関西大学法学部教授 栗田 隆

民事訴訟法講義「判決の効力2」の比較法メモ


注1 既判力(客観的範囲と主観的範囲)

テッヒョー「訴訟法草案」(原文はカタカナ縦書。項番号は、アラビア数字で記したが、原文にはない。号番号は、ローマ数字で記したが、原文は漢数字である。)

明治23年民事訴訟法(原文はカタカナ縦書。項番号は、アラビア数字で記したが、原文にはない。号番号は、ローマ数字で記したが、原文は漢数字である。)

バイエルン王国民事訴訟法(1869年)

ドイツ民事訴訟法草案(1871年プロイセン司法省案)(項番号は、アラビア数字で記したが、原文にはない。号番号は、ローマ数字で記したが、原文はアラビア数字である。)

1877年ドイツ民事訴訟法(司法省『和訳 欧州各国民事訴訟法』(清水書店、大正15年)に掲載された翻訳。原文はカタカナ。読点を適宜補充した(原文では、各項の最後の読点は省略されていて、途中には読点が付されている))

1877年ドイツ民事訴訟法(2011条12月22日現在。[法務大臣官房*2012a]に掲載された翻訳)

オーストリー民事訴訟法(1895年法) (司法省『和訳 欧州各国民事訴訟法』(清水書店、大正15年)に掲載された訳。原文はカタカナ。読点を補充した)

オーストリー一般民法(1811年法)

オーストリー民訴法は、確定力の主観的範囲に関する一般規定を有さず、民法12条から当事者にのみ及ぶとの原則が認められている。特定承継人への確定力の拡張を一般的に認める規定もないが、その拡張は通説により承認されている(Fasching, Zivilprozessrecht, 1984, Manz, Rn. 1525ff.)。他の法令に確定力の拡張を認める規定があり、登記法にもあるとのことである。

注2 [サヴィニー/小橋訳*現代6]313頁(原書367頁)で挙げられている例である。確定力が判決後に生じたの事実の主張に基づく訴訟に影響しないことにつき、次の頁も参照:321頁。

注3 [サヴィニー/小橋訳*現代6]315頁(原書369頁)は、これとは異なる見解を主張する:「これまでなされた研究は、確定力が裁判自体(有責判決または免訴判決)にのみならず、それの客観的理由にも付与されなければならないという結果に、すなわち、これらの理由は判決の不可欠の部分とみられるべきであり、したがって確定力の範囲は常にそういう理由と結び付いた判決の内容により決定されなければならないという結果に至った。」。

注4 古くから認められていることである。[サヴィニー/小橋訳*現代6]350頁(原書416頁)が確定力の抗弁について次のように述べている:「すべての他の抗弁と同様に、この抗弁も、訴訟の状態がそうする機会を供するときには、再抗弁又は再々抗弁の形で主張できる。このような場合には、それにより相手方の訴えではなくて、相手方の抗弁または再抗弁が無効にされる。それゆえに、すべてのこれらの場合について、共通の決まり文句は、こう言い表される:それによって常に、確定力のある判決と矛盾するような相手方の請求[Anspruch]が無効とされるべきである。」。ここで、Anspruchが「請求」と訳されているが、もちろん、現行の日本民訴法133条2項2号にいう「請求」の意味ではない。抗弁や再抗弁の形で提出されるAnspruchであり、「権利主張」(より一般的には「法律関係の主張」)の意味である。

[サヴィニー/小橋訳*現代6]356頁(原書424頁)以下で、訴訟物の同一性ではなく、法律問題の同一性が重要であることがさらに詳述されている。