2020年1月8日
学部の定期試験においては、この問題集から出題する場合であっても、次の問題は出題しないものとする。
次の規定について説明しなさい(中略の部分については、説明しなくてもよい)。
「この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業[中略]の再生を図ることを目的とする。」
X株式会社は、子供用品販売会社であるが、少子化の進行の中で売上げが減少し、経済的窮境に陥り、仕入れ商品の代金支払が困難になった。X会社の代表取締役は、まだ45歳であり、民事再生手続により、自らの手で会社を再生したいと考えている。この場合の手続の概略を説明しなさい。
X会社は、鹿児島市内に本店がある老舗の紙製品販売会社である。西日本一円を営業エリアとしており、債権者数は1200である。民事再生手続開始申立ては、どの裁判所にすることができるか。
X会社は経済的に窮境にある。重要な在庫商品について、有力債権者が1週間後に強制執行の申立てをするようである。その商品が差し押えられると、売り上げが激減し、資金繰りに窮することは目に見えている。X会社は、民事再生手続開始申立てをすることによりこの窮境から脱することができるか。
A会社は、継続的な取引先であるX会社に対して10億円の売掛代金債権を有しており、その担保のためにX会社所有不動産の上に極度額8億円の根抵当権を有している。そのX会社が民事再生手続開始申立てをした。A会社はどうしたらよいか。
民事再生手続において否認権を行使するのは、誰か。
担保権消滅請求制度について説明しなさい。
官報に、「給与所得者等再生による再生手続開始」の見出しの下に、次のような公告があった(事件番号、債務者名など一部仮名)。この公告について説明しなさい
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官報に、「小規模個人再生による再生手続の開始」の見出しの下に、次のような公告があった(事件番号、債務者名など一部仮名)。この公告について説明しなさい。
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官報に、「小規模個人再生による書面決議に付する決定」の見出しの下に、次のような公告があった(事件番号、債務者名など一部仮名)。この公告について説明しなさい。
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帝国データバンク(http://www.tdb.co.jp/)の倒産情報に次の記事があった。この記事中の「監督委員」について説明しなさい。
油田開発 石油公団の投融資先 ムバラス石油株式会社 民事再生法を申請 負債556億円 ムバラス石油(株)(資本金328億7700万円、[住所等略])は、12月10日に東京地裁へ民事再生法を申請した。 申請代理人は谷健太郎弁護士([住所等略]ほか1名。監督委員には岡正晶弁護士([住所等略])が選任されている。 当社は、1979年(昭和54年)8月に、アブダビ石油(株)がアブダビ政府より取得した西ムバラス鉱区(アラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ国沖合)の利権を継承して設立された。石油公団が43.7%を出資するほか、アブダビ石油(株)、コスモ石油(株)、ジャパンエナジー石油開発(株)が資本参加する石油公団の投融資先で、“ウム・アル・アンバー油田”および“ニーワット・アル・ギャラン油田”から現在までに6000万バーレルの自主開発原油を輸入していた。 [以下略] |
Y会社は、建物の新築資金2億円の融資をX会社に依頼した。Xは、この2億円の融資債権の担保のために、建物の完成後直ちに建物に抵当権を設定する旨の確約書をYから得て、平成19年9月28日に融資を実行した。建物は同年10月29日に完成した。Xは、Yに対して、速やかに所有権保存登記をして抵当権設定登記をするように要請した。しかし、Yの従前の代表者Aが病気で死亡したという事情もあって、所有権保存登記の申請は同年12月11日になった(まもなく登記された)。抵当権設定契約書の作成はさらに遅れ、平成20年1月29日にずれ込んだ。Xの担当者は、直ちに抵当権設定登記の申請をしようとしたが、Yの新代表者Bが「自分のなじみの司法書士に依頼して自分が申請する」と言い張って共同申請に必要な書類をXに渡さずにいた。その一方で、Bは、Xに内密に、同年2月13日に再生手続開始を申し立て、同月20日にYについて再生手続開始決定がなされた。Xにとっては、青天の霹靂の出来事であった。Yの再生手続について、監督命令が発せられ、Zが監督委員に選任された。管理命令は発せられなかった。
Xは、Yに対して抵当権設定登記手続をなすことを求める訴え、Zに対してYがこの登記手続をすることに同意することを求める訴えを提起した。XのYに対する請求は認められるであろうか。
X(個人)は、Y会社から不動産を購入し、代金2000万円を全額支払うのと引換えにYから所有権移転登記手続をするのに必要な情報が記載された書類を受領した(代金は全額支払済である)。ところが、その書類に不備があった。XがYに不備のない書類の交付を求めたが、その直前にYのこれまでの代表者Aが事故で死亡し、書類の交付が遅れた。Xは、所有権移転登記の申請もできずにいる。BがYの新代表者になった。会社の財産状況の悪化を認識していたBは、直ちに所定の社内手続を経て民事再生手続の開始を申し立てた。Zを監督委員とする監督命令が発せられ、間もなくして開始決定がなされた。管理命令は発せられなかった。
Xは、Yに対して所有権移転登記手続をなすことを求め、Zに対してYがこの登記手続をすることに同意することを求める訴えを提起した。XのYに対する請求は認められるであろうか。
Aが長年にわたって代表取締役を務めているY株式会社について民事再生手続が開始され、Wが監督委員に選任され、監督委員の同意を要する事項として、民事再生法41条1項1号から9号に掲げられている事項が指定された(管理命令が発せられることはなかった)。
下記の各小問に答えなさい。なお、いずれの問についても、否認の可否を論じなくてよい。
(1) Aは、再生手続開始申立てがなされる前に、決済期日の迫っているY社振出の約束手形の弁済資金5000万円の融資を長年の取引先であるP会社に依頼した。P会社は、自らも資金繰りが苦しかったために、これを断った。しかし、Aがあまりにも懇願するので、P社の代表取締役であるQは、やむを得ず、「5000万円の手形を振り出すから、これで何とか資金を調達してくれ。ただし、弁済期には必ずその手形を当社に戻してくれ」と述べて、その旨の念書を作成の上、P社を振出人、Y社を受取人とする約束手形を振り出した。Aは、これを金融機関に持ち込んで割引を依頼したが、P社の経営状況を把握していないこと等を理由に断られた。再生手続開始後に、Y社は、P社に対して、P社振出の約束手形の支払を請求することができるか。
(2) Aは、友人のTから、「債権者から住宅を差し押さえられそうだ。Y社で不動産を買い取ったことにして、私が賃借人として居住し続けることができるようにしてくれないか」と頼まれた。そこで、市場価格7000万円の住宅について売買価格を5000万円とする売買契約書、代金相当額について、Tを貸主・Y社を借主とし、利率を年6%とする消費貸借契約書、その住宅についてY社を賃貸人としTを賃借人とし賃料を月額25万円とする賃貸借契約書、ならびに、前記消費貸借契約の利息と賃料とを相殺し、固定資産税等の公租公課ならびに本件不動産の管理に関する一切の費用はTの負担とする旨の合意書が作成され、TからY社への所有権移転登記が経由された。再生手続開始申立ての2年のことであった。Y社の再生手続開始後に、Tが上記の事情を主張して、Y社に所有権移転登記の抹消を求めてきた。しかし、当該不動産の市場価格はすでに8000万円に上昇している。Y社は、Tの要求に応じなければならないか。
(3) Y社は、再生手続開始の5年前に、その所有地をRに建物所有目的で賃貸した。6か月後にRは、その土地に建物を建築したが、その建物について登記(表示の登記及び所有権保存登記)がなされることはなかった。Y社が再生手続開始の申立てをする5日前に、Rは、その建物に抵当権を設定してG社から融資を受ける必要が生じ、Gとの間で消費貸借契約書兼抵当権設定契約書を作成した(なお、借地上の建物に抵当権を設定することについて地主であるY社から同意を得ることは失念されていた)。Rは、司法書士Sに依頼して、Y社の再生手続開始の翌日に建物の所有権保存登記と抵当権設定登記の申請をし、それらの登記が経由されるとともに、Gから融資を受けた。しかし、当時、GもRもSも、Y社の財産状況の悪化を知らず、再生手続が開始されたことを登記経由後に知って驚いた。Y社は、事業の再生のために、その土地を更地にして売却しようと考えている。Y社は、Rに対して、建物収去土地明渡しを請求することができるか。
A(個人)は、宝石販売会社Xを設立して、自ら代表取締役兼店長になって宝石販売業を営んでいる。Aは、X会社の代表者として、ある年の3月1日に、X会社の店頭で、Yと、店頭に展示されているものと同型の高級時計(Xは、店舗内に在庫として5個所有している)を200万円で販売する契約を締結した。履行期は3月22日の午前、履行場所はXの店頭とされ、Yは解約手付金20万円を支払った。Yは、3月22日の午前にXの店頭に行き、売買代金から手付金を差し引いた残額180万円をAに支払って、商品を受領して帰宅した。
ZもYと同じ日時に店頭に展示されているルビーの指輪についてXと同様の売買契約を締結したが、Zは、そのルビーの指輪に「Z様売約済」の表示をしてもらった。Zは、3月22日の午前にXの店頭に行き、売買代金から手付金を差し引いた残額180万円をAに支払って、商品を受領して帰宅した。
ところが、 3月12日にXの債権者BがXの民事再生手続の開始を申し立て、3月22日午前11時に民事再生手続開始決定がなされ、同時に管理命令が発せられた。Aは、Y及びZから受領した各180万円を管財人に引き渡すことなく費消した。
上記の事例について、次の小問に答えなさい。なお、否認権の問題は考慮しなくてもよいものとする。また、YとZは、3月22日に商品を受領して帰宅するまで、Xについて下記の再生手続が開始されたことはおろか、その申立てがあったことすらも知らなかったものとする。
(1) 管財人がXY間で合意された価格200万円は適正であるが、その代金(手付金を控除した残額180万円)は管財人に支払われるべきであると主張している場合に、YはXにした180万円の弁済の効力を再生手続との関係で主張することができるか。
(2) 管財人がその高級時計を240万円で、その指輪を250万円で他者に売却することを考えている場合に、Y及びZは、各々が購入した商品の所有権取得を管財人に主張することができるか。
ある不況の年の6月初旬のことである。A会社は、そのp支店を通じて、B会社所有の賃貸用不動産を9億円の価値のあるものとして買い受けることにした。その不動産は、10の区画に区分され、10区画が次の条件で10社にそれぞれ賃貸されていた:賃料月額50万円、管理費月額5万円;毎月25日に翌月分前払;敷金の性質を有する保証金は賃料の10ヶ月分(500万円)。
賃借人の中にY会社がいて、その経営状況が悪化し、5月分と6月分の賃料を滞納していた。B社はY社に対して未払賃料の催告をしているが、しかし、保証金にゆとりがあるので、B社はまだ契約を解除していない。A社がY会社に今後の賃料支払の見通しを問い合わせると、複数の債権者への弁済を滞っている状態であるが、C社に販売した商品の代金がもうじき支払われるので、それが入金されれば一気に資金繰りが好転して支払が可能になると言われた。A社は、それを信用することにし、その不動産を賃借権の負担付きで購入することにした。Y社が支払を遅滞している5月分と6月の賃料の支払請求権については、協議の結果、A社が承継するものとされた。代金額は、上記9億円から保証金総額5000万円を差し引いた8億5000万円にY社に対する未収賃料債権100万円を加えた8億5100万円と決定された。
売買契約書を作成して調印する前日に、C社の倒産が報道され、Y社に多額の損失が生ずるであろうとの報道がなされた。A社内でこの売買契約の締結のリスクを検討したが、万一にもY社について倒産手続(破産手続又は再生手続)が開始されたとしても保証金に余裕があり、また、倒産手続が開始される方が不動産の明渡しがスムーズにいくであろうと判断された。ただ、Y社の賃料債務については、5月・6月分は敷金から回収するとしても、7月分以降の8ヶ月分の賃料(翌年の2月分までの賃料)に関してはB社に債務保証を行わせるべきであるとの結論が出された。翌日(6月10日)に、代金額を上記のように定めた売買契約書が調印されるとともに、7月分以降の賃料債務をB社が保証する旨の保証契約書が作成され(保証金から回収できるか否かにかかわらず、B社が保証人になる旨が明示されている)、さらに、賃貸人の地位をA社がB社から承継し、保証金500万円の返還債務をA社が引き受け(対外的には併存的に引き受け、対内的にはB社の負担部分をゼロとし)、未収賃料債権についてはB社がA社に譲渡する旨の合意書が作成された。A社とB社の連名で、賃貸不動産の譲渡により賃貸人の地位をA社が承継し、敷金返還債務も承継したこと、及び7月分以降の賃料はA社が指定する預金口座に振り込むことを求める通知書が全ての賃借人に発せられた。Y社に対しては、これとともに、5月分と6月分の未払賃料債権をB社がA社に譲渡した旨のB社名義の通知書が内容証明郵便で発送された。
Y社は、6月25日に弁済期が到来した7月分の賃料についても支払をすることなく、7月10日に支払停止を表明するとともに、翌日に民事再生手続開始の申立てをし、8月1日に再生手続開始決定を受け、債権届出期間は9月5日とされた(監督委員が選任され、民事再生法41条1項1号から9号に掲げられている事項が監督委員の同意を要する事項に指定された。管理命令が発せられることはなかった)。
ところで、A会社のq支店は、Y会社に対して4月にある商品を販売していて、その売掛代金債権200万円を有していて、その履行期は5月20日であった。
上記の事例について、次の小問に答えなさい。なお、否認権の問題は考慮しなくてもよいものとする。
次の小問(1)については、不動産価格の上昇期であるため、A社が自己に有利な賃借条件で本件不動産に新しい賃借人を入居させることを望んでいるものとする。
(1)Y社が本件不動産を事業の継続のために使用する必要がある場合に、A社は、再生手続開始前の未払賃料の存在を理由に、Y社に対して賃貸借契約の解除の意思表示をして、即時明渡しを求めることができるか。
以下の小問(2)から(4)については、A社が本件不動産を賃貸用不動産として運用する予定であり、かつ、不動産価格の下降期であるため、A社としては、賃料債権の取立てさえ確実にできれば、Y社との賃貸借契約の継続についても異論はないものとする。
(2)再生手続開始前に履行期が到来している5月分・6月分・7月分の賃料債権は、どのように扱われるか。
(3)B社が7月分の賃料について保証債務を履行した場合に、B社は再生手続においてどのような権利を行使ができるか。
(4)民事再生手続開始後・賃貸借契約終了までのA社の賃料債権は、どのように扱われるか。
(5)Y社が差し入れるべき敷金額を300万円に減額することを前提にして、A社は、p支店を通じてY社に負った前記500万円の保証金返還債務とq支店を通じて取得したY社に対する200万円の債権とを対当額で相殺することができるか。
ある年の9月22日にY社の債権者BがY社の破産手続の開始を申し立てた。10月22日に破産手続が開始され、Vが破産管財人に選任された。しかし、Y社は、Y社が支払不能の状態に陥ったのは事実であるが、その理由は、証券会社に勧められて弁済資金を短期の金融商品で運用していたところ、その発行元が倒産したためであり、事業の再生は十分に可能であると主張して、11月1日に民事再生手続の開始を申し立てた。裁判所は、11月15日に再生手続開始決定をした。
ところで、事業の再生には電気の供給が不可欠である。Y社は、A電力会社から電気の供給を受けていて、検針日は、毎月20日で、検針日から20日後までが早収料金(割引料金)の支払期限である。Y社は、8月20日を検針日とする電気料金15万円、9月20日を検針日とする電気料金14万円、10月20日を検針日とする電気料金13万円、11月20日を検針日とする電気料金12万円を滞納した。
A電力会社の若い担当者が、未払の電気料金の全額を支払わないと電気の供給を停止すると言ってきている。電気の供給契約はどうなるか。
Mは、V所有の不動産(借地借家法の適用のある建物)を月額100万円で賃借している(賃借期間は2000年4月1日から8年間、差入敷金は500万円、賃料支払時期は当月分について毎月20日である)。2000年12月1日に、VがMに対して、将来の賃料を引き当てにして、5000万円の資金提供を申し込んできた。資金提供の時期は、2001年4月1日が予定されている。
Mの内部で、(1)融資をして、毎月の賃料と相殺しながら回収する方法と、(2)賃料前払の方法で資金を提供し賃料を月95万円に減額させる方法とが検討されている。後者の方法の場合には、2001年4月から最初の52ヶ月分の賃料(95万円×52=4940万円)の全額と53ヶ月目の賃料の一部(60万円)の合計5000万円が前払されることになる。
上記の2つの各方法で資金を提供した場合に、賃貸借開始から2年後にVについて破産手続が開始されたとき及び民事再生手続が開始されたときに、MがVに提供した資金をMはどの程度回収することができるであろうか。次の2つの場合について検討しなさい。
Mは、V所有の不動産(借地借家法の適用のある建物)を月額100万円で賃借している(賃借期間は2000年4月1日から8年間、差入敷金は500万円、賃料支払時期は当月分について毎月20日である)。2000年12月1日に、VがMに対して、将来の賃料を引き当てにして、5000万円の資金提供を申し込んできた。資金提供の時期は、2001年4月1日が予定されている。
Mの内部で、(1)融資をして、毎月の賃料と相殺しながら回収する方法と、(2)賃料前払の方法で資金を提供して賃料を95万円に減額させる方法とが検討されている。後者の方法の場合には、2001年4月から最初の52ヶ月分の賃料(95万円×52=4940万円)の全額と53ヶ月目の賃料の一部(60万円)の合計5000万円が前払されることになる。
上記の2つの各方法で資金を提供した場合に、賃貸借開始から2年後にVについて破産手続が開始されたとき及び民事再生手続が開始されたときに、MがVに提供した資金をMはどの程度回収することができるであろうか。破産管財人又は再生債務者等がこの不動産を手続開始時から1年後(賃貸借開始から3年後)に売却する場合について検討しなさい。
X社は、九州・沖縄を営業エリアとし、鹿児島市内に主たる営業所を置いている販売会社である。X社は、大阪のあまり有名でないY社との間で、通常販売価格130万円のY社製品(動産。以下「α製品」という)を預かり、1個100万円で販売し、販売代金の10%を手数料として受け取る内容の契約を締結した(製品の所有権はY社に属し、X社はY社の代理人としてα製品を販売するものとする。以下この契約を「販売委託契約」という)。X社は、2012年5月1日に、Y社から10個のα製品を預かり、販売活動を開始した。2012年10月1日に、Y社は支払不能の状態にはなかったが、「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない」状況にあると判断して、再生手続開始を申し立て、同年10月10日に開始決定を受けた。開始決定とともに管理命令が発せられ、Vが管財人に選任された。このことはニュースとして報道されることはなかったが、X社の代表取締役はその日のうちにこのことを知った。しかし、X社は、預かったα製品の販売活動を続けた。10月11日に、X社の沖縄営業所の社員が沖縄在住のAとの間でα製品の売買契約を締結した。Aは、その日に代金100万円を支払って、α製品の引渡しを受けた。
この場合について、次の問に答えなさい。なお、小問2と小問3とは独立とする。
(小問1)Aは、α製品の所有権を取得するか。
(小問2)X社は、Aから受領した100万円全額をY社に引き渡さなければならないか。なお、この小問については、X社とY社との間に前記の販売委託契約から生ずる契約関係以外には何の法律関係もないものとする。
(小問3)X社が2012年6月1日にY社に500万円を貸付けている場合に(利率は年10%、弁済期は1年後である)、X社はこの貸金債権をどのように回収したらよいか。
(A)2004年3月1日、Y社はその所有する建物を賃貸する契約をX(個人)との間で締結した。賃貸借期間は3年、賃料は月10万円、2004年3月分の賃料を除き各月の賃料の弁済期は前月25日、敷金は賃料の9カ月分(90万円)と定められた。同日、Xが敷金90万円と3月分の賃料10万円を支払うのと引換に、Y社は建物をXに引き渡した。2006年3月1日(水曜日)午前10時、Y社について倒産手続(破産手続又は再生手続)が開始され、債権届出期間は2006年4月3日(月曜日)までとされた。Xは、賃貸借契約を更新することなく、2007年2月28日に建物から退去する予定であり、Xが退去するまでこの建物は売却されないものとする。
(小問1)Y社について破産手続が開始された場合に、Xは、敷金を回収することができるか。どのような方法で回収できるか。
(小問2)Y社について再生手続が開始された場合に、Xは、敷金を回収することができるか。どのような方法で回収できるか。
(B)上記の事例に次の事実が付加されるものとする(倒産手続開始の日時等は、上記の事例と同じとする)。2005年2月1日に、Y社はXに対する2005年3月分から2007年2月分までの賃料債権を第三者Zに譲渡し、即日、配達証明付き内容証明郵便によりXにその旨を通知した。Zは、Xに対し、譲渡に係る賃料はA銀行にある自己の預金口座に振り込む方法で支払うように求める通知を発した。Xは、これらの通知を受領し、これ以降の賃料をZの指定した預金口座に振り込む方法で支払っている。
(小問3)Y社について再生手続が開始された場合に、Xは、敷金を回収することができるか。
A社は、自動車関連の部品を製造販売する株式会社である。A社、従来、ある種類の部品(これを種類αの部品とする)を製造していたが、新規に別の種類の部品(これを種類βの部品とする)を製造販売するために、B銀行から500億円を借り入れ、土地を購入して、その上に最新鋭の機械を設置した工場を建設し、その工場と敷地に前記借入金を被担保債権とする共同抵当権を設定した(工場には、工場抵当権を設定した)。しかし、工場が稼働し始める頃に不況が始まり、自動車の販売台数が前年同期比で30%も減少するという異常な状況の中で注文が激減した。経営が行き詰まったA社について民事再生手続が開始され、監督命令が発せられ、民事再生法41条1項1号から9号に列挙されている行為が監督委員の同意を要する行為として指定された。なお、管理命令が発せられることはなかった。
A社は、前記工場がA社の事業の継続に必要であること、不況は2年ほどで終わり、自動車の需要も新興国を中心に再び回復するであろうことを前提にして、A社自身の手で事業を再生する再生計画を立てようとしている。これに対して、B銀行は、A社の技術力が同業他社と比較して格段に高いというわけではなく、また、自動車部品業界が現在のところ設備過剰の状態にあり、A社は種類αの部品の製造販売に特化すべきであり、種類βの部品の製造のために作られた最新鋭の工場は、財務状況のよい同業のD社に売却すべきであるとの意見を述べ、抵当権の実行も辞さないとの態度を示している。
このようにB銀行はA社の支援に消極的であるが、C銀行が支援の意向を示し、前記工場と敷地の担保価値を300億円と見積もり、それを担保にした融資は最大300億円まで可能であるとしている。D社は、B銀行から工場の紹介を受け、340億円で購入すると述べている。
A社は、前記工場を維持していくために、B銀行とどのように交渉したらよいか。なお、A社は、前記工場とその敷地が裁判所によって300億円と評価される確率が60%、340億円と評価される確率が40%と見込んでいる。また、A社の現在の手持資金(流動資産)は、その多くを従業員の削減のための費用と事業の運転資金に充てざるをえない状況である。
2014年2月4日(火)A社はB社に1億円を年利8%・期間1年の約定で貸し付け、その担保のためにB所有の不動産上に第一順位の抵当権の設定を受け、その登記を経由した。その後Bの取引先が突然破産し、そのあおりで、2014年8月4日(月)Bは、再生手続開始決定を受けた。AがBに貸付けをしてから半年後のことであった(再生手続開始の前日の時点で、半年分の利息債権400万円が発生した)。
次の小問に答えなさい。なお、消費貸借契約書には、「債務者について破産手続開始申立て、再生手続開始申立て又は更生手続開始申立てがなされた場合には、期限の利益が喪失される」旨の条項が含まれているものとする。また、抵当権の実行が完了するのは再生計画案の決議後であるとし、Aの届出に異議等は出されないものとする。
(小問1) Aは、抵当権を再生手続外で実行することができるか。
(小問2) Aは、抵当不動産の売却価額が約2000万円であると予想される場合に、再生債権の届出をどのように行うべきか(どのような事項を届け出るべきか)。
(小問3)債権者集会が開催される場合に、Aの議決権額はいくらか。
(小問4)権利変更の一般的基準として、次のような基準が立てられた:再生手続開始後の利息・損害金は全額免除;再生手続開始時の元本・利息・損害金は、8割を免除し、残額を再生計画認可決定の確定から1年後に1割、2年後に1割を弁済する(この分割弁済については利息を付さない)。Aの債権についても、この基準が適用されるものとする。Aの抵当権の実行が完了して、不足額が確定するのが、再生計画認可決定の確定から1年6ヶ月後であり、再生手続開始時の元本・利息・損害金の合計額のうち抵当権を実行しても回収することができなかった金額が8000万円である場合に、Aは、再生計画に従った弁済を何時の時点でどれだけの額を受けることができるのが原則か。この事例については、別除権者の権利行使に関する的確な定め(160条1項)として、どのような定めを再生計画に置くことが考えられるか。例を挙げて答えなさい。
Y社について民事再生手続が開始された(管理命令は発せられていない)。次の小問に答えなさい(各小問は独立している)。
(小問1)A社は、再生手続開始の1年前に、Yに1億円を年利8%・期間1年の約定で貸し付け、その担保のためにB所有の不動産上に第一順位の抵当権の設定を受け、その登記を経由した。再生手続開始の前日までに発生した利息債権は、800万円であるとする。Aは、ただちに抵当権を実行し、債権調査の終了前に抵当権の実行を完了し、再生手続開始後に生じた利息(競売手続における配当金交付の時までに生じた利息)の外に1億800万円のうち8800万円を回収した。Aが再生債権として行使することができる債権額はいくらか。なお、競売手続における配当金交付以後に生ずる利息・損害金債権は無視できるものとする。
(小問2)B社は、再生手続開始の2年前にYから融資を受け、再生手続開始時点でその債務額は6000万円である。Bは、再生手続開始の1年前に、Yに商品を代金後払(分割払)で売却し、再生手続開始時におけるその債権額は1億円である。Bは、再生債権届出期間の初日に1億円の代金債権を再生債権として届け出た後、届出期間の末日に、6000万円の債務と対当額で相殺するとの意思表示をYにした。Aが再生債権として行使することができる債権額はいくらか。
Y社について再生手続が開始された。A社は、Yに対して、再生手続開始の時点で1億円の貸付金債権(以下「α債権という」)を有している(再生手続開始の時点までの利息を含む)。再生計画において、再生手続開始時点での債権額の2割を分割弁済し、他はすべて免除するという一般的基準が立てられ、α債権もこれに従うものとされた。次の2つの場合について、答えなさい。
[ケース1] AがY所有の不動産上に、α債権を被担保債権とする抵当権を有していて、抵当権を実行すると、再生手続開始時点での債権額のうち4000万円を回収することができる(実際にそうなるものとする)。
(小問1a)
再生手続開始時点での債権額のうち、Aが再生債権として行使することができる金額はいくらか。
(小問1b) Aは、再生手続開始時点での債権額のうち、最終的にいくらを回収することかできるか。
[ケース2] BがYの委託を受けてα債権の保証人になった(再生手続開始後に生ずる利息・損害金債権は、保証の対象外とする特約が含まれている。また、保証債務の履行は、再生計画認可決定確定後に、計画に従ってAが弁済を受けることができる金額を除いた金額についてのみなされるとの特約も含まれている)。Bは、Y所有の不動産上に、保証債務を履行した場合に生ずる求償権(以下「β債権という」)を被担保債権とする抵当権を有している。
(小問2a)再 生手続開始時点での債権額のうち、Aが再生債権として行使することができる金額はいくらか。
(小問2b)Aが再生計画に従い受けることのできる弁済額はいくらか。
(小問2c)Bは、再生計画認可決定確定後に、特約に従い保証債務を履行し、β債権を被担保債権とする抵当権を実行し、4000万円を回収した。再生債務者財産からAとBに支払われた金額は全部でいくらか。
Y社について民事再生手続が開始された(管理命令は発せられていない)。次の小問に答えなさい(各小問は独立している)。
(小問 1)A社は、再生手続開始の2年前からYに商品を供給しており、その代金債権の担保のために、Y所有の不動産上に第一順位の根抵当権の設定を受け、その登記を経由した。再生手続開始の時点での被担保債権額は、1億円である。再生手続が開始されると、Aは、ただちに抵当権を実行し、債権調査の終了前に抵当権の実行を完了し、1億円のうち4000万円を回収した。Aが再生債権として行使することができる債権額はいくらか。
(小問 2)B社は、再生手続開始の2年前にYから融資を受け、再生手続開始時点でその債務額は4000万円である。Bは、再生手続開始の1年前に、Yに商品を代金後払(分割払)で売却し、再生手続開始時におけるその債権額は1億円である。Bは、再生債権届出期間の初日に1億円の代金債権を再生債権として届け出た後、届出期間の末日に、4000万円の債務と対当額で相殺するとの意思表示をYにした。Bが再生債権として行使することができる債権額はいくらか。
(小問 3)C社は、再生手続開始の1年前に、Yに商品を代金後払(分割払)で売却し、再生手続開始時におけるその債権額は1億円である。この債権についてD社がCの委託を受けて、限度額を4000万円と定めて、保証人になった(保証契約には、次の特約が含まれている:再生手続開始後に生ずる利息・損害金債権は、保証の対象外とする;Dが保証債務を履行することにより取得する債権は、Cの債権に後れる)。Dは、再生手続開始の2年前にYから融資を受け、再生手続開始時点でその債務額は4000万円である。Cは、再生債権届出期間の初日に1億円の代金債権を再生債権として届け出た。その翌日にDが保証債務の履行としてCに4000万円を支払い、ただちにYに対する求償権とYに対して負っている債務とを相殺する旨の意思表示をYにした。Cが再生債権として行使することができる債権額はいくらか。
上記の事案について、下記の小問に答えなさい。
(1)BのAに対する本件前渡金返還請求権は、民事再生手続においてどのように扱われるか。
(2)Xが、平成20年8月8日,保証債務の履行としてBに3億円を支払った場合に、Xの求償権は再生手続においてどのように扱われるか。
(3)Xは、保証債務の履行により生ずる事後求償権をどのように回収したらよいか。
(4)Xは、Aに対する貸付債権をどのように回収したらよいか。
Gは、Sとの消費貸借契約に基づき、2口の債権を有している。1つは債権額100万円の債権で、他は200万円の債権である(前者を「α債権」あるいはSから見て「α債務」といい、後者を「β債権」あるいは「β債務」という)。Zは、Sの委託を受けて、これら債務について連帯保証人になった。いずれの債権についても、Sについも倒産手続(破産手続・民事再生手続・会社更生手続)の開始申立てがなされた場合には、Sは期限の利益を喪失し、元本及び手続開始時までに生じていた利息を全額即時に支払わなければならず、Zは保証債務をただちに履行しなければならない旨の特約が、消費貸借契約及び保証契約に含まれていた。その後、Sについて再生手続が開始されたが、その前日における債権額は利息・遅延損害金を含めて上記の通りであったとする。再生手続開始の前日にZは、α債権についてのみ保証債務を完済することができた。
再生計画による弁済率が10%であると仮定して、下記の小問に答えなさい(G又はZが再生計画に従い受領する金額も明示しなさい)。なお、Zがα債権について保証債務を履行したことによるSに対する求償権について、履行日の法定利息(民法459条2項・442条2項参照)は無視しうるものとする。また、再生計画においては、再生手続開始後の利息・損害金は全額免除される旨の条項が定められるものとする。
(小問1)GがSの再生手続に参加しない場合に、ZはSに対する求償権をもってSの再生手続に参加することができるか。できるとすれば、どのような債権をもって再生手続に参加し、どのような弁済を得ることができるか。
(小問2)GがSの再生手続に参加する場合に、Gはどのような債権をもって再生手続に参加することができるか。また、Gが参加した場合に、Zは再生手続に参加することができるか;できるとすれば、どのような債権をもって再生手続に参加することができるか。GとZは、再生手続に参加できるとした場合に、どのような弁済を得ることができるか。
2001年4月1日にGがS(会社)に1000万円を貸し付けた。利息は、毎年3月31日に年5%の割合で支払い、元本は2006年3月31日に返済することが約定された(2006年3月31日に、元本1000万円及び最後の1年分の利息50万円が支払われるものとする)。Sは、Z(会社)と保証委託契約を締結し、保証委託料10万円をZに支払った。Sの委託を受けたZは、Gと保証契約を締結し、連帯保証人になった。
次の小問に回答しなさい。なお、GS間の消費貸借契約には、借主について破産手続・民事再生手続の開始申立てがなされたときは、借主は期限の利益を失う旨の条項が含まれていたものとする。
(ケースA)財産状況が悪化したSは、2002年3月31日に支払うべき利息を支払うことができず、期限の利益を喪失し、2003年4月1日(月)に再生手続開始決定を受けた。Zの財産状況は良好とは言えないが、まだ再生手続開始決定を受けるほどではない。Sの再生手続開始の直前の2003年3月31日にZが利息の外に元本の一部200万円を返済し、さらに、2004年3月31日に利息の外に元本300万円をGに支払った。その後でSの再生手続において再生計画案が提出されるものとする。
(小問A1)Gはどのような債権をもって再生手続に参加することができるか。金額も示しなさい。
(小問A2)Gが再生手続に参加する場合に、Zは再生手続に参加することができるか。できるとすれば、どのような債権をもって再生手続に参加することができるか。金額も示しなさい。
(ケースB)Sの財産状況は良好であり、2002年3月31日に約定の利息を支払った。しかし、Zの財産状況が悪化したので、Gの要請により、2003年3月31日にSが利息の外に元本の一部200万を返済した。その翌日の2003年4月1日(月)にZについて再生手続が開始された(管理命令は発せられなかった)。2004年3月31日にSが利息の外に、元本の一部300万円を繰上返済した。その後でZの再生手続において、再生手続開始時の債権額について10%の弁済を行い、残債権は全て免除する旨の一般的基準を含む再生計画案が提出され、これが可決されてその認可決定が確定するものとする。
(小問B1)Gはどのような債権をもって再生手続に参加することができるか。金額も示しなさい。
(小問B2)Gが再生手続に参加した場合に、Sは再生手続に参加することができるか。
(小問B3)Gが再生手続に参加して弁済を受けた場合に、Zは、Sに対してどのような権利を取得するか。金額も示しなさい。
(ケースC)基本的な事実関係は、ケースBと同じであるが、次の点が異なる:Sに対して代保証人を立てることを求めることができるGの要求に応じて(民法450条2項参照)、Sは、再生手続開始の翌日に、残存元本の弁済期までの残存期間について、新たに他の者と保証委託契約を締結し、保証料6万円を支払い、この保証料額は適正な価格なものであったとする;代保証人を得たGは、Zの再生手続に参加しなかった。
(小問C)Sは再生手続に参加することができるか。できるとすれば、どのような債権をもって再生手続に参加することができるか。金額も示しなさい。
2001年4月1日にGがSに1000万円を貸し付けた。利息は、毎年3月31日に年5%の割合で支払い、元本は2006年3月31日に返済することが約定された(2006年3月31日に、元本1000万円及び最後の1年分の利息50万円が支払われるものとする)。Sの委託を受けたZが連帯保証人になった。
Sの財産状況が悪化し、2002年3月31日に支払うべき利息を支払うことができず、期限の利益を喪失し、2003年4月1日(月)に再生手続が開始された。Zの財産状況は良好とは言えないが、まだ再生手続開始決定を受けるほどではない。Sの再生手続開始直前の2003年3月31日にZが利息の外に元本の一部200万を代位弁済し、さらに2003年4月2日に、ZはGに300万円を支払い、これは残元本800万円のうちの一部弁済に充当された。その後でSの再生手続において再生計画案が提出されるものとする。また、裁判所により認可される再生計画においては、再生手続開始日以降の利息・損害金は全額免除される旨が条項が定められるものとし、手続開始日の前日までの利息・損害金は免除されないものとする。
(小問1)Gはどのような債権をもってSの再生手続に参加することができるか。議決権が認められる金額はいくらか。
(小問2)GがSの再生手続に参加した場合に、ZはSの再生手続に参加することができるか。どのような債権をもってSの再生手続に参加することができるか。議決権が認められる金額はいくらか。
(小問3)GはSの再生手続からできるだけ多くの弁済を得たい。そのためには、GはZと保証契約を締結する際に、どのような合意をしておくのが確実か。上記の事実関係に加えて、さらに、Zの財産状況が2003年4月2日以降に著しく悪化し、2004年5月31日(月)には再生手続が開始される場合を想定して答えなさい。
Yは、高速道路を利用して片道3時間ほどかかる距離に住んでいるAから代金150万円前払で風景画の油絵の制作の注文を受けていた。Yは、その油絵の引渡し、絵画及びその架設の説明、絵画が注文に応じた作品であることの確認、並びに新規の受注の事務を、ある年の4月15日に、信頼のできるXに、費用及び報酬の合計額を5万円と定めて、委託した。Xは、翌朝10時に出発して、所定の用務を果たして、Yのところに行き、事務処理を報告するとともに、費用及び報酬の合計額5万円の支払を請求した。ところが、Yから「実は、今朝の9時半に再生手続開始決定を受けてしまった」と言われて、Xは驚いた。裁判所は、再生手続開始決定とともに、監督命令を発し、監督委員の同意が必要な事項として民事再生法41条1項所定事項を指定していた。また、再生債権届出期間を同年7月15日とした。
この場合について、次の各小問に答えなさい。
(1)再生手続開始によりXY間の委任契約はどうなるか。
(2)Xの費用・報酬債権は、再生手続上どのように扱われるか。
(3)再生手続開始の3カ月前(同年1月15日)に、YがXに、弁済期を1年後として50万円を貸し渡していた場合に、Xは、Yに対するこの債務とYに対する費用・報酬債権とを再生手続開始後に相殺することができるか。
Y会社は飲食業を営んでいる。Yは、資金繰りが楽というわけではないが、債務の弁済は滞りなくしてきた。しかし、1カ月後に迫った20億円の借入金の弁済資金を調達することが困難であることが判明したため、民事再生法21条1項後段の事由があるとして、平成18年8月9日に再生手続開始申立てをし、同月23日に再生手続開始決定を受けた。債権届出期間は、平成18年11月30日とされた。管理命令は発せられていない。
下記の各問に答えなさい。
Y会社は飲食業を営んでいる。Yは、資金繰りが楽というわけではないが、債務の弁済は滞りなくしてきた。しかし、1カ月後に迫った20億円の借入金の弁済資金を調達することが困難であることが判明したため、民事再生法21条1項後段の事由があるとして、平成18年8月9日に再生手続開始申立てをし、同月23日に再生手続開始決定を受けた。債権届出期間は、平成18年11月30日とされた。管理命令は発せられていない。
下記の各問に答えなさい。
A株式会社は、経営状態が悪化し、弁済期の到来したいくつかの債務について債権者に期限の猶予を懇請し、かろうじて債権回収のための法的措置がとられることを免れている状況にある。A社の創業者であり代表取締役であるBは、ある新興宗教を信ずるようになり、その教祖Cに会社の苦境を打ち明け、助言を求めたところ、Cから「A社所有の土地Lに会社の事業内容を呪う悪霊が住んでいる。その土地を手放せば、会社の事業は軌道に乗る」と言われた。その土地は、会社に残されていた唯一の無負担の土地であり、時価3億円であったが、1億円でCの紹介するD社(代表取締役はCの妻の父)に売却された。2005年6月1日のことであった。しかし、会社の業績は回復せず、2006年4月1日に、Bは退任し、銀行から派遣されていた取締役Eが新たな代表取締役に就任した。2006年4月17日に、A社は民事再生手続の開始を申し立てた。一週間後に、裁判所は開始決定をするとともに、Fを監督委員とする監督命令を発し、監督委員の同意を要する事項として、41条1項所定の全事項を定めた(管理命令が発せられることはなかった)。
再生手続開始後に、開始前になされたA社とD社との間の土地Lの売買の妥当性が問題となり、A社の内部で、詐欺を理由にして売買契約を取り消すべきであり、また、否認権を行使すべきであるとの意見が出された。
上記の事例について、下記の小問に答えなさい。
(1)詐欺を理由にして売買契約を取り消して、土地Lの所有権移転登記の抹消及び明渡しを求める訴えは、誰が提起すべきか。
(2)小問(1)の訴えが提起されていない場合に、否認権は、誰がどのように行使すべきか。否認が認められる可能性があるか。
(3)小問(1)の訴訟の係属後に否認権は誰がどのように行使すべきか。
(4)小問(3)の場合に、詐欺を理由とする請求が認容されるとき、否認権行使の訴訟はどうなるか。
Gは、Sに対して1億円の債権を有している。平成21年3月1日、Gは、Sがまだ支払停止をしていないが実のところ支払不能の状態にあることを知り、S所有の時価1億円の不動産から債権を回収することにした。平成21年10月15日に、Sについて再生手続開始の申立てがなされ、2週間後に開始決定がくだされ、管理命令が発せられてVが管財人に選任された。Gが、次の2つの方法で前記不動産から債権を回収したときに、Gは債権回収の結果を維持できるか。
(1)平成21年3月10日に前記不動産により前記債務を代物弁済する旨の合意をし、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由する方法。
(2)平成21年3月10日に、Gが前記不動産をSから1億円で買い受ける売買契約を締結し、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由し、その代金債務とGのSに対する債権とを相殺する方法。
Gは、Sに対して1億円の債権を有している。平成20年2月1日の時点でSは支払不能の状態にあり、同年3月1日に支払を停止した。Gは、Sに支払能力があるものと思っていたが、ともあれSが支払を停止したことを知り、S所有の時価1億円の不動産から債権を回収することにした。平成21年10月15日にSについて再生手続開始の申立てがなされ、2週間後に開始決定がくだされ、管理命令が発せられてVが管財人に選任された。Gが、次の2つの方法で前記不動産から債権を回収したときに、Gは債権回収の結果を維持できるか。
(1)平成20年3月10日に前記不動産により前記債務を代物弁済する旨の合意をし、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由する方法。
(2)平成20年3月10日に、Gが前記不動産をSから1億円で買い受ける売買契約を締結し、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由し、その代金債務とGのSに対する債権とを同日に相殺する方法。
(採点上の都合により、この問題については、次の点に注意して解答すること: 原則的規定と例外的規定がある場合には、まず原則的規定を説明してその要件の充足を検討し、次に例外的規定を説明してその要件の充足を検討すること。「例外規定の要件が充足されるから、原則的規定は適用されないので、原則的規定の要件充足の検討は省略する」といった書き方はしないこと。)
Gは、Sに対して1億円の債権を有している。平成20年2月1日の時点でSは支払不能の状態にあり、同年3月1日に支払を停止した。Gは、Sに支払能力があるものと思っていたが、ともあれSが支払を停止したことを知り、S所有の時価1億円の不動産から債権を回収することにした。平成21年10月15日にSについて再生手続開始の申立てがなされ、2週間後に開始決定がくだされ、管理命令が発せられてVが管財人に選任された。Gが、次の3つの方法で前記不動産から債権の全部又は一部を回収したときに、Gは債権回収の結果を維持できるか。
(1)平成20年3月10日に前記不動産により前記債務を代物弁済する旨の合意をし、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由する方法。
(2)平成20年3月10日に、Gが前記不動産をSから1億円で買い受ける売買契約を締結し、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由し、その代金債務とGのSに対する債権とを対当額1億円で同日に相殺する方法。
(3) 平成20年3月10日に、Gが前記不動産をSから5000万円で買い受ける売買契約を締結し、同日の登記申請に基づき所有権移転登記を経由し、その代金債務とGのSに対する債権とを対当額5000万円で同日に相殺する方法。
(採点上の都合により、この問題については、次の点に注意して解答すること: 原則的規定と例外的規定がある場合には、まず原則的規定を説明してその要件の充足を検討し、次に例外的規定を説明してその要件の充足を検討すること。「例外規定の要件が充足されるから、原則的規定は適用されないので、原則的規定の要件充足の検討は省略する」という書き方はしないこと。)
Gは、Sに対して1億円の債権(α債権)を有している(期限到来済みである)。SはDに対して1億円の債権(β債権)を有している(この債権は、弁済期を平成21年12月15日とする無利息債権であり、譲渡禁止特約はない)。平成20年3月1日、Gは、Sがまだ支払停止をしていないが実のところ支払不能の状態にあることを知り、次の各方法で、Sのβ債権から自己のα債権を回収したものとする(各方法は、独立である)。
(a)平成20年3月10日にβ債権をもって代物弁済することを合意し、代物弁済契約に基づきβ債権がGに譲渡された旨のSからDへの確定日付のある通知が平成20年3月13日にDに到着する方法。
(b)平成20年3月10日にGがβ債権をSから1億円で買い受ける売買契約を締結し、その代金債務とα債権とを相殺し、β債権がGに譲渡された旨のSからDへの確定日付のある通知が平成20年3月13日にDに到着する方法。
(c)平成20年3月10日にGがDとの間でβ債権について併存的債務引受契約を締結し、同日その旨の通知をSにし、平成20年3月13日にSが受益の意思表示を文書によりし(民法470条3項)、β債権の期限の到来後に(やむを得ない事情があれば、期限の利益を放棄してそれ以前に)、GがSにα債権とβ債権とを相殺する旨の意思表示をし、β債権の消滅費用の償還としてβ債権の本来の弁済期に1億円をDから受領する方法。
[問] 平成21年1月15日に、Sについて再生手続開始の申立てがなされ、2週間後に開始決定がくだされ、管理命令が発せられてVが管財人に選任された場合に、Gは上記各方法による債権回収の結果を維持できるか。平成21年4月15日に、再生手続開始の申立てがなされ、2週間後に開始決定がくだされ、Vが管財人に選任された場合はどうか。
個人事業者であるSは、300万円以上の価値のある動産αを有している。経済的に行き詰まったSは、動産αが債権者によって差押えられることを恐れて、平成24年2月1日に、親戚のAとの間で、この動産αを代金50万円で売却することを合意し、同日、その旨の売買契約書を作成し、動産αをAに引き渡した。この売買契約と同時に、SはAとの間で、次の合意を書面で取り交わした:売却の日から2年間にわたり、事業を行う上で必要があるたびに、動産αを1週間あたり2万円で借り受けることができる;Sは、動産αを週末には必ずAに返却しなければならない;Sが借り受ける権利を有する間は、Aは動産αを他に売却してはならない。Aは、動産αにAの所有物であることを示す表示を施して、Sに週単位で貸し出している(Sが借りに来ない週もある)。
Sは、債権者の強制執行を避けつつ、自力で事業を立て直す予定であったが、経済状況はそれを許さなかった。負債総額が7000万円に達しているSは、平成24年6月4日に、再生手続開始の申立てをした。裁判所は、Vを監督委員に選任する監督命令を発し、民事再生法41条1項所定事項のすべてを監督委員の同意を要する事項に指定した。同月20日に再生手続開始決定がくだされた。Sから提出された再生計画案が債権者集会において可決され、平成24年11月26日に認可決定が確定した。認可された再生計画では、権利変更後の全ての債務を認可決定確定日の6ヶ月後の日から5年間で分割弁済することが定められている。
SとAとの間の売買について、Sは、自己が支払不能の状況あること及び債権者から前記動産αを差し押さえられそうであることをAに打ち明けて、売買契約及び賃貸借の合意をしたとVに述べている。Aは、そのような話は聞いておらず、単に経済的に困窮しているSを2年間にわたって助けるために買い受けたにすぎず、真正の売買であると主張している。Vは、この売買は否認すべきであると考え、裁判所に否認権限付与の申立てをし、平成24年7月20日に付与決定を得た。
上記の設例について、下記の小問に答えなさい(各小問は独立とする)。
(1)Vは、否認権をどのように行使したらよいか。否認は認められるであろうか。
(2)否認訴訟において、平成27年10月4日第一審はVの請求を認容する判決を下した。これに対して、Aが控訴を提起し、控訴審の第一回口頭弁論は、同年11月26日である。否認訴訟はどのようになると予想されるか。予想可能な範囲で説明しなさい。
(3)否認訴訟において、Vは、売買契約が通謀虚偽表示により無効であることを主張することができるか。できないとすれば、その主張は、誰がどのような方法で主張すべきか。
(4)Vが否認権行使のための法的措置をとる前に、AがSに対して、所有権確認請求の訴えを提起し、訴訟係属中もVが否認権を行使することはなかった。この訴訟がAの全面勝訴で終了した。その後に、Vは、SA間の売買について否認権を行使して、Aに動産αの引渡を求めることができるか。
(5)Vが否認権行使のための法的措置をとる前に、AがSに対して、所有権確認の訴えを提起した。この訴訟の係属中に、Vは、SA間の売買を否認するためにどのようにすべきか。
Xは、フリーの写真家である。Xの年収は、各種経費及び所得税や社会保険料を控除すると、600万円ほどである(この中には、今までに撮影した写真の使用料・年50万円も含まれている)。収入は現在のところ安定している。一度結婚し、現在8歳の子供がいるが、性格の不一致のために離婚した(協議離婚)。子供は、元妻が養育しており、協議離婚の際に、Xが毎年12月1日に60万円以上の金額を子供が18歳になるまで元妻に支払うことが合意された(正確な金額は後述する)。その後、現在の妻と再婚した。妻が自営業を営んでいて、Xがその保証人になった。妻の事業が失敗し、保証債務は3000万円になった。その外に、Xが住宅(マンション)を購入した際に銀行から借り入れたローンがまだ3000万円あり、これについては、その住宅に抵当権が設定されていた。Xは、再生手続により負債を整理することにした。Xは6月1日に再生手続開始申立てをする予定であり、6月15日に再生手続開始決定を受けるものとする。
6月15日(開始決定を受ける日)におけるXの資産は下記のとおりであり、これ以外にはない(債権の形で存在する収入もない)。
6月15日における負債は下記のとおりであり、誰からも異議は出されないものとする。
下記の問に答えなさい。
Xは、これまで親のおかげで順調な生活を送ってきた。今は親元を離れて吹田市内で一人で借家暮らしをしている独身の営業マン(26歳)である。月収(所得税や社会保険料を控除した後の年収を12で割った金額)は、20万円前後で一応安定している。彼は、営業活動の資金の捻出のために、24社から800万円以上を借り受け、毎月の返済額が16万円以上となっていたにもかかわらず、金融業者Aから「他社借入3社200万円、毎月返済額4万5000円」との虚偽の事実を申告して20万円を借り受けた。それから1ヵ月もしないうちに、再生手続開始の申立てをし、給与所得者等再生を行うことを求める申述をした。再生手続開始決定がなされた当時にXが有していた財産は、現金10万円と、敷金返還請求権10万円の外には、日常生活に必要な布団や衣服の類のみであり、自動車も有していなかった。再生計画が提出された後で裁判所が債権者の意見を聴取したところ、Aが上記の事情を指摘し、破産の場合であれば免責を不許にすべき事由が存在すると主張して、再生計画認可に反対する意見を述べた。
なお、Xの収入状況等は下記の通りである。
上記の事案について、下記の小問に答えなさい。