関西大学法学部教授 栗田 隆

破産法学習ノート「破産者の法律行為」の比較法メモ


1 破産法53条

同趣旨の規定として、スイスSchKG 204.1 がある。

2 破産法54条

スイス法:無効を主張することができる者は、次の者に限られる(Ammon 3. Aufl., S329)。

3 手形金の支払

スイス法

破産した手形債務者が手形金を満期に支払った場合に、次の要件が充足される場合には、その支払は有効である(SchKG204.2)。

土地登記簿における登記に基づき土地のうえの物権を善意で取得した者の保護は、破産において適用される(Ammon 3.Aulfl. S.326)。

破産者への弁済について、日本法と同じ(SchKG 205)。

4 破産者への弁済(50条)

明治23年商法(第3編破産)

 985条2項 「破産宣告の日より以後は破産者の為したる支払其他総ての権利行為及ひ破産者に為したる支払は当然無効とす」。

善意弁済者の保護規定がない点が注目される。磯部四郎『大日本商法破産法釈義』(明治26年、平成8年復刻)57頁は、次の趣旨を述べる:破産者の受けたる支払は、之を管財人に引渡さしめざるべからず。破産者から管財人への引渡しがなされなかった場合に、破産者の債務者が二重払を強いられる旨の記述はないが、それを否定するものではなかろう。