(にんかちえんだんたい)[/法学/行政法/地方自治法/民法/不動産登記法/破産法/]
町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体を「地縁による団体」略して「地縁団体」と呼び(地自法260条の2第1項・7項)、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けた地縁団体を「認可地縁団体」と呼ぶ。認可地縁団体は、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
法人格(権利能力) 法律が団体に法人格(権利能力)を付与する場合には、通常、「・・・は、法人とする」と規定する(例えば、一般社団・財団法人法3条、地自法2条1項「地方公共団体は、法人とする」)。認可法人についてはこの表現を採用せずに、「その目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と規定している。このことがこの団体の法的位置付けを微妙にする。民法43条が「法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と規定していることと比較対照すれば、「権利を有し、義務を負う」との概念(法人格・権利能力)が「法人」の概念よりも基本的な概念であり、認可地縁団体は、「法人」という媒介概念を経ることなく「法人格(権利能力)」を与えられた団体である、と説明して良いであろう。
公示 法人については、通常、「設立の登記をすることによって成立する」(例えば、一般社団・財団法人法22条)。また、登記によってその存在が公示される。しかし、認可地縁団体については、登記制度に代えて、市町村長による告示制度が用意され(地自法260条の2第10項)、告示が対抗要件とされている(同条13項)。
破産 破産手続は、一般に、債権者又は債務者からの申立てによって開始されるが、認可地縁団体については、職権での破産手続開始も認められている(地自法260条の22第1項)。この規定は、認可地縁団体に対する裁判所の後見的監督を認める規定と理解することもできるが、同時に、会社等の法人については、代表権限を有しない取締役や理事にも申立権限が与えられているのに対し(破産法19条1項)、認可地縁団体については、代表者にのみ申立権限が認められており、そのため開始申立てが適時になされない虞がある。職権による開始は、それを補完する機能を有すると評価することもできよう。
認可を受けない地縁団体
比較的狭い地域に居住することあるいは出身であることによる人々の結びつきを地縁という。地縁による人の結合体(団体)の代表例は、いわゆる町内会である。町内会は、地域住民を構成員とし、地域社会の維持・発展を目的とし、構成員の変動に拘わらず同一性を保って存続し、独自の財産を有し、団体内部において民主的な方法で意思形成がなされ、代表者を定め、代表者を通じて外部と交渉あるいは取引をする場合には、法人になっていなくても、民法上は権利義務の主体となり、民事訴訟法上は当事者能力を有するとされている(民訴法29条)。
ただ、不動産に関しては、自然人あるいは法人でなければ、登記名義人になれないとされてきた。その財産的価値が高く、法人でない団体に登記能力を認めると脱税や犯罪行為の隠れ蓑に利用される虞等があるからである。
しかし、地縁団体の中には不動産を所有するものもあり、団体自体が登記名義人になることができないことにより、法律関係の適正な設定ないし規整が妨げられ、さまざまな紛争の原因となっていた。そこで、1991年に地方自治法が改正され、その260条の2以下に認可地縁団体の制度が設けられたのである。
認可地縁団体に関する判例