注1 民事執行法の執行抗告と民事保全法の保全抗告を一瞥しておこう。
なお、民執法10条10項・民保41条4項において民事訴訟法の規定中349条のみが準用規定として挙げられているが、これは準用を明示したにすぎず、他の規定の準用を否定する趣旨ではない。準用される規定のうちで特に重要なのは、特別抗告と許可抗告に関する規定である。
注2 民事保全法では、保全異議手続を経てから保全抗告がなされるため、再度の考案は禁止されている(民保41条2項)。 民事訴訟法もこの方向に進む余地があることを指摘する文献として、[池田*1997a]105頁がある。抗告状を抗告審にも提出することができるとしていた旧法下において、再度の考案の制度に批判的な見解として、[鈴木*1985c]307頁以下、[三谷*1993a]153頁以下参照)
注3 立法の経緯につき、[山本*1996b]89頁以下、[池田*1977a]106頁参照。対案として、高等裁判所による最高裁への移送制度、裁量抗告(抗告受理)制度があったことが述べられている。
注4 87条2項と同趣旨であり、特に意味があるとは思われない。加波眞一[注釈*1998c]98頁参照。
注5 加波眞一[注釈*1998c]98頁は、≪純然たる第三者の尋問は、証人・鑑定人として調べるという方法をとるしかない≫とするが、187条の参考人審尋を否定する趣旨であるならば、賛成できない。
注6 民事執行法では、執行裁判所の裁判に対して執行抗告(例外的に即時抗告)が許されるか否かが個別的に規定されており、それに従う。民事保全法の領域は、許可抗告の制度による法解釈の統一が期待される主要な領域の一つであるが([法務省*1998a]374頁参照)、民事保全法は、許可抗告の制度が存在しない時期に、事件の迅速処理を旨として起草され、独自の抗告制限規定を設けていて、337条を文言通りに準用すると許可抗告制度の趣旨と整合しない結果をもたらすことが指摘されていた([山本*1996b]90頁)。この点の法改正をまたずに、解釈により解決することができるかが問題となったが、最高裁判所平成11年3月12日第1小法廷決定(平成10年(ク)第699号)は、許可抗告申立却下決定に対する特別抗告事件において、なお書きで、許可抗告制度の立法趣旨に照らせば、高等裁判所のした保全抗告についての決定は許可抗告の対象となるとの判断を示した(事実関係を含めて[鈴木*2000]が詳しい)。この結論にあわせて文言解釈を行えば、高等裁判所が抗告審としてした裁判と同等な裁判を地方裁判所が受訴裁判所としてしたならば抗告の対象となるような裁判は、当事者に与える影響の大きい裁判として、許可抗告の対象となるということになる。上記の裁判のほかに、次のものもこれに該当する([村上*2000a]131頁)。
なお、簡易裁判所が発令した保全命令に対して保全異議が申し立てられ、これが却下された場合には、地方裁判所への保全抗告止まりとなり、当事者の救済としては不十分となるが、許可抗告の制度は、高等裁判所の段階で生じうる法令解釈の不統一を解決するための制度であるから致し方ない(この場合にも許可抗告を認めることは、立法論となる)。
注7 ちなみに、控訴に関しては、原裁判所は第一審裁判所に限定されるので、286条では「原裁判所」の語に代えて「第一審裁判所」の語を用いている。他方、上告ではそのような特定ができないので、314条では「原裁判所」の語が用いられている。
注8 倒産手続における裁判については、多数の利害関係人について手続を斉一的に進行させることを可能にするために裁判の公告がなされることがあり、その場合には、公告のあった日から2週間が即時抗告期間とされている(破産法9条2文、民再法9条2文など)。
注9 旧法下では、抗告審に提出することも認められていたため、抗告状の提出先となった抗告裁判所が再度の考案の機会を与えることが適当と認めたときには、原裁判所に回付することが必要であった。
注10 もっとも、確定しなければ効力が生じない旨が規定されている場合も多々ある。例:民執83条5項。
注11 即時抗告であっても、執行停止の効力を有しないことが個別的に規定されているものもある。例:民執115条6項。
注12 文書提出命令の申立てに関する決定のように、認容決定も棄却決定も即時抗告に服す場合には、附帯即時抗告もありうる(331条・293条)。
注13 なお、明治23年法からの歴史について、[鈴木*1998c]314頁以下が興味深い。
注14 実際にどの程度詳しい意見が付されているかを知るために、東京高等裁判所 平成16年4月7日 決定(平成15年(ラ)第2137号)の解説(訟務月報51巻1号3頁)を参照(詳しい意見が付されたといってよいと思われる一つの事例である)。