元方事業者

(もとかたじぎょうしゃ)[/法学/労働法/]


労働安全衛生法15条で定義されている用語である[1]。ある事業者が一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている場合に、その事業者に自己の指揮命令の下で働くの労働者の労働安全(労働災害の防止)のみならず、請負人の指揮命令の下で働く労働者の労働安全(労働災害の防止)についても統括的に指揮・管理を行わせるのがよいとの考えのもとに設けられた概念である。したがって、(α)「一の場所において行う事業」が注文者の事業であり、その事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている場合には、注文者が元方事業者になる(注文者がその場所で働く全ての労働者の労働安全について統括的な指揮・管理を行う)。(β)注文者自身は「一の場所」において事業を行わない場合には、請負人が元方事業者である。(γ)当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が複数あり、階層構造をなしているときは、最も先次の請負契約において「仕事の一部」を請負人に請け負わせている者(注文者)が元方事業者であり、その注文者自身が請負人である場合には、その注文者は、いわゆる元請負人に該当する。


[1] 労働安全衛生法15条1項1文 「事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。」


栗田隆のホーム

Contact: <kurita@kansai-u.ac.jp>
2014年7月8日 −2014年6ー7月8日