関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法講義「判決の効力3」の比較法メモ


1 反射的効力

2010年のユニドロワには、裁判の存在を構成要件の中に取り込んだ規定として、次のものがある:11.1.8条・11.2.3条2項。[私法統一国際協会*2013a]264頁以下・276頁以下参照。

11.1.8条は、次のように規定している。

 (1)債権者に対する連帯債務者の1人の責任についての裁判所の判断は、以下の各号に定める事項に影響を及ぼさない。
  (a)当該債権者に対する他の連帯債務者の債務
  (b)第11.1.10条に基づく連帯債務者間の求償の権利
 (2)前項の規定にかかわらず、その判断が当該債務者に固有の理由に基づくものである場合を除き、他の連帯債務者はその判断を援用することができる。この場合においては、第11.1.10条に基づく連帯債務者間の求償の権利はそれに応じて影響を受ける。

第2項の適用例として、次のような例があげられている:債権者が連帯債務者の1人に対して履行請求の訴えを提起したが、債権が発生していないとの理由で請求が棄却された場合、あるいは一部の発生しか認められないとの理由で請求の一部が棄却された場合に、他の連帯債務者は、その請求棄却の判断をその債権者に対してを援用することができる([私法統一国際協会*2013a]265頁)。第1項は、反射効が原則として及ばない旨を定め、第2項は、反射効が例外的に及ぶ場合を定めた規定ということができる。

2 既判力の主観的範囲の拡張の例

(1) 実定法ではなく、草案段階のものであるが、ドイツ保険契約法改正専門家委員会草案が次のように規定している(新井修司=金岡京子『ドイツ保険契約法改正専門家委員会最終報告書(2004)(訳)』(日本損害保険協会=生命保険協会、2006年)273頁以下に収録の対照表)。片面的拡張である。

なお、同書231頁によれば、「本項は、現行義務保険法第3条第8号と同じである」。