(できだかばらい)/(できがた)[/工事/法律/民法/破産法/]
土木工事や建築工事などにおいて、工事完了部分(工事請負契約の内容である設計書等に従って工事が完了した部分)を「出来形(できがた)」という。工事全体が完了している場合についても使うことができるが、全体が完了する前の完了部分について使うことが比較的多い。
出来形を数値で表したものが「出来高」であり、金額で表すことが多い。
請負契約において、報酬(代価)は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則であるが(民法633条)、全体が完成する前に、工事完了部分(出来形)を注文者に帰属させて、その部分について代金を支払うこともでき、これを「出来高払」あるいは「出来形払」という。
「出来形払」の語は、≪公共工事の前払金保証事業に関する法律≫2条2項で、「公共工事の既済部分に対する代価の支払」の意味で用いられている。同項は、次のように規定している。
請負者[注1]が工事を完成させることができない場合には、注文者は契約を解除することになる。この場合に、請負者に原状回復義務を負わせることもできるが、国民経済的には損失が多く、また請負者が資力を欠いている場合には、よい結果は生じない。むしろ、出来高払をして、残りの工事を他の工事業者にさせる方が合理的であるので、契約においてその旨が約定されることが多い。
破産手続が開始された時に双方の履行が完了していない契約について、破産法53条1項は契約解除権を与えているが、請負者に原状回復を求めることは不合理であり、むしろ、契約関係の清算の方法として出来高払が合理的である。さらに、工事代金が破産手続開始前に全額支払われている場合には、破産法53条により解除することはできないが、この場合にも、破産管財人に解除権を与えて出来高払を可能にしておくことが望ましい。また、破産管財人が履行を望む場合でも、この場合の請負代金請求権は財団債権になるとしても(破産法148条1項7号)、代金の支払になお不安が残ることを考慮すると(152条1項参照)、請負者を破産者との契約に縛り付けるのも適当ではないと判断される。そこで、民法642条1項が、破産法53条1項・54条の特則として、破産管財人にも請負人にも解除権を認め、いずれが解除する場合でも、出来高に応じた報酬及びこれに含まれない費用の支払請求権を破産債権としている。請負者は、破産管財人が解除した場合にのみ、解除により生じた損害の賠償請求をすることができ、その賠償請求権は破産債権になる(642条2項)。
注1 民法では「請負人」の語が用いられているが、ここでは、公共工事の前払金保証事業に関する法律に従って「請負者」の語を用いることにしよう(会社が請負人である場合に、「請負者」の中に「請負会社」を含めやすい点で便利であり、「注文者」との対応関係もよい)。