民事訴訟法ダイアローグ

訴訟係属

関西大学法学部教授
栗田 隆


裁判長と裁判所との役割分担


設例1
Xは、Yに対して貸金100万円の支払請求の訴えを提起した。しかし、Yは無資力であり、実際に回収できる金額は多くて50万円程度であると考えて、50万円分の申立手数料しか納付しなかった。
[Q1] 申立手数料の不足に気付いた裁判長は、どのようにすべきか。

[Q2] 訴状の送達前において事件の処理にあたるのは裁判長であるが、どのような権限を与えられているのか。なぜそのような権限を与えられているのか。

[Q3] 訴状が被告に送達されてから、申立手数料の不足が判明した。誰が何をすべきか。

設例2
Xは、XY間の訴訟について京都地裁が下した確定判決に対して大阪地裁に再審の訴えを提起した。大阪地裁は、被告に訴状を送達することなく、この事件を京都地裁に移送することができるか。
このような場合に、裁判所書記官が管轄違いであることをXに指摘すれば、Xがこれに応ずるのが通常である。しかし、ここでは、Xがこれに応じなかったとする。

[Q1] この再審の訴えについて管轄権を有するのは、どの裁判所か(340条)。大阪地裁に管轄権が生ずる余地はあるか(12条・13条)。訴状の記載自体から、大阪地裁に管轄権がないといってよいか。

[Q2] 移送の裁判をするのは、裁判長か裁判所か(16条)。

[Q3] 被告への訴状送達前に移送の裁判をすることは、許されるか。


訴訟係属の発生時期


設例3
一市民であるXは、ある宗教法人の教義が人心を惑わす不当なものであると考えて、その宣教活動の停止を求める訴えを提起した。裁判所は、宗教の教義について裁判権を有せず、口頭弁論を開くまでもなく却下すべきであると考えたとする(140条)。
この事例で、訴えを却下すること自体については異論はないと思われる。口頭弁論を開かずに却下するのが適当かについては意見が分かれようが、ここではこの点には立ち入らないことにする。

[Q1] 訴訟係属とは何か。

[Q2] 訴訟係属はいつ発生するのか。

[Q3] 訴え却下判決は被告にも送達されるべきか。

[Q4] 裁判所は、訴状を被告の宗教法人に送達することなくその訴えを却下することができるか。


目次
1998年7月15日−1998年9月7日