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民事訴訟法講義
裁判所 1関西大学法学部教授
栗田 隆 |
民訴法235条1項は、次のように規定している:「訴えの提起後における証拠保全の申立ては、その証拠を使用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続若しくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至るまでの間は、受訴裁判所にしなければならない」。文中の「裁判所」と「受訴裁判所」の意味を説明しなさい。 ヒント:『基本法コンメンタール新民事訴訟法2』(日本評論社、1998年)215頁(高見進) |
民訴法185条に、次のような文言がある:「裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができる」。民訴法268条に、次のような文言がある:「裁判所は、大規模訴訟(当事者が著しく多数で、かつ、尋問すべき証人又は当事者本人が著しく多数である訴訟をいう。)に係る事件について、当事者に異議がないときは、受命裁判官に裁判所内で証人又は当事者本人の尋問をさせることができる。」。各文中の2つの裁判所の意味について説明しなさい。 |
人事訴訟法40条1項柱書きの中に、次のような文言がある:「当該裁判をした家庭裁判所(中略)の裁判官の所属する家庭裁判所」。この文言中の2つの「家庭裁判所」の意義の違いについて説明しなさい。 ヒント:もし、2つの「家庭裁判所」の意義が同一であれば、上記の文言は「当該裁判をした家庭裁判所」で十分である[4]。 |
序列 | 裁判所の種類(裁判権の範囲を定める規定) | 地理的配置 | 合議体・単独性の別 | 管轄 |
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1 | 最高裁判所 (裁7条・8条) |
全国に1 | 合議制(裁9条)
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上告審
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2 | 高等裁判所 (裁16条・17条) |
全国に本庁8 特別の支部として、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所がある(知的財産高等裁判所設置法2条) |
合議制
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控訴審
上告審
第一審 |
3 | 地方裁判所 (裁24条・25条) |
全国に本庁50 [各都府県に1、北海道に4(札幌、旭川、釧路、函館)] | 原則として単独制(裁26条1項)。 例外的に合議体により裁判する場合として、次の場合がある(裁26条2項)。
合議体の構成員の数は、原則として3人であるが(裁26条3項)、大規模訴訟事件や特許権等に関する訴訟事件については、5人の合議体で審理・裁判することができる(民訴269条・269条の2)。 |
第一審
控訴審
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3 | 家庭裁判所 (裁31条の3) |
全国に本庁50 [各都府県に1、北海道に4(札幌、旭川、釧路、函館)] | 第一審 | |
4 | 簡易裁判所 (裁33条・34条) |
全国に438(2007年9月3日に閲覧した最高裁の「裁判所の組織」のページによる) | 単独制(裁35条) | 第一審
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最判平成1.11.20民集43−10−1160[百選*1998a]6事件 |
事実の概要 千葉県知事が昭和天皇の病気快癒を願う県民記帳所を設置し、これに県の公費を支出した。Xは、この公費支出は違法であり、昭和天皇が不当利得した記帳所設置費用相当額の返還債務を平成天皇が相続したと主張して、千葉県に代位して、知事に対し損害賠償を、天皇に対し不当利得返還を求める訴えを提起した。 |
判 旨 「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である。したがって、訴状において天皇を被告とする訴えについては、その訴状を却下すべきものであるが、本件訴えを不適法として却下した第一審判決を維持した原判決は、これを違法として破棄するまでもない」。 |