ることについての附帯控訴人の利益が不当に害されることがないかを論ずること(前者については、控訴取下げにより原判決が確定することを指摘し、後者については、附帯控訴の制度の目的から論ずること)。
    ヒント: 独立附帯控訴については言及しなくてもよい。

    メモ:小問(3)と(4)の順番は、以前は逆であった:「(3) Yは、Xの同意を得ることなく控訴を取り下げることができるか。  (4) 控訴が取り下げられると、訴訟はどうなるか。」。しかし、この順番であると、小問(3)について理由を付して書くと、小問(4)の解答は、「すでに小問(3)について述べたように、原判決が確定し、訴訟は終了する」とだけ書く答案が出てくる。そこで、順番を逆にすることにした。もっとも、小問(3)と小問(4)の解答の理由付が内容的に重なり合う点が多いことを考慮すると入替え後の順番を保持しつつ一つの小問にまとめることも考えられる。

  4. [L2] 建物所有者Xが不法占拠者Yに対し建物明渡請求の訴えを提起し、第一審で請求が認容された。Yが控訴したので、Xは、Yの行為により建物が損傷を受けたことを理由に、損害賠償請求を追加した。この請求の追加は附帯控訴の方式でなされるべきか。Yが控訴を取り下げた場合には、新請求についての訴訟係属はどうなるか。

    ヒント:293条。控訴審における訴えの変更の許容にも言及することが望ましく、これとの関係で、297条・143条。

  5. [L2a] 原告が被告に対して、主位的に消費貸借契約の有効を前提にして貸金の返還を求め、予備的に契約の無効を前提にして貸付金相当額の不当利得の返還を求める訴えを提起した。被告は、第一次的に金銭の受領を争い、かつ、消費貸借契約は無効であると主張した。第一審裁判所は、消費貸借契約が無効であると判断して主位請求を棄却し、予備請求を認容した。これに対して被告のみが控訴した。原告は控訴棄却を申し立てるのみで、附帯控訴を提起しなかった。控訴審は、審理の結果、契約は有効であると判断した。控訴審はどのような判決をすべきか。
  6. [L1] (a)請求を一部認容し一部棄却する第一審判決に対して、被告が判決の送達を受ける前に控訴を提起した。この控訴提起は不適法か。判決の送達から3週間後に控訴を提起した場合はどうか。(b)被告が適法に控訴を提起したとする。原告は、判決が送達されてから1週間後に附帯控訴を提起した。控訴審での審理が開始されてから、被告が控訴を取り下げた。原告の附帯控訴はどうなるか。原告の附帯控訴が判決の送達から3週間後に提起されていた場合はどうか。

  7. [L2] X(売主)とY(買主)との間の不動産売買契約において、Yが売買代金について金融機関から融資を得ることができることが条件とされていた。Yは、金融機関から融資を得ることができなかったが、不動産の価格が下落している時期でもあるので、Xは、10億円の代金支払請求の訴えを提起した。Yは、前記条件は停止条件であり、停止条件の不成就が確定しているとの抗弁を提出した。Xは、Yが故意に停止条件の成就を妨害したとの再抗弁を提出した。控訴審は、抗弁の成立を認めたが、再抗弁については特に判断することなく請求を棄却した。Xは、控訴審判決が再抗弁について判断していないことは、絶対的上告理由たる「判決に理由を付さないこと」(民訴法312条2項6号)に該当すると主張して、上告を提起した。上告審はどのように対応すべきか。

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2000年7月 8日−2020年1月8日