講義要項
一般演習
1998年度(憲法判例を読む)
関西大学法学部教授 栗田 隆
科目内容・講義概要
憲法第3章(国民の権利及び義務)に関する判例を読むことを通して、次のことを学習します。
- 公表判例を雑誌等から取り出すこと。
- 判決文・法律の条文になれること。
- 基本的な法律概念、解釈方法を理解すること。
- 法律問題については多数の議論がなされていることを知り、それらを調査・検討の上、自分の考え形成していくこと。
司法試験の勉強の準備になるように、憲法判例百選1を教科書にして、そこに掲載されている判例を検討します。平均して1回の授業で2件ないし3件取り上げ、合宿での報告も含めて、30件ほどを学習します。全員が教科書を予め読んでおくことが要求されます。
授業計画
第1回目に、授業の進め方について説明します。この講義要綱・講義計画ならびに指定の教科書を必ず持参してください。その後、基本的人権について、皆さんと対話をしながら概説します。
第2回目に、自己紹介の後、「10.私法関係と基本的人権」に関する次の判例を紹介します。午後から、次回発表者ならびに次々回発表予定者を図書館に案内し、資料収集の方法を指導します。それ以降の発表者は、自分の前の発表者から資料収集方法を教えてもらってください。
第3回目以降は、判例を次の項目に分けて簡潔に紹介していただきます。
- 事実関係の概要−−必ず図を入れて、わかりやすくしてください。
- 裁判所の判断
- 自分の考え
紹介にあたっては、必ず図書館で判例掲載雑誌を借りて参考にしてください。「*」を付した判例は比較的新しくて短いものですので、その判例を掲載した「判例時報」という雑誌の該当部分をコピーして教室に持参してください。報告の前に要点を書面(B5の紙2枚程度)に書き、法学部事務室でB4の紙に授業参加者の人数分コピーして(無料)、参加者に配布してください。
以下は、取り上げる判例の判例百選における番号と標題です。
A.法の下の平等
- 「30.傾向経営おける政治的信条を理由にする解雇」
- 「31.女性の再婚禁止期間の合理性*」
- 「32.国籍法の性差別とその救済方法*」
- 「33.嫡出子と非嫡出子の相続分差別*」
B.表現の自由と知る権利
- 「51.犯罪の煽動と表現の自由」
- 「52.破壊活動防止法の煽動罪と表現の自由*」
- 「53.「有害図書」の指定と表現の自由*」
- 「54.わいせつ文書の頒布禁止と表現の自由--チャタレイ事件」
- 「55.わいせつの概念--「悪徳の栄え」事件*」
- 「56.わいせつの概念の再構成--「4畳半襖の下張」事件*」
- 「57.営利的な広告の自由の制限」
- 「58.屋外広告物条例と表現の自由」
- 「59.ビラ貼りと表現の自由」
- 「60.立看板と表現の自由*」
- 「61.駅構内でのビラ配布と表現の自由*」
- 「62.街頭演説の許可制」
- 「63.電話の傍受と通信の秘密*」
- 「64.プライバシーと表現の自由--「宴のあと」事件」
- 「65.プライバシー侵害と表現の自由--「エロス+虐殺」事件」
- 「66.言論の自由と名誉棄損における真実性の証明」
- 「67.名誉毀損と「公共の利害に関する事実」--「月刊ペン」事件*」
- 「68.名誉棄損と事前差止め--「北方ジャーナル」事件*」
- 「69.輸入書籍・図画等の税関検査*」
- 「70.取材権の秘匿と表現の自由」
- 「71.報道の自由と法廷における写真撮影の制限」
- 「72.傍聴人のメモ制限と情報収集の自由--レペタ事件*」
- 「73.取材フィルムの提出命令と取材の自由」
- 「74.放映済み取材ビデオテープの押収と取材の自由*」
- 「75.国家秘密と取材の自由」
- 「76.未決拘禁者との接見制限と取材の自由*」
- 「77.意見広告と反論文掲載請求権--サンケイ新聞事件*」
- 「78.情報公開と知る権利*」
C. 経済的自由
- 時間があれば、89番から109番の事件を扱います。
成績評価
授業に出て一緒に勉強したことが単位取得の要件です。単位取得のためには、さらに、次の課題を達成することが必要です。
- 夏休みの初めに高槻・高岳館でおこなう1泊2日の合宿に参加すること。
- 5月中に担当者のアドレス(kurita@kansai-u.ac.jp)に宛てて電子メイルを出すこと。
- 6月中に随筆を1編書いて、提出すること。題は自由。600字以上であること。下記のURL
に掲載しますので、それを前提にして書くこと。
- http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/seminar/
- 大学で最初に学ぶ少人数の専門科目の授業ですので、思い出に残るように、報告集を作ります。夏休みの課題として、授業で学んだことをテーマにした論説1編(200字詰め原稿用紙30枚以上)を提出すること。締め切りは9月10日。法学部事務室に提出すること(当日までの消印があれば、郵送でも可。期限の末日が休日の場合は、その後の最初の業務日を締め切りとします(民法142条参照)。
教科書等
憲法判例百選1(有斐閣・別冊ジュリスト130号)。
必ず六法を持参してください。
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Contact: <kurita@kansai-u.ac.jp>
Last Updated: 1997年12月23日