注1 2項(弁論の更新)の準用もあると解したい。ただし、[注釈*1998c]60頁(鈴木重信)は、準用される規定から除外している。
主文を導き出すための理由が欠けるとされなかった事例
平成27年判決と平成11年判決との区別は微妙なように思える(端的に言えば、平成11年判決の事例も、被告の再抗弁についての判断は判決主文の判断を左右するものであるから、「主文を導き出すための理由の一部が欠ける」と見るべきではなかろうか)。
注3 単なる事例であるが、この例として、最高裁判所 平成18年4月25日 第3小法廷 判決(平成16年(行ヒ)第312号)がある。
注4 二つの考え方の存在について、[藤原*2001a1]33頁以下参照。
注5 [藤原*2001a2]51頁以下は、最高裁の負担軽減の趣旨から見て、事実認定に関する法令を含める解釈ないし運用を邪道としつつ、裁量的運用として肯定しうるとする。
注6 サンプルとして、最高裁判所 平成21年7月10日 第2小法廷 判決(平成20年(受)第1728号)参照。
注7 サンプルとして、最高裁判所 平成21年7月14日 第3小法廷 判決(平成20年(受)第1729号)参照。上告受理申立てとして適法なのは、α請求部分についての申立てのみであるが、上訴不可分の原則により、事件全体が受理される(318条1項末尾の「事件を受理する」は、「原判決により裁判された事件全体について上告事件を受理する」(事件全体について移審効が生ずる)ことを意味する)。β請求部分については、不服申立て(破棄申立て)がなされているので応答が必要となるが、理由を記載した書面が提出されていないので、上告却下の裁判をするのである 。もっとも、上告受理の決定がなされた時点では、上告受理申立ての範囲の拡張や附帯上告受理申立ての余地がほとんどないことを考慮すると(附帯上告・上告受理申立ての項を参照)、立法政策的には、理由書の提出のあった部分についてのみ上告を受理し、他の部分については受理しないとの決定をする余地もないわけではない。その点もふまえると、最高裁は、事件全体の処理についてさまざまな可能性があることを考慮して、上訴不可分の原則をここで厳格に維持しているということができる。
注9 このことが好ましいことであるかと問われれば、判決の言渡しの時点では係争財産は破産財団(法定財団又は現実財団)に属しているのであるから、あまり好ましいことではないと答えることになる。しかし、このような事態が生ずることは避けがたいであろう(例えば、判決言渡しの1時間前に破産手続開始決定が効力が生ずる場合がそうである)。
注10 関連する問題として、破産債務に関する訴訟手続が債務者の破産手続開始により中断し、異議者等により受継される場合に、破産者に関する訴訟手続はどうなるのかという問題がある。破産者が個人であり、免責か許可されないこと(あるいは、係争債権が非免責債権であること)を前提にして、検討してみよう。
(a)破産管財人が異議者等になって破産債権確定訴訟を追行する場合 この場合に破産者を当事者とする訴訟がどのようになるかはについては、次の2つの理解が可能であり、見解は分かれる。(α)破産管財人は、破産者のための訴訟担当者であり、その判決効は破産者にも及ぶとの考えを採れば、破産者は当事者でなくなったことにより、破産者との関係では訴訟は終了することになる。ただ、そのように解するならば、判決効が破産者に及んだ場合に、破産者との関係で紛争が有効適切に解決されるような請求が破産管財人と破産債権者と間で立てられていることが必要である。しかし、破産管財人を当事者とする請求が優先的破産債権の確定請求である場合に、破産者は債権の存在自体を争っていたのに、破産管財人は優先権の存在のみを争ったときに、破産管財人が破産者のための訴訟担当者と言いうるだけの実質があるのか疑問である(より一般的に言えば、破産管財人は、破産配当を適切に行う前提として破産債権の存否に利害関係を有するのであり、破産者は自己の自由財産を守るために破産債権の存否に利害関係を有するのであり、両者の立場は異なる)。また、債権者としては、破産債権確定訴訟で勝訴しても、その判決は給付判決ではないので、その判決に基づいて直ちに強制執行をすることができない(破産者が届出債権に対して異議を述べていれば、確定した破産債権者の記載も債務名義にならない(破産法221条2項))。したがって、債権者から見て、破産債権確定請求では、破産者との紛争が有効適切に解決され得ない。そうだとすると、破産管財人が異議者等として訴訟手続を受継する場合でも、破産者との間で定立された当初の請求(給付請求)を維持し、破産管財人はこの請求について破産者の訴訟担当者であるとし、かつ、これと並んで破産債権確定請求が追加され、これについて固有適格者になるとする必要がある。しかし、給付請求について破産管財人が破産者のための訴訟担当者といいうるだけの実質を一般的に肯定することができるかと問われれば、それは前述のように疑問である。事実また、破産法は、破産債権確定訴訟の判決効が破産者に及ぶとはしていない(破産法131条1項)。破産者が届出債権について異議を述べなかった場合に、確定した破産債権についての破産債権表の記載が破産者に対して確定判決と同一の効力を有するとしているにすぎない(221条1項)。したがって、(β)従前の請求が異議等の解決に適した請求に変更され、破産管財人がこの請求について訴訟を追行する場合でも、破産者を当事者とする給付請求に関する訴訟は当然には終了せず、その訴訟手続は中断したままであると解すべきである。
(b)異議等を述べたのが他の破産債権者であり、破産管財人は述べていない場合 この場合については、他の破産債権者は破産者のための訴訟担当にならず、破産者を当事者とする訴訟手続は中断したまま係属すると解される。
注11 第一審判決を取り消して事件を差し戻す旨の控訴審判決に対する上告が棄却される場合も、これに含まれる。