ダブルスクール

(だぶるすくうる)[/大学教育/]


学生が同時期に複数の学校で勉学することをいう。

大学生について言えば、一つの大学に籍をおいてそこで勉学しつつ、各種学校等でも勉強することを指す。同時期に複数の大学の正規の学生となることは、学年末試験の時期が重なるなどの理由により、現在のところ無理であり、これは含まれない。

関西大学の『平成9年度学生生活実態調査』(学生部)によれば、14%ほどの学生がダブルスクールをしている。男子学生9%に対して、女子学生26%で、女子学生の方がダブルスクールをする割合が高い。各種学校等で学ぶ内容は、語学(41%)が最も高く、ついで音楽・美術等の生活・芸術関係(23%)、各種資格試験(14%)が多い。

ダブルスクールをする主たる動機は、自己の能力開発である。就職との関係で、能力開発の結果を具体的に証明する各種試験のための勉強が重要である。語学関係も、TOEFL, TOEICなどの試験を通して証明が比較的得られやすく、これらの学習のためのダブルスクールも広い意味で能力証明のためのものとみることができる。

ダブルスクールが行われるためには、学生にそれだけの経済的・時間的余裕があることが必要である。

学生にとって最も重要な資格証明は、大学の卒業証書である。30年ほど前であれば、大学の卒業証書が1枚あれば(それを得る見込みがあれば)、就職活動のほとんどの場合に充分であった。そのことは今も基本的には変わりはないとはいえ、大学進学率が高まると共に、学生を採用する側は、全国的な規模で行われる各種試験を学生の能力評価の補助的資料として利用しようとする。学生も、資格試験により自己の能力開発の結果を証明して差別化を図ろうとして、ダブルスクールをするのである。ダブルスクールを学生が大学教育に不満を抱いた結果とみるのは適当ではない。

しかし、それでも大学の卒業証書とりわけ成績証明書の価値の相対的な低下は否めない。大学の卒業証書・成績証明書の権威(信頼性)を維持するためには、大学の卒業証書および各科目の成績証明書が具体的に何を意味するのかを社会に説明できる形で客観化することが必要となる。もちろん、いかに客観化に努めたところで、一つの大学の中の個々の科目の成績証明が全国的規模で行われる各種資格試験の合格証明書ほどの権威をもつことは困難である。しかし、たとえそうであっても、その努力は必要である。

大学の成績評価もダブルスクールの結果得られた資格証明も、一定時期における人の能力評価にすぎない。過去の成績に過度に依存して、現在の能力の判定することは危険である。その点からすれば、随時試験を行い、その成績を利用する側も最近の成績を求めるTOEFLやTOEICのような成績評価が合理的である。


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1999年 1月 23日