オーストリー破産法:管財人は法人でもよい(§80/5)。この場合には、破産事件について法人を代表する者を裁判所に通知しなければならない。また管財人は経済学・経営学について専門的知識を有する者でなければならないとされている。
ドイツ法(1877年法):管財人の選任は裁判所によってなされるが、裁判所によって選任された後の債権者集会において、別の者を管財人に指名することができる。ただし、裁判所はこの指名を拒絶できる(80条)。この意味において、破産宣告と同時になされる管財人の選任は、仮のものであり、最終的な選任は第一回債権者集会後になされる、と言われている。なお、法人は管財人に選任されえない(Baur/Stuerner S.418)。
イギリス法:破産者の財産管理を専門的に行う機関が破産手続における審理機関から独立したのは、1706年破産法からである。それ以前は、管財機関と審理機関とは未分離であった。1706法では管財機関である譲受管財人(assignee)は、債権者によって選任されたが、1831法では官選管財人(offcial assignee)の制度に変更された。ところが、この制度は債権者の手続関与を犠牲にしていたため、これに不満をもった債権者層の要望により、1861年法では官選管財人の権限が縮小されるとともに、債権者が譲受管財人を選任することが認められたが、同時に、譲受管財人の不正の防止のために彼は官選管財人に会計報告をすべきものとされた。1869年法においては、管財人(trustee)制度が創設された。このように管財人の選任・監督の主導権を破産債権者と裁判所のいずれに与えるかについて、さまざまな試みの歴史をイギリス法は有している。以上、[高田*1998a]による。なお、英米法系諸国におけるtrusteeを概観する文献として、[高田*2000a]、[高田*2010a]を参照。
オーストリー破産法§122:計算報告手続き内で裁判所が執行力ある決定でもって計算報告に対する債権者の異議を裁判する。
ドイツ法(1877年法):管財人の義務違反により破産財団自体が損害を受けた場合には、その賠償請求権は、破産手続中に新管財人が選任されれば彼が行使し、破産手続終了後は損害を受けた破産者または債権者によって行使される(Baur/Stuener S419)。管財人は国の機関の中に組み入れられていないので、管財人の義務違反について国が責任を負うことはない。ただし、裁判官が管財人の監督を怠れば、それについて国が責任を負うことはありうる(Baur/Stuerner S420)。
ドイツ法(1877年法)では、報酬は配当財団の額にしたがい、破産債権の総額がそれより少ない場合には、これが基準になることが法令により規定されている(85条1項)。日本での取り扱いも、規定はないが、同じ。
ドイツ法(1877年法):訴訟救助に関しては、§116 Nr1.の厳格な要件の下でのみ管財人に与えられる。普通裁判籍所在地は、破産者や管財人の住所地ではなく、§17 ZPOに準じて、管理の行われている地である。破産者は管財人が追行する訴訟において証人となる。訴訟費用は、訴訟が破産財団のためになされているので、破産財団の負担となり、判決の効力は破産手続終了後は破産債務者に、彼の有利にも不利にも及ぶ。(Baur/Stuener S421)
オーストリー破産法94条:破産開始後に債権を譲り受けた者は議決権を有しない。ただし、破産開始前の義務関係に基づいて譲り受けた場合は、この限りでない。
オーストリー破産法§88 :企業破産において、必要な場合には、裁判所によって破産管財人に付き添えられる。員数は3−7名で内1名は労働者の利益代表となる。また構成員は破産債権者でなくてもよいなど、日本法とはかなり異なる。
オーストリー破産法§90:債権者委員会が設置されない場合には、その職務は破産裁判所が負う。
オーストリー破産法§89/5:原則として必要費の償還のみ。報酬は例外的に与えられ。
オーストリー破産法§74/3では、第1回債権者集会は、破産宣告の日から14日以内に開かれるものとされている。
イギリス破産法では、破産手続開始後、行政機関の職員である管財官が自ら管財事務を行い、その後に債権者集会において別の破産管財人を選任することができるとの仕組みが取られている([高田*2010a]215頁)。したがって、≪裁判所が破産神座人となる者を見い出すことができるまで破産手続を開始決定をすることができない≫という問題)は生じない。