民事訴訟法ダイアローグ

当事者

関西大学法学部教授
栗田 隆


当事者能力・訴訟能力


設例1
Xはある大学のボートクラブであり、部員は3回生のキャプテンAほか30名である。Xの部員は、先輩たちが資金を出して購入したボートを受け継いで、練習に使用している。そのボートがY(自然人)によって盗まれた。部員たちは会議を開いて、訴訟で取り戻すことを決めた。

Xの部員たちは、Aを代表者として、Xの名でボートの返還請求の訴えを提起することができるか。
[Q1] 当事者能力とはなにか。

[Q2] 当事者能力を有するのは、28条によれば、原則としてどのような者か

[Q3]29条によれば、例外的にどのようなものが当事者となりうるとされているか。29条の根拠は何か。29条に「その名において」と係れているが、これは社団については「代表者のなにおいて」の意味なのか、それても「社団の何おいて」の意味なのか。

[Q4] ボートクラブは、法人か。

[Q5] 社団とは何か。ボートクラブは、社団と言えるか。キャプテンはボートクラブの代表者と言えるか。このボートクラブに29条の適用はあるか。


設例2
19歳になったばかりの少年Xが自分で訴えを提起した。

 (1)第一審裁判所は、Xが未成年であることに気付いた。裁判所は、どうすべきか。

 (2)第一審裁判所が、Xの未成年を看過して、半年後にX敗訴の本案判決を言い渡した。これに対してXが控訴した。Xが未成年であることに気付いた控訴裁判所はどうすべきか。
[Q1] 判断能力が不十分と定型的に認められる者保護のために、訴訟法は、どのような規定を設けているか(28条)。行為能力と訴訟能力との違いは何か(31条)。その違いの理由は何か。

[Q2] 未成年者が自ら提起した訴えに対して裁判所はどのようにすべきと規定しているか(34条)。その規定の根拠は何か。

[Q3] 31条但書きの適用がないとして、裁判所は具体的にどのようにすべきか。設例において、31条但書きが適用される余地はあるか。

[Q4] 小問2において、Xが訴訟無能力者であることを理由に控訴裁判所が控訴を不適法却下すれば、どのような結果になるか。それは、訴訟能力の制度の趣旨に合致するか。

[Q5] 控訴裁判所が原判決を取り消して、34条1項により原告に訴え提起行為を補正させるとして、控訴審が補正を命ずるのがよいか、それとも事件を差し戻して第一審に補正を命じさせるのがよいか。


目次
1998年9月7日−1998年9月14日