関西大学教授 栗田 隆
教材開発・教材利用
1.はじめに
現在、大学においては、キャンバスに学生と教師とが集まって行われる教育が主流を占めている。このキャンパス型の教育の特質ないし利点は、次の点にある。
- 個人的な面識を得られること
- 学生同士の共同学習 大学教育においては、教師が学生に教えること以上に、学生同士が互いに協力しながら学習あるいは研究することが重要である。
- 図書館による学習・研究資料の提供 法学教育に限って言えば、教育素材は、これまでおおむね本あるいは雑誌の形式で存在していた。大学は、それらを図書館に集め、学生の利用に供してきた。
しかし、コンピュータネットワークが発達し、テレビ会議が可能となると、学生をキャンパスに集めて法学教育をすることの利点は、圧倒的なものとはいえなくなった。
- テレビ電話ないし会議を用いれば、学生同士の共同学習は、学生同士が離れた場所にいても、かなり充実して行われよう。ゼミナールもテレビ会議の形で行うことができる。
- 教材は、今はまだペーバーベースの方が圧倒的に多いが、それでもインターネット上に多数の教育素材が掲載されるようになった。
キャンバス型の教育の利点は確かに大きい。相手の全身を見つめながらの会話は、成長期にある人間にとって必要なことである。しかし、その必要性は、学生の年齢と共に低下しよう。法学の専門的知識を得ようとする者については、むしろ、自己の生活環境にあった形で法学教育を受ければ足りよう。自宅と大学とが離れている場合に、大学の近く住宅を借りることは相当の経済的負担を伴う。また、社会人が働きながら専門教育を受ける場合には、通学時間も惜しまれる。そこで、コンピュータネットワークを利用した遠隔教育が注目されるようになる。それはまた、大学教育のグローバル化を意味する。
将来的にはこのようなオンライン教育をにらみつつも、以下では、キャンバス型の教育で用いられることを前提にして、私が行っている教材の開発および利用を紹介することにしたい。
2.さまざまな教材の試作
1994年頃からさまざまなタイプの教材を作成してきた。
- 講義形式の民法入門ソフト HyperCardを利用
- Q&Aのカードを連結した民事執行法の学習カード 一種のプログラム学習。Webに掲載したが、サーバーの入れ替え時から利用不能のまま放置
- 債権回収ゲーム 未完成
- 民事訴訟法講義 Webに掲載
- 民事執行法の概説 Webに掲載
- 破産法講義ノート 簡単なQ&Aを埋め込んだ概説。Webに掲載
- 判例データベース 民事訴訟法講義、民事執行法概説、破産法学習ノートからリンクを張って利用。
- 練習問題集 例えば、民事訴訟法について50題ほどの優しい事例問題を作成し、それを予め公開して、その中から5題を期末試験に出すようにしている。
現在実際に利用しているのは、3から8の教材である。
3.将来の展望
オンライン教育を念頭に置いて場合には、次のシステムが必要である。
- テレビ会議 ゼミナールで使用
- 掲示板、メーリングリスト、ニュース
- 講義内容のビデオのストリーミング配信