債る
(はたる)[/法学/民法/]
一般には、「強く求める」ことを意味する。法学の領域では、債権者が債務者に対して債務の弁済を「請求する」、「取り立てる」あるいは「徴収する」ことを意味する。
上記の意味は次のような文において文脈から推察できるが、読み方は推測困難である。国語辞典によれば、上記の通りである。
- 「同上の娼妓芸妓は人身の権利を失ふ者にて牛馬に異ならす。人より牛馬に物の返弁を求むるの理なし。故に従来同上の娼妓芸妓へ借す所の金銀並に売掛滞金等は一切債るへからさる事」 明治5年のマリヤ・ルーヅ号事件を機にして発せられた明治5年太政官布告295号に関する司法省第22号の一部である(原文(法令全書第5巻の21337頁)は片仮名で書かれているが、平仮名に改めた。句点も追加した。穂積陳重『法曹夜話』(岩波文庫、1980年)206頁以下も参照。引用部分は、209頁に掲載されている)。なお、同布告との関係で、人身売買の禁止及び年季奉公の期間制限を含む「天和の高札」の項も参照(穂積陳重『続法曹夜話』(岩波文庫、1980年)238頁以下も参照))。
- 「彼のもてるすべてのものは債主(はたるもの)にうばわれ、その勤労の成果は外人(あだしびと)にかすめられるべし」(ティエリ(オーギュスタン)/小島輝正・訳『メロヴィング王朝史話(上)』(岩波文庫461-1、1992年8月18日第1刷)212頁) 「使徒行伝でユダ・イスカリオテに向かって述べられている呪詛の言葉」の一部とのことである。ここで、「債権者」ではなく「債主」の言葉を用い、「さいしゅ」と読むこともできるのに「はたるもの」とのふりがなを付けたのは、それなりの意味があろう。やまと言葉を用いた重みのある文体の中で音読みを避けたと理解してよいであろうか。