関西大学法学部教授 栗田 隆

破産法学習ノート2「相殺」の比較法メモ


注1 相殺要件の緩和

スイス法: スイス法も破産の場合に同様に相殺要件を緩和している。Amonn(3) S.324 f.

注2.  自動債権の劣後的破産債権部分の控除

オーストリー法: 19条2項2文・14条3項・15条が同趣旨を定める。

注3. 相殺制限規定の概観

1850年ハノーファー民事訴訟法(Lenohardt, Die Buergerliche Prozessordnung und deren Nebengesetz, 3. Aufl., 1861 に掲載されている破産訴訟に関する規定)

オーストリー破産法
日本法の旧104条1号・3号・4号に相当する規定を有するが(20条1項)、2号に相当する規定はない。

スイス債務取立破産法
スイス法は、日本法の旧104条1号・3号に相当する規定を有するが(SchKG213.2.1-2)、2号・4号に相当する相殺制限の規定を有しない。4号が規定する場合については、その代わりに次のような相殺の否認を認める規定をおいている。

これは、例外規定であり、拡張的に解釈されるべきでないことが強調されている(Ammonn(3) S.326)。また、この相殺否認は債務者が関与することができないできごとに依拠している点で、パウルスの否認と区別される(Ammonn(3) S.327)。

相殺制限については、その外に、次のことが規定されている。

注4. 監査委員による承認

オーストリー破産法: 相殺に供される破産債権につき監査委員の承認が必要とされている(116条5号)。

5. 

Mentzle=Kuhn=Uhlenbruck, Konkursordnung, 9Auflage, S.459.