民事訴訟法ダイアローグ

重複起訴の禁止

関西大学法学部教授
栗田 隆


重複起訴の禁止


設例1
Xは、Yに対して100万円の貸金返還請求の訴えを大阪地裁に提起した後で、その訴訟の係属中にさらに同じ訴えを東京地裁に提起した。
[Q1] Xは、後の訴えを提起することについて利益を有するか。

[Q2] 仮にXが後の訴えを東京地裁に提起することができるとすると、どのような問題が生ずるか。

  1.  

  2.  

  3.  

[Q3] [Q2]で指摘された問題の回避のために、民事訴訟法は、どのような規定をおいているか。民訴   条。

[Q4] Xの訴えは、次の2つの理由により許されない(訴えは却下される)。

  1. [Q1の答え]

  2. [Q2の答え]

この事例では、これら2つの理由が共に妥当したが、一方のみが妥当し、他方が妥当しない場合がある。その意味で、これら2つの理由は、別個独立の訴え却下理由と位置付けるのがよい。

[Q5] 民訴142条の適用要件は、何か。

  1. [主観的要件]

  2. [客観的要件]

  3. [後訴の提起態様]

[Q6] 誤って後の訴えに判決が下され、それが前の判決より先に確定した場合に、先に提起された訴訟はどうなるか(338条1項10号)。


後訴の提起態様


設例2
YがXに対して債務不存在確認の訴えを大阪地裁に提起した。その訴訟の係属中に、XがYに貸金返還請求の訴えを提起したいと思った。
[Q1] Xは、貸金返還請求の訴えを提起することについて、利益を有するか。

[Q2]Xが東京地裁に貸金返還請求の訴えを提起することは、民訴142条により禁止されるか。

[Q3] XがYの訴えに対する反訴として給付の訴えを提起することは、民訴142条により禁止されるか。

設例3
XがYに対し貸金返還請求の訴えを提起した。その訴訟係属中にYがXに対して債務不存在確認の訴えを提起した。
[Q1] Yの訴えに対して、裁判所はどのように対応すべきか。

設例4
XがYに対して100万円の貸金返還請求の訴えを大阪地裁に提起し、請求認容判決が確定した。その後にXがさらに同じ訴えを東京地裁に提起した。
[Q1] 142条では「裁判所に係属する事件については」となっている。訴訟係属は、いつ発生し、いつ消滅するか。

[Q2] 後の訴えは、民訴142条により禁止されるか。

[Q3] 後の訴えについて、裁判所はどのようにすべきか。

[Q4] 前の訴えについて請求棄却判決が確定していた場合には、裁判所は後の訴えをどのように扱うべきか(民訴114条)。


客観的要件 ---- 事件(審判対象・事件の対象)の同一


設例5
Xは、Yを被告にして、ある不動産の所有権確認の訴えを提起した。その訴訟の係属中に、YがXを被告にして、同一不動産について所有権確認の訴えを提起しようと思った。
[Q1] Yは、同一不動産について所有権確認の訴えを提起する利益を有するか。

[Q2]Yが所有権確認の訴えを別訴により提起することは、142条により禁止されるか。禁止されるのであれば、Yは、どのようにしたらよいか。

設例6
Xは、Yを被告にして、ある不動産の所有権確認の訴えを提起した。その訴訟の係属中に、YがXを被告にして、その不動産の引渡請求の訴えを提起しようと思った。
[Q1]Yが明渡請求の訴えを別訴により提起することは、142条により禁止されるか。禁止されるのであれば、Yは、どのようにしたらよいか。

設例7
Xは、Yを被告にして、ある不動産の引渡請求の訴えを提起した。これに対して、Yは、賃借権を主張して争った。その訴訟の係属中に、YがXを被告にして、その賃借権の確認の訴えを提起しようと思った。
[Q1]Yが賃借権確認の訴えを別訴により提起することは、142条により禁止されるか。禁止されるのであれば、Yは、どのようにしたらよいか。


主観的要件 ---- 当事者の同一


設例8
Xは、Yを被告にして、ある不動産の所有権確認の訴えを大阪地裁に提起した。その訴訟の係属中に、Xは、Zを被告にして、同一不動産の所有権確認の訴えを京都地裁に提起した。
[Q1]その不動産の所有者はXであると認めて請求を認容した大阪地裁判決が先に確定したとする。X・Z間の訴訟を審理している京都地裁はこの判決に拘束されるか(115条参照)。

[Q2]XのZに対する訴えは、142条により禁止されるか。

設例9
Aの債権者Xは、Aに代位して、AのYに対する債権の取立てのための訴訟を提起し、その旨をAに通知した(民423条)。その訴訟の係属中にAがYに対して債権取立てのための訴えを提起したいと思った。
債権者代位権が行使された後では、債務者は当該債権を自ら処分することはできない(非訟事件手続法76条、内田貴・民法(3)266頁参照)。したがって、すでにこの理由によりAの訴えは許されないが、今は、この点は脇に置いておくことにしよう。

[Q1]AのYに対する債権が存在しないという理由でXのYに対する請求が棄却された場合に、判例によれば、その判決の効力はAにも及ぶか。

[Q2]AのYに対する訴えは、142条により禁止されるか。


重複起訴の禁止と相殺の抗弁


設例10
Xは、Yに対する貸金債権(α債権)を主張して、その返還請求の訴えを京都地裁に提起した。これに対して、Yは、まず、当該債権の発生を争い、予備的に反対債権(β債権)を主張して相殺の抗弁を主張した。その訴訟の係属中に、YがXを被告にして、相殺に供した反対債権(β債権)について、大阪地裁に支払請求の訴えを提起しようと思った。
[Q1]予備的相殺の抗弁を認めてXの請求を棄却する判決が確定した場合に、Yの反対債権が存在しない(相殺により消滅した)ことについて既判力が生ずるか(114条2項参照)。

[Q2]Xの債権が発生したこと、及びYの反対債権は存在しないことを認めてXの請求を認容する判決が確定した場合に、Yの反対債権が存在しないことについて既判力が生ずるか(114条2項参照)。

[Q3]京都地裁が[Q1]または[Q2]の判決をし、他方、大阪地裁はYの請求を認容する判決をし、いずれの判決も確定した場合に、既判力ある判断の抵触が生ずることになるか。

[Q4]Yが大阪地裁に支払請求の訴えを提起することは、142条により禁止されるか。禁止されるのであれば、Yは、どうしたらよいか。

設例11
YがXに対する債権(β債権)を主張して、その支払請求の訴えを大阪地裁に提起した。XもYに対する債権(α債権)を主張して、その支払請求の訴えを京都地裁に提起した。Yは、Xの債権の発生を争いつつも、Xが無資力であるので、万一Xの債権の発生が認められる場合のことを配慮して、大阪地裁において係争中のβ債権を反対債権とする相殺の抗弁を予備的に京都地裁で主張しようと思う。

[Q1]「相殺の抗弁についての判断には既判力が生ずるから、相殺の抗弁は訴えの一種である」と言ってよいか。

[Q2]判例によれば、Yの京都地裁における予備的相殺の抗弁は、142条の類推適用により禁止されるか。

[Q3]Yは、京都地裁において予備的相殺の抗弁を提出するために大阪地裁における訴えを取下げようと思うが、それは可能か。

[Q4]Yが予備的相殺の抗弁の提出を諦めたため、α債権を認める判決とβ債権を認める判決がともに確定したとする。Xからの強制執行を防ぐために、Yはどうしたらよいか(民執法35条)。


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Last Updated: 1998年7月15日