非占有型不動産質権

(ひせんゆうがたしちけん)[/法学/民法/]


使用収益しない旨の定めのある不動産質権を非占有型不動産質権(あるいは非占有型質権)といい、そのような定めのない不動産質権を占有型不動産質権ないし通常型不動産質権(あるいは占有型質権ないし通常型質権)という。

不動産質権は、本来、担保権者が担保不動産を占有して使用収益することを特色とする担保権である(その代わり、債権者は、不動産の管理費用等を負担し、被担保債権の利息を請求することができない(民法357条・358条))。ところが、民法は、質権者が不動産を使用収益しないこと旨を合意により定めることを認め(民法359条)、その場合には、質権者は不動産の管理費用等を負担せず、利息を徴収することができるものとしている。しかし、非占有型不動産質権は、機能の点で抵当権と異なるところはなく、その利用の必要性は乏しい。実務にも、利用例はほとんど目にしない。いわば、盲腸のような類型の担保権である。

たとえ実際にはほとんど使わなくても、また、使う必要がなくても、民法に規定がある以上は、民事執行法においてもそれを考慮した規定を設けざるをえない。そのため、同法59条の規定が錯雑としたものになっている。非占有型不動産質権は、無用の長物であり、これを許容する規定は廃止すべきである。


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2005年 9月 10日−2005年 9月 10日