関西大学法学部教授 栗田 隆

破産法学習ノート2「復権」の注


注1 有罪判決を受けたことは、戸籍の取扱機関が管理する帳簿に記録される。但し、重大なプライバシーなので、その帳簿は厳重に管理される(最高裁判所 昭和56年4月14日 第3小法廷 判決(昭和52年(オ)第323号)参照)。

なお、住民基本台帳法16条の戸籍の附票には、戸籍の表示、氏名、住所、住所を定めた年月日(同17条)、及び、 在外選挙人名簿に登録された者についてその旨及び当該登録された市町村名(17条の2)が記載されるだけである。また、「何人でも、市町村長に対し、当該市町村が備える戸籍の附票の写し(中略)の交付を請求することができる」(同20条1項)のであるから、戸籍の附票は、犯罪記録等を記載するのに適した文書にはなりえない。

注2 かつて資格制限があったが、現在ではなくなっているもの:検察審査員(検察審査会5条2項)。

注3 各種の資格制限があり、そして資格審査の度に破産記録を調査するわけにはいかないので、検索しやすい形でどこかに記録されなければならない。検索の便宜のために、戸籍の取扱機関が管理する帳簿に記録されている。取扱いは、自治体により若干の差異があるが、戸籍簿やその附票(住民基本台帳法16条以下)とは別個に厳重に保管される民刑事事件関係の記録簿に記載されているようである。この記録は、一般人が閲覧請求することのできないものである。

注4 255条2項は、復権にも拘わらず資格制限が存続することを定める規定が存在することを前提にすれば、当然のことを定めた規定であるが、ただ、筆者は復権にも拘わらず資格制限が存続することを定める規定を知らない。裁判による復権について255条2項に相当する規定が置かれていないことは、この復権の効果は資格制限を定めた規定によるのではないとの解釈を招きやすく、規定の不備と言うべきであろう。

注5 旧商法の下では、最高裁判所 昭和42年3月9日 第1小法廷 判決(昭和41年(オ)第251号)が、「一旦破産者となつた者はたとえ取締役に選任されたとしても復権しないかぎり取締役たり得ない」と判示した。これを受けて、昭和56年に追加された旧商法254条の2が、その第2号において、破産宣告を受けて復権していないことが取締役の欠格事由として明規された。