関西大学法学部教授 栗田 隆

民事執行法の練習問題

---レベル1・2---


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解答にあたっては、次の点に注意しなさい。

ヒントについて


強制執行総則

  1. [L1]Xは、大学教授であるYに100万円貸し付けた。その際、Yが作成してXに差し出した借用証書に印鑑証明付きの印が押してあり、しかも、「私が弁済期に債務を弁済しない場合には、直ちに強制執行を受けても構いません」と書いてある。Xは、この借用証書を提出して強制執行の申立てをすることができるか。
  2. [L1]Xの土地上に無断で建物を建築したYに対してXが建物収去土地明渡請求の訴えを提起し、請求認容判決が確定した。その建物は、口頭弁論の終結後にZに譲渡され、建物の所有権移転登記がなされていた。そのことを知らないXがYを執行債務者とする執行文を得て、強制執行の申立てをした。建物収去も執行官に任せることにした。執行官が執行しようとしたところ、Zが出てきて、「この建物は私のものであり、Yの所有物ではないから執行しないでほしい」と言って、登記事項証明書を示した。執行官は、執行できるか。Xはどうしたらよいか。なお、執行保全のための仮処分は、なされていなかったものとする。
  3. [L1・類題]Xの土地上に無断で建物を建築したYに対してXが建物収去土地明渡請求の訴えを提起し、請求認容判決が確定した。その建物は、口頭弁論の終結後にZに賃貸され、現在,Zが占有している。そのことを知らないXがYを執行債務者とする執行文を得て、強制執行の申立てをした。建物収去も執行官に任せることにした。執行官が執行しようとしたところ、Zが出てきて、「この建物は私がYから賃借して占有しているから執行しないでほしい」と言って、執行官に賃貸借契約書を提示した。執行官は、建物収去・土地明渡しの強制執行をすることができるか。Xはどうしたらよいか。なお、執行保全のための仮処分は、なされていなかったものとする。

  4. [L1・類題]Xの土地上に無断で建物を建築したYに対してXが建物収去土地明渡請求の訴えを提起し、請求認容判決が確定した。その建物は、口頭弁論の終結後にその建物の隣に住むZに譲渡され、建物の所有権移転登記がなされていた。Zは、その建物をAに賃貸し、現在、Aが建物を占有している。そのことを知らないXがYを執行債務者とする執行文を得て、強制執行の申立てをした。建物収去も執行官に任せることにした。執行官が執行しようとしたところ、Aが出てきて、「この建物は私がZから賃借して占有しているから執行しないでほしい」と言って、執行官に賃貸借契約書を提示した。さらにAから連絡を受けたZが出てきて、「この建物は私のものであり、Yの所有物ではないから執行しないでほしい」と言って、登記事項証明書を示した。執行官は、執行できるか。Xはどうしたらよいか。なお、執行保全のための仮処分は、なされていなかったものとする。

  5. [L1]「被告は原告に、2000年4月1日までに別紙目録記載の不動産を明け渡せ」という判決が確定した。原告は、2000年3月8日の時点において、判決正本に執行文を得ることができるか。期限の到来は、誰が判断するのか。
  6. [L1]XがYに対してX所有の機械の引渡しを求める訴えを提起したところ、Yが修理代金200万円を被担保債権とする留置権の抗弁を提出し、「被告は、原告が被告に200万円支払うのと引換に、別紙目録記載の機械を原告に引き渡せ」との判決が確定した。Xは、どの段階でYに200万円の支払またはその提供をしたことを証明しなければならないか。判決正本に執行文を受ける段階か、それとも執行開始の段階か。
  7. [L1]「被告(Y)は原告(X)に金1500万円を支払え」という趣旨の判決が確定した。やむなく、Yは、全額を支払った。それにもかかわらず、Xがこの確定判決に基づいて強制執行を申し立ててきた。Yは、どうしたらよいか。
  8. [L1]Xは、友人Aにパソコンを貸した。貸してから1週間後にAから電話がかかってきた。「大変だ。学生ローンをはらえなくなったので、債権者が強制執行をかけてきて、借りたパソコンまで差し押さえられた。どうしよう」。執行官がこのパソコンを差し押さえたことはことは、適法か。Xは、どうしたらよいか。
  9. [L1]Xの不動産が、偽造文書により勝手にA名義にされた。Aの債権者がその不動産について強制競売を申し立てた。Xは、どうしたらよいか。
  10. [L1]金5000万円の支払を命ずる第一審の仮執行宣言付き判決に基づいて債務者の不動産について強制競売が開始されたが、控訴審でその判決が取り消され、請求棄却判決が確定した。被告が何もしなくても強制執行は自動的に停止されるのか、それとも、被告は何らかの行動をとらなければならないか。控訴審での審理が長引きそうであり、その間に競売手続が完了しそうな場合には、被告はどうしたらよいか。
  11. [L2]債権者Xが債務者Yに対して、1000万円の債権を有している。これについて給付判決が確定したが、Xが執行申立てをする前にYが死亡した。ZがYの相続人であることが判明したので、XがZを被告にして承継執行文付与の訴えを提起したところ、Zが反対債権があるから相殺すると主張した。裁判所は、反対債権の存在を認めて請求を棄却することができるか。
  12. [L1]債務者Yに対して1000万円の支払を命ずる判決が確定している。債権者Xが不動産の強制競売の申立てをしてきたので、Yは親類縁者に頼み込んで200万円を融資してもらい、これでXに一部弁済をし、残金について6ヶ月の弁済猶予を得た。Yは強制執行の停止を申し立てることができるか。6ヵ月後に再び200万円の一部弁済をして、6ヶ月の弁済猶予を得た場合はどうか。

非金銭執行

  1. [L1]神戸市内に住所を有するXは、大阪市内で賃貸アパートを経営している。Yはその賃借人である。Yが賃料を支払わないので、Xは賃貸借契約を解除し、Yに対して明渡しを命ずる判決を得た。Xは、明渡しの強制執行をどの機関に申し立てるべきか。明渡しの強制執行の日に、Xは執行の現場に行かなくてもよいか。
  2. [L1]Yに対して建物の明渡しを命ずる判決が確定し、強制執行が申し立てられた。執行官が当該建物に居住するYに対して明渡しの催告をし、その公示をした。Yから任意の明け渡す旨の連絡がないので、引渡期限の日に当該建物に出向いてドアをノックした。しかし、返事がない。近所の人の話では、10日ほど前に引っ越したとのことであり、電気とガスの供給も止まっている。しかし、建物の中に多数の動産(机、ベット、タンス等)が残っている。執行官は、どうしたらよいか。荷物の中に、明渡しの強制執行はどのように行われるか。があった場合に、それはどのように扱われるか。残存する動産の中に、大手リース会社のリース物件であることを示すシールが張られている30万円ほどのコンピュータがあるが、これはどう処理すべきか。
  3. [L1]Xが通行権を有する通路にYが柵を設置して通行不能にした。Xは、Yを被告にして、妨害物排除請求、ならびに通行妨害禁止の訴えを提起して勝訴判決を得た。妨害物排除(柵の撤去)の強制執行は、どのようになされるか。妨害物が排除された後で、また別の妨害物がYによって設置された。その排除のためにまた訴えを提起するのは、Xにとって重い負担である。Xは、どのような手続でそれを排除してもらうことができるか。今後柵を設置させないようにするためには、どのようにしたよいか。
  4. [L1]Xの隣の会社Yが夜間の騒音を出すようになった。Xは、Yに対して騒音差止請求の訴えを提起し、請求認容判決を得た。それにもかかわらず、Yは夜間騒音を出している。判決の強制執行はどのようにして行われるか。
  5. [L1]Xは、Y出版社の捏造記事により名誉を害された。Yに対して、株式会社D新聞社の発行するD新聞に、当該記事が捏造であることが裁判所により認定されたとの事実を記した広告を掲載することを命ずる判決が確定した。それにもかかわらず、Yがこの広告を掲載する気配はない。Xはどうしたらよいか。
  6. [L1]XはYから不動産を購入する契約を締結したが、Yが所有権移転登記に応じない。Xが訴えを提起し、「被告は、原告が3000万円を支払うのと引換えに、別紙目録記載の不動産について、平成11年2月8日の売買を原因とする原告への所有権移転登記手続をせよ」との判決が確定した。この判決に基づいて、Xはどのような手順を経て所有権移転登記を得ることができるか。
  7. [L1]Xは、Yに小林古径の名画を1年間に限り貸すことにした。Yは、この絵をXの立会いのもと、Yの事務所の応接室に飾った。返還時期が来たので、Xが返還を求めると、Yは、「あの絵はもともと私の先代の所有物であったものをあなたの先代が奪い取ったものであり、返すわけにはいかない。今は、秘密の場所に隠してある」と答えた。Xは、返還請求の訴えを提起し、勝訴判決を得たが、Yは、それでも返還しない。Xはどのような強制執行を申し立てたらよいか。

保全処分

  1. [L1]Yは、大阪市内に住んでいる。その妻Aが金融業者Xの営業所を訪れ、Yの代理人として200万円を借り受けた。Xは、貸付けにあたって、Aから代理権授与証明書と印鑑証明書を提出してもらうと共に、「Yはある会社の社員で朝から晩まで働いているが、今日は休日で自宅にいる」とのAの説明を信用して、Yの自宅に電話して、電話口に出た者がYであること及びAへの代理権授与の事実と借入れの意思があることを確認をし、その旨の記録を作成した上で、Yの代理人Aとの間で消費貸借契約書(年利率10%、弁済期6月後)を作成して、200万円を貸し渡した。しかし、弁済期になっても弁済がないので、Xは、前記貸付債権を被保全債権として、大阪地方裁判所に、Y所有の不動産に対して仮差押命令を申し立てた。裁判所は、Yを審尋することなく仮差押命令を発し、その執行がなされた。しかし、Yは、Aと家庭内離婚の状況にあり、Aに前記代理権を授与したことはなく、また、Xから確認の電話があった日には会社に勤務していたと主張し、Xに対して抗議をし、速やかに仮差押命令の申立てを取り下げるように求めた。しかし、Xがこれに応ずる様子がないのみならず、Xから前記貸金債権について訴えを提起する様子もない。Yは、この仮差押命令を取り消してもらうためにはどうしたらよいか。2つの方法を説明しなさい(仮差押えの執行の取消しについては言及しなくてよい)。
  2. [L1]債権者Xは、債務者Y所有の不動産に対して仮差押命令の申立てをしたが、却下されてしまった。Xはこれにはなはだ不満である。Xはどうしたらよいか。
  3. [L1](1)Xは、Yから不動産を購入し、代金を支払ったにもかかわらず、Yが所有権移転登記に応じない。Xは、当該不動産について処分禁止の仮処分命令の申立てをした。裁判所は、仮処分命令の発令に当たって、仮処分解放金を定めることができるか。(2)Xは、Aに対して1000万円の金銭債権を有している。Aが強制執行を回避するためにその所有不動産をYに廉価で売却した。XがYに対して詐害行為取消訴訟を提起する準備として、その不動産について処分禁止の仮処分命令の申立てをしている場合はどうか。
  4. [L1]Xの土地上に無断で建物を建築したYに対してXが建物収去土地明渡請求の訴えを提起するに先立って、その建物の処分禁止の仮処分命令及び占有移転禁止命令の申立てをした。仮処分命令が発令され、その執行がなされた。それから、Xは、Yに対して、予定していた前記訴えを提起した。しかし、訴状が裁判所に提出された後・Yに送達される5日前に、Yは、建物をZに譲渡するとともに、所有権移転登記を申請し、即日、その登記がなされた。

    (1)前記訴訟の口頭弁論において、Yは、「自分はもはや建物の所有者ではないので建物の収去義務を負わず、また土地を占有していないので土地の明渡義務を負わない」と主張した。裁判所は、この主張にどのように対応すべきか。

    (2)Yを被告にして訴訟が進められ、請求認容判決が確定した場合に、その判決の既判力は、Zに及ぶか。

    (3)Yを被告にして訴訟が進められ、請求認容判決が確定した場合に、Xは、その判決によって建物収去・土地明渡しの強制執行をしてもらうためには、どのようにしたらよいか。

  5. [L2・類題]BからCに所有権移転登記がなされ、現在Cが占有している土地がある。Bは、BからCへの所有権移転登記は、Bの意思に基づくことなく偽造文書によりなされたものであると主張して、Cを被告にして、所有権確認請求、所有権移転登記抹消請求及び土地明渡請求の訴えを提起することにした。それに先だって、その土地について、処分禁止の仮処分命令及び占有移転禁止の仮処分命令を申し立てた。仮処分命令が発令されて、その執行がなされてから、Bは、Cに対して、予定していた前記の訴えを提起した。

    その訴訟の係属中に、Dが、Cからその土地を安値で買い受けて、Cから引渡しを受けるともに、所有権移転登記を経由した。

    BのCに対する請求を全部認容する判決が確定した後で、Bは、どのようにしたらよいか。

  6. [L1・類題]AからBに、BからCに所有権移転登記がなされ、現在Cが占有している土地がある。Bは、BからCへの所有権移転登記は、Bの意思に基づくことなく偽造文書によりなされたものであると主張して、Cを被告にして、所有権確認請求、所有権移転登記抹消請求及び土地明渡請求の訴えを提起することにした。それに先だって、その土地について、処分禁止の仮処分命令及び占有移転禁止の仮処分命令を申し立てた。仮処分命令が発令されて、その執行がなされてから、Bは、Cに対して、予定していた前記の訴えを提起した。

    その訴訟の係属中に、Aが、AからBへの所有権移転登記は、Aの意思に基づかずに偽造文書によりなされたものであると主張し、一定の和解金を支払うので、AからBへの所有権移転登記の抹消とBからCへの所有権移転登記の抹消に応ずるようにBとCに交渉してきた。Cはこれに応ずることにしたが、Bは拒絶した。そこで、Aは、やむなく、Cに和解金を支払って、Cから土地の引渡しを受けるともに、CからAへの所有権移転登記を申請することにし、その引渡し及び登記がなされた。

    (1)BC間の訴訟はどうなるか。その訴訟の係属中に、Aはどうしたらよいか。

    (2)AがBC間の訴訟に参加することなく放置していて、BのCに対する請求を全部認容する判決が確定した場合に、その判決の効力は、Aに及ぶか。Aは、どのように対応したらよいか。


不動産の強制競売

  1. 神戸市内に住所を有する債権者が、京都市内に住所を有する債務者の大阪市内にある不動産について、強制競売の申立てをしたい。どの裁判所に申し立てるべきか。

  2. 債務者の不動産に対して、強制競売開始決定がなされた。決定書は、債務者に送る必要があるか。普通郵便で送れば足りるか。債務者の住所がわからない場合は、どうなるか。

  3. 債務者Yの不動産について強制競売開始決定がなされた。差押えの登記が9月12日、債務者への開始決定書の送達が9月15日になされた。ところが、Yは9月13日に不動産をAに譲渡し、同日付けの所有権移転登記がなされていた。差押えの効力が生ずるのはいつか。Aは、所有権取得を差押債権者に対抗できるか。
  4. 差押えの登記がなされている不動産について債務者が第三者と売買契約を締結した。債務者からその第三者への所有権移転登記は可能か。
  5. 債務者の住宅が差し押さえられた。債務者は強制競売手続中もその住宅を使用することができるか。
  6. 債権者Xの申立てに基づき、債務者Yの不動産について競売開始決定がなされた。Yの振り出した手形の適法な所持人であるAは、執行裁判所に手形を提出して配当要求することができるか。

  7. 債権者Xの申立てに基づき、債務者Yの不動産について競売開始決定がなされた。Yに雇われていて賃金債権を有するBは、売却代金から賃金の支払を受けたい。一番簡単な方法はなにか。
  8. 北国で、債務者所有の一戸建て住宅が差し押さえられた。しかし、債務者は夜逃げをして、その住宅にいない。雪の季節になった。雪下ろしを定期的にしないと、雪の重みで住宅がつぶれる。差押債権者はどうしたらよいか。
  9. 債務者が借地上に有している住宅が差し押さえられた。地主が差押債権者に「債務者が地代を支払わないので、土地賃貸借契約を解除する予定である」と通告してきた。差押債権者はどうしたらよいか。
  10. 建物の通常の売買の場合には、売主が購入希望者に建物の内部を自らすすんで見せてくれる。強制競売の場合には、買受希望者は、建物の内部の状況をどのようにして知ることができるか。
  11. 債務者の不動産が差し押さえられた。差押えの前に設定登記がされている抵当権は、売却により効力を失うか。差押え後に設定登記がされた抵当権はどうか。

  12. Y所有の貸ビルが2000年5月8日に賃貸に供され、各賃借人に各賃借部分が引き渡された。2001年5月8日にAのために抵当権が設定されその登記が経由された。2002年5月8日に一般債権者Bの申立てに基づきその貸しビルが差し押さえられた。(α)当初からの賃借人Cは、競売による買受人Dに賃借権を主張できるか。(β)2001年6月8日にそのビルの一室を弁護士事務所として賃借して引渡しを受けたEの賃借権はどうか。
  13. 債務者の土地が債権者Aの申立てにより差し押さえられ、その土地上の建物が債権者Bの申立てにより差し押さえられた。裁判所は、土地と建物とを一括して売却することができるか。

  14. 差し押さえられた土地の上に建物がある。この建物は、強制競売の対象外である。買受希望者にとって、土地を買い受けた場合に、この建物の収去を請求できるか否かが重要な問題となる。買受希望者は、どのような資料を閲覧してこの点を判断したらよいか。

  15. 抵当不動産が一般債権者の申立てにより差し押さえられた。執行裁判所の裁判所書記官が抵当権者に債権の届出を催告したところ、優先弁済を受けることのできる被担保債権は3000万円であると届け出てきた。裁判所は、売却基準価額を3000万円と定めた。この不動産を売却することには、どのような問題があるか。それを回避するために、どのような措置がとられるか。
  16. 現在の執行実務においてもっとも一般的にとられている不動産の売却方法は何か。それはどのようなものか。次のキーワードを使って簡単に説明しなさい:入札書、改札期日を記載した封筒、執行官、書留郵便、送付。
  17. Aは、売却基準価額1億円の不動産を1億2000万円で買受けようと考えている。彼が提供すべき保証金の額は、通常いくらか[ヒント:民執規則39条1項]。保証金を提供して買受申出をし、売却許可決定が確定したが、その後不動産の購入の必要がなくなった。買受人は、買受申出をキャンセルして保証金を返してもらえるか。代金を支払わない場合には、保証金はどうなるか。
  18. 木造建物が差し押さえられた。買受申出後に建物にダンプカーが突っ込み、建物が損傷した。最高価買受申出人が、売却許可決定前にそのことを知った。どうしたらよいか。買受人が売却許可決定の確定後にそのことを知った場合、彼はどうしたらよいか。

  19. 失業したために債務を払えなくなった債務者が差し押さえられた不動産に居住している。買受人は、執行債務者に、何時から建物の明渡しを求めることができるようになるか。明渡しを求めることができるようになった日に、買受人が債務者に明渡しを求めると、「家族が重い病気になり、治るまで3月かかる。それまで、待ってくれ」と言われたので、待つことにした。3月後に行くと、「転居の費用を工面中なので、2月待ってくれ」と言われたので、待つことにした。2月後に行くと、「転居費用は工面できたが、転居先を探しているので、もう1月待ってくれ」と言われた。もう1月待ってもよいか。どのような手続で明渡しを求めることができるかにも言及しながら、答えること。

  20. 更地であれば5000万円と評価され、法定地上権が成立すれば2000万円で売却可能と予想される土地がある。この土地に4000万円の建築費をかけて建物が建築された。建築後の減価を考慮すると、建物のみの価値は3000万円と評価されると予想される。これらの不動産には、抵当権等はないとする。所有者に対して3500万円の債権を有する債権者の申立てに基づき、土地と建物について強制競売手続が開始された。債務者は、不動産を少しでも留保したいと考えている。前記の評価予想価額が売却基準価額になるとした場合に、裁判所はどの不動産を売却することになるか。その場合に、土地と建物との関係はどうなるか。
  21. 更地であれば5000万円と評価され、法定地上権が成立すれば3000万円で売却可能と予想される土地がある。土地所有者が3000万円の建築費をかけて建物を建築して、この土地に長年住み続けた80歳になる両親と同居している。建築後の減価を考慮すると、建物のみの価値は1000万円と評価されると予想される。所有者に対して1000万円の債権を有する債権者の申立てに基づき、土地と建物について強制競売手続が開始された。前記の評価予想価額が売却基準価額になるとした場合に、裁判所はこれらの不動産をどのように売却することができるか。債務者に最も有利な売却は何か。その場合に、土地と建物との関係はどうなるか。なお、これらの不動産には、抵当権等はないものとする。

  22. 売却代金から手続費用を支払った後の配当原資が3000万円ある。次の場合の売却代金の分配方法は、代金交付か配当か。

    1. 売却代金から支払を受けるべき債権者は差押債権者のみで、その債権額が5000万円の場合。
    2. 売却代金から支払を受けるべき債権者が、2000万円の債権を主張する差押債権者と、800万円の債権を主張する配当要求債権者である場合。
    3. 売却代金から支払を受けるべき債権者が、2000万円の債権を主張する差押債権者と、800万円の債権を主張する配当要求債権者と1500万円の債権を主張する抵当権者である場合。

  23. 配当要求の終期がある年の3月2日とされた。5月10日に売却許可決定がなされ、代金が6月10日に納付された。債務者の従業員であるAが2月8日に賃金債権について配当要求していた。Aは、配当に与かる見込みはあるか。税務署が3月20日に所得税債権について交付要求していた場合はどうか。

  24. ある年の1月15日に債務者の不動産が差し押さえられた。配当要求の終期が同年3月2日とされた。5月10日に売却許可決定がなされ、代金が6月10日に納付された。強制競売の申立債権者とは別の債権者Aのために1月9日に仮差押えの登記がなされていた。Aが配当を受けるためには、配当要求が必要か。執行裁判所は、仮差押債権者Aの存在及びその債権額をどのようにして知るのか。2月8日に仮差押えの登記をした債権者Bについては、どうか。
  25. 不動産の強制競売が行われ、その売却代金から手続費用を支払った後の配当原資が3000万円ある。Aが極度額3500万円の根抵当権を有していてその被担保債権額は2000万円であり、差押債権者Bの債権額は1000万円、配当要求債権者Cの債権額も1000万円である。各債権者への配当額は、どのようになるか。その配当表に対して、債権者BがAの債権は存在しないと主張して配当異議の訴えを提起した。受訴裁判所は、Aの債権が全額存在しないことを認めた。多数説によれば、配当表は、どのように変更されるべきことになるか(民事執行法制定前の見解は無視すること)。
  26. 不動産の強制競売が行われ、その売却代金から手続費用を支払った後の配当原資が3000万円ある。Aが極度額3500万円の根抵当権を有していてその被担保債権額は2000万円であり、差押債権者Bの債権額は1000万円、配当要求債権者Cの債権額も1000万円である。各債権者への配当額は、どのようになるか。その配当表に対して、執行債務者がAの債権は存在しないと主張して配当異議の訴えを提起した。受訴裁判所は、Aの債権が全額存在しないことを認めた。配当表は、どのように変更されるべきことになるか。

  27. Aに対して2000万円の債権を有するXは、A所有の不動産の強制競売を申し立てた。Aの別の債権者Yが3000万円の債権を主張して配当要求した。不動産の売却代金から手続費用を控除した配当原資は、1000万円である。執行裁判所はXに400万円、Yに600万円を与える配当表を作成した。配当異議の申出がなかったため、そのとうりに配当がなされた。その後に、Yの3000万円の債権は当初から不存在であることが判明し、Xは、Yに対して、Yが受領した配当金600万円は当該競売手続においてXが受領すべき金銭であったと主張して、その不当利得返還請求の訴えを提起した。どうなるか。[ヒント:最高裁判所平成10年3月26日第1小法廷判決(平成8年(オ)第983号)]

  28. Xは、Yに対して5000万円の商事債権を有し、かつ執行証書も有する。その債権の履行期は、1992年4月3日に到来した。Y所有の時価1億円の不動産に対してAの申立てにより不動産競売手続が開始されたので、Xが配当要求した。ところが、Aが追加手続費用を納付しないために、競売手続は取り消され、取消決定は1995年4月3日に確定した。Xが1998年4月3日に動産執行を申し立てたところ、Yが請求異議の訴えを提起し、執行債権の消滅事由として時効を主張した。これは認められるか(時効期間は商法522条により5年であるとする)。[ヒント:最高裁判所 平成11年4月27日 第3小法廷 判決(平成9年(オ)第2037号)]

  29. Yは、Aから2000万円を借り受け、AのためにY所有の更地に抵当権を設定し、その更地に建物を建築しないことを約束した。ところが、Yが約束に反してその土地に建物を建築した。Aが抵当権を実行し、土地のみが競売され、Xが買い受けた。Xは、Yを相手に引渡命令を申し立てた。裁判所は、建物の収去まで命ずることができるか。執行裁判所は、競売対象外の建物が存在したままでも土地の引渡命令を発することができるか。[ヒント:最高裁判所 平成11年10月26日 第3小法廷 決定(平成11年(許)第25号)]

動産執行

  1. 債務者が土地を所有している。土地の評価額は、5000万円である。土地上に枝振りのよい1本の松の木があり、15万円で売れそうである。債務者の財産は、これだけであるとする。1000万円の債権を有する債権者Aが土地の強制競売を申し立てた場合に、差押えの効力は庭木にも及ぶか。10万円の債権を有する債権者Bは、庭木だけに対して強制執行を申し立てることができるか。その場合の執行方法は何か。債権者Aのために土地が先に差し押さえられた場合と、債権者Bのために庭木が先に差し押さえられた場合とに分けて答えなさい。

  2. 6人家族の大学教授が借家住まいをしている(その場所をAとする)。研究は、大学ですることにしているが、大学の研究室が手狭になったので、大学の近くでマンションを借り、そこに研究資料等を置くことにした(この場所をBとする)。経済的に無理があり、債務を弁済できなくなった。債権者が動産執行を申し立てようと思うが、執行対象はどのように特定すべきか。「場所Aにあるグランドピアノ」という形で個々の動産を特定する必要があるか。

  3. 農協が酪農家に5000万円融資したが、弁済が得られない。牧場は、銀行のために抵当権が設定されている。牧場には、牛が100頭いる。牛に対する金銭執行は、どのような執行方法になるか。執行官は、差し押さえた牛を農協に保管させることができるか(民執規則104条1項)。子牛が生まれた。親牛に対する差押えの効力は、子牛にも及ぶか。

  4. 大学教授が自宅で動産執行を受けた。講義ノートや講義要項などの作成に使用しているコンピュータ(債務者所有のもの)まで差し押さえられ、売却されそうである。どうしたらよいか。なお、彼は、法学部に勤務していて、他の普通の法学部教授と同様に、自宅で仕事をすることが多く、また、彼の勤務する大学では、校費で購入した備品を自宅で使用することを一切禁止しているものとする。
  5. 債務者の自宅にある動産が差し押さえられた。執行官は、その動産を債務者に保管させることができるか。保管させる場合に、差し押さえられたものであることを示す紙を目的動産に貼付することは必要か。しなければどうなるか。
  6. 債権者Aの申立てに基づき、債務者Bの自宅にある動産が執行官Vにより差し押さえられ、自宅が売却場所として指定され、いわゆる道具屋Cがやって来て、全部買受けた。それを債務者の父親Dが買い戻して、債務者に使用させた。3月後にまた、債権者Aが別口の債権についての執行正本に基づき動産執行の申立てをした。執行官Vは、債務者が占有しているその動産を差し押さえることができるか。これに対して、Dはどのような対抗措置をとることができるか。

債権執行

  1. [L1]京都市内に主たる営業所を有する債務者Yが大阪市内に本店を有するA銀行の本店に預金口座を有している。神戸市内に主たる営業所を有する債権者Xは、債権執行によりこの預金債権から満足を得ようと考えている。どの執行機関に執行申立てをしたらよいか(できるだけ詳しく特定すること)。

  2. [L1]Xは、Yに100万円の債権(α債権)を有し、YはZに対して250万円の債権(β債権)を有している。Xは、α債権の満足のために、β債権全額の差押えを申し立てた。裁判所は、全額を差し押さえる旨の差押命令を発することができるか。Xは、Zからβ債権全額の支払を受けることができるか。

  3. [L1]Xは、Yに100万円の債権(α債権)を有し、YはZに対して200万円の債権(β債権)を有している。Xの申立てに基づき執行裁判所がβ債権について差押命令を発する際に、裁判所はβ債権の存在に疑問をもった。裁判所はZを審尋することができるか。

  4. [L1]YがZに対して400万円の債権(β債権)を有している。AがYに対する200万円の債権に基づいて、β債権のうち200万円部分を差し押さえた。翌日にBがYに対する300万円の債権に基づいて、β債権全額(400万円)を差し押さえた。それぞれの差押えの効力はどうなるか。β債権の弁済金はどのように分配されるか。

  5. [L3]YがZに対して300万円の債権(β債権)を有している。AがYに対する200万円の債権に基づいて、β債権のうち200万円部分について差押命令の申立てをし、差押命令がある年の9月10日にZに送達された。BもYに対する200万円の債権に基づいて、β債権のうち200万円部分について差押命令の申立てをし、その差押命令が同年9月15日にZに送達された。CもYに対する200万円の債権に基づいて、β債権のうち200万円部分について差押命令の申立てをし、その差押命令が同年9月16日にZに送達された。いずれの差押命令も、Yからの執行抗告なしに確定した。Zは、B及びCの申立てに基づく差押命令を見落として、うっかり同年9月30日にAに200万円支払った。その後で、BとCからそれぞれ200万円の支払を請求された。Zは、どうしたらよいか。

  6. [L1]Yは、Z会社の従業員である。税金や社会保険料等の公租公課を除いた手取り給料は、月20万円である。Yの債権者は、このうちどれだけの金額を差し押さえることができるか。手取額が80万円の場合はどうか。

  7. YがZに対して350万円の債権(β債権)を有している。Yの債権者Aが200万円の債権に基づいてβ債権のうち200万円を差し押さえた。債権者Bが100万円の債権に基づき配当要求してきた。
    1. Zは、執行手続に巻き込まれたくないので供託したい場合、どれだけの金額を供託できるか。
    2. Zは、できるだけ多くの金額を長年の付き合いのあるYに直接支払いたい場合、Zが供託しなければならない金額はいくらか。

  8. YがZに対して350万円の債権(β債権)を有している。Yに対して200万円の債権を有するXの申立てに基づき、執行機関がβ債権のうち200万円部分について差押命令と転付命令を発し、これらの命令は、6月1日にZに送達された。それから間もなくしてZについて破産手続が開始され、β債権の支払がまったくなされないまま、破産者を免責する決定(免責決定)が確定した。Xは、Yに200万円の支払を求めることができるか。

  9. Yは、Zに対して500万円の債権を有している。Yの債権者Xがこの債権の差押えを申し立て、差押命令が5月1日に第三債務者Zに送達され、5月3日に債務者Yに送達された。他方、その債権については、同じ年の4月1日にYと別の債権者Aとの間で債権担保のために譲渡する旨の契約が締結されていた。4月1日付けの確定日付のある通知書が作成され、Aが所持していた。Xによる債権差押えの動きを察知したAは、債権譲渡の通知書を急遽発送し、通知書は5月2日にZに到達した。XとAとでどちらが勝つか。

  10. Aに対して500万円の債権を有するXは、Aの不動産の賃借人Bに対するAの賃料債権(月額10万円)を差し押さえた。6ヶ月後にAがこの賃貸不動産をYに譲渡し、その登記がなされた。Bは、賃料を誰に支払うべきか。[ヒント:最高裁判所 平成10年3月24日 第3小法廷 判決(平成7年(オ)第514号)]

  11. Aの債権者Xは、AとY生命保険会社との間で締結されている生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた。XがY生命保険会社から解約返戻金請求権を取り立てるためには、生命保険契約が解約されることが必要である。Xはその解約をすることができるか。[ヒント:最高裁判所 平成11年9月9日 第1小法廷 判決(平成10年(受)第456号)]

  12. 債権者Xは、債務者AがY銀行吹田支店内の貸金庫に家族の系図とともに有価証券を保管しているとの話を聞きつけた。Xは、その有価証券に対する動産執行を申し立てた。申立てを受けた執行官がY銀行に対してAの有価証券の任意の提出を求めたが、Y銀行はこれに応じなかった。執行官は、Aに対する債務名義で、Y銀行吹田支店内に強制的に立ち入って、Aの財産を捜索することができるか。できない場合には、Xは、どうしたらよいか。[ヒント:最高裁判所 平成11年11月29日 第2小法廷 判決(平成8年(オ)第556号)]

  13. Yの債権者Xは、YのBに対する500万円の債権を差し押さえ、転付命令を得ようと思う。ところが、その債権には、ZのYに対する1000万円の債権の担保のために質権が設定されている。このことが明らかな場合でも、執行裁判所は転付命令を発することができるか。転付命令を発することができるとして、転付命令確定後に質権が実行されると、どうなるか。[ヒント:最高裁判所 平成12年4月7日 第2小法廷 決定(平成11年(許)第42号)]

  14. Hは、S所有の不動産上に抵当権を有している。その不動産には賃借人Mがいる。Sの一般債権者Gが賃料債権を差し押さえた。Hは、抵当権に基づきその賃料債権から優先弁済を得ようと思う。どうしたらよいか。自ら差し押さえることなく、債権執行事件において配当要求することで足りるか。[ヒント:最高裁判所 平成13年10月25日 第1小法廷 判決(平成13年(受)第91号)]

担保執行

  1. XがYに2000万円を貸し付けた。これを被担保債権としてYの不動産に抵当権が設定され、登記が経由された。Yが債務を弁済しないので、Xは、抵当権の実行として競売を申し立てたい。抵当権の存在を証明する文書としてどのような文書を提出して競売申立てをするのが通常か(最もよく用いられる文書を一つあげ、なぜその文書でもよいとされているのかも説明すること)。

  2. Xは、Yに代金後払いで機械を販売した。当該機械には、機械の製造メーカーが打刻した固有の番号があり、売買契約書には、その機械の機種等とともに固有番号も記載されている。Yが代金を支払わないので、動産売買先取特権(民法311条5号・321条)を実行したい。しかし、Yは、機械が売却されると営業ができなくなるから先取特権を実行しないでくれと言っている。Xは、先取特権の実行のためにどうしたらよいか。

  3. Zがある機械を販売店Yに発注し、Yがその機械をメーカーであるXに発注し、機械はXからZに直送された。Zが代金を支払う前に、Yの経営破綻が表面化した。Xは、Yに対する代金債権を、民法304条の物上代位により、YのZに対する代金債権から回収したい。どのようにしたらよいか(どのような文書が必要かを具体的に例示すること)。

  4. 債権者Xは、債務者Yに対する5000万円の商事債権の担保のために、Zの所有不動産上に抵当権の設定を受けた。その債権の履行期は、1992年4月3日に到来したが、Yが弁済しないので、Xは、1993年4月5日に抵当権の実行としての競売を申し立てた。裁判所は競売開始決定書をZに送達すると共にYにも送達し、Yへの送達は1993年4月12日になされた。競売手続は1995年4月3日に終了し、Xは3000万円を回収した。Xが1998年4月3日に残額の弁済を求めてYに対して訴えを提起したところ、Yが、「弁済期からすでに5年が経過しており、商事債権の消滅時効が完成しているからこれを援用する」と主張した。この時効の抗弁は、認められるか(時効期間は商法522条により5年であるとする)。[ヒント:最高裁判所 昭和50年11月21日 第2小法廷 判決(昭和47年(オ)第723号)民集29巻10号1537頁]

  5. X所有不動産について、Xの知らない間にBへの所有権移転登記がなされた。Bは、その不動産にCのために抵当権を設定した。Cが抵当権を実行し、競売開始決定書がBに送達された。Xは、現況調査のために訪れた執行官から競売手続の開始を知らされ、弁護士に事件の解決を依頼した。弁護士はBに対して所有権移転登記の抹消登記請求の訴え、Cに対して抵当権設定登記の抹消登記の訴えを提起した。その訴訟の係属中に、Yがその不動産の買受人となり、代金を納付し、Yへの所有権移転登記がなされた。XがYに対して所有権確認請求等の訴えを提起したところ、Yが民事執行法184条の適用があると主張した。どうなるか。[ヒント:最高裁判所 平成5年12月17日 第3小法廷 判決(平成2年(オ)第444号)民集47巻10号5508頁]

  6. Yは、Z所有不動産の賃借人である。Yの賃借当時、その不動産に抵当権はなかった。その後、Zが、A銀行から融資を受けるに当たって抵当権(1番抵当権)を設定した。Zは、Yとの特別の関係に基づき、B銀行のYへの融資に際しても、B銀行のために抵当権(2番抵当権)を設定した。その後、Yが債務不履行に陥り、B銀行が抵当権を実行し、Xが買受人になった。Xは、Yに対する引渡命令を得ることができるか。Yは、順調に債務を返済していたが、Zが債務不履行に陥り、A銀行の抵当権が実行され、Xが買受人になった場合はどうか。[ヒント:最高裁判所 平成13年1月25日 第3小法廷 決定(平成12年(許)第22号)]

  7. Aの債権者Xは、A所有の不動産に抵当権の設定を受けた。その後、その不動産の賃借人YがAに金銭を貸し付け、賃料との相殺を合意した。その後に、Xが抵当権に基づき物上代位権を行使して、AのYに対する賃料債権を差し押さえ、Yに対して賃料の支払を求めた。Yは、相殺をもって対抗することができるか。[ヒント:最高裁判所 平成13年3月13日 第3小法廷 判決(平成11年(受)第1345号)]

  8. Sの所有不動産に、Sを債務者としGを債権者とする抵当権設定登記がなされている。Gが抵当権の実行としての競売を申し立てた。Sは、そのような抵当権を設定した覚えがない。Sは、どうしたらよいか。Sは、抵当権の不存在を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできるか。[ヒント:最高裁判所 平成13年4月13日 第2小法廷 決定(平成12年(許)第52号)]

  9. Aは、本件ビルの所有者である。Aは、昭和62年6月1日、B銀行から1億1000万円を借り受けるにあたって、C信用保証会社に保証を委託し、保証委託契約に基づく事前求償権を被担保債権として、Cのために本件ビルに抵当権を設定する旨の契約を締結し、その登記を経由した。Aは、平成元年10月31日、このビルをD(王将フードサービス)に賃貸した。その平成6年6月分までの賃料は、月額157万円である。Aは、EのFに対する貸付債権6500万円を担保するために、本件不動産の平成5年12月分以降の賃料債権をEに譲渡し、同年11月13日到達の内容証明郵便により賃借人Dに対してこの債権譲渡がなされたことを通知した。大阪地方裁判所は、平成6年10月17日、抵当権者Cの物上代位権に基づく申立てにより、本件ビルの賃料債権のうち差押命令送達時に弁済期にある分以降1億1000万円に満つるまでの部分を差し押さえる旨の差押命令を発し、この命令は同月19日に賃借人Dに送達された。Dは、平成6年11月分から同7年6月分までの賃料を供託した。この供託金及び供託利息合計額から執行手続費用を控除した残額は、1258万円である。大阪地方裁判所は、これを誰にどのように分配すべきか。
  10. A(京都新建築株式会社)は、本件不動産の所有者である。Aは、平成X年1月31日、賃料を月額100万円、支払時期を前月末と定めて、本件不動産をBに賃貸した。平成X年3月31日に、賃借人Bは賃貸人Aに1000万円を無利子で貸し付けて、毎月の賃料と相殺することを合意した。Aは、平成X年6月15日、C銀行から5000万円を借り受け、Cのために本件不動産に抵当権を設定し、その登記を経由した。平成X年8月31日に、BはAにさらに2000万円を無利子で貸し付けて、前回の貸付金と賃料との相殺が完了した後の賃料と相殺することを合意した。
    大阪地方裁判所は、平成X年10月17日、抵当権者Cの物上代位権に基づく申立てにより、本件不動産の賃料債権のうち差押命令送達時に弁済期にある分以降5000万円に満つるまでの部分を差し押さえる旨の差押命令を発し、この命令は同月19日に賃借人Bに送達された。CがBに対して、平成X年11月分以降の賃料の支払を求めてきた。Bは、これに応じなければならないか。

形式的競売

  1. Xは、Yからパソコンの修理の依頼を受け、修理したが引き取りに来ない。修理代金3万円を請求したが支払わない。Xは、パソコンについて留置権を有しているが、どうしたらよいか。


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2000年1月 8日−2011年1月6日