(げんさいけんしゃ)/(げんさいけん)[/法学/民法/破産法/]
債権発生当時の債権者を「原債権者」といい、原債権者が有している又は有していた債権を「原債権」という。なお、債権が譲渡や代位により他者に移転した場合に、元の債権者を指して「原債権者」と言うこともある。両者は、通常、一致するが、債権が転々と移転するときには、2回目の移転以降の債権取得者から見た「原債権者」は異なる。債権の一部移転の場合には、移転した部分とまだ移転していない部分の双方を指して原債権ということもある。
「原債権」の語は、求償権との対比で用いられることが多い。すなわち、ある債権の保証人が保証債務を履行すると、彼は、主債務者に対して求償権を取得するとともに、その確保のために、弁済者代位の規定により被保証債権を取得する。「原債権」の語は、この文脈において、「被保証債権」や「被代位債権」(「代位により弁済者に移転した債権」あるいは「代位された債権」)を指し、これらよりも簡潔な表現であるので、好んで用いられる。
一部弁済による代位について、明治23年民法財産編486条は、「代位者は自己の弁済の割合に応して原債権者と共にその権利を行う」と規定していた(原文はカタカナ書)。これに対して、明治29年民法502条は、「代位者はその弁済をしたる価額に応して債権者と共にその権利を行ふ」と規定した(平成16年改正前の文言。原文はカタカナ書)。このように、明治29年民法では原債権者」という表現が放棄されて「債権者」になったので、各種の文献も単に「債権者」ということが多くなっている。前記法条は、代位者と原債権者とを同順位とする建前を表明するものであるが、明治29年民法に関しては、現在では、原債権者を優先させるべきであるとの解釈論が主流になっている。この見解は「原債権者優先主義」あるいは「債権者優先主義」と呼ばれるが、明治29年民法が「原債権者」という表現を用いていないため、「債権者優先主義」と呼ばれることが多い。