関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法講義「複数請求訴訟1/2」
の比較法メモ


注1 スイス連邦民事訴訟法(Schweizerische Zivilprozessordnung von 19 Dezember 2008 im Stand am 1.Januar 2012)

第1部 総則
第1編 対象および適用領域
第2編 裁判所の管轄及び除斥
第1章 事物管轄及び職分管轄
第2章 土地管轄
第14条 反訴
 1 反訴が本訴と物的関連性を有する場合には、本訴について土地管轄を有する裁判所に反訴を提起することができる。
 2 この裁判籍は、本訴がなんらかの理由により途中終了に至った場合でも、存続する。

第6編 訴え

第90条 訴えの併合
 原告は、次の場合には、一つの訴えにおいて、同一の当事者に対し複数の請求を併合することができる。
 a 同じ裁判所がそれらの請求について事物管轄権を有し;かつ
 b 同種の手続が適用される場合

第2部 各則
第3編 通常手続
第2章 書面交換及び主弁論の準備

第224条 反訴
 1 被告は、答弁書において、反訴を提起することができる。ただし、主張された請求が本訴と同じ手続により判決される場合に限る。
 2 反訴の訴額が裁判所の事物管轄を上回るときは、裁判所は、双方の訴えを上位の事物管轄権を有する裁判所に移送しなければならない。
 3 反訴が提起されたときは、裁判所は、書面による答弁の期間を原告に定める。反訴に対する反訴は許されない。

第227条 訴えの変更
  1 訴えの変更は、次の場合に許される。変更後の訴え又は新たな訴えが同種の手続により裁判され、かつ、
  a これまでの請求と事実上の関連がある場合、又は
  b 相手方当事者が同意する場合
 2 変更後の訴えの訴額が裁判所の事物管轄を上回るときは、裁判所は、訴訟を上位の事物管轄権を有する裁判所に移送しなければならない。
 3 訴えの減縮(Beschraenkung)は、いつにても許される;受訴裁判所は引き続き管轄権を有する。

第3章 主弁論

第230条 訴えの変更
 1 訴えの変更は、主弁論においては、次の場合にのみなお許される。
  a 第227条第1項の要件が満たされ;かつ
  b それに加えて、訴えの変更が新たな事実及び証拠方法に基づく場合
 2 第227条第2項及び第3項の適用がある。

注2 オーストリー民事訴訟法(Gesetz v. 1. 8. 1895 ueber das gerichtliche Verfahren in buergerlichen Rechtsstreitigkeiten. zuletzt geaendert durch BGBl I 2011/21)

第227条
 (1) 原告の同一被告に対する複数の請求は、それらが合算されるもの(司法規範55条)ではない場合でも、次の場合には、同一の訴えにおいて主張することができる。全部の請求について、
  1. 受訴裁判所が管轄権を有し、
  2. 同種の手続が許される場合
 (2) ただし、司法規範49条1項1号所定の金額を超えない請求をそれを超える請求と併合することができ、また、単独裁判官において審理される請求を合議体において審理される請求と併合することができる。第1の場合には、管轄は大きい方の金額を基準にする;第2の場合には、合議体が全部の請求について裁判する。

第235条 訴えの変更
 (1) 裁判所に提起された訴えの変更、特に訴えの要求の拡張については、それによって受訴裁判所の管轄権が失われないときは、原告は訴訟係属前にそれをする権利を常に有する。
 (2) 訴訟係属後は、相手方の同意を要する;この同意があれば、受訴裁判所が変更後の訴えについて管轄権を有しない場合であっても、受訴裁判所が当事者の合意により管轄を得たであろうとき又無管轄が裁判所法104条3項により治癒されるときは、訴えの変更は許される。相手方の同意は、彼が変更に対して異議を述べることなく変更後の訴えについて弁論をするときは、存在すると認められるものとする。
 (3) 変更により受訴裁判所の管轄が排除されず、変更から審理の著しい困難又は遅滞が生ずるおそれがないときは、裁判所は、訴訟係属後であっても、相手方の異議にかかわらず、変更を許すことができる。
 (4) 訴えの原因の変更なしに訴えの事実記載及び訴えにおいて申出のなされた証拠が変更され、補充され、補足説明され(erlaeutert)又は訂正された場合、又は同様に訴えの原因の変更なしに訴えの要求を主たる権利(Hauptsache)において又は従たる債権に関して減縮し又は当初請求された目的物(Gegenstand)に代えて他の目的物又は利益が請求される場合に、それは訴えの変更にあたらないものとする。
  (注:「訴えの事実記載及び訴えにおいて申出のなされた証拠」にいう「訴え」(Klage)は、訴状の意味と思われるが、直訳のままとした。)
 (5) 訴えの内容に従えば訴えの要求がある者により又はある者に対して提起されていることが例えば企業の表示の説明から明らかであり、当事者の表示がその者に訂正される場合には、それは訴えの変更でも当事者の変更でもない。

第233条
 (1) 訴訟係属は、その存続中は、主張された請求について同一の裁判所においても他の裁判所においても訴訟を行うことが許されないとの効果を有する。訴訟係属中に同一の請求について提起された訴えは、申立てにより又は職権で却下されるものとする。
 (2) 訴訟係属後に、被告は、反訴の裁判籍及びその他の法定要件が満たされるのであれば、第一審の口頭弁論が終結されるまでの間、本訴の裁判所に反訴を提起することができる。

第236条 確認を求める中間申立て
 (1) 訴えの要求に関する裁判が訴訟の進行中に争いとなった権利関係又は権利の存在又は不存在に全部又は一部依存するときは、原告は、被告の同意なしに、判決の基礎となる口頭弁論の終結まで、その権利関係又は権利が訴えについての判決又はこれに先行する判決において確認されることを申し立てることができる。
 (2) 前項の規定は、新たな申立ての対象(Gegenstand)がその種の事件のために排他的に定められた特別の手続においてのみ審理され得る場合又は裁判所の事物管轄に関する規定が申し立てられた裁判を妨げる場合には、適用しない。
 (3) 新たな申立ては、外国において作成された記録又は証書の承認(執行法79条から86a条)を対象とすることもできる;この場合には、第2項は適用されないものとする。

注3 ドイツ民事訴訟法(Zivilprozessordnung vom 30. Januar 1877 in der Neufassung vom 5. 12. 2005)

 条文の見出しは、参照したコンメンタールに付されていたものである(Zoeller ZPO 15.Aufl. とBaumbach ZPO 66. Aufl. を参照した)。

第25条 物的関連性による不動産裁判籍(dinglicher Gerichtsstand)
 不動産裁判籍にあっては、抵当権、土地債務又は定期土地債務に基づく訴えと共に債務の訴えを、 抵当権、土地債務又は定期土地債務の書換え又は抹消の訴えと共に人的義務免除の訴えを、物上負担の確認の訴えと共に延滞給付請求の訴えを提起することができる。ただし、併合された訴えが同一の被告に対して向けられているときに限る。

第33条 反訴の特別裁判籍
 (1) 反対請求が本訴において主張された請求又はそれに対して提出された防御方法と関連する場合には、本訴の裁判所に反訴を提起することができる。
 (2)  反対請求に関する訴えについて第40条第2項の規定による裁判所の管轄の合意が許されない場合には、前項の規定は適用しない。

第256条 確認の訴え
 (1) 原告が権利関係又は証書の真否が裁判により即時に確定されることについて法的利益を有する場合には、権利関係の存在又は不存在の確認、証書の承認又はその不真正の確認を求める訴えを提起することができる。
 (2) 争訟の裁判が訴訟の進行中に争いとなった権利関係の存在又は不存在に全部又は一部依存するときは、判決の基礎となる口頭弁論の終結に至るまで、原告は訴えの申立ての拡張により、被告は反訴の提起により、その法律関係が裁判により確認されることを申し立てることができる。

第260条 訴えの併合/請求の併合
 同一の被告に対する原告の複数の請求は、それらが異なる原因に基づく場合であっても、全ての請求について受訴裁判所が管轄権を有し、かつ同じ訴訟種類(Prozessart)が許されるときは、一つの訴えに併合することができる。

第263条 訴えの変更
 訴訟係属の発生後は、訴えの変更は、被告の同意があると又は裁判所が有益(sachdienlich)と認めるときに許される。

第264条 訴えの変更にあたらない場合
 次の場合は、訴えの変更とは認めないものとする。訴えの原因の変更なしに、
  1. 事実上又は法律上の申述(Anfuehrungen)が補充又は訂正される場合;
  2. 訴えの申立てが主たる権利(Hauptsache)において又は従たる債権に関して拡張され又は減縮される場合;
  3. 当初求められた目的物に代えて、後に生じた変更により、他の目的物又は利益を求める場合。

第3編 上訴
第1章 控訴

第525条 地方裁判所における手続に準ずる/一般的手続原則
 その余の手続について、地方裁判所における第一審の手続に適用される規定を準用する。ただし、この章の規定が別段の定めをしている場合はこの限りでない。

旧第530条 反訴、反対債権による相殺
 (1) 反訴の提起は、相手方が同意する場合、又は反訴により追求される請求を係属中の手続において主張することが有益であると裁判所が認める場合にのみ許される。
 (2) 被告が反対債権による相殺を主張する場合には、これに基づく抗弁(Einwendung)は、原告が同意するとき又は係属中の訴訟における主張を裁判所が有益と認めるときに限り、許される。

第533条 訴えの変更、相殺の意思表示、反訴
 訴えの変更、相殺の意思表示及び反訴は、次の場合にのみ許される。
  1. 相手方が同意し又は裁判所が有益と認め、かつ
  2. 第529条により控訴裁判所が控訴に関する弁論及び裁判の基礎にすべき事実によりそれらが根拠付けられ得る場合。

注4 テッヒョー草案(1886年6月司法大臣山田顕義に提出)(原文は、旧字・カタカナを用いた縦書き)

第1編 裁判所
第2章 裁判所管轄

第25条
 反訴及ひ義務相殺の請求は本訴を受理したる裁判所之を管轄す但裁判管轄に付き原被告の約諾を許さゝる場合は此限に在らす。

第4編 初審手続
第1章 始審 裁判所
第1節 口頭審理に至る手続

第211条
 同一の原告より同一の被告に対し数個の請求を為すには左の場合を除くの外之を同一の訴状に合記することを得
  1 裁判管轄を異にするものある時
  2 特別の訴訟手続に由る可きものある時
  3 請求の種類を異にするものある時但其請求相牽連するものなる時は此限に在らす

第213条
 訴訟物件は訴状送達の時より拘束を受くるものとす
 訴訟物件の拘束は左の効力を生す
  1 原告若くは被告同一の訴訟物件に付き他の訴訟に於て請求反訴若くは抗弁を為したる時は対手人は其物件の拘束に係るを理由として抗弁を為すことを得
  2 裁判所の管轄は訴訟物件の増減住所の変換等に因り変更せさるものとす
  3 原告は被告の明諾黙諾を経るに非されは訴訟を変更することを得す

第214条
 左の場合に於て起訴の原因変更せさる限りは訴訟の変更なきものと看倣す可し
  1 事実若くは法律に関する申立を増補若くは正誤する時
  2 訟求の区域を拡張し若くは減縮する時
  3 物件の消滅若くは変形ありたるに付き其代として他の物件若くは償金を要求する時

第219条
 反対請求は原告の請求若くは之に対する抗弁と法律上相牽連せさる場合に限り義務相殺なると反訴なるとを問はす答書を以て之を申立ることを得其後に至り之を申立ることを得す

第2節 口頭審理

第242条
 同一の訴訟に於て提出したる数個の請求若くは本訴反訴を同時に審理すること不便なる時は裁判所は其審理の分離を命することを得

第5編 上訴手続
第1章 控訴

第465条
 訴訟の変更は対手人の承諾ありと雖も之を為すことを許さす

第468条
 新なる請求は第214条第2第3の場合を除くの外義務相殺の請求にして自己の過失なく初審裁判所に提出し能はさりしことを明示する時に限り之を提出することを得
 法律上相牽連せさる義務相殺は控訴状若くは答弁書を以て申立るに非されは之を提出することを許さす
 反訴は之を提起することを許さす

注5 明治23年民事訴訟法(原文は、旧字・カタカナを用いた縦書き)

第191条
同一の被告に対する原告の請求数個ある場合に於て其各請求に付き受訴裁判所か管轄権を有し且法律に於て同一種類の訴訟手続を許すときは原告は其請求を1個の訴えに併合することを得但民法の規定に反するときは此限に存らす

第195条
 1 訴訟物の権利拘束は訴状の送達に因りて生す
 2 権利拘束は左の効力を有す
  第1 権利拘束の継続中原告若くは被告より同一の訴訟物に付き他の裁判所に於て本訴又は反訴を以て請求を為したるときは相手方は権利拘束の抗弁を為すことを得
  第2 受訴裁判所の管轄は訴訟物の価額の増減、住所の変更其他管轄を定むる事情の変更に因りて変換すること無し
  第3 原告は訴えの原因を変更する権利なし但変更したる訴えに対し本案の口頭弁論前被告か異議を述へさるときは此の限にあらす

第196条
 原告か訴の原因を変更せすして左の諸件を為すときは被告は異議を述ふることを得す
  第1 事実上又は法律上の申述を補充し又は更正すること
  第2 本案又は附帯請求に付き訴の申立を拡張し又は減縮すること
  第3 最初求めたる物の滅失又は変更に因り賠償を求むること

第197条
 訴えの原因に変更なしとする裁判に対しては不服を申立つることを得す

第200条
 1 訴か管轄裁判所に於て権利拘束と為りたるときは被告は原告に対し其裁判所に反訴を起すことを得
 2 然れとも財産権上の請求に非さる請求に係る反訴又は目的物に付き専属管轄の規定ある反訴は若し其反訴か本訴なるとき其裁判所に於て管轄権を有す可き場合に限り之を為すことを許す
 3 反訴に対してはさらに反訴を為すことを得す

第201条
 1 反訴は答弁書若くは特別の書面を以て又は口頭弁論中相手方の面前に於て口頭を以て為すことを得
 2 然れとも答弁書差出の期間内に差出したる書面を以て起ささる反訴は被告の請求の全部又は一分と相殺を為す可き場合に於て同時に被告か自己の過失に因らすして其以前反訴を起すを得さりしことを疏明するときに限り之を為すことを許す

第202条
 訴に関する此法律の規定は反訴に之を適用す但其規定に因り差異の生す可きときは此限に在らす

第209条
 攻撃及ひ防禦の方法(反訴、抗弁、再抗弁等)は第201条に規定する制限を以て判決に接着する口頭弁論の終結に至るまて之を提出することを得

第3編 上訴
第1章 控訴

第413条
 訴の変更は相手方の承諾あるときと雖も之を許さす

第416条
 新なる請求は第196条第2号及び第3号の場合又は相殺することを得へきものにして且原告若くは被告か其過失に非すして第一審に於て提出し能はさりしことを疏明するときに限り之を起すことを得

注6 大正15年民事訴訟法(原文は、旧字・カタカナを用いた縦書き)

第1編 総則
第1章 裁判所
第1節 管轄

第21条
 一の訴を以て数個の請求を為す場合に於ては第1条乃至前条の規定に依り一の請求に付管轄権を有する裁判所に其の訴を提起することを得

第2編 第一審の訴訟手続
第1章 訴

第227条
 数個の請求は同種の訴訟手続に依る場合に限り一の訴を以て之を為すことを得

第232条
 1 原告は請求の基礎に変更なき限り口頭弁論の終結に至る迄請求又は請求の原因を変更することを得但し之に因り著く訴訟手続を遅滞せしむへき場合は此の限に在らす
 2 請求の変更は書面に依りて之を為すことを要す
 3 前項の書面は之を相手方に送達することを要す

第233条
 裁判所か請求又は請求の原因の変更を不当なりと認むるときは申立に因り又は職権を以て其の変更を許ささる旨の決定を為すことを要す

第234条
 1 裁判か訴訟の進行中に争と為りたる法律関係の成立又は不成立に繋るときは当事者は請求を拡張して其の法律関係の確認の判決を求むることを得但し其の確認の請求か他の裁判所の管轄に専属せさるときに限る
 2 前項の規定に依る請求の拡張は書面に依りて之を為すことを要す
 3 前項の書面は之を相手方に送達することを要す

第239条
 被告は口頭弁論の終結に至る迄本訴の繋属する裁判所に反訴を提起することを得但し其の目的たる請求か他の裁判所の管轄に専属せさるとき及本訴の目的たる請求又は防禦の方法と牽連するときに限る

第240条〔反訴の手続〕
 反訴に付ては本訴に関する規定に依る

第241条〔反訴の取下〕
 本訴の取下ありたるときは被告は原告の同意を得すして反訴を取下くることを得

第3編 上訴
第1章 控訴

第378条
 前編第1章乃至第3章の規定は別段の規定ある場合を除くの外控訴審の訴訟手続に之を準用す

第382条〔反訴の提起〕
 1 反訴は相手方の同意ある場合に限り之を提起することを得
 2 相手方か異議を述へすして反訴の本案に付弁論を為したるときは反訴の提起に同意したるものと看做す