ドイツ民事訴訟法・303条(中間判決)
中間の争いが裁判に熟するときは、その裁判は中間判決によりなされる。
* 当初は独立の攻撃又は防御の方法についても中間判決が許されていたか、1924年改正法により廃止された。現在では、訴訟要件及びその他の手続上の問題についての中間判決(303条)及び原因判決(304条)が許されているだけである。Stein-Jonas, ZPO, 21. Aufl., §303 Rdnr. 1 (Leipold/1998)
ドイツ民事訴訟法・304条(原因判決)
1 請求が原因及び数額について争われている場合には、裁判所は、原因について先に裁判することができる。
2 この判決は、上訴に関しては、終局判決とみなす;しかし、裁判所は、請求に理由があるとするときは、申立てにより、数額について弁論がなされることを命ずることができる。
* この原因判決は、原因の点で請求が正当である場合にのみなされ。請求が原因の点で正当でなければ、請求を棄却する終局判決がくだされる。Stein-Jonas, ZPO, 21. Aufl., §304 Rdnr. 8 (Leipold/1998)
オーストリー民事訴訟法・393条(中間判決)
(1) 訴訟において、請求が原因と数額の点で争われ、弁論がまず原因についてのみ裁判に熟するときは、裁判所は、請求がある数額について正当であるかについてなお争いがある場合でも、先に請求の原因について判決により裁判することができる(中間判決)。
(2) さらに、236条及び259条の場合には、本案の裁判に先行する中間判決により、権利関係又は権利の存在又は不存在に関し、確認の申立てに関する弁論が裁判に熟した後直ちに、裁判することができる。
(3) 前2項の規定により下された判決(Die im Sinne der beiden ersten Abs閣ze erlassenen Urtheile)は、上訴に関しては、終局判決とみなす。第1項により下された中間判決に対する控訴又は上告により、訴えに関する弁論は、下された中間判の確定力の発生まで、停止される。他の全ての場合に、中間判決に対する控訴又は上告にかかわらず、本案の弁論は進行する。ただし、本案の裁判にとって本質的な法律関係又は権利が根拠付けられないと認められた場合には、裁判所は、下された中間判決の確定力の発生まで訴えに関するその後の弁論が停止されるべきことを命ずることができる。この命令は、上訴により不服を申し立てることができない。
(4) 費用に関しては、第52条第2項の規定を準用する。
* 第2項の中間判決は、日本法の中間確認の訴えに対する終局判決に相当するものである(Fasching, Zivilprozessrecht, Manz, 1984, S.664)。1項の中間判決は、日本の中間判決に相当するものであるが、訴訟法上の問題については、決定により処理されるとの原則に忠実に従い、本案の問題についてのみ中間判決が許される(Fasching, Zivilprozessrecht, Manz, 1984, S.658)。
* 中間判決の制度は、訴訟経済のために設けられた制度があるが、その目標はしばしば達成されない。その理由として次のことが指摘されている:原因判決が請求の原因と数額とを分離することの困難を拡大し、また、数額に関する続行手続において基礎となる訴えの変更又は拡張がなお可能だからである(Fasching, Zivilprozessrecht, Manz, 1984, S.659)。
* 3項の確定力は、形式的確定力を意味する(Fasching, Zivilprozessrecht, Manz, 1984, S.661)。もっとも、中間判決に実質的確定力(既判力)が認められるか否かについては、見解の対立があるようである。Fasching, Zivilprozessrecht, Manz, 1984, S.660 以下は、否定説。
注2 1811年のオーストリー一般民法典(AGBG)1318条は、次のように定めている(訳文は、瀧沢[クリンゲンベルク*2001a]349頁)。
危険な状態で吊り下げられもしくは置かれている物が落下したことにより、または住居からの投下もしくは流出によりある者が損害を被ったときは、そこから投下もしくは流出のあったまたは物が落下した当該住居の居住者は、その損害について責任を負う。
この規定の責任は、帰責事由を要件としていない。他人が物を投下し、教従者がそのその者の監督責任を怠っていない場合でも、賠償責任が生ずる。Koziol=Welser,
Grundriss des buergerlichen Rechts , Bd 1, Manz 1987,
S 453。 したがって、こうした規定が設けられている国にあっては、この規定が適用される範囲内では、本文で述べたような表見証明ないし経験則による推認は、そもそも必要なくなる。なお、居住者以外の者が投棄したことにより生じた損害を居住者がこの規定により賠償した場合には、居住者はその者に対して賠償金を求償することができよう)
AGBG1318条は、ローマ法に由来する規定であるとのことである([クリンゲンベルク*2001a]349頁)
[今野*2011a]60巻5号166頁によれば、フランス民法典の編纂過程で、次のような規定案も出されたとのことである。17条:
水または損害をもたらす何らかのものが、居住する家屋から、何人かによって、通行人へ投下された場合、損害の義務を負うのは、それを投下した部屋に居住する者のみである。
投下した者が判明した場合には、その者が単独で義務を負う。投下した者が判明しない場合には、全員が連帯して責任を負う。
この17条の規定案は、過失責任に関する一般規定である16条の適用例に過ぎないとして、削除されたとのことであるが([今野*2011a]60巻5号170頁)、加害者が判明しないない場合に関する2項2文の規定は興味をひく。この規定は次のように理解してよいであろうか:一定範囲の者(居住者)が相互に不法行為抑制義務を負っていることを前提にして、加害者を判明させる責任を被害者から加害者になりうるその一定範囲の者に移転させる規定である。
注3 古い時代にはそうでもなかったようである。サヴィニー(小橋一郎・訳)『現代ローマ法体系』(2005年9月20日、初版)263頁(1847年の原著303頁)は、「原告が請求したよりも少ない少ないものについて被告を有責とするどの判決も、そこには請求の残りの部分の免訴判決が暗黙のうちに一緒に含まれていることによって、常に混合判決である」と述べる。すなわち、「一部免訴」の文言、すなわち現行日本法でいう「一部棄却」の文言(「原告のその余の請求を棄却する」)は、明示されていても明示されていなくても同じであるというのである。
サヴィニーは、さらに、「どの有責判決をもそもそも(原告の申立からの明白なずれがなくても)混合判決と見ることができる。なぜならば、その場合常に、原告はそれ以上のものを請求してはならないという暗黙の付加が、付け加えて考えられるべきだからである」(263頁・272頁。1847年の原著303頁・314頁)。これは、黙示の一部請求の場合に、現行日本法の解決と同じである。サヴィニーが明示の一部請求の場合にも同様に考えていたかは、明確ではない。