講義要項2003年度
一般演習(少人数)(1年生・春学期)
関西大学法学部教授 栗田 隆
表現の自由とプライバシーの保護
憲法21条で規定された表現の自由は、自分の思うことを表現し、自分を他人に理解してもらい、また、他人の自由な表現を通じて社会の動きを知り、他人の思想に触れることにより、各人が自分の人格を発展させていくために不可欠な自由である。表現の自由は、また、社会の不正をただし、民主主義を維持していくためにも必要である。
人は、社会の中で生きている。他人から尊敬されたいし、少なくとも見下されたくないと思うものである。名誉や自尊心は、個人の幸福の重要な要素である。そして、誰にも、他人に言及されたくない過去や個人的生活がある。個人の名誉や名誉感情あるいはのプライバシーは、法的に保護されるべきである。
個人が他人により表現されるとき、表現の自由と個人のプライバシーや名誉との間に、緊張関係が生ずる。両者は、どのように調整されるべきかは、法律学の永遠の問題の一つである。この問題について、無数の事件が発生し、多数の裁判例が公表されている。プライバシーの保護との関係を中心にして、表現の自由・報道の自由の限界を学び、あわせて判例を読む力をつけることがこの授業の目標である。
第1回目の授業の前に、『講義要綱・講義計画』のこのページの内容を頭に入れておくこと。講義要綱を読まずに授業を選択する学生諸君が毎年いることに閉口している。法令集(六法)も必ず持参すること。
最高裁判所のウエップサイトに掲載されている判例を中心にして、40件程度の判例を集めた判例集を作り、それを教材にする。この授業限りの判例集であり、印刷して製本すると費用が割高になるので、PDFファイルにして、WWWに掲載するにとどめる。次のページから辿ることができるようにしておく。各人でダウンロードして、プリントアウトしておくこと。
http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/
1回の授業で3件ほどの判例を読む予定である。次のような授業を予定している。
夏休みの初めの頃に、高槻にある関西大学セミナーハウス・高岳館で1泊2日の合宿をする。費用は、3,750円ほどである(昼食代+夕食代+宿泊費+朝食代。但し、これは2002年度の価格である。デフレの時代であるので、これ以上になることはないであろう)。他に交通費がかかるが、必ず参加すること。
少人数教室で諸君と教師とが向き合って勉強する。教材を1回に20ページほど読むことになろう。十分な予習時間がとれる人だけが参加すること。
授業に出て一緒に勉強し、学期末に行うテストで所定の成績を上げることが単位修得の要件である。単位修得のためには、さらに、次の課題を達成することが必要である。