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破産法学習ノート2
はじめに
関西大学法学部教授
栗田 隆
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1 この「学習ノート」について 2 凡例
1 この「学習ノート」について
大学の法学部で破産法を初めて学習する学生諸君のために作成した教材です。画面を簡単に見て勉強するのもよし、プリントアウトしてゆっくり読むのもよいでしょう。
2005年1月1日から施行された新法にあわせて書き直しているところで、まだ工事中です。永久に工事中になるかもしれません。学生諸君にとって少しでも魅力的な学習材料になるように、これから徐々に増やして行きます。
誤りのないように注意しているつもりですが、誤りに気付かれた場合には、御指摘いただければ幸いです。
参考文献
- 徳田和幸『プレップ破産法[第6版]』(弘文堂、2015年03月6版発行)
- 谷口安平・監修、山本克己・中西正・編『レクチャー倒産法』(法律文化社、2013年4月5日初版1刷発行、A5判本文287頁+索引等14頁)
- 加藤哲夫『破産法[第6版]』(弘文堂、平成24年9月30日第6版第1刷発行)A5判本文416頁+事項・判例索引10頁)
- 山本克己=佐藤鉄男=畑瑞穂=山本弘『破産法・民事再生法概論』(商事法務、2012年7月10日初版1刷発行、A5判456頁)
- 三谷忠之『民事倒産法講義』(成文堂、2006年12月20日初版第1刷発行、A5判505頁)
- 小川秀樹・編著『一問一答・新しい破産法』(商事法務、2004年11月13日初版第1刷発行、A5判本文534頁)
- 中島弘雅『体系倒産法1 破産特別清算』(中央経済社、2007年7月10日第1版第1刷発行、本文+判例索引+事項索引590頁)
- [山本ほか*2010a] 山本和彦=中西正=笠井正俊=沖野眞巳=水元宏典『倒産法概説[第2版補訂版]』(弘文堂、平成18年9月15日初版1刷発行、2015年4月15日第2版補訂版発行、本文596頁+事項索引・判例索引18頁)
- [伊藤*破産・民再v3] 伊藤眞『破産法・民事再生法[第3版]』(有斐閣、2007年11月15日初版第1刷発行、2014年9月30日第3版1刷発行、1196頁(本文+判例索引+事項索引))
- 宗田親彦『破産法概説(新訂第2版)』(慶應義塾大学出版会、2005年9月21日新訂2版1刷発行)
- 全国倒産処理弁護士ネットワーク・編『論点解説新破産法(上・下)』(金融財政事情研究会、平成17年1月27日第1刷発行、A5判本文302頁+262頁)
- 倒産実務交流会・編『争点倒産実務の諸問題』(青林書院、2012年7月14日初版1刷発行、466頁(本文455頁+事項索引2頁+ほか))
- [注釈*2007a] 竹下守夫・編集代表『大コンメンタール破産法』(青林書院、2007年11月5日初版1刷発行、1195頁(本文+判例索引)
- [条解*2014a] 伊藤眞+岡正晶+田原睦夫+林道晴+松下淳一+森宏司『条解破産法[第2版]』(弘文堂、平成22年3月15日初版第1刷発行、平成26年11月30日2版第1刷発行、1942頁)
実務に関するもの
- [今中=今泉=中井*2009a] 今中利昭=今泉純一=中井康之『実務倒産法[第3版]』(民事法研究会、平成21年10月1日第3版第1刷発行、本文・事項索引・判例索引1111頁)
- [野村=石川=新宅*2013a] 野村剛司=石川貴康=新宅正人『破産管財マニュアル(第2版)』(青林書院、2013年7月19日初版1刷発行、706頁)
- [吉田=野村*2013a] 吉田清弘=野村剛司『未払賃金立替払制度/実務ハンドブック』(金融財政事情研究会、平成25年4月24日第1刷発行、254頁)
- [重政=大林*2013a] 重政伊利=大林弘幸『(裁判所書記官実務研究報告書)破産事件における書記官事務の研究──法人管財事件を中心にして──』(司法協会、平成25年5月第1刷、平成26年8月第5刷、A4判385頁+参考書式108頁+索引4頁)
外国法についての日本語文献
- 竹下守夫・監修/加藤哲夫=長谷部由起子=上原敏夫=西澤宗英『破産法比較条文の研究』(信山社、2014年8月30日初版1刷、675頁)
- 木川裕一郎『ドイツ倒産法研究序説』(成文堂、1999年3月初版第1刷)370頁
- 松村和徳・編著『オーストリア倒産法』(岡山大学出版会、2010年)
- 小梁吉章『フランス倒産法』(信山社、2005年)
- 法務府法制意見第四局『米国連邦破産法』(法務資料313号、昭和25年7月、166頁)
- 小野木常『仏蘭西破産及破産犯罪』(外国法典叢書・仏蘭西商法[II]、昭和15年、140頁)
倒産物語
- [弁護団*1998a]=木津信抵当証券被害者弁護団『金融神話が崩壊した日──木津信抵当証券被害者弁護団の活動記録──』(耕文社、1998年4月初版、463頁)の第1編・第2編 破綻した木津信用組合が販売した抵当証券のモーゲッジ債による消費者被害の救済に携わった弁護団の活動記録である。中心は消費者被害の救済であるが、被害を与えた金融機関の倒産物語も含まれている。
明治23年破産法(正確には、明治23年商法第3編破産)
- ロエスレル『日本商法典草案注解(独文)第3巻』(復刻版:新青出版;1996年)
- 松岡義正(述)『破産法』 手許で利用できる図書では出版者も出版年も不明であるが、明治35年の破産法案への言及があるから、同年以降に出版されたものであろう。本文686頁。
- 加藤正治『破産法講義』 (巖松堂、大正3年、本文612頁) 「川井文庫」→「某大学」(設立年5月1日付けの図書館印。「13.3.31」付けの除斥印。法学部が存在していれば除籍されることはなかったであろう)→某古書店→私。2020年2月という退職間際に購入した。暫く研究に活用し、適当な時期に次の世代に引き渡そう。
- 加藤正治『破産法講義(12版)』 (巖松堂、大正13年) この版では明治23年破産法(「旧商法***条」として引用されている)が現行法であり(もっとも、索引では「旧破産法」である)、大正11年破産法が新法として記述されている。現行法の条文に対応する条文が新法にある場合には、現行法についての記述は新法にも妥当することを前提にしていると見てよいであろ。現行法の条文対応する規定新法にがない場合にどのように見るべきかは、個々の記述ごとに判断すべきであろうが、新法が現行法を変更したとの記述がなければ、原則として、現行法についての記述は新法の下でも妥当することを前提にしていると見てよいであろう。
明治35年の破産法案(元法典調査会立案、明治35年10月21日公表)
下記の図書に収録されている。
- 加藤正治『破産法講義(12版)』 (巖松堂、大正13年)付録1頁−35頁
- 井上直三郎『破産・訴訟の基本問題』(有斐閣、昭和46年)405頁−413頁
大正11年破産法の立法資料
- 法律新聞社・編『改正破産法及和議法精義』(法律新聞社、大正12年7月18日、A5判851頁)
上記の図書があれば便利であるが、入手しにくい。関西大学図書館にもない。近隣の大学から相互利用で借りることはできるが、何分にも貴重な古書であり、遠慮気味になる。ただし、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されていて、「図書館送信参加館内の指定端末でログインした場合のみ閲覧できます」との由である。
2018年2月になってやっと某古書店から入手することができた。「万歳」と喜んだものの、直ぐに個人用図書として購入したことを悔いた。このような基礎的資料(今となっては史料に近い)は、次に関西大学に奉職する研究者のために、大学の図書館に収蔵されるべきものであった(今でもそうである)。教員がいったん個人で購入した図書を図書館に収蔵してもらことは至難のことである。
同書に収録されている資料は、(α)法案(β)立法理由書(γ)貴族院・衆議院の本会議並びに特別委員会における討議である。(α)と(γ)は、下記の図書(復刻版)に収録されている議事録等で代用できるであろう。なお、この議事録等は、インターネット上でも閲覧可能である(後記の「参考ページ」「大正11年破産法」の項を参照)。
- 第45回帝國議会の審議録
- 大正11年1月23日開催「破産法案外1件 議長報告・第一読会」(貴族院議事速記論第3号(大正11年1月23日)37頁−68頁。『帝國議会貴族院議事速記録40──第45回議会上大正10年──』(東京大学出版会)に収録)
- 大正11年1月27日開催「貴族院 破産法案外1件 特別委員会議事速記録 第1号」(『帝國議会貴族院委員会議事速記録17(第45回議会(二)大正10・11年)』(臨川書店、昭和60年)141頁−145頁に収録)
- 大正11年2月1日−2月17日開催「破産法案外1件 特別委員小委員会議事速記録第1号−第10号」(『帝國議会貴族院委員会議事速記録17(第45回議会(二)大正10・11年)』(臨川書店、昭和60年)149頁−261頁に収録)
- 大正11年2月17日開催「貴族院 破産法案外1件 特別委員会議事速記録 第2号」(『帝國議会貴族院委員会議事速記録17(第45回議会(二)大正10・11年)』(臨川書店、昭和60年)147頁に収録)
- 大正11年2月17日開催「破産法案外1件 第一読会ノ続」(貴族院議事速記論第20号(大正11年2月21日)476頁−482頁。『帝國議会貴族院議事速記録40──第45回議会上大正10年──』(東京大学出版会)に収録) 同日の第一読会終了後に引き続いて第二読会及び第三読会が開かれ、異議なく可決された。
- 大正11年3月2日−3月17日開催「衆議院 破産法案外1件 委員会議録(速記)第1回−第7回)」(衆議院委員会会議録第5類22号(大正11年3月2日−3月17日)。『帝國議会衆議院委員会議録33(第45回議会(三)大正10・11年)』(臨川書店、昭和60年)223頁−271頁に収録)
大正11年破産法に関する概説書
太平洋戦争前は、日本の破産法学にとって、まだ黎明期である。多くの文献においてドイツ破産法学の文献が盛んに引用されている。手許にある幾つかの図書を紹介しておこう(幾つかの図書は、高島義郎先生や福永有利先生が関西大学を退職される際に頂いたものである)。
- 加藤正治『破産法研究(第1巻−第10巻)』(有斐閣)
- 井上直三郎『破産法綱要(第1巻実体破産法)』(弘文堂、大正14年12月15日発行、大正14年12月20日再版) 日附から見て、初版と再版とに内容上の差異はないと思われる。誤植の訂正はあるかも知れないが、確認している暇はない。
- 井上直三郎『破産・訴訟の基本問題』(有斐閣、学術選書11、昭和46年、416頁)
- 松岡義正『破産法論・上巻(手続規定)』(厳松堂、昭和4年6月10日再版) ある古書店で≪加藤正治『破産法論・上巻』≫で売り出されていた。「加藤正治博士にそんな名前の本がありましたかな」、と思いつつ図書館に購入希望を出したところ、他の図書館の所蔵印のある本は、除籍印があっても収納できないとの理由で謝絶(却下)された。個人で購入してみたら、なんと、≪松岡義正『破産法論・上巻』≫であった。これでは、所蔵印の有無にかかわらず購入してもらえない。遠方の古書店にある古書は、古書店発行の目録(Webでの検索結果)を頼りに購入するのであるが、それに誤りがあったのは、これが初めてであった。
- 小野木常『破産理論の研究』(弘文堂、昭和14年1月1日再版、342頁)
- 小野木常『破産法概論』(弘文堂、昭和15年4月23日、442頁)
- 前野順一『破産管財人の研究』(司法研究報告書26輯10、司法省調査部、昭和14年3月)
昭和27年改正について
- 寺田文次『改正破産法』(東洋書館、昭和27年11月25日、本文303頁) 29頁−35頁に改正の要点が記述されている。288頁−303頁に新旧対照表がある。
隣辺領域の文献−1
- [白川*2013a]=白川方明『現代の金融政策 理論と実際』(日本経済新聞出版社、2013年1月24日1版11刷、A5判445頁)
- [岩田*2006a]=岩田規久男『金融』(東洋経済新聞社、2006年2月28日第6刷、本文+索引426頁)
- [永野*2011a]=永野亮佑『実践ストラクチャード・ファイナンス(基礎からリスク分析まで)』(中央経済社、2011年1月10日第1版1刷、本文332頁+索引3頁) いくつかの法学的事項の記述に粗さが見られる。例えば、145頁で、「動産の即時取得の要件は”平穏・公然”ですから、リース会社が自社物件であることを示すプレートのようなものを目立つところに貼ってあったりすれば、・・・当該物件を即時取得したと第三者が主張することは難しいとは言えましょう」と述べられているが、文脈からすれば、ここでは、即時取得の要件のなかの”善意・無過失”が挙げられるべきである。そうした点に注意して読む必要はあるが、全体としては、ファイナンスの実務について有益な内容が解りやすく書かれている。
- [齋藤*2010a]=齋藤誠『金融技術の考え方使い方』(有斐閣、2000年7月20日初版1刷、2010年2月25日初版5刷、本文+参考文献+索引389頁) 本書も、法学的事項については、疑問の叙述がある。例えば、272頁において、一括清算ネッティングによる信用リスクの削減について、同条項のふくまれる契約については、倒産者の相手方は「他の債権者よりも優先して倒産当事者の債権を差し押さえることができるわけである。」と述べている。一般に倒産手続開始後は、倒産財団に属する財産を個々の債権者が差し押さえることはできないのであるから、「差し押さえる」との表現は不適切である。法学的には、「優先的に満足を得る」と表現されるべきである。前記引用部分については、「倒産債権者の自己に対する債権から自己の倒産者に対する債権の満足を優先的に得ることができる」となる。そうした点に注意して読む必要はあるが、全体としては、有益な書物である。
- [矢島*2008]=矢島剛『クレジット・デリバティブと証券化のコラボレーション CDO[第2版]』(金融財政事情研究会、平成15年2月17日初版、平成20年11月17日第2版1刷。本文256頁+事項索引5頁)
- [河合=糸田*2008a]=河合祐子=糸田真吾『クレジット・デリバティブのすべて[第2版]』(財形詳報社、平成17年7月7日初版、平成20年7月23日第2版第2刷。372頁)
- [大垣*2008a]=大垣尚司『ストラクチャードファイナンス入門』(日本経済新聞出版社、1997年6月2日1版1刷、2008年3月3日22刷、A5判302頁)
- [鹿野*2013a]= 鹿野嘉昭『日本の金融制度 第3版』(東洋経済新報社、2013年6月13日発行、547頁)
隣辺領域の文献−2
- [神田=神作ほか*2013a]= 神田秀樹=神作裕之ほか『金融法講義』(岩波書店、2013年12月31日第1刷、本文504頁+資料15頁+事項索引5頁+判例索引7頁)
- [萩本*2010a]=萩本修・編著『一問一答・保険法』(商事法務。2009年初版1刷、2010年初版3刷、263頁)
- [福瀧*2010a]=福瀧博之『手形法概要[第2版]』(法律文化社、1998年7月5日初版1刷、2007年4月25日第2版1刷、2010年3月第2版2刷、477頁+索引15頁)
- [始関=高橋*2008a]=始関正光=高橋康文・編著『一問一答電子記録債権法』(商事法務、2008年4月26日初版1刷、306頁)
- [金子*租税v16]=金子宏『租税法(16版)』(弘文堂、平成23年4月15日第16版第1刷発行、957頁)
隣辺領域の文献−3
- [内田*改正民法]=内田貴『改正民法のはなし』(民事法務協会、2020年4月20日第1刷、A5判、本文150頁+資料15頁+事項索引1頁)
法解釈の方法
研究者が法律の規定について一定の主張をするとき、主張の正当化をどのように図るのか、あるいは、解釈論として許容範囲なのかそれとも立法論になるのかは、常に気になる。この視点から、次の書物が有益である。
- 内田貴『法学の誕生──近代日本にとって「法」とは何であったか』(筑摩書房、2018年30月30日初版1刷、B6判412頁) 内容豊かな書物である。
参考ページ
- 倒産事件一般
- 倒産の原因
- 明治23年民法と明治29年民法
- 大正11年破産法
- 平成民法改正
- スイス法
- オーストリー法
- ドイツ法
- デリバティブ
2 凡例
事実関係の図解において、「→」と「=>」の記号を次のように用いることにします。
- 財産等の移転:A===物====>B
- 「AからBに物が譲渡した」ないし「AからBに物を譲渡する契約がなされた」
- 請求ないし請求権:A─────500万円───→B
- 「AはBに対して500万円の支払を請求(訴求)した」ないし「AはBに対して500万円の支払請求権がある」
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- 学習ノートの同一ページまたは他のページの本文:[参考]あるいは「後述のように」という形で参照が指示されます。
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- こまごまとした注:[1], [2]・・・
- 外国法の簡単な紹介:[CL1], [CL2]
- 条文
- 判例