差玉向かい|差玉|バイカイ付け出し

(さぎょくむかい)/(さぎょく)/(ばいかいつけだし)[経済/商品先物取引]


商品先物取引所等が板寄せの方法で取引を成立させている場合に、取引員が委託を受けた(商品の種類及び限月ごとの)売付けと買付けの数量の差を「差玉」という。

取引所の取引員が委託に基づく売付けと買付けを集計し、差玉の全部又は一定割合に対当する自己玉を建てることを繰り返す商品取引員の取引方法を「差玉向かい」という。

取引員が立会終了後に各取引所に申し出るだけで当該立会の約定値段で売買約定を成立させることを「バイカイ付け出し」という。不正の温床になりやすいので、禁止されるべきであるが、取引所によってはこれが許されていることもある。

差玉向かいがバイカイ付け出しの方法で行われる場合には、取引員は一日の取引の結果を見て、自己に有利に取引を成立させることができ、顧客全体の損失において取引員が確実に利益を得ることができることになるので、極めて問題が多い。取引時間中の差玉向かいであっても、取引員と顧客全体との利害相反が生じ(顧客全体の損失は取引員の利益になり、取引員の損失は顧客全体の利益になる)、委託契約が顧客を委任者とし取引員を受任者とする委任契約の一種であることに鑑みると、問題があると言ってよい。

最高裁判所 平成21年7月16日 第1小法廷 判決(平成20年(受)第802号)は、バイカイ付け出しの方法により差玉向かいの取引を成立させていた取引員に対する顧客からの損害賠償請求訴訟において、バイカイ付け出しの問題点に特に立ち入ることなく、次のように説示している。

債務不履行責任は損害賠償義務を生じさせることになるが、損害額の算定は容易ではなかろう。裁判所は、民事訴訟法248条により相当な額を認定することになると思われる。


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2009年 11月 16日 (月)