講義要項2000年度
一般演習(少人数)(1年生・春学期)
関西大学法学部教授 栗田 隆
民法総則を理解しよう! 覚えよう! 議論しよう!
民法の世界は、人間が中心です。人はみな、他人と自由に契約を結び、さまざまな物を得て、幸せになろうとします。それを応援するのが民法です。中心となる個人の自由と平等については、民法総則で多くのことが規定されています。人間が生活をしていくためには、食べ物や住居が必要です。それらは、人間が支配し利用する対象です。そのような物(有体物)に関する法を物権法と言います。この授業では、法曹(裁判官・検察官・弁護士)を目指す人を主たる対象に、民法総則・物権法に関して定評のある教科書を丁寧に読みます。全部を皆さんと一緒に読むことができると嬉しいのですが、時間の関係で民法総則の部分を読みます。
明治29年に制定された民法は、カタカナで書かれていて、最初に読むときには、まさにチンプンカンプン。外国語同然の見知らぬ言葉で書かれている民法を前にして、理解できるようになるのだろうかと、不安になることがあります。しかし、大丈夫。やはり日本語です。教科書を丁寧に読んで、理解できるようにします。今まで知らなかった言葉と思想を理解することを楽しもう。覚えることを楽しもう。覚えたことを友達に説明し、議論することを楽しもう。ゼミは、楽しくするもの。
教科書を読むだけでは退屈しますので、判例研究もしようと思います。内容証明郵便で差し出す書面の作成の練習もしましょう。書類を書きながら、勉強の成果を確認してください。
第1回目に、(a)この『講義要綱・講義計画』のこのページの内容を頭に入れておいてください。(b)そして、この『講義要綱・講義計画』ならびに成年後見制度に関する民法改正を取り込んだ法令集を必ず持参してください(例えば、三省堂デイリー六法平成12年度版)。以上の2点は、この授業を受講するための必要条件とします。授業の進め方についての説明の後、自己紹介をしていただき、授業に参加する学生諸君の一人一人の顔と名前をこの日に覚えます。それが、この授業の出発点です。
第2回目から、教科書を順に読んでいきます。六法と指定の教科書を必ず持参してください。途中で、4人1組程度のグループで、教科書に紹介されている判例を素材にした判例研究をします。実際に授業として使える回数は、合宿を加えても13回ほどでしょう。そのうちの8回を教科書の内容の理解にあて、残り5回ほどを諸君の判例報告に随時あてます。
夏休みの初めの頃に、高槻にある関西大学セミナーハウス・高岳館で1泊2日の合宿をします。費用は、3,750円です(昼食代+夕食代+宿泊費+朝食代。但しこれは1999年度の価格)。他に交通費がかかりますが、必ず参加してください。大学で知り合った友達と朝まで語り合うのもよいでしょう。
法曹を目指す人のための授業です。少人数教室で諸君と教師とが向き合って、勉強します。教科書を1回に20ページ読み進みますので、教室で音読している余裕はありません。必ず予習してきてください。予習の段階では、重要と思われる箇所に適当なマークを付けてください。理解できない部分については、教科書に「?」を付けください。教室では、皆さんが予習して理解できなかったところを補足説明し、質疑応答により皆さんの理解を確認していくという形で授業を進めます。
授業に出て一緒に勉強し、学期末に行うテストで所定の成績を上げることが単位修得の要件です。単位修得のためには、さらに、次の課題を達成することが必要です。
授業内容
1999年の授業では、法律書類の作成に重点を置いた授業計画を立てたが、実際にやってみると、法律書類の教材の準備がなかなか間に合わない。また、法律書類を作成するとなると、例えば不動産の売買契約であれば、法律行為・物権総則・契約総則・売買契約の知識が必要であろうと思い、教科書を2冊指定したが、半期2単位の授業としては、欲張りすぎであった。この反省に立って、2000年度は、学習範囲を限定し、教科書を丁寧に読むことに力点を置くことにした。書類作成も引き続き行うが、補助的なものと位置付けた。書類作成にあたって、授業で学習していない知識が必要な場合には、その都度、簡単な説明を付け加えるだけでよいとする。
民法のどの部分を対象とするかについては、かなり迷った。分量の点からすれば、半年間の授業にとっては物権法がよい。しかし、学生諸君が多数の卒業必要単位の修得のために時間をとられていることを考慮すると、1年生配当の専門科目と関連する内容の方が良いであろうと考え、民法総則とした。しかし、民法総則も広範囲である。権利能力・行為能力、法律行為(特に代理)、時効を中心にし、他の項目は自習に任せることになろう。
参加者の志望の統一
授業参加者の志望ないし勉学目的がある程度一致しないと、参加者の要求に合致した授業、換言すれば満足度の高い授業を行うことが困難である。2000年度は「法曹(裁判官・検察官・弁護士)を目指す人」を対象にすることにした。
コミュニケーションの充実
少人数教育であり、教師と学生諸君とのコミュニケーションの充実が可能である。また、授業参加の満足度を向上させるためには、それが重要である。コミュニケーションの出発点は、教師が学生諸君の顔と名前を覚え、名前を呼んで学生諸君に話しかけることである。その点で、受講生の人数が重要であり、12名前後がベストである。1999年度は20名であった。
教室外でのコミュニケーション −− 電子メイルの利用
コミュニケーションの充実と情報化社会への適応のために、例年、学生諸君に電子メイルの送付と随筆の提出を求めている。学生達から来たメイルには、48時間以内に返事を出し、返事が届いていることを確認するように指導している。一回のメールの往復で終る学生もいれば、3回にも及ぶ学生がいる。1999年度は、それ以前と比較して電子メイルの発信状況が格段に良くなった。以前であれば、6月になっても、教室で何度か催促しなければならなかったのが、1999年度は5月中にほとんどの学生が提出した。高校の段階でコンピュータに慣れている学生が多くなっているのであろう。予想外だったのは、携帯電話からのメイルである。電子メイルは、デスクトップコンピュータから発信するものと思いこんでいた私が時代遅れになっていた。携帯電話からのメイルでも構わないが、ただ、文章が短すぎると、学生を理解するのに役立たず、また印象に残らない。そこで、2000年度は、200字以上のメイルという要件を付加した。
随筆も学生を理解し、自分の印象に残すことが主たる目的である。Webに掲載することにより継続性ができ、学生の変化を知るという点で社会的にも有意味である(アクセスもかなり多い)。